2019 Nürburgring 24 Hours -QF Race (2)-

壮大なスケール、難攻不落のコース、丸一昼夜を走ることの過酷さ。今年もドイツ・アイフェルの森で、ニュルブルクリンク24時間レースは熱く、タフでサバイバルな戦いが繰り広げられる。6月の本戦に先立って、5月16日~19日には予選レースが行われたニュルブルクリンク、その模様などをお届けしていこう。


気まぐれな雨に翻弄されたニュルブルクリンク

6月に行われる24時間レースを前に、5月18日(土)から19日(日)にかけてニュルブルクリンクで行われた予選レース(QFレース)。総勢102台がエントリー、24時間レース本番に向けた最後のチェックやセットアップの場として世界各地からチームとドライバーが集結した。

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この予選レースウィークは、天候に恵まれない週末となってしまった。18日は朝から断続的に雨が降っており、昼に練習走行がスタートする頃には小康状態となったものの空はどんよりした雲に覆われていた。しかし同日18時45分から21時15分まで行われた予選1回目は雨が止み、路面はドライコンディションに。もっとも、終了1時間前には再び雨が降り始めたが、短いながらもドライコンディションとなったことはチームにとって大きな意味があった。

ニュルブルクリンク24時間レースにおいては、規則で各車両が使えるドライ用スリックタイヤは3種類のコンパウンドに限られる。その登録はVLN1からVLN3、そしてこの予選レースを通じて2周以上を走行して公式記録を残したタイヤのコンパウンドを登録出来るのだ。

ここまで雨や雪などコンディションに恵まれなかったこともあり、各チームは1~2種類のコンパウンドのみしか使っていないという状況。つまり、24時間レースに向けて最後の登録チャンスとなるのが今回の予選レースであり、このドライコンディションを活かして用意したすべてのコンパウンドの登録資格を得られたのである。

翌19日の8時30分から行われた2回目の予選はウェットコンディションとなったが、1回目と合わせた速い方のタイムが採用されるためWalkenhorst Motorsportの101号車・BMW M6 GT3(クリスチャン・クログネス選手/デイビッド・ピタール選手/ニコラス・イェロリー選手)が2番手を獲得。その後のTOP30予選ではタイムが伸び悩み21番手となったが、決勝に向けて期待が高まる速さを見せた。



ヨコハマタイヤを装着するBMW M6 GT3が優勝!!

6時間のレースは、正午ちょうどにスタート。雨は幸いに止んだが、路面コンディションはウェットから徐々にドライへと転じる過程、いわゆるダンプ路面という状況である。

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そんな中でスタートが切られたが、路面の好転によりレインタイヤでスタートした各車は早々にピットインしてスリックタイヤへと交換。そしてヨコハマタイヤの優れたパフォーマンスも活かして速さを見せたのが101号車のBMW、スタート2時間後には8位のシングルポジションにつけると3時間経過を前にトップを奪うことに成功。

その後もドライコンディションながら気温/路面温度とも低めに推移する中で好走を続けて、スティントの関係で時にはトップを譲るも首位争いを展開。最後はラスト2周で再びトップに返り咲いて総合優勝に輝き、24時間レースに向けて大いに期待の高まる結果となった。

日本勢ではKondo Racingの日産・GT-R Nismo GT3(松田次生選手/高星明誠選手/藤井誠暢選手)は、トラブルに襲われることも無く安定した戦いぶりを披露。スタートを担当した松田選手がフォーメーションラップでコース状況を確認するとスリックタイヤへと交換、総合17位でフィニッシュした。

また日本のSUPER GTと同じゼッケン19をつけるBandoh Racing with Novel RacingのレクサスRC F GT3(ドミニク・ファーンバッハー選手/吉本大樹選手/ミハエル・ティシュナー選手)は、スタート直前にレインタイヤからカットスリックタイヤへと交換。これが功を奏してスタート直後に続々とピットインするライバルを横目に周回を重ね、しっかりポジションアップを果たして総合20位でチェッカーを受けた。


