2018 SUPER FORMULA Round 7 Report

【SUPER FORMULA 第7戦/鈴鹿】

タイトルを懸けた屈指の名勝負が繰り広げられた最終戦、
SF14ラストイヤーの王座は山本尚貴選手が手中におさめた!!

SUPER FORMULA Round 7

開催日 2018年10月26日-28日
開催場所 鈴鹿サーキット
(三重県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 43周
(1周=5,807m)
参加台数 19台
SUPER FORMULA 第7戦

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「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」の今季最終戦となる第7戦が鈴鹿サーキットで開催。予選を完全制覇した山本尚貴選手(TEAM MUGEN)が、タイトル争いのライバルとなったニック・キャシディ選手(KONDO RACING)との直接対決も制して、ポール・トゥ・ウィンで今季3勝目を飾り自身2度目のシリーズチャンピオンを獲得した。

今シーズンの最終戦は、接触も厭わないアグレッシブなレース展開が魅力のFIA WTCR(ワールド・ツーリングカー・カップ)との併催に。同じヨコハマタイヤのワンメイクカテゴリーながら、走行ラインも全く異なるため、コースコンディション変化への対応力も求められる週末となった。

26日(金)の専有走行は。数字上ではタイトル獲得の可能性を残している関口雄飛選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がトップタイムをマーク。今大会にポイントリーダーとして挑むキャシディ選手と山本選手が8番手、9番手に並ぶ結果となった。昨年の王者で、キャシディ選手に対し4ポイント差の2位につけている石浦宏明選手(JMS P.MU/CERUMO・INGING)は11番手。この3名による金曜記者会見では、それぞれがタイトル獲得に向けた意気込みを語った。

その夜半から翌日の明け方にかけて、鈴鹿サーキットは雨に見舞われ、コースコンディションはリセット。朝は曇り空だったこともあり、午前中に行われたフリー走行では路面は乾かなかった。午後に向けては天候も路面状況も回復すると予想されていたことから、このセッションでは周回数をあまりこなさなかったマシンも見られた。

その予想通り、青空が広がっていくとともに路面状況も回復。Q1からドライコンディションで今シーズン最後の最速を懸けた戦いが行われた。ミディアムタイヤで争われるQ1、ソフトタイヤでのQ2、Q3を全てトップタイムで制したのは山本選手。Q1では、途中で平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)のコースアウトによる赤旗中断もあったが、リズムを崩すことなくタイムを縮めていき、Q3では唯一1分37秒台を記録した。

キャシディ選手は4番手だが、チームメイトの山下健太選手がフロントロー獲得の大躍進。2台そろっての上位スタートとなり、チームランキングでもKONDO RACINGの初タイトルが現実味を帯びてくる結果に。3番手には、今季ベストグリッドの中嶋一貴選手(VANTELN TEAM TOM’S)がつけ、石浦選手はまさかのQ2敗退で、11番手から大逆転に挑むことになった。

翌日も朝から晴天。昨年の最終戦は、台風の影響で決勝レースが中止になってしまうほどの悪天候に見舞われたが、今季は見事な秋晴れの中で王者を決める戦いが繰り広げられた。気温は25℃、路面温度は30℃。決勝レースがスタートする時点では、気温・路面温度ともに、この週末で最も高い数値を示したが、これが決勝レース中の最高温度。日が陰っていくにつれて徐々に温度が下がっていく中、タイヤの選択と、そのタイヤをどのように各ドライバーが使いこなしていくかにも注目が集まった。

ホールショットを奪ったのは山本選手。山下選手は、スタートに定評のある中嶋選手に並びかけられるも、なんとかポジションを守り切り、オープニングラップは予選結果通りの順位に。ただし、ソフトタイヤでのスタートを選択していた3人と戦略を変え、ミディアムタイヤでスタートしていたキャシディ選手は、2周目の1コーナーで後ろから追い上げてきた塚越広大選手(REAL RACING)の先行を許してしまう。一つポジションは落としたものの、ミディアムタイヤで安定したペースを刻み、キャシディ選手は周回を重ねていった。一方の山本選手はソフトタイヤでトップを走行するメリットをふんだんに生かし、山下選手とのギャップをどんどんと広げていく。10周目にはその差が6秒にまで拡大。5番手走行のキャシディ選手との差は10秒以上に広がり、レースの序盤は山本選手の独走状態となった。

