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持続可能なサプライチェーンの構築

サプライヤーの環境評価

KPI

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項目 2022年度実績 2023年度実績
環境影響評価を行ったうえで、取引を開始した新規サプライヤーの割合 (連結)100%(58社) (連結)100%(57社)
サプライチェーンにおけるマイナス影響、および行った措置 ゼロ
取引開始時にグリーン調達ガイドラインを配布し、その内容を理解いただいた上で取引を開始している。
ゼロ
取引開始時にグリーン調達ガイドラインを配布し、その内容を理解いただいた上で取引を開始している。

責任部門

調達本部 原料調達部 資材調達部

考え方・目標

なぜ「サプライヤーの環境評価」が重要取り組み項目なのか
理由と背景の解説

横浜ゴムグループの主要製品に使われる原材料は、各種合成ゴムをはじめ石油化学製品(化学品)が多く、その製造過程では、環境汚染や、地域住民の生活にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。最悪の場合、サプライヤーの操業停止につながる場合もあるため原料の安定的な調達という観点、倫理的な観点から、「サプライヤーの環境評価」を重要な取り組み項目として選択しました。

新規取引開始時の環境影響評価

新規の原材料を採用する際には、その材料が各種規制に適合しているかどうかを確認し、サプライヤーから、その証拠となる書類の提出を要請しています。
  1. 品質管理調査書
  2. 原料規格
  3. 入荷原料の検査成績表
  4. Safety Data Sheet (SDS) (対象原料は、SDSが適用されるゴム配合剤をはじめとする化学品)
  5. 特定有害化学物質含有調査表
  6. 欧州ELV指令ほかの禁止物質の非含有宣言書
  7. 欧州ELV指令ほかの禁止物質の非含有を証明するデータ
  8. 重金属4物質含有調査表
また、グリーン調達ガイドラインを発行し、横浜ゴムグループの「グリーン調達方針」および購入先へのお願い事項を提示して、ご理解をいただいています。
  • SDS:安全データシートは、化学物質またはそれを含有する製品(化学品)を譲渡・提供する際に、その化学品の特性・取り扱いに関する情報提供を行うための国際標準の書式
  • 欧州ELV指令:EUで使用済み自動車が環境に与える負荷を低減するための指令

サプライチェーンにおける環境影響評価

取引先には、「原料の購入先採用手続き実施要領」に基づき、CSRセルフチェックをお願いしており、その中で、環境マネジメントシステム(ISO14001)の認証取得の状況をはじめ、環境負荷物質、温室効果ガスなどの管理状況について自己評価結果を報告いただいています。2017年にさらに効果を上げるため、チェックシートを見直し、調査は継続しています。

<CSRセルフチェックシート>

著しい環境影響があると判断したサプライヤーへの対策

これまでのところ、そのような事例はありませんが、もしあれば、取引先工場と改善すべきポイント、原因や改善施策について直接協議し、実行します。その後改善がみられない、虚偽報告の判明など、悪質と認めた場合は取引を停止します。

目指す姿(達成像)/目標

2017年から新チェックシートによる把握を開始、主要原料、資材サプライヤーへの自己診断調査を実施しました。診断結果に基づき、CSRへの対応事項について把握してもらうよう活動しました。
今後は、海外サプライヤーへの自己診断調査を実施し、活動を拡大していきます。
また、取引を行うための条件として、CSR調達ガイドラインの順守をお願いし、環境、従業員、コミュニケーションに関する取り組みを促しています。

目指す姿に向けた施策

横浜ゴムグループ国内外拠点の調達担当者への勉強会は実施していますが、今後もその活動の改善を含めて継続していきます。
IT技術等の進化に伴い、これまで対面形式・書面開催としてきたCSR取引先説明会をリモート形式で開催するべく、社内で議論・準備を進めてきた結果、2022年度より開催が可能となりました。
2022年は天然ゴムサプライヤーに対し、サプライヤーズデイを開催し、持続可能な天然ゴムの調達方針を説明した上でCSRへの協力を呼びかけました。同時に天然ゴム以外のサプライヤーに対しても同様の活動を開始すべく準備を進めています。
タイの天然ゴム加工会社(YTRC:Y.T. Rubber Co., Ltd.)では、発注契約書に、環境保護や人権などコンプライアンスなどの条項を入れ、天然ゴム農園でのCSR普及に努めています。
なお、持続可能な調達に関する目標への取り組みを調達本部の人事考課に組み込んでいます。

2023年度の活動レビュー

2023年度は以下のような施策を実施しました。
  • 日本国内新規発注先57社全てにおいて、環境影響を及ぼすサプライヤーはありませんでした。
  • CSR説明会のオンライン形式での開催については、2023年は調達本部合同にて計2回に分けて実施し、弊社関係会社分も含めて929社に参加いただきました。
  • 調達部門全員がコンプライアンス教育を受講しています(100%)。

CSR取引先勉強会参加社数

  • 対象:当社規定の項目に該当する企業
  • 実施:2020年度は書面で確認、2021年度は開催を見送り

グリーン調達

横浜ゴムは、取引先と協力して、森林資源保護、地球温暖化抑制、リサイクル原料の使用、非石油原料の拡大をメイン課題として、環境に貢献する原材料の開発とその使用に取り組んでいます。
また、「YOKOHAMAグリーン調達ガイドライン」に基づく、調達品の管理を実施しています。全ての取引先に対して、SOC(環境負荷物質)含有有無の確認と非含有宣言書の提出をお願いしています。
国際ゴム研究会(IRSG)の提唱する、持続可能な天然ゴム経済実現を目指すSNR-i活動へ2017年から参画しました。
横浜ゴムは、2018 年に持続可能な開発のための経済人会議(WBCSD)のタイヤ産業プロジェクト(TIP)が中心となって設立した、持続可能な天然ゴムのためのプラットフォーム(GPSNR)に、設立メンバーとして参画しました。
2022年度は、会員情報の報告(Reporting Requirements)活動をスタートさせ、情報共有による透明性を向上させました。
また、サプライヤーのトレーサビリティ向上などについても他の会員企業と検討を進めています。

