2019 Nürburgring 24 Hours -QF Race (1)-

壮大なスケール、難攻不落のコース、丸一昼夜を走ることの過酷さ。今年もドイツ・アイフェルの森で、ニュルブルクリンク24時間レースは熱く、タフでサバイバルな戦いが繰り広げられる。6月の本戦に先立って、5月16日~19日には予選レースが行われたニュルブルクリンク、その模様などをお届けしていこう。


ニュルブルクリンク24時間レースとは

ドイツ北西部、アイフェル地方のニュルブルクにある「ニュルブルクリンク」。ここで開催される24時間耐久レースは、フランスのル・マンやアメリカのデイトナなどと並んで世界的に注目を集めるビッグレースイベントである。

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このレースはおよそ半世紀前の1970年、ADAC(ドイツ自動車連盟)によって産声を上げた。石油ショックやコース改修によって24時間レースの開催が見送られた年もあるが、今年で47回目を迎える歴史を有している。

同じ24時間耐久レースということでル・マンと比べてみると、ル・マンは市販車ベースのツーリングカーのみならず、完全なレーシングマシンとして生み出されたプロトタイプカーも出走する。決勝にはおよそ60台が出走、自動車メーカーのワークス勢同士がしのぎを削りあっている。

対してニュルは市販車ベースのツーリングカーのみが出場出来る。クラスは細かく分けられており、FIA-GT3車両によるSP-9クラスが最高峰として認識されている。一方では改造範囲の狭いグループN車両も多数参加しており、プロからアマチュアまで幅広い顔ぶれが特徴となる。

決勝出走台数は2018年で150台、以前は200台を超える時代が長く続いていた。俗に“世界最大の草レース”とも称されるが、これはその大会規模と歴史に敬意を表したフレーズに他ならない。


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多くのドライバーを魅了するニュルブルクリンク

レースファンの多くがご存じの通り、ニュルブルクリンクというサーキットはふたつのコースから成り立っている。ひとつは1984年に完成したグランプリ・コースで、5.148kmの全長を有している。これに対してノルトシュライフェ(北コース)は1927年に完成したオールドコースで、こちらの全長は20.832kmにも及ぶ。高低差は300mと大きく、距離が長いだけに同じコース上でも天候や路面コンディションが異なることさえ珍しくはない。

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これらふたつのコースをつなげてひとつのコースとしたものが、ニュルブルクリンク24時間レースの舞台となる。数多くのブラインドコーナーが待ち構え、特にノルトシュライフェの路面には大きなウネリやギャップも多い。これらが24時間という長丁場でドライバーやマシン、タイヤに絶えず襲いかかり、疲弊させていく。

日没後はまさに暗闇が支配する世界となり、近年は性能進化が著しいライトのお蔭でより視界は効くようになったものの、一瞬の油断は致命的なクラッシュにつながってしまう。しかし、戦いの舞台であるコースを一歩離れると、そこにはビールなどのアルコールとバーベキューを楽しみながらレースを観戦する人々の姿が。

ガードレールやフェンスをはさんで、不眠不休の死闘を繰り広げるドライバーとマシン、その様子を陽気に楽しむファンが存在する。こうして丸一昼夜を過ごすことが、参加者にとっても観客にとっても24時間レースならではの醍醐味なのだ。

最後に豆知識をひとつご紹介すると、ニュルブルクリンクが建設された理由には第一次世界大戦が終わって失業者が国中に溢れたという時代背景がある。この失業者対策、そしてアイフェル地方の地域活性化のためにサーキットが建設されたのである。


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