生物多様性

KPI

  • 項目

    生産拠点における周辺地域生態系の生物多様性保全実施率

  • 2015年度実績

    (連結)39%
    (国内7拠点、海外4拠点)

  • 2016年度実績

    (連結)38%
    (国内8拠点、海外5拠点)

  • 項目

    該当地域で生物多様性に及ぼす影響

  • 2015年度実績

  • 2016年度実績

    ヨコハマタイヤリトレッド(YTRH)
    ウトナイ湖の近隣

  • 項目

    保護または復元されている生息地

  • 2015年度実績

  • 2016年度実績

    長野県豊丘村の里山保全および神奈川県平塚市土屋地区での里山保全、三重県伊勢市大湊海岸でのアカウミガメ産卵地の保全

  • 項目

    IUCNレッドリストおよび国内保全種リスト対象の生物総数

  • 2015年度実績

  • 2016年度実績

    排水先河川
    CR+EN:シャジクモ類の1種
    VU:メダカ(各河川)、カジカ大卵型(黒田川)、アカザ(天竜川)の3種
    NT:カマツカ(金目川)、ボウズハゼ(金目川)、コオイムシ(園部川)の3種
    軽度懸念:カワムツ(御殿川)、タモロコ(御殿川)、クロダハゼ(御殿川)、ナマズ(金目川)の4種

    工場敷地内および里山
    VU:キンランの1種
    NT:マツバランの1種

責任部門

各拠点

※活動は事業所が行い、環境保護推進室は事務局として生物多様性分科会を組織し、全社方針の審議や情報共有・活動の推進を行っています。

考え方・目標

なぜ「生物多様性」が重要取り組み項目なのか
理由と背景の解説

当社は天然ゴムをはじめとする自然資本(自然の恵み)に依存して事業を営んでいます。また、多くの生産工場では、装置を冷却するために大量の水を利用し、熱・二酸化炭素を放出しています。このような事業活動によって生じる自然環境への負荷が、現在地球規模で進んでいる生物多様性の喪失と決して無関係ではないと認識しています。この自然の恵みを与えてくれる多様な生命のつながり(=生物多様性)の保全と持続可能な自然資本の利用に取り組み、未来の世代に伝えていくことが、われわれの責務であると考えています。

生物多様性ガイドライン

基本方針

私たちは、自然が生み出す恵みに依存して事業を営んでいます。この恵みを支える「多様な生命のつながり=生物多様性」が、地球規模で急速に失われていることを認識し、事業活動を通じて生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用に取り組むことで、豊かな自然を未来の世代につなぎます。

行動指針
  1. 経営課題としての認識
    横浜ゴムは、生物資源を直接利用し、また生物多様性に影響を与える事業活動を行っていることから、自然の恵みの重要性と危機を認識し、長期的な視点で生物多様性の保全に取り組みます。
  2. 社員の全員参加
    自然の恵みに対する社員の意識を高め、すべての社員が業務や地域社会で生物多様性保全に貢献します。
  3. 生物多様性への影響の把握と低減
    事業活動が生物多様性に及ぼす影響を把握し、その影響を回避または最小化することに取り組みます。
  4. サプライチェーンを通じた生物多様性保全
    生物多様性保全は、資源の採取段階における配慮が重要であることを踏まえ、サプライチェーンにおける関係者との連携を通じて、資源採取地の生物多様性保全に貢献します。
  5. 生物資源の持続可能な利用
    生物多様性の保全に関わる知見を収集し、技術開発、設計・生産プロセスの革新や、バリューチェーンにおける生物多様性保全への取り組み等を通じて、生物資源の持続可能な利用に取り組みます。
  6. 情報の共有とコミュニケーション
    生物多様性保全に関する情報や社会要請の把握に努め、自らの活動成果を積極的に開示し、顧客や地域社会、NGOや行政など、ステークホルダーとの対話と連携を推進します。

目指す姿(達成像)/目標

「生物多様性の保全」については、事業活動が自然環境や生態系に与える影響を評価し、その影響がより良いものになるように保全活動を行っています。また、自然と共生し、環境マインドを持った従業員の育成を目指しています。そのために事業活動および社会活動を通じて活動を推進していきます。
「YOKOHAMA千年の杜」プロジェクトでは2017年までに国内外の生産拠点および関連部門の敷地内に50万本の苗木を植えることを目標にしています。

