2015 JGC Round 8 Report

【全日本ジムカーナ選手権 第8戦/本庄】

ADVAN A050が難コンディションで真価を発揮、
N2・小林辰郎選手とSA1・工藤典史選手がタイトルを獲得!!

JGC Round 8

開催日 2015年10月10日-11日
開催場所 本庄サーキット
(埼玉県)
天候 雨 のち 曇り
路面 ウェット ~ ドライ
参加台数 119台
(ヨコハマタイヤ装着車 35台)
2015 全日本ジムカーナ選手権 第8戦

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激戦を繰り広げてきた2015年の全日本ジムカーナ選手権もついに最終戦を迎えた。決戦の地は埼玉県の本庄サーキット。最終戦としては、昨年に続いて2年連続での開催だ。

コースは、サーキットをほぼそのまま2周走行するハイスピードな設定。ショートカットをわずかに使用して変化はつけているが、パイロンは内周の1本とゴール前の右270度のターンセクションのみという潔さだ。縁石にはスポンジバリアこそあるものの規制パイロンはないため、攻略の自由度も高い。絶対に失敗したくない最後の最後にパイロンターンを置くなど、選手の技術、そして最終戦に臨んでそれぞれが抱えるプレッシャーを意識させる、技量とメンタル面を問われるコースだったと言えよう。

そんな本庄ラウンドは、天気予報どおり決勝日の朝の時点で雨が完全に路面を濡らし、一部に水たまりもできるようなウェットコンディション。ただし、10〜12時頃には雨が止むとの予報もあり、どの選手も第2ヒート勝負と考えながらも、予報どおりに止まなかった場合も考えざるをえない。全日本ジムカーナは、ひとつの競技会に使用できるタイヤの本数は1セット4本と規定されているため、第1ヒートで使用したタイヤを実質第2ヒートでも使用しなければならない。そのため、タイヤ選択が非常に重要かつ難しいコンディションになった。

そんななかで、カバーする路面温度域が広いADVAN A050が本領を発揮した。この最終戦までタイトル決定が持ち越されていたN2クラスの小林辰朗選手は、低温域からグリップ力を発揮するADVAN A050のG/2Sコンパウンドを4輪に装着。ウェットの第1ヒートは痛恨のミスでクラス6番手タイムに沈んでしまったが、ドライとなった第2ヒートはADVAN A050が最後まで期待どおりのグリップ力を発揮し、見事にベストタイムを更新。2年連続、2度目のチャンピオンを最終戦優勝という最高の形で手にした。また、上本昌彦選手が2位に入り、ヨコハマタイヤユーザーが表彰台の上位に並んだ。

一方、タイトル獲得には優勝が絶対条件だったN1クラスの箕輪雄介選手も、ADVAN A050のG/2Sコンパウンドを4輪に装着。本庄がホームコースの箕輪選手だけにコースは熟知しており、「今までで一番S字コーナーを攻めることができました」という会心の走りで今季3勝目。ライバルが2位に入ったことで惜しくもチャンピオン獲得はならなかったが、今シーズン最後の走りを優勝という最高の結果で締めくくった。

そして、同じADVAN A050同士の戦いでもSA1クラスは知略とアクシデントが混ざり合った波乱の展開となった。チャンピオン候補は工藤典史選手と若林隼人選手のふたりに絞られていたが、出走直前に若林選手のマシンのハブボルトが折損してしまい、第1ヒートに出走できず。一方、4輪ともにADVAN A050のG/2Sコンパウンドをチョイスした工藤選手もタイムが伸びず、なんと11番手タイムと低迷してしまう。

その隙にチャンスをうかがっていたのが、ディフェンディングチャンピオンの斉藤邦夫選手だった。今季はこの最終戦まで未勝利の斉藤選手は、あえて第1ヒートを走行せず、第2ヒートのコンディションに合わせてベストなタイヤを温存するという作戦に出た。結果的に第2ヒートが完全なドライ路面となったことで、斉藤選手の作戦は的中。フロントにADVAN A050のG/S、リアにG/2Sを装着した斉藤選手が、わずか1回の走行できっちりとベストタイムをマークし今季初優勝。2位に志村雅紀選手、3位に近藤岳士選手と、ヨコハマタイヤユーザーが表彰台を独占した。

そして注目のチャンピオン争いは、マシンを修復した若林選手が第2ヒートを走行するものの本領を発揮できず、第2ヒートで5位に返り咲いた工藤選手が自身初となる全日本チャンピオンに輝いた。

