2015 J-F3 Round 16&17 Report

【全日本F3選手権 第16戦&第17戦/SUGO】

最終戦でも速さを見せたニック・キャシディ選手、
連勝でシリーズチャンピオンを獲得!!

Japanese F3 Round 16&17

開催日 2015年10月17日-18日
開催場所 スポーツランドSUGO (宮城県)
天候 第16戦:晴れ
第17戦:晴れ
路面 第16戦:ドライ
第17戦:ドライ
決勝周回数 第16戦:18周
第17戦:25周
(1周=3,704m)
参加台数 16台
2015 全日本F3選手権 第16&17戦

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ここまで7大会、15戦で激戦が繰り広げられてきた全日本F3選手権も、ついに最終大会を迎えることとなった。すっかり秋の気配を漂わせるようになった、宮城県のスポーツランドSUGOを舞台に第16戦、第17戦が10月17〜18日に開催された。

チャンピオン候補は3人。PETRONAS TEAM TOM’Sの山下健太選手とニック・キャシディ選手が同ポイント、同じ優勝回数で並び、高星明誠選手が15ポイント差で続いている。果たして誰が栄冠を獲得するか。そして、すでにチャンピオンが小河諒選手に決まっているF3-Nクラスは、有終の美を飾れるか、大いに注目された。

今回は木曜日にも専有走行が行われ、ここでのトップはキャシディ選手だった。そして、金曜日の専有走行2セッションは、いずれも山下選手がトップ。そして高星選手が2番手だったこともあり、それぞれに可能性があるように思われたものだ。

しかし、予選になると状況が一変。キャシディ選手が第16戦では1分13秒711を、そして第17戦では1分13秒515まで短縮を果たし、2戦連続でポールポジションを獲得。早くも2ポイント加えたのに対し、山下選手は第16戦の予選で縁石に乗り上げてコースアウトし、その際にフロントウィングを落としてしまったために3番手に留まり、第17戦は4番手に。そして高星選手も2戦とも5番手に甘んじてしまう。

一方、二度の予選いずれもキャシディ選手に肉薄したのがルーカス・オルドネス選手。さらにマカオGP参戦を見据えて、今回もスポット参戦の関口雄飛選手が、第17戦では3番手につけていた。F3-Nクラスでは小河選手がWポール。2戦ともに三浦愛選手、DRAGON選手が続いていた。

18周で争われる第16戦決勝レースは、サーキット上空に青空を浮かべた絶好のコンディションの中で行われた。そのスターティンググリッドには、16台のマシンが並んでいた。注目のスタートを誰より決めたのが、ポールシッターのキャシディ選手。スタートで何としてもトップに立ちたかった山下選手は、オルドネス選手のけん制を受けてポジションをキープするのがやっとだったばかりか、福住仁嶺選手にもぴたりと着かれていた。オープニングラップだけで1秒半のリードを奪ったキャシディ選手が、そのまま逃げ続けていったのに対し、山下選手はオルドネス選手に封じ込まれていた。福住選手と高星選手の4番手争いが激しくなって、後方からのプレッシャーを感じずに済むようになるも、やがて山下選手はオルドネス選手にも離されるように。

中盤になると、バックマーカーが相次いで現れるようになり、トップのキャシディ選手と2番手のオルドネス選手はスムーズにすり抜けていったが、唯一割りを食うこととなったのが山下選手。13周目の最終コーナーでの回避で急減速、そこで一気に差を詰めた福住選手は、14周目の1コーナーで前に出る。そんなチームメイトの苦悩をよそに、キャシディ選手は難なく逃げ切って今季6勝目をマーク。ファステストラップも記録し、山下選手が4位に留まったこともあり、最後の戦いを前に10ポイントの差をつけて、タイトル争いに王手をかけることとなった。一方、5位でゴールの高星選手からは王座獲得の権利が喪失した。2位のオルドネス選手は、これが二度目の表彰台獲得に。

F3-Nクラスでは、三浦愛選手が得意のスタートを決めて、小河選手に1コーナー、2コーナーと並ぶが、抜ききるまでには至らず。逆に3コーナーで完全に前に出た小河選手は、そのまま逃げ続けることとなった。しかも、クラスの異なる山口大陸選手に遅れることなく続いて、時にはペースで上回る周も。逆転こそできなかったものの、大いに自信になったことだろう。

明けて日曜日に行われる今季最後のレース、第17戦は25周での戦いに。第16戦より7周も長いだけに、より過酷なレースになるのは確実だった。実際、中盤から現れたバックマーカーによって、レース展開にも動きが出ていた。

またしても絶妙のスタートを決めていたのが、ポールシッターのキャシディ選手。そして、予選3番手の関口選手が、1コーナーのアウトからオルドネス選手を抜きにかかるが、その直後に接触してしまう。コースアウトした関口選手は7番手に後退し、オルドネス選手は2番手をキープしたものの、左リアの足まわりを傷め、思いどおりのペースで走れなくなる。そのことはキャシディ選手を一気に有利にさせた。なんとオープニングラップだけで2秒半ものリードを稼ぎ、最も近づいてほしくないチームメイトの山下選手を、オルドネス選手が封じ込めてくれたからだ。やがて2番手争いは、高星選手を加えた三つ巴に。バックマーカーを利用して、16周目の1コーナーで山下選手がオルドネス選手を抜きにかかるが、しっかりガードを固められてしまう。

