2015 SUPER GT Round 4 Report

【SUPER GT 第4戦/富士】

D’station ADVAN GT-Rが5年ぶりの優勝を飾り、
波乱の展開続いたGT300ではLEON SLSが準優勝!!

SUPER GT Round 4

開催日 2015年8月8日-9日
開催場所 富士スピードウェイ
(静岡県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 66周
(1周=4,563m)
参加台数 44台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
2015 SUPER GT 第4戦

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ゴールデンウィークの第2戦以来、再び富士スピードウェイに舞台を移して、SUPER GTのシリーズ第4戦「FUJI GT 300km RACE」が8月8~9日に開催された。このところ全国的に猛暑日が続いており、レースウィークが例外になってはくれず、ドライバー、マシンだけでなく、タイヤにとってもハードな戦いになった。

第2戦に比べ、気温、路面温度とも著しい上昇が予想されたが、予選当日は朝から曇り空。前日までの暑さは和らぎ、予選が始まったときの路面温度は35度。GT300のQ1では熟成が着実に進む、「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤寛規選手が1分38秒278で2番手につけて、ヨコハマタイヤユーザーのトップに。同じくマザーシャシーを用いる「VivaC 86 MC」の土屋武士選手が3番手につけるなど、8台がQ1突破を果たしていた。続くQ2では公式練習でもトップタイムを記していた、「LEON SLS」の蒲生尚弥選手が1分38秒020で2番手に浮上。さらに「Studie BMW Z4」の荒聖治選手が4番手に、「グッドスマイル初音ミクSLS」の谷口信輝選手が5番手につけて、ディフェンディングチャンピオンの意地を見せていた。その一方で、前回のウィナー「B-MAX NDDP GT-R」の高星明誠選手は76kgにも達したウエイトハンデに苦しみ、Q2で待つ星野一樹選手にバトンを託せず、16番手から決勝レースに挑むことになっていた。

一方、GT500では高めの路面温度を想定したタイヤ選択だったため、一抹の不安を残してQ1に挑んでいた「D’station ADVAN GT-R」の佐々木大樹選手ながら、走り始めから好タイムを記録。最終的に1分28秒963をマークして3番手に食い込むこととなった。Q2にバトンを託されたミハエル・クルム選手は、ニュルブルクリンク24時間、ル・マン24時間参戦のため、開幕から3戦を欠場したこともあって、今年の初SUPER GT。それでも事前のテストで走っていたこともあり、1分29秒124をマークして6番手。3列目から決勝レースに挑むことになった。しかし、「WedsSport ADVAN RC F」は関口雄飛選手がQ1で15番手に留まり、Q2進出は果たせなかった。

決勝当日は朝から真夏の太陽が再び照りつけ、気温、路面温度ともにぐんぐん上昇。だが、これは「D’station ADVAN GT-R」には好都合。路面温度40度以上を想定したタイヤを選択しており、スタート時点で45度にまで達していたからだ。クルム選手がスタートを担当し、29周目に4番手に浮上。佐々木選手に32周目、バトンを渡すこととなった。

ここから佐々木選手の猛追が始まった。4台で争われるようになった激しい4番手争いを制すると、56周目に3番手を走行する「PETRONAS TOM’S RC F」をロックオン。最終コーナーでこれをかわすと、60周目の最終コーナーでも「MOTUL AUTECH GT-R」をも抜き去って2番手に浮上する。

残るは10周、3万6千人を超える大観衆が固唾を飲んで見守る中、何とか逃げたい「ZENT CERUMO RC F」との息詰まる攻防戦が展開される。そして、残り6周となった61周目、ついにトップに躍り出る。佐々木選手はペースを緩めることなく、最後は4秒以上のギャップを築いてフィニッシュ。チームにとっても、ヨコハマタイヤにとっても2010年の開幕戦・鈴鹿サーキット以来となる、5年ぶりの総合優勝となった。そしてチーム加入2年目で初勝利を手にした佐々木選手は、クルマを降りるなり号泣した。クルム選手も11年ぶりの優勝とあって、近藤真彦監督と抱き合って、満面の笑みを見せていた。

また、15番手からのスタートを強いられた「WedsSport ADVAN RC F」は、スタート担当の関口雄飛選手がオープニングラップのうちに4台を抜き去ることに成功。セッティングの変更が功を奏し、ペースが周回を重ねても落ちなかったことから、チームはできるだけ関口選手を長く走らせる作戦へと改める。GT500では最後となる35周目にピットインし、後半を担当した脇阪寿一選手もまた力走を見せた。44周目に10番手に浮上すると、そのままポジションをキープしてゴール。開幕から4戦連続で入賞を果たすことになった。