その他、PN4クラスはすでにチャンピオンを決めている岡野選手が3位入賞。SA3クラスでは天満清選手が2位に入賞し、全8戦で争われた2015年の熱い戦いが幕を閉じた。

DRIVER VOICE

小林辰朗 選手 [ADVAN ザクロス RX7]

【今回の成績 : N2クラス 優勝 (シリーズチャンピオン確定)】
何とか2年連続でチャンピオンを決めることができ、非常に嬉しく思っています。ただ、今年は前半戦がマシントラブルでポイントを稼ぐことができなかったので、後半戦は本当に疲れるシーズンでした。マシンの調子が戻ってからの後半戦は、毎戦優勝することを目標に戦ってきましたが、全日本はそれほど甘くないので毎戦ギリギリの戦いでした。最終戦の今回も優勝が絶対条件でしたが、装着したADVAN A050のG/2Sがスタートからゴールまでしっかりとグリップを発揮してくれました。実は今シーズンの実戦でG/2Sコンパウンドを使用したのは今回が初めてだったのですが、土曜日の公開練習でいい感触をつかむことができたので、決勝でも安心して走ることができました。それも勝因のひとつだと思います。

工藤典史 選手 [ADVAN spm ITO シビック]

【今回の成績 :SA1クラス 5位 (シリーズチャンピオン確定)】
私は仙台が地元で、2〜3月は雪で走り込みができないため、今年は第2戦が終わるまで思い切ってクルマを中部地区に置いて、中部まで通ってセッティングを進めてきたのが勝因のひとつだと思います。今回は気温も低めだったのでADVAN A050のG/2Sを使用しました。ドライになった第2ヒートはタイヤも確実に前に出てくれる感触がありましたが、タイヤに負担をかけないようにと、少し抑えすぎてしまいましたね。本当は勝ってチャンピオンを決めたかったですね。車両のメンテナンスをすべてひとりで行っているだけに苦労もありましたが、初めてのチャンピオンになれたことは嬉しく思います。まだあまり実感はありませんが、これから家族に自慢するのが楽しみですね。

箕輪雄介 選手 [ADVAN ペトロナス インテグラ]

【今回の成績 :N1クラス 優勝】
条件付きではありましたが、チャンピオンを獲るためには優勝が最低条件でした。ライバル選手のタイムは気にせず、あくまで自分の走りを確実にしようという気持ちでアタックしました。第2ヒートの走りは、今までで一番攻めることができたトライだったと思います。今回は地元のコースでもありますし、ライン取りや縁石の乗り方など経験を活かして走ったのも勝因でしょう。第2ヒートはドライになると予想していましたが、路面温度はそれほど上がらないだろうと考え、ADVAN A050のG/2Sコンパウンドを選択しました。コンパウンドはソフトですが、2015年モデルは剛性感が高くレスポンスがいいことも今回の優勝につながったのだと思います。

上本昌彦 選手 [ADVAN ルブロス RX7]

【今回の成績 :N2クラス 2位】
気温や時期を考えると、タイヤはADVAN A050のG/SコンパウンドかG/2Sコンパウンドのどちらを使うか迷いました。ただ、昨年同じ時期に開催されたこの大会ではG/2Sを使っていい感触を得ていたこともあり、今回もG/2Sでトライすることにしました。ドライになって路面温度が急激に上昇したらまずいなという不安はありましたが、実際には気温も上がらずベストマッチングだったと思います。本当はトップタイムも狙っていて、中間計測地点からの後半タイムはトップタイムだったのですが、第1コーナーの飛び込みで少し姿勢が乱れてしまうドライビングミスを犯して前半タイムを落としてしまったのが悔やまれます。

斉藤邦夫 選手 [ADVAN A050 シビック]

【今回の成績 :SA1クラス 優勝】
今シーズンはいろいろ噛み合わない戦いが続いていたのですが、何とか最後で優勝することができました。今回は第1ヒートがウェット、第2ヒートには雨が上がると予想されていましたが、確実にドライになる保証はありませんでした。そこで、あえて第1ヒートは走らず、第2ヒートの天候や気温に合わせてタイヤを選ぶ作戦を採りました。第2ヒートは完全にドライになったため、フロントにADVAN A050のG/Sコンパウンド、リヤにG/2Sコンパウンドを装着しました。路面との相性は良かったですね。A050はこのようなサーキット型のコースに強いので、高いパフォーマンスを発揮してくれました。