そして、22周目。S字コーナーでコースアウトしていた車両があったため、黄旗が振られていたが、その手前でバックマーカーが2番手を争う集団に道を譲ろうとしたことでアクシデントが発生。オルドネス選手は手前で抜いたものの、山下選手は抜き切れなかったため、黄旗提示区間で急減速。その脇を高星選手がすり抜けていく。もちろん、これはペナルティの対象に。3位でゴールした高星選手は表彰台に上がったものの、30秒加算で8位に降格。山下選手がキャシディ選手に続く3位となった。そんなチームメイトのドラマなど知る由もなく、キャシディ選手はほぼ20秒差の圧勝に。これで2連勝、通算7勝をマークし、獲得したチャンピオンに花を添えることとなった。チーム部門、エンジン部門もタイトルもトムスが獲得し、チーム全体が歓喜に包まれていた。

F3-Nクラスでは小河選手がスタートを決めて、予選でも上回った山口選手を従えて、ストレートに戻ってくる。しかし、異なるクラスのエンジンパフォーマンスの差はどうともし難く、1コーナーまでにポジションを守ることはできなかった。それでも三浦選手を最後まで寄せつけることなく25周を走り抜き、14勝目をマークして有終の美を飾った。さらに山口選手に最後はコンマ5秒差にまで接近、あと1周あれば、悲願が叶ったかもしれない。そして、DRAGON選手は16回目の3位でゴールした。

DRIVER VOICE

ニック・キャシディ 選手 [PETRONAS TOM’S F314]

【今回の成績 : 第16戦 優勝 / 第17戦 優勝】
今回は2レースとも理想的なスタートが切れて、それが勝因のひとつともなったし、圧勝にもできたからね。これが今季最後のレースなのが残念なぐらい。チャンピオンを獲れたことは、本当に夢のようだよ。特に最後のレースは3周目ぐらいまでセーブして、中盤まではプッシュ。そこからは楽しみながら走ることもできた。強いまま、勢いのあるまま、勝って終われて良かったよ。これも最高のクルマを用意してくれたチームのおかげ。本当に感謝しています。今後のことはまだ何も決まっていないけど、また日本でレースしたいね。とりあえず、マカオGPで頑張ってきます!

小河 諒 選手 [KeePer TOM’S F306]

【今回の成績 : 第16戦 11位(F3-Nクラス 優勝) / 第17戦 10位(F3-Nクラス 優勝)】
今回は初めて上のクラスの車両と離れずに走れて、いろんな発見がありました。どうしてもコーナーで近づくと、ダウンフォースが抜けてしまうので、前に出ることは2戦ともできなかったんですが、全開にできなかった分、タイヤも温存できて最後の方でベストタイムも出せましたし、最後のレースではあと一歩まで迫ることができましたから。おかげで今まで以上にステップアップしたくなりました!

FEATURED DRIVER

■最終大会を連勝し、キャシディ選手がチャンピオンを獲得!!

チームメイトの山下健太選手と同ポイントで並んで最終大会を迎えるという、前代未聞の状態ではあったものの、終わってみれば連勝で、16ポイントの差をつけてチャンピオンを獲得した、ニック・キャシディ選手。昨年のマカオGPで3位の実力は、全日本F3選手権でも遺憾なく発揮された。

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もっとも、今回は完全に明暗が分かれたとはいえ、シーズンを通じた山下選手との戦いは、シリーズを大いに盛り上げていた。鈴鹿での第1戦から一騎討ちを演じ、終盤の接触で山下選手はリタイアを喫し、トップチェッカーのキャシディ選手はペナルティで順位を落としてしまったが、誰もがこのふたりの戦いが面白くなると思ったはず。実際に、その後はシーソーゲームを繰り広げ、ポイントで並んだだけでなく、最終大会を前に5勝ずつ分け合っていた。もし、優勝と2位を分け合うようであれば、3位の回数が多い山下選手に決まるはずだった。

だが、難しい計算などキャシディ選手は、一切不要とした。2戦ともポール・トゥ・ウィンで、しかもファステストラップも記録し、ポイントフルマークを果たしたからだ。時に不運な展開に見舞われることもあり、必ずしも完璧なシーズンではなかったという。だが、SUGOの2戦に関しては、理想的な展開だったとキャシディ選手。

「日本のレースは来る前に想像していたより、遥かにエキサイティングで、ハイレベルだった。SUGOの前にユーロF3にも出たんだけど、決して引けを取っていない。予選なんか僅差で上位が並ぶし、決勝もバトルが激しいし。だからまた、日本でレースしたいと思っている。先のことはまだ何も決まっていないし、まわりがどう評価してくれているか次第だろうし、どんな環境を与えられるか分からないし……。でも、本当に日本でレースがしたいんだ」とキャシディ選手。

この後に行われるマカオグランプリで、また好成績を残せば、より評価は高まるだろう。もちろん、そのマカオの目標をたずねると「2回目だし、日本のレースで経験も積めたからね。運にも左右されるレースだけど、クルマもいいから、どんなレースでも優勝を目指すのが、僕のモットーだし!」と力強く語ってくれた。