GT300ではランキング2位につける「B-MAX NDDP GT-R」の高星明誠選手が、オープニングラップに後続車両の追突を食らい、いきなりリタイアする大波乱から始まった。そんな中、「LEON SLS」の黒澤治樹選手はポジションキープの2番手からレースを開始し、「グッドスマイル初音ミクSLS」の片岡龍也選手がふたつポジションを上げて3番手に浮上、これに「Studie BMW Z4」のヨルグ・ミューラー選手が続くことになる。この2番手争いは激しく、やがて5台が縦一列に連なるように。その後、谷口選手が4番手に、黒澤選手が5番手に後退するも、集団から大きな遅れを取らず、終盤の巻き返しに期待がかかった。

21周目に「LEON SLS」が蒲生選手へ、22周目に「Studie BMW Z4」が荒選手に、23周目に「グッドスマイル初音ミクSLS」は谷口選手に、それぞれバトンタッチ。それぞれ早めの交代で、空いているところを走ってペースを上げようという作戦だ。ところが、「グッドスマイル初音ミクSLS」はホイールナットのトラブルで、なかなか交換できずにロスを抱えたばかりか、ピットを離れた後も緩んで再度ピットストップを強いられる羽目に。そして、「Studie BMW Z4」もタイヤがデブリを踏んでスローダウン。やはり再度ピットストップを強いられる。

その間に、ドライバー交代をギリギリまで遅らせていたことで、トップを走行していたのは「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤選手で、これに続いていたのは「VivaC 86 MC」の松井孝允選手。それぞれ42周目、40周目にピットインした後に、どのポジションで戻るか注目されたが、マージンは十分ではなく高橋一穂選手は7番手に、土屋選手は5番手に。そして、「LEON SLS」の蒲生選手が2番手に戻すとともに、4番手には新田守男選手からステアリングを託された「JMS LMcorsa Z4」の脇阪薫一選手が浮上。ゴールまでポジションはそれぞれ保たれ、「LEON SLS」がほぼ1年ぶりとなる表彰台に立つこととなった。

DRIVER VOICE

佐々木大樹 選手 [D’station ADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 優勝】
クルマは暴れましたが押さえつけ、最後まで諦めないで走りました。チームの努力が実って、いいレースができたと思います。チェッカーを受けてクルマの中で大泣きし、クルマを降りてクルムさんの姿を見て、また泣いてしまいました。ヨコハマタイヤさん、KONDO RACINGにとって久々の優勝ですし、僕にとっては初めての優勝。今までもクルムさんと、勝てそうで勝てないレースが続いていたので、やっと勝てたという印象です。みんなに感謝しています。ここまでの悪い流れを断ち切れたからには、最後のもてぎでチャンピオン争いに絡めるようにしたいですね。

ミハエル・クルム 選手 [D’station ADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 優勝】
チームにとっては2010年以来の優勝だけど、僕は04年からSUPER GTでは勝っていないんですよ。途中、外国のGTレースに出ていたからね。最後に影山正美選手と一緒に勝った時は、大樹はまだ10歳(笑)。そう聞いて、ビックリしました。このチームに来て3年目でやっと勝てましたが、去年も勝てるチャンスはあったのに、小さなトラブルでダメだった。だから、本当に嬉しい。チームもヨコハマタイヤも、みんなすごい情熱でやっていますから、その思いに応えられて良かった。今年はもう一回、勝つつもりでいます!

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 10位】
予選は前回のタイでは良かったが、今回はひとつ問題を解決すると、また別な問題が出てきて、クルマのバランスが良くならなかったんです。ただ、どうすればいいか分かっていて、フリー走行で調整できたので、ポイントは絶対に獲るつもりでした。実際、ペースは良かったので、行けるところまで行こうとピットインを遅らせて、代わってからの寿一さんは柔らかめのタイヤで行きました。自分たちのできることは、やり切れたつもりです。

黒澤治樹 選手 [LEON SLS]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
チームもミスしていないし、すごくいいレースができたと思うのですが、2位ではいけないので、次は勝ちたい。そのためには今後、何が必要か考えてやりたいと思います。タイヤは良かったです。ただ最初、我々が想定していたよりも温度が高くなってしまったので、早めに交代せざるを得なかったのですけど、尚弥選手がその中でも耐えてくれたのがすごく良かったと思います。ヨコハマタイヤ、メルセデス-ベンツ勢の中でのベストポジションなので、その部分でチームとしてやりきったという気持ちはあります。

新田守男 選手 [JMS LMcorsa Z4]

