2019 SUPER GT Round 1 Report

【SUPER GT 第1戦 / 岡山国際】

悪天候に見舞われた決勝でGT500は3台が揃って入賞、
リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rが5位でフィニッシュ!!

SUPER GT Round 1

開催日 2019年4月13日-14日
開催場所 岡山国際サーキット
(岡山県)
天候
路面 ウェット
決勝周回数 31周で赤旗終了
(1周=3,703km)
参加台数 44台
(ヨコハマタイヤ装着車 24台)
SUPER GT 第1戦

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今年もSUPER GTは、岡山国際サーキットで幕を開けることとなった。全8戦での開催が予定されており、国内のサーキットのみならず、海を越えてタイでもレースが行われることとなっている。大人気のレースとあって、エントリーは総勢44台。GT500には15台、GT300には29台が集うこととなった。

GT500には、引き続き3台のヨコハマタイヤユーザーが挑む。「MOTUL MUGEN NSX-GT」は昨年に続いて武藤英紀選手と中嶋大祐選手のコンビでの参戦に。チーム監督に元F1ドライバーの中野信治氏が就任し、さらなる好結果を目指す。

そして坂東正敬監督が指揮を執る「WedsSport ADVAN LC500」は国本雄資選手の新たなパートナーとして、昨年の全日本F3チャンピオンであり、昨年までGT300を戦っていた坪井翔選手を起用。これが初のGT500フル参戦のシーズンとなる。

近藤真彦監督率いるKONDO RACINGはメインスポンサーが変わり、「リアライズ日産自動車大学校ADVAN GT-R」として参戦し、在籍2年目の高星明誠選手の新たなパートナーに、チームを移籍のヤン・マーデンボロー選手を起用している。

一方、GT300のヨコハマタイヤユーザーは大半を占める21台。チャンピオンの経験を持つチームとしては、「グッドスマイル初音ミクAMG」が谷口信輝選手と片岡龍也選手のコンビで不動のまま。「HOPPY 86 MC」は松井孝允選手のパートナーが、佐藤公哉選手に改められている。また、ヨコハマタイヤユーザーで、ニューマシンは3台。「D’station Vantage GT3」をドライブするのは藤井誠暢選手と、GT500から移行のJ.P.デ・オリベイラ選手。「TOYOTA GR SPORT PRIUS apr GT」は、引き続きのコンビとなる永井宏明選手と織戸学選手。そして、「McLaren 720S」は荒聖治選手とアレックス・パロウ選手がドライブする。また、話題のドライバーとしては小暮卓史選手がGT500から移行して、「マネパ ランボルギーニGT3」を元嶋佑弥選手とともに走らせることとなった。

土曜日の予選は完全にドライコンディション。GT300の予選Q1は、岡山国際サーキットでは初めて2グループに分けて行われた。Aグループで2番手につけたのは「マネパ ランボルギーニGT3」の元嶋選手。そして5番手には「Modulo KENWOOD NSX GT3」の大津弘樹選手がつけていた。7番手は初参戦の「エヴァRT初号機X Works GT-R」のショウン・トン選手。

Bグループでは「GAINER TANAX triple a GT-R」の石川京侍選手が2番手で、3番手は「HOPPY 86 MC」の佐藤選手。この2台に「初音ミクグッドスマイルAMG」の片岡選手、「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤寛規選手、「リアライズ日産自動車大学校GT-R」の平峰一貴選手、さらに「ADVICSマッハ車検86MCマッハ号」の坂口夏月選手が続いた。その一方で、残念ながら話題のニューマシン3台は、いずれもQ1突破を果たせずに終わっている。

続いて行われたQ2は、「HOPPY 86 MC」の松井選手が5番手で、ヨコハマタイヤユーザーの最上位に。これに「ADVICSマッハ車検MC86マッハ号」の平木湧也選手が続き、7番手が「グッドスマイル初音ミクAMG」の谷口選手。8番手は「リアライズ日産自動車大学校GT-R」のサッシャ・フェネストラズ選手が獲得している。「GAINER TANAX triple a GT-R」の星野一樹選手は11番手、そして「マネパ ランボルギーニGT3」の小暮選手は初めてのGT300での予選に勝手が違ったか、14番手に甘んじている。

GT500のQ1で速さを見せたのは、「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」だった。マーデンボロー選手が3番手につけ、Q2進出を果たす。一方、「WedsSport ADVAN LC500」は坪井選手がQ1を担当するも、わずかコンマ1秒が足りず10番手。「MOTUL MUGEN NSX-GT」も武藤選手がコンマ1秒及ばず、11番手に留まって、この2台はQ1突破ならなかった。

