2021 SUPER FORMULA Round 5 Report

【SUPER FORMULA 第5戦 / もてぎ】

圧巻の走りでコースレコードを更新から決勝レースも制した野尻智紀選手
今シーズン3勝目でチャンピオン獲得へ大きく近づいた!!

SUPER FORMULA Round 5

開催日 2021年8月28日~29日
開催場所 ツインリンクもてぎ
(栃木県)
天候 曇り
路面 ドライ
決勝周回数 35周
(1周=4,801m)
参加台数 19台
SUPER FORMULA 第5戦

2021年の「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」第5戦が、ツインリンクもてぎで開催され、野尻智紀選手(TEAM MUGEN)が公式予選でコースレコードを更新してポールポジションを獲得。翌日の決勝でも危なげない展開で、今季3勝目をマークした。

前戦SUGO大会から約2か月という長いインターバルを挟み、SUPER FORMULAはいよいよシーズン後半戦へと入る。第4戦を終えた時点でチャンピオン争いをリードしているのは野尻選手で、2位につけている大湯都史樹選手(TCS NAKAJIMA RACING)との差は17ポイント。有効ポイント制のため、最終的に削られるポイントもあるとはいえ、実に大きなアドバンテージを持って後半戦へと入ることになった。

そんな野尻選手だが、開幕2連勝を飾ったのち、第3戦、第4戦ではポイント獲得はなったものの、予選、決勝共にやや満足のいかない大会が続いた。加えて今シーズンのもてぎラウンドは、今回と次戦の2大会が予定されているが、これまで野尻選手のもてぎラウンドの成績は2015年の6位が最高位。アドバンテージがあるとはいえ、自分と同じように連勝を飾るライバルが出てくれば一気に点差を詰められる可能性もまだまだ残っている中で、再び開幕戦の頃の勢いを取り戻せるかどうかが注目された。

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迎えた公式予選日の8月28日(土)は、朝から気温が30度を超える、灼熱のもてぎラウンドにふさわしい陽気に。しかし雲も多く日差しが遮られることもあったせいか、例年に比べると路面温度はやや低いコンディションで公式予選がスタートした。今大会も、SUGO同様にQ2までA、Bの2組に分けてセッションを実施となる。

まずはQ1のA組で、「ストップ・ザ・野尻」の先頭に立つ大湯選手が1分32秒342のトップタイムをマークしてQ2進出を決定する。しかし、B組に登場した野尻選手は、なんと大湯選手のタイムを約1秒上回り、1分31秒336という驚異的なタイムを記録する。同じ組で2番手通過を果たした松下信治選手(B-Max Racing Team)に対しても約1秒という、近年のSUPER FORMULAでは見ることのない、とてつもない差をライバル勢に突きつけた。

続くQ2でも、野尻選手は自己ベストタイムを更新する1分31秒110をマーク。昨年更新されたばかりのコースレコードのブレイクまであとわずかに迫った。注目のQ3は、先頭でタイムアタックに入った野尻選手が1分31秒073をたたき出し、見事コースレコード更新を達成した。

ライバル達もセッションごとに走りやマシンがアジャストされて、Q1のような衝撃的な差は生まれなかったが、それでも2番手の関口雄飛選手(carenex TEAM IMPUL)とは0.245秒と着実な差をつけた。3番手には松下選手、4番手には宮田莉朋選手(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が入ったが、宮田選手はエンジン交換を行っているため10グリッド降格のペナルティが決定しており、4番グリッドには大湯選手が着くこととなった。

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一夜明けた決勝日は、予選日以上に雲が広がる曇天になった。ただ心配されていた雨は落ちてくることなく、終始ドライコンディションで35周による戦いが行われた。順当な蹴り出しでトップの野尻選手が先頭で1コーナーを通過。一方、抜群のスタートダッシュでポジションを上げてきたのが5番手スタートの平川亮選手(carenex TEAM IMPUL)だった。平川選手は動き出してすぐに大湯選手をかわすと、そのまま松下選手にも襲い掛かる。2台は並んで1コーナーへと入っていくが、松下選手がなんとか踏ん張り3番手を死守。平川選手は4番手に落ち着いた。