上位3台の中では、中嶋選手が14周終了時点といち早くピットイン。そのすぐ前を走っていた山下選手は、その4周後にピット作業に向かった。タイトル争いがかかり緊張感が高まっているチームの作業もスムーズで、山下選手は中嶋選手の前でコースに復帰。ピット対決では両者の逆転はならなかった。 山本選手も、19周終了とレース前半でのピットインを選択し、残り23周をミディアムタイヤで戦うことに。ピット作業を済ませたなかではトップでコースに復帰した。

この時点で、繰り上げトップを走行していたキャシディ選手との差は30秒ほど。フレッシュタイヤとすでに走行を重ねているタイヤの違いから、この差はいったん縮まっていったが、ピットインに向けてキャシディ選手は猛プッシュ。32秒ほどにマージンを広げて29周終了と同時にピットへと飛び込んでいった。

作業を終えてコースに復帰したのは山本選手の後ろだったが、レース序盤は10秒以上まで広がっていた差は7.5秒にまで縮まっていた。さらに、このスティントでは山本選手がミディアムタイヤ、キャシディ選手はソフトタイヤ。その利を生かしたキャシディ選手が、1周につき1秒を削る鬼神の走りで見る見るうちに山本選手との差を縮めていく。

全車がピット作業を終えた34周目には、その差は3.5秒に。しかしその翌周、キャシディ選手にとって運命を分けるアクシデントが。ジェームズ・ロシター選手(VANTELN TEAM TOM’S)がS字でコースアウト。その影響でコースにまかれていた砂利に足元を取られ、わずかに挙動を乱してしまったのだ。ここまで順調に削ってきた差も、4.8秒まで広がってしまう。

タイヤに付着してしまった砂利を落とし、何とか再びチャージを懸けたニック選手。42周目のシケインでは山本選手がブレーキをロックさせてしまい、ファイナルラップにはテール・トゥ・ノーズの0.8秒差に。王座をかけた最後の1周は、オーバーテイクシステムの応酬となったが、スプーンコーナーでキャシディ選手をわずかに引き離した山本選手が、そのままトップを守り切りチェッカー。今季3勝目と共に、自身2度目のシリーズチャンピオンを決めて見せた。キャシディ選手は今季2度目の2位表彰台ながら、1ポイント差で初タイトルを逃す形に。その一方で、山下選手が3位で自身初表彰台を獲得し、KONDO RACINGが初のチームチャンピオンに輝いた。

DRIVER VOICE

山本尚貴 選手 [TEAM MUGEN]

【今回の成績 : 優勝】
チャンピオンを獲ることができて、素直にうれしく思います。この結果のために力を合わせて頑張ってくれた、ホンダをはじめチームの皆さんの努力に報いるためにもいい走りができましたし、みんなに感謝しています。最後はキャシディ選手とのトップ争いになりました。前に出たものがチャンピオンになれるという構図は描いていませんでしたが、終盤の戦いは、速いものがチャンピオンになるという、真のフォーミュラカーレースの姿を見せることができたかと思っています。

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

昨年は悪天候で経験できなかった最終戦ですが、タイトル争いを懸けた二人のドライバーが、最後の最後まで素晴らしいバトルを見せてくれました。山本選手はソフトタイヤで、キャシディ選手はミディアムタイヤでスタートと異なる戦略がとられましたが、これは「どちらで勝負をするか、できるか」というドライバーの好みの違いで、どちらのタイヤもいい仕事ができたと思っています。

今回はFIA WTCRとの併催でしたが、走り方の違いで、どうしても路面に埃や砂利がまかれてしまう。金曜夜の雨で路面のごみが流され、少しはリセットされましたが、同時にコース上に乗ったラバーも流れてしまうので、コンディションとしては良くなったものの、コースレコードはなくなったと思いました。難しいコンディションの中、山本選手の予選はパーフェクトでしたね。

今年でSF14が引退し、来年からは新しくSF19での戦いが始まります。車両のコンセプトはSF14から継承されているので、我々としても同じようなコンセプトで開発を進めています。目標として、毎戦コースレコードを目標にはおいていますが、やはり基本的には勉強の年。今シーズンのように、どのレースでも素晴らしいバトルが展開されるよう、足元からのサポートを行っていきたいと思います。