SUPER GT 2014 (4)

激戦続くSUPER GTは、早いもので全8戦のうち5戦を終了。ここまでのヨコハマタイヤ勢は、GT500クラスでは第2戦の富士で「D’station ADVAN GT-R」が4位を獲得、「WedsSport ADVAN RC F」は同大会と続く第3戦のオートポリスでシングルポジションを獲得した。また、GT300クラスでは3勝を飾り、中でも第4戦・SUGOではトップ10を独占するなど好調な展開が続いている。
今回はここまでのダイジェストをお届けするとともに、SUPER GTのタイヤ開発を統括する藤代秀一エンジニアに、これまでの総括と今後の展望について語ってもらった。


2台のヨコハマタイヤ装着車の巻き返しに期待がかかるGT500クラス

GT500クラスの「D’station ADVAN GT-R」と「WedsSport ADVAN RC F 」

今年からGT500は車両規定を一新。DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)との共通モノコックを使用し、エンジンは排気量2000ccの直噴・直列4気筒ターボ。すべてニューマシンに改められて、新たな戦いの火ぶたが切られることとなった。
GT500にヨコハマタイヤとともに挑むのは、LEXUS TEAM Wedssport BANDOHの「WedsSport ADVAN RC F」とKONDO RACINGの「D’station ADVAN GT-R」の2台。それぞれ脇阪寿一選手と関口雄飛選手、ミハエル・クルム選手とルーキー佐々木大樹選手の強力布陣を敷くこととなった。

しかし、2チームとも今年はやや苦戦を強いられて部分があるのは、紛れもない事実である。第2戦の富士スピードウェイでこそ、「D’station ADVAN GT-R」が4位、そして「WedsSport ADVAN RC F」も7位とダブル入賞を果たしたものの、開幕戦の岡山国際サーキットと第5戦の富士スピードウェイでは揃ってノーポイント。
「WedsSport ADVAN RC F」が第3戦のオートポリスで8位に、そして「D’station ADVAN GT-R」も第4戦のスポーツランドSUGOで9位につける力走を見せたが、あと一歩の伸びが期待される展開となっている。

その結果、第5戦を終えた段階でのチームランキングは、「D’staion ADVAN GT-R」が13位、そして「WedsSport ADVAN RC F」が14位。これまでの戦いで、2台ともに速さを見せる場面もあり、「D’staion ADVAN GT-R」は開幕戦の決勝前フリー走行と第2戦の予選前公式練習で、一方の「WedsSport ADVAN RC F」も第3戦の決勝前フリー走行で、それぞれトップタイムをマークしている。
シリーズ最長の一戦となる鈴鹿1000km以降、終盤戦の巻き返しに期待がかかるところである。


ヨコハマタイヤ勢が王座争いの主役を演じるGT300クラス

 GT300クラスは多くのチームがヨコハマタイヤで参戦する

一方、24台中19台がヨコハマタイヤを装着するGT300では、5戦3勝と快進撃が続く。
「グッドスマイル初音ミクZ4」を駆る、谷口信輝選手と片岡龍也選手が開幕2連勝を果たしたのはご存知のとおり。しかし、続く2戦の足踏みがあって現時点ではランキングのトップを明け渡してしまったが、差はごくわずかとあって第6戦・鈴鹿サーキットでの再逆転に期待がかかる。

そして、チームランキング4~6位はいずれもコンスタントな入賞が光る、「LEON SLS」の黒澤治樹選手と黒澤翼選手、「Studie BMW Z4」のヨルグ・ミューラー選手と荒聖治選手、「B-MAX NDDP GT-R」の星野一樹選手とルーカス・オルドネス選手。
この3チームは未だリタイアがなく、まだまだパワーを蓄積中。

また、悪天候にライバルが翻弄された第4戦においては、優勝を飾った「マネパランボルギーニGT3」の織戸学選手と青木孝行選手を筆頭に、表彰台どころかトップ10すべてを占める大偉業も達成! こんなレースが再現されることを期待したい。


シリーズ最長の一戦や新サーキットでの一戦など、見どころ満載の後半戦!!

