2015 SUPER GT Round 8 Report

【SUPER GT 第8戦/もてぎ】

GT300のグッドスマイル初音ミクSLSが今季最上位となる2位入賞、
WedsSport ADVAN RC FがGT500で唯一の全戦入賞を達成!!

SUPER GT Round 8

開催日 2015年11月14日-15日
開催場所 ツインリンクもてぎ
(栃木県)
天候 曇り のち 晴れ
路面 ウェット ~ ドライ
決勝周回数 53周 (1周=4,801m)
参加台数 43台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
2015 SUPER GT 第8戦

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目にも鮮やかな紅葉に包まれ、冬の訪れを感じさせる風が吹くツインリンクもてぎを舞台に、いよいよ2015シーズンを締めくくる第8戦、「MOTEGI GT 250km RACE」が行われた。最終戦はウエイトハンデが撤廃されるガチンコ勝負、ドライバー、マシン、そしてタイヤのそれぞれに真の実力が試される一戦でもある。

予選はあいにくのウェットコンディションとなり、全車がウェットタイヤを装着してのアタックとなった。GT300では「グッドスマイル初音ミクSLS」がヨコハマタイヤユーザーの最上位となる3番手に。Q1を谷口信輝が6番手でクリアし、片岡龍也がQ2で3ポジションアップを果たしていた。これに続く4番手は「VivaC 86 MC」で、前回に続き松井孝允のピンチヒッターを務めた谷川達也の力走に、土屋武士が応えていた。

そして、Q1を織戸学が、Q2を平峰一貴が担当した「マネパ ランボルギーニGT3」が、ともに5番手につけ、坂本祐也からバトンを託され、Q2には山下健太が挑んだ「Excellence Porsche」が6番手から決勝レースに挑むことに。なお今回、ヨコハマタイヤユーザーでQ2進出を果たしたのは8台だった。

GT500では弱くなっていた雨が強くなり始めた頃にQ1がスタート。コース上の水が多くなる前にタイムを出しておきたいと、「D’station ADVAN GT-R」の佐々木大樹選手はシグナル点灯とともにコースインしたが、思いはすべてのチームに共通した。ピットが最終コーナー寄りの佐々木選手の前には、ずらりとライバル車両が……。ベストタイムを出した時には、かなり雨が強くなっていたため、11番手に甘んじて、まさかのQ1敗退となってしまう。

一方、「WedsSport ADVAN RC F」は、対照的にピットが1コーナー寄り。関口雄飛選手のアタックが決まり、Q1突破に成功する。バトンを託された脇阪寿一選手がQ2で果敢に攻め立てたものの、雨の量はさらに多くなっており、8番手のまま予選を終えることとなった。それでも脇阪選手は大きな手応えを感じた様子で、自信をのぞかせていた。決勝での2台の激しい追い上げが見ものとなってきた。

早朝まで降り続いた雨によって、決勝レースを間近に控えた路面は濡れたままだったが、徐々に乾いていく方向にあったため、スタート進行は10分間前倒しになって、通常8分間のウォームアップは18分間で行われることに。ここでレースウィーク初めてドライタイヤが試された。しかし、その時点ではまだウェットタイヤのタイムが上回っており、タイヤ選択にはそれぞれ大いに頭を抱えることになる。グリッドにはどのチームもドライ/ウェット両方のタイヤが持ち込まれたが、全車が並んで間もなく通り雨が。すぐにやんだものの、瞬間的に強く降ったこともあって、結果的に全車がウェットタイヤをチョイスすることとなった。

「WedsSport ADVAN RC F」は関口選手が、「D’station ADVAN GT-R」はミハエル・クルム選手がスタートを担当。1周目にそれぞれ7番手、9番手にポジションを上げるも、コース上の水が減るにつれてペースが鈍り始め、徐々に順位を落とすことに。ドライバー交代が可能となる周回数の3分の1、18周が過ぎるのを待って20周目に「D’station ADVAN GT-R」が、23周目に「WedsSport ADVAN RC F」がピットイン。それぞれ脇阪選手、佐々木選手にバトンをつないで、ドライタイヤを装着してコースに戻る。

路面が乾いてからの2台のペースは速く、追い上げが期待されたものの、クラッシュ車両のパーツがコースに散乱し、これを排除するためセーフティカーがコースイン。この時、運悪く2台の後方にトップの車両がいる格好となり、上位陣との差が一気に広がってしまう。そのため、思うように追い上げられないまま、チェッカーフラッグが振られてしまう。「D’station ADVAN GT-R」は無念の12位に終わったものの、「WedsSport ADVAN RC F」は10位に入り、開幕戦から続けていた入賞を果たし、ただ一台だけ全戦ポイント獲得を果たすこととなった。

