2019 SUPER GT Round 7 Report

【SUPER GT 第7戦 / SUGO】

「グッドスマイル初音ミクAMG」が準優勝で今季初の表彰台を獲得、
GT500は「MOTUL MUGEN NSX-GT」が貴重なポイントの獲得に成功!!

SUPER GT Round 7

開催日 2019年9月21日-22日
開催場所 スポーツランドSUGO
(宮城県)
天候
路面 ウェット
決勝周回数 81周
(1周=3,704m)
参加台数 43台
(ヨコハマタイヤ装着車 23台)
SUPER GT 第7戦

すっかり秋の気配を漂わせるようになった、スポーツランドSUGOでSUPER GTの第7戦が開催された。残す戦いは2戦のみとなり、ここまで全戦参加のチームに対してはウエイトハンデが半減されての争いに。従来は1戦早い開催だったフルウェイトでのレースだっただけに、最終コーナーに登り勾配の高速コーナーを備えるテクニカルコースにおいて、その軽さがどう影響を及ぼすかも注目された。

GT300では開幕戦以来となる、Q1を2グループに分けての計測となり、Aグループでは「McLaren 720S」のアレックス・パロウ選手が、そしてBグループでは「Modulo KENWOOD NSX GT3」の大津弘樹選手がトップで、ヨコハマタイヤユーザーは14台中11台がQ2進出を果たす。

続くQ2ではフロントローこそ逃したものの、コースを問わぬ速さを見せる「HOPPY 86 MC」の松井孝允選手が、ヨコハマタイヤユーザーのトップで3番手を獲得。佐藤公哉選手とともに今季まだ登り得ぬ、表彰台の中央を目指す。4番手は「リアライズ日産自動車大学校GT-R」の平峰一貴選手が、そしてヨコハマタイヤユーザーが14番手までを占める結果に。決勝でも同様に、上位進出が期待された。

GT500では「WedsSport ADVAN LC500」の坪井翔選手がQ1を突破。8番手と、ギリギリでの通過だったが、しっかりインフォメーションを受けた国本雄資選手が5番手にジャンプアップ。表彰台を目指し、激走の期待が込められた。

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スタート直前に降り出した雨で、タイヤ選択が順位を大きく左右することとなった決勝レース。グリッドにマシンが並べられた頃はまだ霧雨だったが、徐々に勢いを増すように。ヨコハマタイヤユーザーでも分かれ、5番手スタートの「WedsSport ADVAN LC500」と12番手スタートの「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」はドライタイヤを、13番手スタートの「MOTUL MUGEN NSX-GT」はウェットタイヤを装着した。

セーフティカー(SC)スタートでレースが始まり、3周目からバトル開始となったが、ドライタイヤを選んだ2台は大きく順位を後退。しばらくコース上に留まって天候回復を待ったが、状況は好転せず。ともに8周目にピットに入り、ウェットタイヤに改めたことで完全に勝負権を失ってしまう。

逆に「MOTUL MUGEN NSX-GT」は武藤英紀選手が上位陣に食らいついていき、一時は7番手を走行。37周目に交代した中嶋大祐選手が、引き続きポジションアップを目指していった。雨量が多くなって、さらに気温が下がっていく中でも、最後までミスのない粘り強い走りを見せて10番手を走行。ラスト3周で1台をかわし、9位入賞を果たした。

一方、「WedsSport ADVAN LC500」は序盤のタイヤ交換時にピットでの作業違反があり、ドライビングスルーペナルティを課せられ、早々に周回遅れとなってしまう。しかし、今後のレースに役立てるため、ウェットコンディションでのタイヤテストやデータ収集も兼ねて国本選手は周回。35周目に坪井選手に交代し、新たに試したタイヤはさらに良い方向に進み、ペース的にも上位陣と遜色なく走れていた。いかんせん序盤に抱えた遅れは大きく、最終的には3周遅れの13位でチェッカーを受けた。

ヤン・マーデンボロー選手がスタートを担当した、「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」はクラス最後尾まで後退せざるを得なかったものの、やはりさまざまなウェットタイヤを装着してデータを収集。28周目の高星明誠選手への交代を含め、合計4回のピットストップを行なったこともあり、15位でレースを終えた。

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GT300でもタイヤ選択で明暗が分かれた。ヨコハマタイヤユーザーの上位陣のうち、3番手スタートの松井孝允選手と佐藤公哉選手がドライブする「HOPPY 86 MC」がドライタイヤを選んでいたのに対し、4番手スタートで平峰選手とサッシャ・フェネストラズ選手がドライブする「リアライズ日産自動車大学校GT-R」、6番手スタートで谷口信輝選手と片岡龍也選手のドライブする「グッドスマイル初音ミクAMG」はウェットタイヤをチョイス。結果として、佐藤選手らが順位を落とす中、平峰選手と片岡選手がスタートから間もなくひとつずつポジションをアップ。4周目にはそれぞれ2番手、4番手に躍り出る。

特に片岡選手のペースが速く、9周目には3番手に上がり、11周目には平峰選手と順位を入れ替えるまでに。一方、「リアライズ日産自動車大学校GT-R」は5番手を走行中の34周目に、フェネストラズ選手と交代するも、その直後にGT500車両のコースアウトにより、SCが導入されてしまう。対照的に、そのSCランの直前に「グッドスマイル初音ミクAMG」は谷口選手と交代していたため、ロスを最小限とすることができ、2番手のままレースを折り返すこととなった。

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一方、フェネストラズ選手も5番手は維持し、先行する一台がギリギリまで交代を遅らせていたこともあり、53周目には4番手に。その後、一台の先行を許したものの、「リアライズ日産自動車大学校GT-R」は5位でゴール。

