2019 SUPER FORMULA Round 1 Report

【SUPER FORMULA 第1戦 / 鈴鹿】

2019年シーズンの初戦を制したのはニック・キャシディ選手、
「SF19」のデビュー戦は2スペックのタイヤもレースを盛り上げた!!

SUPER FORMULA Round 1

開催日 2019年4月19日-21日
開催場所 鈴鹿サーキット
(三重県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 43周
(1周=5,807m)
参加台数 20台
SUPER FORMULA 第1戦

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「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」の2019年シーズン開幕戦が鈴鹿サーキットで開催。これまで熟成に熟成を重ね、数々の名勝負を生み出してきた名機「SF14」が昨年ラストレースを迎え、今シーズンからは新型マシン「SF19」が投入された。

マシンの進化に合わせてタイヤも改良した結果、初レースながらコースレコード目前まで迫るタイムが記録されるなど、国内トップフォーミュラにふさわしいスピードが披露された。予選ではルーキードライバーの勢いが光る一方、決勝では実力者たちの強さ、強豪チームの総合力が際立ち、SF19最初のレースは昨年ランキング2位のニック・キャシディ選手(VANTELIN TEAM TOM’S)が勝利を飾った。

今シーズンのSUPER FORMULAで一番の話題は、やはり新型マシン。「クイック&ライト」のコンセプトを継続したうえで、「今までよりもオーバーテイクが増えるようなマシンに」というリクエストのもと、イタリア・ダラーラ社が手掛けたのが「SF19」。開幕前の公式テストから、非公式ながらコースレコードを上回るタイムも記録され、その進化が実証されている。今大会では気温、路面温度ともに高かったために、惜しくもレコード更新はならなかったが、第2戦以降のサーキットでは、昨年同様にコースレコードの更新も期待がかかっている。

またマシンのスイッチと共に大きな話題になっているのは、参戦ドライバーたちの顔ぶれ。海外からの新規ドライバーが5名、他カテゴリーからのステップアップドライバーを含めると、計9名がフル参戦デビューとなる。また継続参戦のドライバーたちも多くがチームを移籍しており、まったく勢力図が分からない中で開幕を迎えることとなった。

20日(土)に行われた公式予選は、Q1が赤旗中断の連続で、ハリソン・ニューウェイ選手(B-Max Racing with motopark)やダニエル・ティクトゥム選手(TEAM MUGEN)といった注目ドライバーたちがリズムを崩され敗退。ベテラン勢の勝負強さが現れる一方で、TCS NAKAJIMA RACINGが揃えた2名のルーキードライバーが驚くべきスピードを見せた。Q1、Q2でアレックス・パロウ選手がトップタイムをマーク。Q3では牧野任祐選手がコースレコードに迫る1分36秒060をマークして、ポールポジションを獲得した。チームとして実に9年ぶり、また国内トップフォーミュラにおいても史上初となるルーキードライバーのデビュー戦ポールポジション獲得となった。

21日(日)の決勝レースは、気温25℃、路面温度37℃という、初夏を感じさせる陽気の中でスタートした。ホールショットを奪ったのはポールシッターの牧野選手で、予選2位のパロウ選手は、同じく3位の山本尚貴選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)にいったんかわされたものの、すぐに順位を取り戻してTCS NAKAJIMA RACINGが1-2体制で序盤のレースをリードしていった。後方では細かい順位変動がある中で、6周終了時点といち早いタイミングでキャシディ選手がタイヤ交換のためにピットイン。ソフトタイヤに履き替えると最後尾から再び追い上げを開始する。

その直後、7番手スタートの平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)とトリスタン・シャルパンティエ選手(REAL RACING)がトラブルからコースサイドにストップし、レースは1度目のセーフティカー(SC)ランとなる。このタイミングで各車が続々とピットイン。自動的にポジションを上げていったキャシディ選手は、暫定5位で12周目のリスタートを迎えると、直後の1コーナーで目の前を走る牧野選手をとらえ4位浮上。さらにもう1台をとらえて12周目が終了した時点で表彰台圏内の3位に上がっていた。前を走る2台はピット作業を済ませておらず、ここで実質のトップに立ったことになった。

レースはさらに、15周目に2台が交錯するアクシデントが発生したため2度目のSCランに。18周目のリスタート直後、予選で速さを見せたパロウ選手がマシントラブルからコースサイドにストップ。この車両回収のために、19周目から3度目のSCランとなる。さらに、牧野選手がやはりマシントラブルからコースサイドにマシンを止め、この車両回収のために4度目のSCランとなった。

荒れた展開の中、2位に上がったキャシディ選手は、リ・スタート後は後続との差をコントロールするように周回。トップの車両が最終ラップを前にピットへ向かうと堂々の首位浮上でファイナルラップへ突入する。そしてトップチェッカー。チームを移籍しての初戦で、自身2度目の勝利を飾った。

2位に入ったのは、予選3位から1つポジションアップの山本選手。3位には予選6位からスタートした山下健太選手(KONDO RACING)が入り、奇しくも昨年の最終戦と同じ顔触れが表彰台に並ぶこととなった。

DRIVER VOICE

ニック・キャシディ 選手 [VANTELIN TEAM TOM’S]

【今回の成績 : 優勝】
SUPER FORMULAのタイトル争いは非常にレベルが高いので、その中で優勝できるのは最高の気分です。今年はタイヤが変わり、去年に比べると全体的にハードになったという印象はありますが、ソフトタイヤとミディアムタイヤの差というのは昨年もありましたし、その点に関しては変わりないと感じています。オフのテストでは非常にいい仕事ができていましたが、この週末は首をかしげてしまうほどクルマの速さを出せず、問題も抱えていました。そんな中でチームのみんなで頑張り、運と戦略、その戦略に合わせたセッティング、チームのコミュニケーションがうまくいったことで優勝できたのだと思っています。

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

昨年のタイヤは、“クイック&ライト”というコンセプトに対しリヤタイヤのキャパシティが十分すぎると感じていたので、フロントタイヤのキャパシティを上げるためにタイヤ幅を20mm拡大しました。また、フロントタイヤのキャパシティを上げるということは、リアタイヤのパフォーマンスは上がりますが耐久性に対するシビアリティが上がります。そのため、耐久性をケアするための構造変更を行っています。

そのようなタイヤの変更も行っての初戦。まずは一つ目標としていたコースレコードの更新ですが、予選日の気温と路面温度が高く、コンディションとしては難しいのではと予想していました。Q1が赤旗中断により延長し、ソフトタイヤでアタックするQ3の時間が夕方にずれたことで多少温度は下がりましたが、風向きも悪く、惜しくもレコード更新はなりませんでした。

決勝レースでは、キャシディ選手が36周、最終ラップにタイヤを交換した小林可夢偉選手(carrozzeria Team KCMG)が42周と、ソフトタイヤでロングラップを行っていました。キャシディ選手は昨年も同じぐらいの周回数を走っていましたから、相当な自信があるのだろうと思っていました。小林選手の方は少し心配でしたが、車両セットがとても決まっていたのか、きれいにタイヤを使い切っていましたね。もちろん途中で計14周セーフティカー先導の周回があったので、レースペースで42周を走っていないということは考慮しなければいけません。

次戦の舞台となるオートポリスは、鈴鹿程ではありませんが耐久性に対するシビアリティの高いコースです。今回しっかりと走れていましたからあまり心配はしていませんが、いろいろと使い方に関しては注意してみていきたいと思っています。