路面が乾いてきてからのペースは揃って速く、脇阪選手がファステストラップを記録する速さを見せただけに、残念な結果となったとはいえ、来シーズンにつながるレースとなったことも確かである。

GT300ではスタート直後から「グッドスマイル初音ミクSLS」の片岡選手が気を吐いて、1コーナーのアウトからひとつポジションを上げて2番手に。その一方で予選15番手ながら、決勝での追い上げが期待されていた、「B-MAX NDDP GT-R」の星野一樹選手が追突されて、早々とリタイア。ランキング2位もかかっていただけに、まさに戦わずして戦列を離れることとなっていた。オープニングラップを4番手で終えたのは、「マネパ ランボルギーニGT3」の織戸選手だったが、9周目にドライビングスルーを命じられてしまう。フリー走行で黄旗追い越しがあり、そのペナルティによって大きく順位を落とす。

また、コース上の水が少なくなってくると、片岡選手のペースも鈍り始め、10周目には3番手に。そのため、早々とピットに戻ってドライバー交代と同時に、ドライタイヤへの交換を行うチームが相次いだ。「グッドスマイル初音ミクSLS」も23周目にピットに戻り、谷口選手とチェンジする。セーフティカーがコースに入ったのは、それから間もなく。3番手で折り返したが、先行する車両との差はごくわずか。しかもトップはセーフティカーラン中にドライバー交代を行ったため、ひとつ順位を上げることともなる。

バトルが再開されると、前にいるのは宿敵「GAINER TANAX SLS」ただ一台。リスタートも完璧に決めた谷口選手は3周後となる、31周目にトップに浮上する。しかし、圧倒的にペースで上回る「TOYOTA PRIUS apr GT」だけは抑え切れず、39周目にはポジションを明け渡したものの、後続は最後まで近づけないで今季最上位となる2位でフィニッシュ。

ヨコハマタイヤユーザーでは、予選10番手から着実に順位を上げてきた「LEON SLS」の黒澤治樹選手と蒲生尚弥選手が5位を獲得、そしていったんはペナルティで12番手まで退いていた「マネパ ランボルギーニGT3」が、しっかり挽回して7位でフィニッシュしている。

DRIVER VOICE

脇阪寿一 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 10位】
ウェットコンディションが難しかったのですが、何台か抜けましたし、ファステストラップも獲れました。自分の中では、今年1年間でベストの走りができたと思います。新しく作ってきたウェットタイヤは雨量の多い時、少ない時が良かったのですが、中間が今ひとつでしたので、今後の開発では、そのあたりにもしっかり対応できるタイヤをスタッフと協力して、作っていきたいです。

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 10位】
最初、路面が濡れている時は良かったのですが、数周でペースが落ち始めてしまいました。後半に路面が乾いてきてから、寿一さんが追い上げてきてくれましたが、その時にはかなり上位との差が開いていて、順位を上げるのは難しかったようです。

佐々木大樹 選手 [D’station ADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 12位】
セーフティカーが入るタイミングが悪く、後ろにトップの車両がいる形になって、勝負権を失ってしまいました。ドライタイヤでのペースが良かっただけに、残念です。でも、今年は優勝もできて、チームもドライバーもポテンシャルが上がりました。来年は、きっとタイトル争いもできると思います。

谷口信輝 選手 [グッドスマイル 初音ミク SLS]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
ドライタイヤには今回、自信はあって、僕のスティントでは実際に良かったけど、結果的にプリウスには勝てなかった、段違い。今季初の表彰台、2位にはなれたけど、クラス違いのクルマがいたから、あんまり嬉しくないですね。

片岡龍也 選手 [グッドスマイル 初音ミク SLS]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
難しいコンディションの中でのレースで、特に僕、スタートを担当して、ヨコハマがいいのが分かっていたんですが、その後のペースが若干つらかったですね。特にドライパッチが出始めた、微妙なコンディションのところでマッチングが悪くて……。とはいえ、自分たちのできることをやり切って2位、そして去年からずっとライバルだったゲイナーとのSLSもてぎ対決を、今回は勝てたので、そういうところに関しては満足できる部分はありました。

