2015 JRC Round 2 Report

【全日本ラリー選手権 第2戦/愛媛県久万高原町】

スリッパリーなステージが鬼門のサバイバルラリー、
JN6はヨコハマタイヤを装着するVAB型WRX STIが1-2フィニッシュ!!

JRC Round 2

開催日 2015年5月8日-10日
開催場所 愛媛県・久万高原町 近郊
天候/路面Day1) 雨/ウェット
Day2) 晴れ/ハーフウェット~ドライ
ターマック(舗装路面)
総走行距離 278.79km
SS総距離 108.54km (9SS)
得点係数 1.2 (舗装路100km~150km未満)
参加台数 43台 (オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 14台)
全日本ラリー選手権 第2戦

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

全日本ラリー選手権は四国へと舞台を移し、愛媛県久万高原町をホストタウンにした第2戦「久万高原ラリー2015」が開催された。2011年からグラベル(非舗装路)での一戦として開催されてきたが、今年は5年ぶりにターマック(舗装路)での戦いとなり、開催時期もゴールデンウィーク中から一週後ろに移されることとなった。

久々のターマック開催ということも話題になったが、さらに戦いの舞台となるSS(スペシャルステージ)も特徴的な設定に。Day1で3回走行する「大谷」こそ5.04kmと短めだが、2回走行する「美川」は14.97kmのロングステージ。Day2では美川を逆方向に使う「美川リバース」が17.58km、さらに四国カルストの中を駆け抜ける「大川嶺」も14.16kmというロングステージで、これらを2回ずつ走行。SS合計距離は108.54kmとなり、100kmを超えるためポイント係数も1.2と大きくなる重要な一戦だ。

標高およそ1,000mというロケーションの美川スキー場跡地に設けられたサービスパーク。大川嶺の最高地点は1,600mほどとなり、全日本ラリー選手権の中でも最も高い場所での開催となる「久万高原ラリー」。しかしDay1は朝から雨が降りウェットコンディションとなったため、予想以上にタフでサバイバルな展開が繰り広げられることになる。

そんな中、オープニングのSS1では、ADVAN A050を装着するヨコハマタイヤ勢の速さが際立つリザルトが刻まれた。「大谷1」でベストを奪ったのは新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI/VAB)で、これに新井大輝選手/伊勢谷巧選手組(WRX STI/GRB)が続いて、新井親子がワン・ツーであがる。さらに奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)、炭山裕矢選手/保井隆宏選手組(WRX STI/VAB)、竹内源樹選手/加勢直毅選手組(WRX STI/GRB)とJN6クラスのトップ5を占めるのみならず、総合6番手にはJN5クラストップを奪った柳澤宏至選手/中原祥雅選手組(208GTi)が入って、ヨコハマタイヤ勢がウェットの難しいステージで上位を独占した。

SS2「美川1」。ここでゼッケン1をつける奴田原選手組にまさかのエンジントラブルが襲いかかり、惜しくも戦線を離脱せざるを得ない状況になってしまった。一方、新井(敏)選手組は2番手タイムを刻んだライバルの勝田範彦選手組を7.3秒引き離す連続ステージベストを奪う快走を見せる。この美川ステージは路面の一部を苔が覆っており、乾いていてもスリッパリーなコンディション。そこに雨が降っているため、些細なミスも致命傷となるクラッシュに繋がりかねない難しいステージだ。そんな中でも新井(大)選手組も3番手、竹内選手組は4番手で続き、ADVAN A050の優れたグリップ力を証明する展開に。

サービスをはさんでDay1はセクション2へ進む。そして、このセクション2ではJN6の上位陣が次々とスリッパリーな路面に足をすくわれて戦線を離脱するタフな展開になっていった。その中にはセクション1で速さを見せていた新井(大)選手組や竹内選手組も含まれてしまったが、経験値に勝る新井(敏)選手組はここでマージンを拡大。終わってみればDay1全てのステージでベストを刻み、45.6秒という大量リードを構築して初日を終えた。そして2番手で折り返したのが炭山選手組、残念ながら奴田原選手組は前述の通りマシントラブルでリタイアを喫しているが、タフなコンディションの中で世界のラリーを戦ってきているヨコハマタイヤ装着選手がワン・ツーを獲得した。

一夜明けた久万高原は朝から晴天に恵まれた。しかしDay2のオープニングとなるSS6は多くのクルーが餌食になった美川、走行方向は逆走となるが路面は乾いていなかったことから決して油断は出来ない。新井(敏)選手組は大量マージンを背景に慎重な走りでSS6「美川リバース1」、SS7「大川嶺1」をクリアすると、両SSのリピートとなる最終セクションの1本目となるSS8「美川リバース2」で本大会6回目のステージベストを奪取。そのまま最終ステージも走りきり、昨年の洞爺以来となる優勝を獲得。そして2位でフィニッシュしたのは炭山選手組、ヨコハマタイヤを装着したVAB型スバル・WRX STIがワン・ツー・フィニッシュを飾った。

