2017 Super Taikyu Series (1)

前身のN1耐久ラウンドシリーズ発足から、四半世紀を超える歴史を刻んでいるスーパー耐久シリーズ。ヨコハマタイヤがワンメイクタイヤサプライヤーをつとめるシリーズは、世界に名だたるスーパースポーツカーから街中でもお馴染みのコンパクトカーまで、多彩な車種が長丁場を競い合う。このシリーズの見どころ、コンセプト、そして将来の展望を検証してみよう。


「スーパー耐久シリーズ」とは

参加者はもちろん、ファンからも“S耐”の愛称で親しまれている「スーパー耐久シリーズ」。1991年に発足したN1耐久ラウンドシリーズを前身として、1996年に「スーパーN1耐久シリーズ」、そして1998年からは現在の「スーパー耐久シリーズ」として四半世紀を超える歴史を刻んできている。

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国内の主要サーキットを転戦し、長丁場の耐久レースを舞台に複数のクラスで競い合うスタイルはN1耐久時代から変わらない。1台のマシンを複数のドライバーがリレーしてチェッカーを目指すが、そこにはドライバーやマシンの速さに加えて、ピットワークの迅速さやチームの戦略といった要素も加わり、これこそが耐久レースの醍醐味である。

また、発足当初からの“参加型レース”というスタンスも今日まで不変だ。自動車メーカーのワークスチームや世界の檜舞台を戦ってきたプロドライバーが主役というわけではなく、参加する全てのチームやドライバーが主役として競い合っている。

こうした歩みにより盛り上がりを見せるスーパー耐久シリーズ、2017年は60台を超える年間エントリーを集めている。



スーパースポーツからコンパクトカーまでが競演

スーパー耐久シリーズにおける大きな特徴と言えるのが、参戦するマシンがバラエティ豊かであるということだろう。SUPER GTのGT300クラスでも見られる生粋のレーシングマシンであるFIA GT3から、街中で目にする機会の多いコンパクトカーまで、まさに多種多彩な車がコース上を駆けている。

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もちろん、これらは規則によっていくつかのクラスに分けられており、それぞれのクラスで覇を競い合っている。シリーズランキングもクラス毎の争いとなっており、言い換えれば複数のレースがひとつのコース上で同時進行しているようなものだ。

さらにレースが長丁場の耐久であることから、この“複数同時進行”が耐久レースならではの面白さを見せる場面も多い。トップスピードやコーナーリングスピードの違いから、他クラスのマシンを巧みに利用してマージンを稼ぐことも可能であるし、長丁場になるとコンパクトカーが上位に食い込んで思わぬ下克上を果たすケースもあり得るからだ。

2017年のクラス区分は以下の通り。2017年はTCR車両とFIA GT4車両を対象としたクラスが新設され、全8クラスで競われる。


クラス 区分規定 主な車種
ST-X FIA GT3公認車両 日産・GT-R、フェラーリ488、SLS AMG
ST-Z FIA GT4公認車両
ST-TCR TCR規格車両 ホンダ・シビック、アウディ・RS3
ST-1 3501cc以上の車両でSTOが認めた車両 BMW Z4、ポルシェ911
ST-2 2001cc~3500ccまでの4輪駆動車両 スバル・WRX STI、三菱・ランサー
ST-3 2001cc~3500ccまでの2輪駆動車両 レクサス・RC350、レクサス・IS350、日産・フェアレディZ
ST-4 1501cc~2000ccまでの車両 トヨタ・86、スバル・BRZ、マツダ・ロードスター
ST-5 1500cc以下の車両 ホンダ・フィット、マツダ・デミオ、トヨタ・ヴィッツ


2017年、新たな歴史の1ページを刻む“S耐”

2017年のスーパー耐久シリーズは、栃木県のツインリンクもてぎで4月1日~2日に開幕した。開催順が一部入れ替わっているものの、東北から九州まで6つの主要サーキットを転戦することは昨年と同様。

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レースは大きくふたつに分類される。ひとつは全てのクラスが決勝を混走する1レース制で、これは特に長丁場となる鈴鹿と富士の大会で採用される。鈴鹿は予選結果を受けた敗者復活戦のある“サバイバル”が復活。一方で富士は9時間というシリーズ最長の一戦となる。

もうひとつは、いくつかのクラスを2つのグループにわけて、それぞれに決勝を行う2レース制。こちらは富士と鈴鹿以外の4大会で採用されるが、今年はグループを構成するクラスの設定が一律ではなく、大会によってシャッフルされることになった。単純に絶対的なラップタイムの速さを基準にグループ分けされると、全体としてスプリント色が濃い展開となる。対してラップタイム差の比較的大きなクラスを同一グループとした場合には、クラス違いのマシンを使ってマージンを築いたりする耐久レースならではの戦略が勝敗を左右する要素としてクローズアップされることになる。

さらに注目すべきは、新しいメディア戦略の展開だ。シリーズを統括するSTO(スーパー耐久機構)が自ら情報発信を強化、“メディアプロジェクト”と銘打ってYouTube LiveやSNSを複合的に活用した現場からの情報発信を行う。レース展開はもちろん、個性的なドライバーやチームの素顔を紹介したり、サーキットの華であるレースクィーンも余すところなく採り上げられる。

こうして新機軸も採り入れながら、ますますの発展を遂げていくスーパー耐久シリーズ。その足元を支えるコントロールタイヤを供給するのは、2017年も引き続きヨコハマタイヤがその責を担う。



次のページでは、シリーズを統括するSTOの桑山晴美事務局長と事務局の三村壮太郎さんに、2017年のスーパー耐久について詳しくお聞きいたします。