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このほか、優勝した101号車のチームメイトである100号車のBMW M6 GT3(ヘンリー・ワーケンホルスト選手/アンドレアス・ジーグラー選手/インマヌエル・フィンケ選手/ジョルダン・トレッソン選手)も総合21位で完走を果たし、ヨコハマタイヤ勢は24時間レースに向けて好感触をそれぞれが掴む結果となった。



24時間レースに向けて万全の体制で臨む – 藤代秀一

101号車の総合優勝を筆頭に、ヨコハマタイヤ勢が好走を見せた今回の予選レース。エンジニアの藤代秀一(横浜ゴム株式会社 MST開発部 技術開発1グループリーダー)に全体を振り返ってもらおう。

藤代「今年のニュルブルクリンクはコンディションの安定しないレースが続いていますが、今回の予選レースも天候に振り回されました。そんな中で101号車はドライコンディションで強さを発揮して優勝を飾ってくれました。スティントの最終ラップでセクターベストをマークしたことから、タイヤについては昨年の課題をしっかり対策した結果を出せたと思っています」

天候に振り回された、という点についてはレポートにもあるように規則との兼ね合いによる部分もあったという。

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藤代「今年の規則で、『VLN1-3とQFレースで使ったタイヤの中の3種類しか24時間レースでは使えない』というものがあります。ところがコンディションの関係で24時間レースを想定したタイヤのいくつかを使えないままに予選レースウィークを迎えてしまいました。しかし、幸いにドライで走れる機会があったことから、無事に各車両で想定していたタイヤを全て使うことが出来て、なおかつ結果も良好だったのは大きな収穫です」

やはりニュルブルクリンクというコースの特性から、タイヤに求められるものも変わってくるのだろうか。

藤代「そうですね、単純に日本のサーキットと比べると距離が長いですよね。その中に様々なコーナーがありますが、路面のμが著しく低いこともあって横Gによる負荷は思っているよりも低いのですが、路面のウネリや高低差からくる縦荷重や、その変動が大きいコースです。当然、タイヤに対する要求も日本のサーキットとは若干違ってきます」

ニュルブルクリンクはタイヤにも過酷、ということだが、藤代によると“人にも過酷”なのだそうで……。

藤代「例年のことですが、24時間レースはもちろんのこと、今回のQFレースもスケジュールが過酷なんですよ。ユーロに換金してドイツに入りましたが、実際にお金を使ったのは到着した時の空港とレースが終わってフランクフルトに移動した深夜に、それぞれファストフードでハンバーガーを食べた時だけでした。結局は20ユーロも使わずに、日本へと帰って来ましたね(笑)。

土曜日にはセッションの間が5時間ほど空くタイミングがあり、その時に近所のスーパーマーケットにお土産でも買いに行こうと思っていました。ところがその時間帯は、土砂降りに祟られて身動きが取れず……。本当にニュルブルクリンクは、何から何までが過酷なのです。

一方、この時期は森の新緑が一気に増えて、菜の花畑は一面真っ黄色と、風景がとても綺麗で癒されます。私自身3年ほどドイツに駐在していましたが、一番好きなシーズンですね。もっとも、レースの仕事で行くと、そんな風景を見られるのは僅かな時間しかありませんが(笑)」

予選レースを終え、いよいよ迎える24時間レース。藤代には最後に、24時間レースに向けた意気込みを語ってもらおう。

藤代「ニュルブルクリンクでのレースはどれも過酷ですが、やなり24時間レースは特別です。コンディション変化も大きく、雨などが加わるとそれぞれに対応したタイヤの準備などに追われます。そんなニュルブルクリンクですが、今回良い結果を得られたQFレースに引き続き、24時間レースでもヨコハマタイヤユーザーの優勝をサポート出来るように、万全の準備をして臨んでいきます」


6月20日から23日にかけて行われるニュルブルクリンク24時間レースでは、ヨコハマタイヤ・モータースポーツサイトならびに横浜ゴム・モータースポーツFacebookページにて、現地より速報をはじめ様々な情報を発信してまいりますので、お楽しみに!!