黒澤治樹 選手 [LEON SLS]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
結果的に言えば、このあたりの順位が妥当というか、できる限りのことはやったかなと。僕らは今後さらに強くならなくちゃいけないし、チームとして向上しなくちゃいけないので、来年は頑張ります。タイヤは特にドライで良くて、最後まで(蒲生)尚弥選手もいいペースで走ってくれたし、いいタイミングでうちは入ったと思います、ウェットからドライに換えるのは。

織戸 学 選手 [マネパ ランボルギーニGT3]

【今回の成績 : GT300クラス 7位】
朝、平峰(一貴)選手がイエローフラッグを無視しちゃって、もったいなかったね。そのペナルティ以外は、僕らのレースはけっこうパーフェクトだったと思うけど、うまくいってペナルティがなくても、3位か4位のレースだったと思います。表彰台は乗りたかったね、タイヤはすごく良かっただけに……。

CLOSE UP

■前チャンピオンが語る苦悩の今シーズン

ゼッケン0を背負って、連覇を誓っていた「グッドスマイル初音ミクSLS」を駆る谷口信輝選手と片岡龍也選手だったが、結果は残念ながらご存知のとおり。「僕にとって、最悪のシーズン。今までも勝てなかったり、チャンピオン争いに絡めなかったりしたシーズンはあったけど、もうそれ以上」と谷口選手は悔しそうに語る。

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その理由として「今年はGT-Rとプリウスの年だった。誰がどう見ても。Wタイトルを獲るための選択肢として、今年は(メルセデス)SLSを選んだけど、SLSの年じゃなかった。というのがひとつ。それで最後まで表彰台に立てなかったというのもあるけど、何より不運が重なって、3回もノーポイントのレースがあったからね」と谷口選手。それでも、SLSと相性抜群のコースで、最後の最後に表彰台に立てただけに、溜飲も下がったかというと、「あんまり嬉しくない」と、負けず嫌いの谷口選手らしいコメントも返ってきた。

その一方で、片岡選手は「今年1年を通して不運なことが多くて、流れがつかめなかった。終わりで悪い流れを吹っ切れたところもあるので、来年に向けてはいい気分で終われたかな、というところですね」と、あえて前向き。このあたりの意識が好対照であるところは、名コンビである秘訣でもあるのだろう。ただ、実際に共感せざるを得ないのは、「僕らに有利でなくてもいいから、全員の足並みが揃うようなルールにしてほしい。そうしないと、見ている方もやっている方も面白くないからね」という谷口選手の意見。来シーズンは、このあたりがしっかり整っていることを望みたい。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

今回は天気に翻弄され続けて、レースでは、いちばん弱いところを突かれてしまい、狙っていた結果を得る事ができませんでした。ただ、この週末を通し、ウェットについては複数の課題が明確になったので、確実にそれらを解消し、来期に向け更なるパフォーマンスのアップを図りたいと思います。

GT500の2台は運悪くセーフティカーが出る時に周回遅れになってしまったので、後ろを走る上位陣に譲らなければいけないシチュエーションになってしまったのが、非常に残念でした。そんな中、「WedsSports ADVAN RC F」は脇阪寿一選手がファステストラップを出してくれて、ドライのパフォーマンスは示すことができたと思います。同様に、全戦入賞については、チームの高い総合力に支えられた事が最も大きいですが、タイヤとしての進化も証明できたと考えています。

いずれにしても、早急にウェットタイヤの立て直しを行い、ドライタイヤは今の開発方針を維持する事で、トータルの戦闘力を向上させ、来年はさらに勝ち星を増やしたいと思います。今年はオートポリスでチャンピオンの権利はなくなってしまったのですが、来年は権利を持って、もてぎに臨みたいですね。

GT300はGT500同様年々競争が激化していますが、今年はあまり良い結果を得る事ができませんでした。「B-MAX NDDP GT-R」が1周目にぶつけられて、ランキング2位を逃したのも残念でしたし、不運も多々ありましたが、シリーズを通して安定したパフォーマンスを示せなかったのは、大きな反省点だと思っています。最後になって「グッドスマイル初音ミクSLS」が、ようやく上位で戦えるようになったのは唯一の救いです。

しかし今回は本当に残念なレースでした。スタート前グリッドに並んだ時に一瞬とはいえ大粒の雨が降ってきて、「ああ……」という気分になりました(苦笑)。来年はどんなコンディションでも闘えるように、第1戦までにきちんと準備して、シリーズに臨みたいと思います。