JN5クラスは柳澤選手組がDay1を2番手で折り返して、逆転を賭けてDay2に臨んだ。前を行くのはアバルト500、フランス車とイタリア車が全日本ラリーの舞台で激しい鍔迫り合いを演じるという展開でDay2がスタートした。その差は34.7秒、柳澤選手組はまだ路面に雨の残るSS6でアバルト500を7.7秒上回るベストタイムを刻んで猛追する。

この猛追もプレッシャーになったかSS7でアバルト500はコースオフ、対する柳澤選手組は連続ベストを奪って勝負は決した。残る2本のステージも難なくこなしてフィニッシュへとマシンを運んだ柳澤選手組、プジョー・208GTiが参戦2戦目にして全日本ラリー選手権での初優勝を獲得した。

JN4はヨコハマタイヤを装着する2台のトヨタ・86に注目が集まった。番場彬選手/織田千穂選手組と織戸学選手/坂田智子選手組は、映画「新劇場版 頭文字D Legend2 -闘走-」とのコラボレーションで参戦、往年のAE86をイメージしたツートンカラーをまとう。中でもラリー初参戦となった織戸選手の走りに注目が集まったが、オープニングステージでセカンドベストを刻むと、続くSS2ではステージベストを叩き出して速さを見せる。しかし、惜しくもSS3で石にヒットして足回りを破損してデイ離脱を余儀なくされた。

一方の番場選手組はDay1こそ5番手での折り返しとなったが、Day2では織田選手とのコンビネーションも精度がより高まりペースアップ。SS7でセカンドベストを刻むと、最終のSS9ではステージベストを叩き出してポジションアップ、3位表彰台を獲得することに成功した。

DRIVER VOICE

新井敏弘 選手 [フジスバル アライモータースポーツ WRX]

【今回の成績 :JN6クラス 優勝】
開幕戦を終えて車のセットアップを徹底的に煮詰めたのが大きな勝因になりましたね。初日に全てのステージでベストを刻んで大量のマージンを稼げたので、二日目は無理せずに集中力が切れない程度のそこそこのペースで走りました。全日本に復帰して2勝目、ターマックでは初優勝となりましたが、ポイント係数の大きい一戦を制したということもありますが、シリーズ全体として見ればADVAN A050で日本特有のクネクネした道を走るためのセットアップを決められたことが大きいですね。今回はマージンも大きかったので、Day2はレインセットのままで走りました。これをドライセットにすればもっと速く走れるので、手応えを掴んだ優勝になりました。

炭山裕矢 選手 [ADVAN CUSCO WRX-STI]

【今回の成績 : JN6クラス 2位】
2位ということで悔しいですけれど、仕方ない部分もありますね。特に初日は経験値が生きる路面だったと思うので、新井(敏弘)選手との差がこの結果ではないかと思います。そんな中で、リタイアが続出する展開の初日でしたが、自分では意識はしていませんが道をパッと見たときの「行けるかな、無理かな」とか「ここは危ないな」という判断は、ライバルより出来ていたと思います。二日目は新井選手の車がかなり進化しているので、引き離されないようにと心がけました。うちの車も徐々によくなってきているので、次の若狭に向けてはより進化させて好成績をおさめて、そのままグラベルへと良い流れを持っていきたいですね。

柳澤宏至 選手 [ADVAN クスコ RALLY+ 208GTi]

【今回の成績 :JN5クラス 優勝】
開幕戦を終えて今回までの間、車はプロモーションなどに引っ張りだこだったのであまり大きく手を加える時間がありませんでした。そんな中でエンジンのコンピューターを合わせて、足回りを少しやった程度なんです。Day1は痺れるコンディションになりましたが、抑えるところと行けるところのメリハリをつけていきました。前をJN6勢が走って、インカットして路面に砂が出ていたりと難しかったのですが、目で見て瞬間の判断が求められましたね。Day2は最初のSSでそこそこタイムが出たので、それがライバルへのプレッシャーになったのではないでしょうか。今回はいろいろトラブルもあったのですが、ラッキーな面もありましたね。今回良い成績を残せたので、次に向けて車を一通り仕上げてみなさんのご期待にお応えしていきたいと思います。

番場 彬 選手 [「藤原とうふ店(CUSCO用)」86]

【今回の成績 :JN4クラス 3位】
初めてのコンビということもあって、初日から無理をせずに順々にペースを上げていくかたちで戦いました。特にDay1は路面も荒れていたので抑えて行ったのですが、少し抑えすぎたかなというのは反省点ですね。Day2は追う立場だったのですが、美川リバースは思っていたほど道が酷くなかったので、リピートではかなり行けると思いました。コドライバーの織田選手もSSを重ねる毎にリーディングの精度がどんどん上がって、Day2は本当に良いコンビネーションプレーを出来ました。その結果が最終ステージでのベスト奪取につながりましたね。

TOPICS

織戸学選手が全日本ラリーに初チャレンジ!!