横浜ゴムの環境活動の方針

目指す姿に向けた施策

事業所のある場所は地理的、歴史的、文化的に異なる立地に位置しています。そこに生存する生き物も異なることから、事業所ごとの状況把握と課題設定が必要と考え、当社の生物多様性保全活動はステップ展開を行っています。事業所を取り巻く水域・緑地・自然保護区や住居・工場など、周辺環境を大まかに把握した後に調査した事業所のある周辺地域で、事業活動の影響のある河川などで水質の調査や出現生物のモニタリングを行い、評価対象生物を設定します。モニタリングを、年間を通して継続することにより事業活動の影響を評価し、保全する生物の対象を決定して保全活動を行い、結果を公表しています。
水質の調査として水温・電気伝導度・pHなど、生物のモニタリングとしては野鳥観察、植生調査、水生生物や昆虫の観察を行っています。
なお、国内7事業所でSTEP4の段階に入り、活動が継続されています。海外事業所でも順次活動を展開しています。

拠点 場所 水質 水生生物 植生 野鳥 昆虫 その他
三重工場 構内
構外 アカウミガメ
三島工場 構外
新城工場 構内
構外 両生類
尾道工場 構内
構外
平塚製造所 構内
構外
茨城工場 構内
構外
長野工場 構外
横浜タイヤリトレッド・北海道 構外
YTMT 構内
YTRC 構内
CHZY 構内
構外
YTPI 構内
YTMV 構内 哺乳類
構外

※ 生物多様性活動での実施の有無。

YOKOHAMA千年の杜

2016年末までの植樹本数は累計45万3千本に達しました(達成率 91%)。森の成長と環境の変化を評価するために、成長量の調査(樹高、胸高直径の測定)と工場敷地内に出現する野鳥の調査を行っています。苗木の成長量の調査から千年の杜の二酸化炭素の固定量を算出しており、千年の杜の二酸化炭素固定量が一般的な広葉樹林よりも多いことが分かっています。これは、多種類の樹種を混植・密植することの効果であると考えています。
平塚製造所での野鳥調査では、これまでに工場敷地内で55種類の野鳥が観察されています。植樹3年目からは、森林を好むアカハラが見られるようになりました。これは、野鳥にとって千年の杜が本来の森として機能していると考えられます。また、センダイムシクイや水辺で見られるオオヨシキリが観察されており、野鳥が生息域を移動する途中で寄る中継地点として千年の杜が機能しているのではないかと考えられます。

2016年度の活動レビュー

国内7拠点および海外拠点ではタイのタイヤ工場と天然ゴム加工工場および中国・杭州のタイヤ工場でStep4を継続しています。

天然ゴムを持続可能な資源とするためのイニシアチブに参画

横浜ゴムは、国際ゴム研究会が提唱する天然ゴムを持続可能な資源とするための活動(Sustainable Natural Rubber Initiative、SNR-i)の趣旨に賛同し、活動に参画しました。

地域コミュニケーション

平塚製造所での施設公開イベント「第8回ThinkEcoひらつか」にて、昨年に引き続き第3回生物多様性パネルディスカッションを開催しました。「平塚の水辺のために何ができるか~水でつながる山・里・川~」をテーマに従業員、地域住民、環境NPO等をはじめ、多くのステークホルダー(約40名)の方に参加いただき、横浜ゴムの生物多様性に関する成果報告と今後の活動への指針の共有化が図られました。

生物多様性海外担当者集合研修

9月に海外3拠点の生物多様性担当者を集め、集合研修を行いました。研修では生物多様性の基礎知識をはじめモニタリング調査の目的や実際の実施方法を、実習を交えて行いました。また各工場で今後どのように生物多様性保全活動を推進していくかを工場ごとに発表とディスカッションを行いました。

従業員教育

生物多様性保全に事業を通して取り組み、従業員全員が生物多様性の恵みを意識して行動するために人材育成を通して従業員への浸透を図っています。若手従業員を対象とした「テクノカレッジ」の1コースとして生物多様性を取り上げ、座学、モニタリング体験及びワークショップを通して理解を深めています。