その結果、2位を最後までキープし続けた、「グッドスマイル初ミクAMG」とともに首の皮一枚ながら、逆転チャンピオンの権利を残すこととなった。6位は「エヴァRT初号機X Works GT-R」のショウン・トン選手と道見真也選手が獲得した。

DRIVER VOICE

中嶋大祐 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 9位】
スタートタイヤはギリギリまで悩んでいましたが、直前に雨が強くなってきましたから、ウェットタイヤを装着しましたが、全体的に上位に食い込めないレースでした。前回のオートポリスとは対照的に、今回はベストなタイヤチョイスができたと思います。僕が担当した後半スティントも走り初めのペースは悪くなかったものの、終盤になって寒くなってきてからは、自分たちにとってベストなコンディションではなかったです。でも、ポイントは獲れましたし、我々が持っている力は出し切れたと思います。

坪井 翔 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 13位】
悩んだ結果、ドライタイヤでスタートしましたが、失敗でしたね、正直、あそこでレースが終わってしまいました。僕に交代するタイミングで「タイヤテストをしよう」ということになり、この機会にいろいろ試そうと。僕のスティントはけっこう調子が良かったです。一時はトップと変わらないペースで走れて、そこは少し新しい発見でした。全体的に収穫はあったレースでしたが、予選5番手だっただけに、天気に翻弄されて悔しい結果になりました。今回のデータをうまく開発に活かしてくれれば、また成長につながるのではないでしょうか。

谷口信輝 選手 [グッドスマイル初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
いつもSCで失敗する感じになるのですが、今回はやっと普通にSC食らわずに済んで。まず片岡がすごくいい感じでレースを運んでくれて。後半、僕が装着したタイヤは片岡のより柔らか目を選んだんだけど、SCに着いた後も「滑るんですけど」って感じで「追い上げるの、難しいかな」と思ったんですけど、始まってみたら僕よりまわりの方が厳しかったようで。とりあえず前を行く2台を追いかけて、とにかくプッシュしていました。トップには追いつきませんでしたが、この天気では上出来だったかな、と。今回は2位獲れて良かったです、久々に表彰台にも上がれたし。去年3位で、今年は2位で、来年は何位でしょうね(笑)。

片岡龍也 選手 [グッドスマイル初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
グリッドに着いてから雨が落ちてきて、タイヤは非常に悩むところだったんですが、いつもは挑戦してしくじるので、今回は無難にというか。ランキングトップのNSXがウェットをチョイスしていることもあって、今回思いっきり差をつけられてしまうと、本当にノーチャンスになるのでウェットタイヤを選択した結果、思ったとおり雨が落ちてきてくれて。選択したタイヤは比較的ハード目で、一瞬水が引くのを見越したので、そこらへんが当たって、いいペースで走れて。ただ、SCが出る直前に雨が強くなってきていて、かなり厳しくなっていたので、ちょうど入るタイミングでSCが出てくれたので、非常にツキもありましたね。

平峰一貴 選手 [リアライズ日産自動車大学校GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
僕が担当したスタートの段階で、ウェットタイヤを選んでいて良かったです。難しいコンディションでしたから楽ではなかったですし、タイヤがコンディションにマッチしていたかどうかは分かりませんが、僕たちができる中ではベストは尽くせたと思います。

サッシャ・フェネストラズ 選手 [リアライズ日産自動車大学校GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
自分としてはいい仕事ができたと思っています。メルセデスとずっとバトルをしていて、いったんは抜いてきたんだけど、向こうのタイヤと僕のタイヤには差があったようで……。それでこらえきれず、最後に譲らざるを得なかったんです。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー]

結局、GT500で言うと、16号車(MOTUL MUGEN NSX-GT)はウェットタイヤを装着したんですけど、他の2台が……。そこはどう選択するか、難しいシチュエーションだったと思うんです。やっぱりヨコハマとして、あのシチュエーションで「これで行ける!」っていうタイヤが、正直微妙なところなんです。ああいうダンプな部分での戦いに、まだ課題があってタイヤをきちんと準備できなくて、ああいう形になったことは、まぁチームは自分たちで選択したと言うけれども、そうさせてしまったのは僕らかな、と思っています。

そこに関しては、まだまだやらなくてはいけないのですが、レースリザルト自体は今ひとつではある一方で、ウェットタイヤをいろいろ試すことができて、後半のラップタイムはトップとも遜色がなかったので、そこに関しては改善しつつある、一歩踏み出せたように思います。そういった意味ではダンプコンディションは、まだちょっと……というところが残念です。ただ、今回いいテストができたので、最終戦のもてぎには、こんなコンディションになるか分かりませんが、しっかりと準備したいと思います。

GT300の方も、相対的に見た時に万能なパフォーマンスでは、まだ他社に劣勢な部分はあるんですが、コンディションごとに考えると4号車(グッドスマイル初音ミクAMG)に関しては、前半と後半でゴムが違うんですが、うまくマッチしたと思います。まだ課題はあるんですが、コンディションに合わせられれば戦えるレベルにはありました。

今回、ドライタイヤの評価ができなかったのは残念だったんですが、ドライもウェットも他社に遅れることなく着いていけていると思います。最終戦のもてぎでは、タイトル争いもかなり厳しくなりましたが、一矢報いたいですね、GT300では。GT500もドライに関しても良くなってきているのは、オートポリスでも確認できましたし、ドライになってもウェットになっても、もてぎでは行けるように臨みたいと思います。