もてぎではスタート直後が最大のオーバーテイクチャンスとあって、各車がオーバーテイクシステム(OTS)を点滅させながら激しいポジション争いを繰り広げる。その中で、8番手スタートの福住仁嶺選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)に背後の山下健太選手(KONDO RACING)がわずかに接触。福住選手はV字コーナーでマシンをスライドさせてしまう。

オープニングラップの混戦模様の中でのアクシデントで、後に続くマシンはなんとか多重クラッシュを回避しようとオーバーランしながらも福住選手のマシンを避けていったが、スペースがなかった塚越広大選手が福住選手のマシンに乗り上げるように接触してしまった。

これで2台はマシンにダメージを負い、またこのアクシデント回避の中で大嶋和也選手(NTT Communications ROOKIE)も他車に追突されストップ。開始早々に3台が戦列を離れ、レースはセーフティカーが導入された。

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5周目にセーフティカーが隊列から離れてレースが再開すると、先頭の野尻選手はファステストラップを更新しながら関口選手に対するリードを広げにかかった。対する関口選手は、10周目に入ったところでいち早くタイヤ交換をすませ、アンダーカット作戦に出る。「ここ数戦、ピットインを引っ張って失敗した部分があったので、今回は真後ろにいる選手に対してどう反応するかを決めていた」と後に記者会見で話した野尻選手は、関口選手のピットインを見ると翌周に自らもピットイン。チームの作業も素早く、野尻選手は関口選手のアンダーカットを阻止し実質トップを守ってコースに復帰した。

その後、続々と他車がピット作業へ向かっていき、野尻選手の見た目上のポジションもじわじわと上がっていく。26周目に平川選手がピットインし、これで全車がピット作業を完了。野尻選手がトップに戻り、あとはチェッカーを目指すのみとなった。関口選手との差は、残り3周の時点で3.4秒。最終ラップで、関口選手が1周丸ごとOTSを作動させて一気にギャップを削ってきたが、1秒届かず。野尻選手がトップチェッカーを受け今季3勝目をマークした。

2位の関口選手に続いたのは、終盤の平川選手からの激しいプッシュをしのぎきった松下選手。34周目のS字コーナーで、平川選手がOTSを使いながらイン側から鋭く切り込んできたが、オーバースピードでスライドしてしまい、冷静にクロスラインで3番手をキープした松下選手が今季初表彰台を獲得した。

DRIVER VOICE

野尻智紀 選手 [TEAM MUGEN]

【今回の成績 : 優勝】
ホンダのホームコースであるもてぎで、何としても勝たなければと思ってこの週末に臨みましたが、その思いをすべてぶつけて、結果も出すことができました。シーズン後半戦のもてぎ2連戦は非常に大きな意味を持ってくるのは理解していたので、SUGOからの長いインターバルはそれを意識して過ごしてきました。もてぎでは過去2シーズン、とても苦労しましたが、その苦労が活きたラウンドになったと感じています。支えてくれたチームの皆に感謝していますし、このチームの強さを残りのレースでも示したいですね。

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

今回、野尻選手は予選から非常に素晴らしい走りを見せてくれました。Q1では1秒以上、他のドライバーに差をつけていましたが、彼一人だけ、このクルマとコース、コンディションならこれぐらいのタイムが出るだろうというのが見えていて、ミスすることなくその位置に持ってきたという印象です。

他のドライバーたちも、Q3に向けていろいろと調整してきた結果、最終的なタイム差は縮まりました。SUPER FORMULAに参戦しているレベルのドライバーは、野尻選手と同じようなところに持って行くだけの力を持っていますが、彼だけが最初からそのレベルに届いていたというように見えました。

今シーズンはもてぎ大会が2連戦となります。これまで開催していた夏の時期と異なり、次戦は経験のない秋のレースで、あまりもてぎでは経験のない温度域での戦いになると予想しています。タイヤのウォームアップのさせ方などに影響があるかと思いますが、今度は誰がいち早くその正解にたどり着いてスピードを発揮してくれるのか、楽しみにしたいと思っています。