Life with V107
“BMW M”に認められること―
その“すごさ”を語ろう。
Studie AG 鈴木康昭
×ADVAN Sport V107 / 後編
2022.1.7
日本における奥深いBMWカルチャーの牽引役として、長年幅広い活動を続けてきたスタディAG。その創設者であり現在は会長を務める鈴木“Bob”康昭。“BMW M”のM3 / M4の承認タイヤにもなったADVAN Sportの最新作、V107のインプレッションを託すのにこれほど相応しい人物はいないだろう。BMW、そしてYOKOHAMA愛に溢れたBob鈴木による、「ADVAN Sport V107論」――その後編。
Words:吉田拓生 / Takuo Yoshida Photography:安井宏充 / Hiromitsu Yasui
こだわりの左ハン・マニュアル。
足もとには最新のADVAN Sport V107
愛車であるBMW M4に颯爽と乗り込むスタディAG会長の鈴木“Bob”康昭。彼のBMW M4のペイントはBMWインディビジュアルの特注色であるファイヤーオレンジ。フロントエンドとリヤにはカーボンの地肌がむき出しになったスポイラーがその存在を主張している。M4のグラマラスな前後フェンダーとタイヤとのクリアランスはこれ以上ないほど絶妙に設定されている。人知れずその車高を演出しているのはKWのサスペンションキット、バージョン4である。
フロント275/35ZR19、リヤ285/30ZR20のADVAN Sport V107は微かなネガティブキャンバーによって精悍さを増したBBSのLMホイールに組まれている。
エクステリアと同じく、室内も大胆だが抑えが効いている印象だ。リヤシートスペースは複雑なロールケージによって占拠されている。リヤシートは撤去されているが、簡素な内装材で丁寧にトリムされているあたりに荒っぽさの角を丁寧に丸めたような、極上のセンスが感じられる。
「このロールケージの感じはF82のM4GTSをイメージしたもの。まだ1台とってあるんだけれどね。大好きな1台だから」
Bob鈴木の好みのパーツを好きなように組み合わせて作り上げたというファイヤーオレンジのG82型M4。KWのバージョン4で理想的な車高が実現されているほか、カーボン製の機能パーツも随所にさりげなく散りばめられている。
エンジンをスタートさせると、リヤエンドのライトウェイト製のマフラーから盛大なノイズがこぼれる。慣れた手つきでCAEのクイックシフターを操り、M4はスタディAGのファクトリーを後にする。そういえば、Bob鈴木のM4はマニュアルシフト。しかも彼は前後のG変動をほとんど感じさせないくらいスムーズにそれを操る。
「僕は左ハンドルのMTが絶対なの。昔からずーっと。左足でクラッチ踏んで、右手でシフトするのが、とっても自然だと思う。それに最近のものすごく賢いオートマだと、クルマの個性が薄くなっちゃう感じがする。でもM4でマニュアルが選べるのも、この世代が最後になるんだろうな、って思っている」
左ハンドルのマニュアルというのがBob鈴木のこだわりである。CAEウルトラシフターやボディと同色のロールケージなど、“走るため”のこだわりも随所に貫かれている。
存在を消し去る静粛性、
トータルの性能アップを実感。
師走で少々混みあった新横浜の雑踏を抜け、首都高速に合流する。真新しいタイヤが主役であるはずの今回なのに、しばらくその存在を忘れてしまっていた。しばらく経ってからBob鈴木が「そういえば、すごく静かだよね?」と言ったのは、少し路面の荒れた場所を通過した時だった。助手席で感じるパターンノイズはそこに神経を集中しないとわからないような微かなもので、不快な突き上げを全く感じることがない。スタディAGのM4は、タイヤこそ純正そのものだが、前述のように足回りに一通り手が入った状態になっている。つまり乗り心地自体は硬くなっているはずなのだ。それでも流れに沿って大黒方面へと向かう首都高で、V107はまるでコンフォートタイヤのように存在感を消していた。
「BMWの承認を取ったということは、V107というタイヤはM4の純正パーツとして、もはやその一部であることは間違いない」とBob鈴木。徹底的に自分色に染め上げていくM4にあって、タイヤだけは絶対にこのV107以外は考えられないとも言う。
「なんだか、ADVAN dBの新作を履いているみたいに静か(笑)。でも直進している限りステアリングに伝わってくる手応えもしっとりとしている。これはいいよ。最新のタイヤらしく、すごく丸い感じできれいに転がる」
ここまで笑顔が絶えなかったBob鈴木の表情が少し真剣になり、口数も減りステアリングの握り方もしっかり感を増した。クルマ全体を、そしてアシとタイヤとのマッチングを感じ取るチューナーのモードに入ったようだ。
午後3時過ぎ、夕方のラッシュへと突入していく刹那の閑散とした首都高。ファイヤーオレンジのM4は力強い排気音を奏でつつ、ベイブリッジに向け緩やかに曲がりながら上っていく。