志村雅紀 選手 [ADVANアルボーWmシビック]

【今回の成績 :SA1クラス 2位】
第2ヒートには雨も上がってドライ路面になると思っていましたが、やや気温が低かったので、第1ヒートから前後輪ともADVAN A050のG/2Sコンパウンドを装着しました。その選択は正解で、ドライになった第2ヒートでもしっかりグリップしてくれました。ただし走りは雑になってしまい、ハンドルの切り込み方やアクセル操作が粗かったと思います。今回の教訓を活かして、ぜひ来シーズンこそチャンピオンを目指したいと思います。

天満 清 選手 [ADVANジールクスコランサー]

【今回の成績 :SA3クラス 2位】
今回は4輪にADVAN A050のG/2Sコンパウンドを装着しました。第1ヒートのウェット路面には非常にマッチしており、高いグリップを発揮してくれました。ドライとなった第2ヒートもフィーリングが良好でしっかりコントロールできました。ゴールした瞬間は勝てたと思いましたが、残念ながら0.1秒差で2位になってしまいました。でもタイヤのフィーリングは今シーズンで一番良かったと思っていますし、第2ヒートは100%に近い走りができました。来季につながる走りができたのではないかと思います。

FEATURED DRIVER

■SA2クラス : 堤 信久 選手

今季はスポットで5戦の全日本戦に参戦し、日頃は関東ジムカーナ選手権を中心に参戦しているのが、ホンダ・NSXでSA2クラスに出場している堤信久選手だ。すでにジムカーナ歴は27年とベテランの域に達している堤選手だが、「成績よりもクルマをセットアップしていく作業が好きなんです。延々とクルマをいじっていたいんですよ(笑)」とジムカーナの魅力を語る。


「会社には先輩に1996〜’97年の全日本選手権でC1クラスのチャンピオンを獲得した本橋新吾さんがいて、本橋さんのマシン作りやサービスのお手伝いをさせてもらいました。そのときにクルマのセットアップも面白いと感じたんです」

元々、自動車メーカーでエンジニアを務めた経験もある堤選手は、98年の埼玉県戦にDC2インテグラで参戦し埼玉県チャンピオンを獲得。関東ミドルシリーズ、関東ジムカーナ選手権とステップし、全日本戦にも出場するようになった。

「ジムカーナを始めた頃はエビスサーキットなどに走りに行っていましたが、レースはとてもひとりじゃできないので、ひとりでも参戦できるジムカーナを選んだのです。でも、ジムカーナをやっていくうちに、どうやったらクルマが速く良くなるかを考えるのが楽しくなりました。全日本戦はレベルが高く華やかですし、そこで走るのも楽しみですね」

その堤選手が、ヨコハマタイヤを装着するようになったのは今季からになる。

「性能に関しては一番だと思っています。今大会はADVAN A050のG/2Sコンパウンドで走りましたがとにかくコントロール性がいい。コーナリングGを受け止める力も大きいですし、乗りやすいタイヤだと思います」と、ADVAN A050の魅力を語る堤選手。今後もプライベーターとしての「クルマいじり」を極めて欲しいものだ。

TECHNICAL INFORMATION

今回は結果的に第1ヒートが雨、第2ヒートがドライとなったが、雨の第1ヒート出走の段階で選ぶタイヤとしては、15〜20度前後という低めの気温天候を考え合わせると、より低温域からグリップ力を発揮するADVAN A050のG/2Sコンパウンドがセオリーだ。

G/Sと比較するとコンパウンドが柔らかめのG/2Sだが、年々進化を続けており、2015年モデルはウェット性能を損なわない範囲でドライ寄りの性格が与えられている。本庄サーキットの路面もタイヤへの攻撃性は少ないため、いたわる走り方をすれば2度のアタックに十分対応可能だ。今回も実際にN1クラス、N2クラスでの優勝マシンはいずれもG/2Sコンパウンドを使用して勝利を飾っており、SA3クラスの天満清選手も4輪にG/2Sを装着して見事に上位入賞を果たしている。

開幕戦の3月やこれから気温が下がってくる季節には、G/2Sコンパウンドが真価を発揮する。11月に開催されるJAFカップジムカーナや全国各地で行われるイベントでも、成績の向上にひと役買ってくれるだろう。