Life with V107

“BMW M”に認められること―
その“すごさ”を語ろう。
Studie AG 鈴木康昭
×ADVAN Sport V107 / 前編

2021.12.25

日本における奥深いBMWカルチャーの牽引役として、長年幅広い活動を続けてきたスタディAG。その創設者であり現在は会長を務める鈴木“Bob”康昭。“BMW M”のM3 / M4の承認タイヤにもなったADVAN Sportの最新作、V107のインプレッションを託すのにこれほど相応しい人物はいないだろう。BMW、そしてYOKOHAMA愛に溢れたBob鈴木による、「ADVAN Sport V107論」――その前編。

Words:吉田拓生 / Takuo Yoshida Photography:安井宏充 / Hiromitsu Yasui

Studie AG 鈴木康昭×ADVAN Sport V107 / 前編

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自分の好きなパーツで仕上げたM4。
足もとはもちろん、ADVAN Sport V107で!

新横浜駅にほど近い、スタディAGの本社ショールーム。その奥にあるガレージのリフトがスゥーっと降ろされ、ファイヤーオレンジのG82型BMW M4が着地する。その足もとに装着されているタイヤはV107。最新のADVAN Sportである。

「今ちょうど(ADVAN Sport V107を)履かせたばっかり。さぁこれからテストドライブするぞ! っていう一番ドキドキしている瞬間だね。V107に関してはYOKOHAMAの人から開発のこととか色々と聞いているから、なおさら楽しみなんだ」

少年のような瞳でM4を眺めながら話すのは、カスタマイズ、チューニングを主軸に、本格的なモータースポーツ活動も含めた、日本における奥深いBMWのカルチャーを長年作り上げ続けてきたスタディAGの会長、鈴木“Bob”康昭だ。

車高がすっきりと落とされ、室内にはボディと同色で塗られたロールバーが入れられたBMW M4。このクルマはスタディAGのデモカーの役割を果たしているが、つまりBob鈴木の愛車でもある。

「今回のM4はキレイにまとめようとかそういうことは考えてなくて、とにかく自分の好きなパーツを好きなように付けちゃおうって感じで作ったクルマ。最近、ちょっと大人っぽくカスタマイズをまとめ過ぎていたなーという自分自身に対する反省も含んでる(笑)。スタディAG的、模範的にいじったやつはもう1台、M3セダンの方があるから。 僕のM4クーペのアシはKWのバージョン4を組んでいて、タイヤはもちろんADVAN Sport。なにしろ今回のV107はG82型M4、M3の純正装着タイヤだからね。ほら見て、サイドにスターマーク(BMW承認タイヤの証)もちゃんと入っている。V107を装着するまではV105を履かせていたから、今回はその違いがよくわかると思う」

YOKOHAMAとブランドコンサルティング契約を結ぶスタディAGのBob鈴木。ADVAN Sportがデビューした2005年以来、その強固な信頼関係を築き上げてきた。

ニュルで見た光景――
“ドイツの扉”を開ける手段とは?

スタディAGとYOKOHAMAのタッグはすでに16年以上、言わずもがなの強力な信頼関係で結ばれているが、では、ドイツのBMWと日本のYOKOHAMA、その関係性をBob鈴木自身はどのように捉えているのだろう?

「ADVAN Sportが登場する以前は、ADVANと聞くと個人的にはスポーティな国産車のイメージが強かったし、昔のNEOVAあたりはちょっとヤンチャな印象もあった。でもその印象がADVAN Sportの登場で一気に変わった。なにしろADVAN Sportは最初からグローバルフラッグシップタイヤを謳っていたからね。スタディAGとしては、最初のADVAN SportであるV103がデビューした時からちゃんとした関係がスタートしている。僕自身もこの時からYOKOHAMAのブランドコンサルティングとして契約して、密な情報交換をするようになっている」

ADVAN Sportの登場以前からYOKOHAMAはポルシェに純正採用されるなど、ドイツの自動車メーカーとの関係を深めていた。頻繁にドイツを訪ねていたBob鈴木にも印象深い出来事があったという。

「ADVAN Sport V103が出た2年くらい後、2007年頃かな、ニュルブルクリンクに行ったとき、YOKOHAMAの開発拠点を訪ねたことがある。周りはポルシェやアストンなどのメーカー系に加えて、KWとかマンタイとかさまざまなパーツサプライヤーの立派なテストセンターが軒を連ねていて、その中に日本のYOKOHAMAの名前があった。カッコよかったよね。ポルシェとかBMW Mとか承認を取るのが世界一難しいメーカーを相手にするわけだから、そりゃあ相手の本拠地で開発しないと話にならない。ニュルで鍛えて、積極的にレースにも投入して、プロだけでなくアマチュアのドライバーたちにも認知してもらって、そういう努力を見ているから、今回のスターマークも納得がいく。聞けば、YOKOHAMAはその随分と前から小さな拠点をニュルに構えて、しっかりとYOKOHAMAとしてのポジションを確立させてきたそうだから、なおさらだよね。
そういえばYOKOHAMAのテストセンターのすぐ横がBMW Mのテストセンターなんだよ。だからメーカー同士の関係だけじゃなく、エンジニアとかメカニックとかそういった、より現場の人間レベルでの普段付き合いも色々あるんだと思う。日本でどんなにいいタイヤを作ってドイツに持って行ったところで、やっぱりドイツ人の心を掴むのは難しい。その点、YOKOHAMAは相手の懐に飛び込んでいいドアの開け方をしたと思う。BMW M4、M3の純正パーツリストのタイヤの欄を見ると、当然、そこには世界トップクラスのメーカーの承認タイヤが名を連ねているんだけど、その一番上に“ADVAN Sport V107”が載っていたのを見た時は驚いたな。僕の記憶では今まで日本のタイヤが一番上になったことはなかったはず。これって、本当に凄いことだよ。日本人として誇らしいよね」