今回の久万高原ラリーで注目を集めたのが、織戸学選手の全日本ラリー初参戦だ。本大会にはドリフト系のメディアなどを含め、40人もの取材陣が集まったことからも、その注目度の高さが伺える。初日、雨でタフなコンディションの中でオープニングをセカンドベスト、SS2ではステージベストを刻んだ織戸選手。惜しくもSS3で戦線離脱を余儀なくされたものの、マシンは修復されてDay2では大勢のギャラリーがその走りを間近に楽しんだ。初めてのラリー、織戸選手はその印象を次のように語ってくれた。

[Photo]

「ラリーはレッキがとても大事だということが、参戦してみて良くわかりました。レッキの模様をビデオに撮っていたので、それを見ながら復習してまとめることが出来ましたが、レッキが大事だというのが、なによりラリーの第一印象ですね」

初めてのペースノート走行、しかも初日は雨で難しいコンディション。その中で序盤に好走を見せた織戸選手は、初日を次のように振り返る。

「比較的、雨の中でのマシンバランスもよくて、リズム良く走れてステージベストを獲ることも出来ました。雨の中ではかなり走れるな、という自信があったのですが、残念ながら自分のミスでつまらないクラッシュをしてしまいました。あのまま良い流れを掴めていれば、Day1でもうちょっといいところにいけたかな、という思いはありますね」

デイリタイアとなったものの、マシンは修復されてDay2に再びその勇姿を見せた織戸選手。

「僕の乗ったマシンは純粋なラリー車ではなく、GR 86/BRZ Race車です。ゆえにポテンシャルの差があって、特にギア比が全くあわないので、例えば2速で曲がるコーナーがいくつもあると、そこで1つのコーナーごとに1秒ずつ離されてしまうような感じで。上りセクションは厳しかったですね。でも、自分なりには良く走れたと思います」

初めてのラリーということで、正直なところ戸惑いもあったであろう織戸選手。しかしフィニッシュ後は、笑顔で今回の参戦を次のように締めくくってくれた。

「Day2の美川リバースでは、リズムの取り方とか場所ごとに路面を見極めての走らせ方が難しかったですね。一方で大川嶺は空に向かって駆け上がる感じで、本当に気持ちよかった。そしてラリーは競技もそうですが、雰囲気がよかったですね。ぜひもう一度機会があれば、ラリーに出場してみたいですね」

AREA GUIDE

雄大な四国カルスト、天上の自然美が映える久万高原!!

久万高原町は四国最大の都市である松山市から、車で1時間ほどというロケーション。国道33号は三坂トンネルの開通によってアクセス性が向上し、手軽なドライブコースとしても人気が高まっている。久万高原町は「四国の軽井沢」とも称されており、雄大な四国カルストを望める絶景が全国から多くの観光客を集めている。

[Photo]

今回のラリー、Day2で使われた「大川嶺」のステージは、そんな雄大な自然美の中をラリーマシンが駆け抜けた。標高およそ1,600mという全日本ラリー開催コースの中でも最も空に近い場所を走るステージ、Day2の早朝には雲海の中から朝日が昇る荘厳な景色も目を奪った。

そんな自然美を楽しむベースとなる久万高原町、市街地の国道沿いには昨年オープンした「道の駅 天空の郷さんさん」も用意されている。この道の駅では地元の特産品が豊富に販売されているのをはじめ、久万高原野菜をふんだんに使った料理をブッフェスタイルで楽しめるレストランや、焼きたてパンを販売するベーカリーショップ、野菜たっぷりの焼きたてピザなどを味わえるファーストフードなどがあり、ドライブの休憩スポットとしてぜひ立ち寄りたい道の駅だ。

TECHNICAL INFORMATION

二日間で大きくコンディションが変わり、タフなサバイバルラリーとなった「久万高原ラリー」。久しぶりのターマック開催となったが、そんな中でJN6クラスはワン・ツー・フィニッシュ、JN5クラスも優勝と、ヨコハマタイヤ勢の速さが印象的な一戦となった。

装着タイヤはJN6勢、JN5勢ともにADVAN A050。レポート本文にも記しているように雨のオープニングステージではリザルトの上位をヨコハマタイヤ勢が独占。特にJN5クラスの柳澤宏至選手組が本大会では最も距離の短い「大谷」で、他メーカーのタイヤを装着するライバル勢のJN6マシンを上回るタイムを刻んでいることからも、スリッパリーな路面におけるADVAN A050の優れたグリップ&コントロール性能を証明したと言えるだろう。