「以前、V103からV105に世代交代した時には、ドライバーにインフォメーションを伝えてくる能力が格段に向上していた。でもそれ以上に驚かされたのはウェット性能だった。すごく安心感が高かった。でも今回もヨーロッパのラベリング制度でA(最高レベル)を取っているから、さらにウェット性能が良くなっているんだろうね。それにしても今回のV105からV107への進化は、もっと根本的な性能が底上げされているように感じる」
V107のキャラクターが指南する、
チューニングの方向性。
埠頭で撮影している最中も、Bob鈴木は愛車を様々な角度から眺めていた。今年の5月に納車されて以降、様々な部分に手を入れてきているが、まだまだイマジネーションは膨らみ続けているらしい。そして時折「僕はほら、改造屋だから(笑)」とおどけて見せる。そこで気になったのは、タイヤのキャラクターがBob鈴木のBMWチューニングに影響を与えることはあるのかということだった。
「レーシングカーだったら、タイヤが変わればセッティングが全部変わるのは当然だよね。でも街乗りの場合は……ないかな……、いやいやV107だったらあるのかも。例えばシートとか。NEOVAを履いていたら、フルバケを入れたいところだけど、V107ならレカロのスポーツスターあたりがフィットするはず、みたいな。V107のトレッドパターンも、アウト側のブロックが大きくてスポーティだけれど、でも全体の印象は端正で落ち着いている。クルマ全体の性格も、そんなV107の性格を反映させるのが正解なのかもしれない。まあ、僕はあくまでM4をM4らしくしたいだけ。そのためのタイヤは、当たり前の話だけれどADVAN Sport V107しかないと確信したよ」
帰り道の首都高でもBob鈴木は真剣なドライビングに徹していた。エンジンをキレイに引っ張り、滑らかにシフトアップ。そして時折、エンジン回転を低くして的確なインプレッションを呟く。
ファインチューンで600psにまで最高出力が高められているBob鈴木のM4。その強大なパワーを確実に受け止めてくれるという意味でも、V107のケース剛性の高さには全幅の信頼が置けるという。アートのようなペイントワークが施されたエンジンカバーは、「Chemi Akutami」の手によるもの。見えない部分にまでこだわるのがBob鈴木流である。
「僕のM4はパワーが600は出ているから、リヤタイヤのケース剛性が弱いと自信をもって踏み切れないんだけど、V107はしっかり感がちゃんと感じられる。あと気に入ったのは、大幅に性能が上がっているのにちゃんとV105を正常進化させた跡が感じられるところかな。ハンドリングのシャープな感じとかピークグリップの高さといったV105美点をさらに洗練させつつ、快適性もプラスしている。少しペースを落とすだけで、まるでコンフォートモードのスイッチを入れたように静粛性と乗り心地の良さが浮き上がってくる。よくぞこの時代にこれだけの仕事ができたと思う。これはADVAN Sportの進化をずっと追いかけてきている僕としても嬉しい部分だな。M4以外のBMWにも、リプレイス用として薦めたくなる性能的な幅がある」
そう言って再び遠くを見据え、ドライビングに没頭するBob鈴木。その脳内では、ADVAN Sport V107を軸にした新たなチューニングのプランが渦巻いているに違いない。
(了)
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鈴木“Bob”康昭
Studie AG
日本におけるBMWカルチャーの第一人者であり、BMW専門のチューニング&カスタマイズショップを全国に展開する「Studie AG」の会長も務める。横浜、東京、神戸、名古屋、福岡、仙台、そして2022年春にオープン予定の札幌と、まさに日本列島を「BMW愛」で繋ぎ合わせる活動にその精力を注ぎ続けている。SUPER GT GT300クラスへの参戦(BMW Team Studie × CSL)など、BMWでのモータースポーツ活動にも長らく挑み続けている。
ADVAN Sport V107
「運動性能、快適性、安全性の高次元でのバランス」というコンセプトを貫くADVANブランドのグローバルフラッグシップタイヤ。専用の非対称トレッドパターンや、新コンパウンド、周方向の剛性を向上させるマトリックス・ボディ・プライ、さらに高剛性アラミド繊維を使うパワークラウンベルトとレーヨン・ボディ・プライ(一部サイズのみ)、新設計のマウンド・プロファイルなど、高性能を約束する技術は数限りない。すでに欧州車を中心に新車装着が始まっているが、2022年3月より全世界でリプレイスタイヤとして順次発売される。当初は305/35R23 111Y XL〜225/40ZR18 92Y XLまで30サイズ、2022年末までには新車装着用を含めて約80サイズが揃う予定だ。価格はオープンプライスとなる。