BMW、そしてBMW Mを知り尽くしているからこそ、その承認タイヤとなることの難しさも理解しているというBob鈴木。「YOKOHAMAは長らくドイツで地道な活動を続けてきたからこそ、すべてにおいて妥協が許されないBMW Mに認められる、承認タイヤになったんだと思うよ」

時代の要求をクリアし、
BMW M4のテイストを決める。

ADVAN SportとBMW Mの関係には前例がある。V105が2018年にデビューしたBMW M5に純正採用されているのだ。その流れを考えれば、今回のADVAN Sport V107+BMW M4、M3というマッチングは既定路線として考えられるのではないか?

「いやいや、そんなことないでしょう。僕はそもそもV105から今回のV107への世代交代って今まで以上に大変だったと思う。今、時代が急激に変化しているからね。車重が重くなって、パワーが上がっているのは今にはじまったことじゃないけれど、その一方で環境性能のハードルなんかもどんどん上がっている。特にADVAN Sportみたいなグローバルなプレミアムタイヤはパフォーマンスが一流であることは当然として、パターンノイズをこれまで以上に抑えなくちゃヨーロッパの基準をパスできないし、あとは摩耗だよね。これって今自動車世界が直面しているカーボンニュートラルに直結する命題だから」

急激に変化する時代、それは人にも自動車社会にも当てはまる。ADVAN Sportがスタートした2005年はまだリーマンショックの前であり、それを経験した後、2013年にV105がデビューしている。昨今のCovid-19はV107の誕生に直接的な影響は与えていないと考えられるが、しかしクルマと同じようにタイヤはデビュー後も進化を続けている。自動車社会の要求は重要保安部品であるタイヤにもダイレクトに降りかかる。
ADVAN Sportのこれまでの変遷を熟知しているBob鈴木。スタディAGの創業者であり、他のあらゆるプレミアムタイヤのトレンドにも明るい彼の眼に、今回の「BMW M純正装着」の難しさはどのように映っているのか?

「ADVAN Sportは最初のV103の時からBMWとの相性が良かったと思う。グローバルのフラッグシップというコンセプトから考えれば、BMWがターゲットに含まれていないわけがないからね。でも純正装着って自動車メーカーが出してくるさまざまな条件をクリアするために共同開発するわけだから、リプレイス/アフターマーケット用とは立ち位置が根本的に異なると思う。ひとつのモデルに合わせ込んでいるから相性は良くて当たり前。一番難しいのは性能的にどこも尖らせず、バランスしていないといけないという部分でしょう。グリップだけじゃダメ、乗り心地だけじゃダメ。全ての性能が最高レベルでまとめられている。タイヤってクルマ全体のテイストを決めちゃうような重要なパーツだから、メーカーからの要求が厳しいのは当たり前だよね。だからADVAN Sport V107はもはやBMW M4の“一部”なんだよ。僕はそう考えるのがいちばん自然だと思うな。じゃあそろそろ、テストドライブに出かけてみようか!」

(文中敬称略)

Studie AG 鈴木康昭×ADVAN Sport V107 / 前編

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鈴木“Bob”康昭
Studie AG

日本におけるBMWカルチャーの第一人者であり、BMW専門のチューニング&カスタマイズショップを全国に展開する「Studie AG」の会長も務める。横浜、東京、神戸、名古屋、福岡、仙台、そして2022年春にオープン予定の札幌と、まさに日本列島を「BMW愛」で繋ぎ合わせる活動にその精力を注ぎ続けている。SUPER GT GT300クラスへの参戦(BMW Team Studie × CSL)など、BMWでのモータースポーツ活動にも長らく挑み続けている。

ADVAN Sport V107

「運動性能、快適性、安全性の高次元でのバランス」というコンセプトを貫くADVANブランドのグローバルフラッグシップタイヤ。専用の非対称トレッドパターンや、新コンパウンド、周方向の剛性を向上させるマトリックス・ボディ・プライ、さらに高剛性アラミド繊維を使うパワークラウンベルトとレーヨン・ボディ・プライ(一部サイズのみ)、新設計のマウンド・プロファイルなど、高性能を約束する技術は数限りない。すでに欧州車を中心に新車装着が始まっているが、2022年3月より全世界でリプレイスタイヤとして順次発売される。当初は305/35R23 111Y XL〜225/40ZR18 92Y XLまで30サイズ、2022年末までには新車装着用を含めて約80サイズが揃う予定だ。価格はオープンプライスとなる。