続くQ2では「リアライズコーポレーションADVAN GT-R」は、高星選手がアタックし、6番手につけた。「なぜ今週になって良くなったのかわからなくて、そこはしっかり分析しなきゃいけないし、まだまだクルマのポテンシャルには満足していない部分があるので、引き続き詰めていきたいです」と高星選手は語っていた。

決勝レースは一転して雨模様となったが、スタート前のグリッド上では雨はやんでいた。各チームともレース中の天気を想定したタイヤ選択を行うべく、グリッド上でも念入りにミーティング。特に「WedsSport ADVAN LC500」は、装着しているものも含めて5セットものウェットタイヤをグリッド上に持ち込んでいた。

コース上の水の量も多いことから、セーフティカー(SC)先導でレースが始まり、4周目に入ったところで本格的にレースは開始。「MOTUL MUGEN NSX-GT」は武藤選手がスタートドライバーを務めたが、SC解除直後の混戦でひとつポジションを落としてしまう。その直後に後方でアクシデントが発生し、SC再導入。11周目にレースが再開されると、武藤選手はそのタイミングを利用してライバルを1台パス。11番手を取り戻した。

一方、10番手スタートの「WedsSport ADVAN LC500」は坪井選手が、4周目のSC解除時にひとつポジションを上げ5周目に突入。「序盤は苦しかった」と言いつつも、徐々にペースを上げて行った。

13周目にGT300クラスで多重クラッシュが発生し、赤旗中断。約45分間の中断を経てレースが再開されると、高星選手の「リアライズコーポレーション ADVAN GT-R」は序盤の好ペースから一転し、タイヤと路面上の雨量が合わなくなり始め苦戦。23周目にひとつポジションを落としてしまった。この時点で8番手に浮上していた「WedsSport ADVAN LC500」は、坪井選手がさらにペースを上げて「リアライズコーポレーション ADVAN GT-R」に接近。射程圏内にとらえ、24周目に入った。

しかし、ここで再びアクシデントが発生し、またしてもSC導入。天候の回復が見込めないことから、31周目に赤旗が再び出され、そのままレースは終了となった。レース終盤にトップ争いをしているマシンでアクシデントが発生。そこでペナルティが出されたこともあり、最終的な順位が繰り上がり、「リアライズコーポレーション ADVAN GT-R」は5位、「WedsSport ADVAN LC500」は6位、「MOTUL MUGEN NSX-GT」は7位となり、ヨコハマタイヤ装着チームすべてが入賞を果たした。

GT300ではSCの先導が終了して、リスタートが切られた直後に衝撃的な光景が映る。5番手を走行していた「HOPPY 86 MC」の佐藤選手が1コーナーでスピンを喫して、避けきれなかった「ADVICSマッハ車検MC86マッハ号」の平木湧也選手と接触し、ともにリタイアを喫してしまったのだ。

一方、これにより5番手へとポジションを上げて、ヨコハマタイヤユーザーの最上位となったのが「リアライズ日産自動車大学校GT-R」の平峰選手だった。11周目にはもうひとつポジションを上げ、後続との差を広げようとするも、度重なるSCランでリードを奪われてしまう不運も。23周目のアトウッドカーブで後続車両の接触を受け、オーバーランしたところを2台にかわされてしまう。しかし、その接触の相手はペナルティを課せられ、順位を後退。「リアライズ日産自動車大学校GT-R」は5位入賞を果たすこととなった。

8位は片岡選手がドライブした「グッドスマイル初音ミクAMG」が、9位は道上龍選手が予選13番手から順位を上げ、そして小暮選手がドライブした「マネパ ランボルギーニGT3」が10位入賞を果たしている。

DRIVER VOICE

高星明誠 選手 [リアライズコーポレーションADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 5位】
スタートで選択したタイヤが硬くて、最初のリスタート(4周目)では苦しいかなというところはありましたが、後続とのギャップを築けました。そこでヨコハマタイヤのウエットでの進歩を確認できてすごくよかったですが、雨がどんどん強くなっていった時にコンパウンドが少し合わなくて苦しかった部分はありましたが、最終的にヨコハマタイヤ勢の中で、最上位で終われたという点では良いスタートが切れたのかなと思います。次回の富士でも良いレースができるように、チームとヨコハマタイヤと協力していきたいです。