【今回の成績 : GT300クラス 4位】
僕のスティントは路面温度がかなり高い中でスタートすることになったんですけれど、その温度の中でも大きな落ち込みがなく、タイヤに関しては非常にいいパフォーマンスを出してくれていたと思います。薫一選手に代わってからのペースは僕より良かったのと、タイヤのパフォーマンスがいいことで、この結果を得ることができました。特に終盤には、僕らより前のクルマよりいいペースで走れたと思うので、次の鈴鹿に向けても僕たちはいいデータが取れたし、鈴鹿もいいパフォーマンスが出てくると期待していますので、鈴鹿では優勝を狙っていきます。

土屋武士 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
タカミツ(松井孝允選手)で引っ張るのも予定どおりで、タイヤの保ちも予定どおりで、抜かれちゃうのも予定どおりで(笑)。ピットが長かったのはドアが開かなかったからで、内側からも外側からも。それで反対側から出入りしました。それがなければ、3番手争いができたと思うんですが、15秒ぐらいロスしているので、2番手、3番手あたりに戻れると思っていたので、ちょっと残念だったんですけどね。でも、マザーシャシーを開発しながら、孝允も育てながら、チーフメカニックを若い、28歳の子にやらせているので、こういう悔しい思いをすれば育つと思うし、これが続けていければ、どんどん強いチームになっていくと思います。

CLOSE UP

■5年ぶりの優勝を飾った、近藤真彦監督はかく語れり

スタート前は正直2位までは見えていたけど、優勝までは見えなかった。クルムは今回が国内最初のレース。ブランクがあるから、早目にピットに入れたんだ。

大樹(佐々木大樹選手)は冷静で、タイヤマネージメントもコメントも正確だから、やってくれると思っていた。

特にヨコハマタイヤさんには、昨年トラブルで迷惑をかけたので、やっと恩返しができたよ。ゴールした時は『ほっとした』の一言だね。ここ5年勝っていなかったからね。長かったよ。

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ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

ありがとうございます。ここまで長かったですね。今年に関して「D’station ADVAN GT-R」は、昨年のタイからトラブルやアクシデントが続いて、悔しいことがたくさんありましたので、今回はノーミス、ノートラブルで、タイヤも今回のレースに合わせて作ってきたものが、完璧に合致して勝てて良かったです。

実際に、使用してもらったタイヤは特に対応温度域が広いというより、今回のコンディションに合致できたと思っています。正直に言うと簡単に勝てるとは思っていなくて、ただ最後に上位のペースが落ちてきた中、佐々木大樹選手のペースが全然落ちることなく速かったので、『あれ、行けちゃうのかな?』という感じで(笑)。本当にチーム、クルム・佐々木両選手、我々を支えてくれている横浜ゴム関係者の皆さんに感謝しています。

GT500の2台ともタイヤから来る操縦安定性について、同じ傾向の不具合があったのですが、「WedsSport ADVAN RC F」は少し課題を残したままレースに臨まなければいけませんでした。できれば、2台揃って表彰台にいきたかったのですが、「WedsSport ADVAN RC F」にも今シーズン中に表彰台に必ず上がってもらえるよう、頑張りたいと思います。

次の鈴鹿は1000kmで、長いですから何が起こるか分かりませんからね。鈴鹿1000kmは非常に難しいレースで、さらに「D’station ADVAN GT-R」には40kgのウエイトが追加されることになったので、辛いところもあるかと思います。基本的にはアグレッシブに攻めるレースというよりは、決められたペースでしっかり走りきるといった展開になると思います。、蓋を開けたら上位にいるという結果につなげられれば良いですね。

GT300は、ユーザーチームのポイント上位陣が厳しい結果になってしまい、シリーズを考えると、かなり痛いな、という気がしています。どう挽回すればいいのか、チームとコミュニケーションを深めてやっていかなければなりませんね。

「グッドスマイル初音ミクSLS」はナットのトラブルで、「B-MAX NDDP GT-R」は1周目の追突で。また、「Studie BMW Z4」に関しては、走行を開始してからそんなに周回を経ていないんですよね。実際にいろんなところで破片が落ちていました。

その一方で「LEON SLS」はテストから好調で、レースにも派手さこそ無かったものの、作戦と我々のタイヤがマッチしたと思っています。このレースで、2位を獲ってくれたのは大きな意味がありますし、嬉しくも思っています。

GT500に関しても、いまは喜んでいますけれど、冷静にシチュエーションを見た時に、我々が他社に比べて圧倒的に優っているということはあり得なくて、まだまだ我々はチャレンジャーとして、どんどん開発を進めなくてはならないと改めて思っています。一回だけの勝利で終わってしまうのではなく、シーズンを通してコンペティティブで戦えるように、さらに頑張っていきます。