事例紹介

平塚製造所

平塚製造所は複数の事業部・部門の集合体であることから、従業員教育の場として生物多様性活動を行っています。
活動は金目川の下流域と中流域で、行っています。
金目川ではセッカ、カワセミ、オオヨシキリ、モズなどの鳥類、ニホンウナギ、シマヨシノボリ、ボウズハゼなど回遊性の魚類が見られることから河川と海とが健全な状態でつながっていることが示されました。一方、植生調査ではオオブタクサやアレチウリなどの外来種が多く見られたことから保全活動として特定の外来種の抜根を行うことにしました。昨年までに累計で約230名の従業員が参加して、約1.6トンの外来種を除去しました。
毎年3月には金目川水系流域ネットワークの呼びかけに賛同して、地域の自治体や団体とともに河川清掃を行っています。
また平塚市土屋地区の駒が滝近くの休耕地をお借りして谷戸田に手づくりのビオトープを創設するなど、里山を再生する活動を2015年より開始しました。
さらに、2017年5月には事業所敷地内に手作りのトンボ池を設置し、この池に集まるトンボやチョウ、カエルなどを観察して生き物のつながりを身近に感じられる活動を開始しました。

三重工場

3つのチームで以下のとおり、生物多様性保全活動を継続しています。

  • ブラックチーム:工場排水先河川(桧尻川・ほとす川)での水質調査とメダカなどの水生生物調査
  • ノッポチーム:流下先の海岸(大湊海岸)での外来種抜根と在来植物の株数の測定、アカウミガメの産卵調査の実施
  • チビッコチーム:工場の雨水調整池でのビオトープづくり、水質調査と生物調査の実施、とんぼ、水生生物調査、水質測定

地域の大湊小学校にて出前授業を行いました。大湊小学校の子ども達とは、大湊海岸の生き物について学び、一緒に外来種の抜根を行いました。
また、伊勢市鹿海町自治会の皆さんと共に町内を流れるホタルが生息する川での水質調査および生き物調査、また湿地帯にあるハンノキ群生地の調査も継続しています。

三島工場

工場排水の流出先である御殿川での水質調査および生物調査をどぜう・すっぽん・うなぎの3つのチームで継続して実施しました。
御殿川ではハグロトンボやコヤマトンボのヤゴ、オイカワやカワムツなどの魚類、クサガメなどのは虫類、カワセミなどの鳥類など多様な生き物が暮らしていることが確認されています。一方、河川に投棄されるゴミが多く、御殿川を美しく保つために少しでも貢献していきたいとモニタリングの後に河川清掃を行っています。
また、狩野川の旧河川敷の灰塚川の再生活動をNPO法人 グラウンドワーク三島さまと共に行っています。

新城工場

工場排水の流出先である野田川、黒田川での水質および水生生物の調査を実施。工場内では休止していたビオトープを復元して、工場排水でもメダカが住め、生き物の生息に悪影響を与えていないことを実証しようとしています。
四谷千枚田では休耕田にビオトープを作り、維持しています。ビオトープではサワガニやトノサマガエル、モリアオガエル、アカハライモリなどの生息が確認されています。
7月7日には新城市の紹介で第8回中部環境先進5市サミットに参加し、活動の広がりを目指して工場の生物多様性保全活動を紹介するなど他団体との交流を深めました。

尾道工場

尾道工場では藤井川の西藤親水公園での水質調査と水生生物・鳥類・植生の調査および工場内での野鳥観察および昆虫観察を行っています。
藤井川での水生生物調査では、モンカゲロウ、ニホンカワトンボ、ヤマサナエなどの水生昆虫、タモロコやドンコ、シマヨシノボリなどの魚類、モクズガニやスジエビなどの甲殻類が観察されました。
工場敷地内では、千年の杜の成長による森の形成や、藪、草地、雨水による池と湿地形成により生き物のためのさまざまな環境がモザイク状に提供されており、トンボ類、チョウ類、コオロギ類、キリギリス類の生息環境となっていることが示された。またヒバリの営巣、モズやジョウビタキの縄張り形成、ウグイスの越冬などに工場敷地が寄与していることが示されました。
6月3日に開催された第41回藤井川の夕べでは、工場での生物多様性活動の紹介と千年の杜の苗木200本の配布を行いました。

長野工場

長野工場は、他工場に比べて自然度の高い地域に位置する工場です。雨水以外の排水がほとんどなく、横浜ゴムの他の工場と比べて環境影響度の低い工場であると考えています。
長野工場の位置する天竜川とその支流である大島川の合流地点付近および寺沢川の親水公園での水質調査、水生生物調査、野鳥調査および植生調査を行っています。モニタリングでは長野県の準絶滅危惧種のアカザや絶滅危惧I類のシャジクモが見つかりました。
長野県が進める「森林(もり)の里親促進事業」に基づき豊丘村の村有林の整備で協力する「森林の里親契約」を豊丘村と結びました。