坪井 翔 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 6位】
決勝は雨が降るのは分かっていたので、荒れる展開になるだろうと思っていました。雨は自分自身も得意としているし自信を持っていけるなというイメージでした。ただ、予想以上にアクシデントが多くSCが入るたびに温まったタイヤが冷えてしまうという状況で、なかなかプッシュできない状態が続きました。でもレクサス勢の中ではトップで終われたので、結果としては良かったのかなと思います。次戦の舞台となる富士スピードウェイはレクサス勢にとって得意なイメージがあります。そういう意味では岡山よりは自信を持って臨めると思います。もしQ1を担当することになれば、次は必ず通過したいです。

武藤英紀 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 7位】
スタート前にタイヤ選択で悩みましたが、結果的に硬めのタイヤを選びました。そうしたらレースが始まって雨が強くなったのと路面温度も落ちて厳しかったところはありましたが、とにかく落ち着いていこうと決めていて、抜かれて抜き返してのレースでした。次の富士はけっこう調子がいいと思うので、また引き締めていきたいです。

平峰一貴 選手 [リアライズ日産自動車大学校GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
ここまで雨が降ると思わなかったので、最初ちょっと苦しかったけど、ヨコハマさんのタイヤのおかげでしっかり生き残ることができたというのは、本当に良かったと思います。ちょっと苦しいコンディションだったですが、それはみんな同じ条件なので。このチームにいる人は皆さん本当にシンプルにいい人ばかりで、本当に努力していて、それを見て僕も一生懸命頑張らなくちゃな、と。いつもいい緊張感をもって、皆さんと仕事させてもらっています。新しいパートナーはしっかり慣れてきて、いいペースで、速いペースでいつも走ってくれるので安心です。まだ一度もミスしてないし、スピンもしていない素晴らしいドライバーです。

片岡龍也 選手 [グッドスマイル初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 8位】
思っていた以上の低温に対して、タイヤのマッチングが決していい状態ではなかったんですが、それでも温まりさえすれば、勝負できそうな気配を感じられる中で、でもライバルであるタイヤの良さは際立っていて。ただ、レンジをもう少し合わせ込むことができれば、勝負ができたかなという気がします。今回は悔しいけれど、次戦以降頑張りたいと思います。

道上 龍 選手 [Modulo KENWOOD NSX GT3]

【今回の成績 : GT300クラス 9位】
去年、僕らはあまりウェットでレースしてなかったのけれど、それなりにグリップレベルとしては悪くなかったという印象はあります。ただNSXはミッドシップなので、いかにフロントのグリップを発生させるかが、このクルマのポイントなので、その意味ではちょっと……。ずっと走っていればタイヤの温度も上がったんでしょうが、あれだけSC入ったり、赤旗が出たりして一回リセットされるんで、けっこう危ないというか、ちょっと滑りやすかった部分はありました。温まれば、大丈夫だったんですけどね。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー]

今回、GT500に関しては、いろんな新規のものを投入して、今までのウェットタイヤだったら、この結果は得られなかったと思います。そうはいっても温まったと思ったら、赤旗の連続だったので、他車対比の考察は難しいんですけど、ただウォームアップ走行も含めてウェットの性能が上がってきているというのは感じられたので、評価ということに関しては、いい評価ができたと思います。ただ、レースに関しては、もちろんまだまだ足りないと考えています。

新規のものというのは実車やベンチ、ラボテストや、シミュレーションを使ったりして、常にやっているんですが、そういうものの積み重ねの結果が、今までなかなか、ステップアップと言えるほどの効果が出せなかったんです。でも、このシーズンオフにステップアップできたかなという部分が、構造・ゴムそれぞれにあり、そのあたりを今回準備したところで、荒れたレースになってしまいましたが3台とも10位以内に残ったということは、そこに進歩があったと思います。

一方でGT300は、まだまだ足りないことが多いんですが……。今回、上位を独占した他社さんはドライ・ウェットともにタイム的にも速いですし、開発のスピードも我々からすると、びっくりするほど。懐の深いタイヤなんだと思います。いろんなコンディションだとか、クルマの重量配分だとか、動きに対して寛容で。そこは我々も学習しなければいけないと思います。もうちょっと幅広く許容できるように、ウェットもドライもそのあたり力を入れてやっていかないと、開発スピードだったり、単純にクルマの速さだったりで、どんどん水をあけられてしまいますので、かなり意識して進めていこうと思っています。