輸送に伴うCO2排出量の削減(現地調達化の推進)

北米に続き、中国の工場でも、日本から輸出していた原料を現地調達品に切り替えることができました。インド等の工場では、現地原料の採用を進めています(2023年末で95.3%)。

<インドの現地調達率の推移>

  • インド品は、インド国内からの調達品。地域品は、タイ、インドネシアなどの近隣東南アジアからの調達品です。

YOKOHAMAグリーン調達ガイドライン

製品含有化学物質管理の入り口管理として、取引先には当社の「グリーン調達ガイドライン」に沿った環境保全の取り組みと調達品の管理をお願いしています。そして、欧州ELV指令、改正RoHS(RoHS2)指令、REACH規則等国際協定に係る禁止物質が含まれていないことを確認しています。
また、「グリーン調達方針」に基づき、環境負荷基準に沿った原材料・外注品・副資材を購入しています。

Yokohama Tire Philippines, Inc. (YTPI) (フィリピン)

タイでの「アグロフォレストリー農園」の拡大

タイの天然ゴム加工会社(YTRC:Y.T.Rubber Co., Ltd.)はソンクラ大学 Sara教授の提唱するアグロフォレストリー農法に賛同し、その手法を近隣の農家や従業員の家族が所有するゴム農園へ紹介し、効果を検証する取り組みを拡大しています。
アグロフォレストリー(Agroforestry)とは、農業(Agriculture)と林業/森林地(Forestry)からの造語で、樹木の植栽の間で家畜を放牧したり農作物などを栽培したりすることをいいます。
「持続可能な天然ゴム調達の取り組み」の詳細はこちら

アグロフォレストリーによる期待される効果

天然ゴム林に果実、薬草、木材など複数の種類の作物から収穫があることで収入が安定し、また農園内の生物多様性が向上するなど多くの利点があります。特に天然ゴムは、植樹してから天然ゴムを産出するのは20~25年程度で、その後は産出量が低下していきます。そのため効率よく生産量を確保するには植え替え(Replanting)が必要です。しかしパラゴムノキが天然ゴムを作り出すには植樹後5~6年してからとなります。ゴム農家は、その間収入が途絶えるため、植え替えの時期が遅れたり、天然ゴム経営を断念したりすることがあります。天然ゴムを持続的に生産していただくためにもアグロフォレストリーは有効な手段となります。パラゴムノキの苗木が若くラテックスの収穫ができない時期の収入補助となる他に、次のようなメリットがあります。
天然ゴムは相場により価格が大きく変動します。天然ゴムが収穫できるようになった後も、農園に植えた多種類の作物により天然ゴム農家の収入の安定化に寄与します。
パラゴムノキには、一定の期間に一斉に葉を落とす落葉期(ウィンタリング)があります。それ以外の時期はほとんど葉を落とさないため、落葉期に落ちた葉が昆虫や微生物などに分解されると土の表面を覆うものがなくなり、土の乾燥が進むことがあります。しかし、さまざまな植物を植えることで、地表面が常に落葉で覆われやすくなり、土が乾燥から守られるようになります。また葉っぱは分解されることによりパラゴムノキの肥料となり、生産コスト削減にも寄与します。
パラゴムノキがかかる病気の一つに「根白腐病」があります。東南アジア地域では最もリスクが高いとされています。一度根白腐病が広がると、瞬く間に近くの木に広がってしまいます。病気が広がった土地では少なくとも5年はパラゴムノキを植えることができません。アグロフォレストリー農園には多様な植物が生えているため土中の菌類の種類も複雑になっています。そのためか根白腐病が発生しにくいといわれています。
また、ゴム農園にパラゴムノキだけの単作(モノカルチャー)ではなく多種類の植物があることで、それを利用する虫や鳥などが増え、生物多様性が豊かになるメリットもあります。

アグロフォレストリー農園

Sara教授と天然ゴム農家の方

<Sara教授のアグロフォレストリー農法の理論>

  • 天然ゴムの木の列の間にほかの樹木を植えて以下の相乗効果を得る。
  • ほかの樹木による天然ゴムの生長促進や収穫量拡大・寿命延長、化学肥料の使用量削減の効果
  • ほかの樹木自体からの収穫、果物・竹・木材として、農家の収入を増加
  • 従来のゴム単体の農園に比べて、本来の自然林に近い状態を維持
YTRC社では2016年から、Sara教授とともに、近隣の実験農園を指導し、実証を進めています。また、有機肥料を作成し、苗木とともに近隣農園や政府機関へ定期的に提供しています。(2023年度は、苗木14,602本を提供し、累計で196ha、69の農園を支援しています)
また、タイの天然ゴムサプライヤーについてもアンケート調査を行い、天然ゴム農家/農園の状況把握やCSR活動の展開内容等について情報を収集しています。

今後の課題

事業展開の拡大に伴い、環境影響を含む取引先情報についてのデータベースの構築が急務です。
また、取引先におけるセルフチェックを高いレベルで均一化させることを課題と認識し、問題点を洗い出し、CSR取引先説明会のメインテーマと捉え、向上を図っていきます。さらに上記を速やかに実施していくためにも、横浜ゴムグループ国内外拠点の調達担当者の一層のレベルアップを目指す必要があると認識しています。
併せて天然ゴム海外サプライヤーのアンケート集計結果の分析を進め、対応策を検討します。