2012年の鈴鹿1000kmは「D’station ADVAN GT-R 」が3位表彰台を獲得

残る3戦は、鈴鹿サーキット、そして初開催のタイ、ブリラムサーキットを経て、最終戦のツインリンクもてぎが舞台となる。
第6戦の鈴鹿は、言うまでもなく1000kmレースとして開催され、シリーズ最長ほぼ6時間の戦いだ。そんな長さもさることながら、厳しい暑さをもライバルとせねばならぬ過酷な戦いながら、「D’station ADVAN GT-R」が昨年こそリタイアしてしまったものの、一昨年は3位でフィニッシュし、表彰台の一角を占めている。そして、「WedsSport ADVAN SC430」は昨年6位と、ヨコハマタイヤにとっては決して相性は悪くない。ウエイトハンデも少ないことから、この長丁場では躍進も期待できるのではないか。

GT300では、100kg近いウエイトハンデを積んでいるが、「グッドスマイル初音ミクZ4」をダークホースとして上げておきたい。
昨年は車両規定の違反によって失格となったものの、2位でフィニッシュ。その要因として、4回義務づけられたピットストップを、敢えて5回とし、自分たちのペースをクリアラップを取りながら保つ、戦術の妙があったからだ。そういった引き出しの多さで、この過酷な戦いを切り抜けて欲しいもの。

第4戦ではGT300のトップ10を独占したヨコハマタイヤ勢

続くブリラムは現在建設中で、SUPER GTがこけら落としとなるため、どんな戦いになるか予想もつかないものの、どのチームもデータを持たないことは、同じスタートラインに立つことも意味している。
約4.5kmのコースレイアウトを一見する限り、テクニカルな要素が強そうだが、1コーナーとヘアピンを挟んだ3本のストレートでは、エンジンパフォーマンスを試されるかもしれない。

そのブリラムでのレースで半減されたウエイトハンデは、最終戦のもてぎで全車下ろされる。つまり開幕戦同様、全車同じ条件での戦いとなるわけだ。
おそらくGT300勢にはヨコハマタイヤを履くチーム数台がチャンピオン候補として、このレースに臨むことになるはずだ。レース距離が通常より50km短い250kmでの戦いとあって、またストップ&ゴーの繰り返されるレイアウトは、それほどタイヤに高い負担を与えない。ペース配分をそれほど気にせず走れることもあり、候補チームが全力を尽くせることを祈りたい。
そしてGT500勢には、最後に一矢報いることが期待される

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]
 SUPER GTのタイヤ開発を統括する藤代秀一エンジニア

今季GT500に関してはマシンが変わりましたが、それに対する対応という部分ではニューマシンでのテスト機会が少なかったために、若干出遅れてしまった状況はあったかと思います。車両に合わせたタイヤのチューニングという点で後れをとってしまったように感じています。

しかし、その一方で開発の基本方針というところは昨年からずっと変わっていません。レースラップの安定性や、高いコーナリングフォースを出すという部分へのアプローチに関しては、非常に順調に進められたという認識です。
ただ、それを結果に結びつけられなかったというのは、やはり先に述べた出遅れた部分があったためではないかと考えています。クルマが変わったことによって、タイヤへの基本的な要求は変わっていないと思いますが、ダウンフォースが増えてタイヤに掛かる全体的な負荷はかなり増えていますし、加えてタイヤサイズが小さくなったことで、特にフロントへの負荷が高くなったことは間違いありません。
そのあたりについての対策、パフォーマンスと耐久性の両立という部分で、前半戦は予想以上に大変だったなと。テストのときには感じなかったものが、開幕してからの実戦で見えて来たりしました。
そういう意味で、GT500では順調に行っていた部分と、予想外に手をかけなければならなかった部分が混在し、結果が出なかったというイメージでした。

GT300については、順調に開発は進んでいると思います。基本的にはGT500で作った要素を展開していくことがメインなのですが、良いペースで展開・評価・実戦投入が出来ていると考えています。

[Photo]

去年FIAGT3勢が結構苦しい環境にあったと思うのですが、今年はそれが若干緩和されたというか。もちろんもっと圧倒出来るようなパフォーマンスを発揮出来れば良いのですが、勝ち負けが出来るレベルで戦えているということで、順調に進んでいると言えるでしょう。

後半戦に向けては、もうあまりテスト機会がないのですが、前半手をかけさせられた部分が落ち着いて来て、もっとパフォーマンスの部分に注力出来るのではないかと考えています。そうすれば、前半戦よりももっと結果に繋がってくるだろうと。

まずは鈴鹿で表彰台を狙って行きたいですし、タイについては過去のデータがありませんが、国内で使用しているタイヤが、コンストラクション的にタイで合わないということはないでしょうから、そこは心配していません。ゴムに関しては、事前に情報を出来るだけ集めて対応したいと考えています。
鈴鹿で結果を出して、良い形でタイに臨めれば。その上で良い流れで最終戦のもてぎを戦いたいですね。