茨城工場

工場の排水先である園部川での水質調査と生物調査を実施しました。生物調査は植生、水生生物、鳥類の調査を行っています。園部川は農業用水として利用されていることから排水の水質について十分に注意を払っています。工場排水の放出口から出た水は、園部川の元の水に比べて電気伝導度が低く、透視度が上がっていることから、工場排水は十分な管理ができていると考えています。工場事務所玄関に水槽を設置し、工場排水をしようした水で、園部川で捕獲した魚を育てています。水生生物調査では、茨城県の準絶滅危惧種のコオイムシが確認されています。
園部川の土手に繁茂していたオオブタクサ、セイタカアワダチソウ、アレチウリをモニタリングの際に除去してきました。その成果か、これら3種の外来種の被植率が低下してきました。
また、2015年から工場内の鳥類調査を開始しました。園部川での観察結果との比較により環境の違いを考察することで、これまで以上に周りの生き物に対して親しみが持てるようになりました。
これらの活動は日本野鳥の会茨城県さま、小美玉生物の会様にご指導いただいています。小美玉生物の会のホームページで茨城工場での生物多様性保全活動の様子をご紹介いただいています。

ヨコハマタイヤ・マニュファクチャリング・タイランド(YTMT)

タイのタイヤ工場であるYTMTは、工業団地内に立地しています。日本の工場と異なり、工業団地が取水および排水を一括管理していることから、工場単独での取水・排水域への影響は確認できていません。そこで、敷地内の緑地(千年の杜やビオトープ)を評価するための鳥類、昆虫類のモニタリングを実施しています。工場敷地内で豊かな生息環境を再生するために湿地型および池沼型の2種類のビオトープを作成しています。また水面と地面との生き物のつながりを保つための植栽にも工夫を加えています。地域の生物の生息域を確保するとともにこの活動を通じて、従業員の環境教育も行っています。
また、世界自然遺産のカオヤイ国立公園に生息する野生動物保護を目的とした塩土作りも行っています。

Y.T.ラバー(YTRC)

YTRCは、タイのスラタニ県にある横浜ゴムグループで唯一の天然ゴムの加工工場です。天然ゴムの加工工程では大量の水を利用しますが、100%リサイクルすることで水資源の有効活用に努めています。
敷地内の遊水地で水生生物(魚類)と水質のモニタリングを2014年11月から定期的に行っています。遊水池は隣接するタッピー川と雨期の増水期につながり、同種の魚類が生息していることが分かりました。また、遊水池内の異なる地形が生息環境の異なる魚類が共存できる環境を提供していることが観察により明らかとなりました。現在遊水池には17種類の魚類が繁殖していることが確認され、鳥類も21種類が確認されています。タッピー川の魚類の種の保存、遺伝子の保存に寄与することが分かったため、今後は遊水池の水質をよりタッピー川に近づけられるように水質が向上するように工場での循環水の削減を図っています。

杭州横浜輪胎有限公司(CHZY)

CHZYは中国 杭州市内の工業団地に立地しています。工業団地内は緑地帯が確保されているものの構成樹種が少なく、多様性は豊かではありません。そのためCHZYの千年の杜が森林性の生物に対する生息地になるのではとの観点から千年の杜の評価とそこに住む生き物の調査を行っています。
また、工場近くを流れる銭塔江には多くの水路がつながっていますが生活排水の流入等により水質の悪化が懸念されています。このうちの1つの水路を水質改善のモデルケースとして杭州師範大学や行政と共に生物多様性保全活動を実施しています。

ヨコハマタイヤ・フィリピン(YTPI)

YTPIはフィリピン共和国パンパンガ州クラーク特別経済区に位置し、周りにはまとまった森林がありません。そのため、工場の千年の杜が森林性の生き物に生息環境を与えるのではないかと考え、千年の杜の樹種および鳥類および蝶と蛾の調査を行っています。

課題と今後の改善策

これまでは、横浜ゴムグループの事業活動の影響を受ける地域に生息する生物種の把握を中心に活動してきました。今後は海外拠点への展開と、各事業の地域の生物多様性保全の維持・改善を行い、持続的な操業につなげていきます。
生物多様性は一般の人にとってはまだなじみのない概念であるため、モニタリング活動や保全活動への参加によって、従業員に生物多様性保全の大切さへの理解を深めていくことと、地域への情報発信を積極的に行うことによって当社の取り組みを理解していただく活動を進めていきます。