2021 SUPER FORMULA Round 2 Report

【SUPER FORMULA 第2戦 / 鈴鹿】

野尻智紀選手が2連勝で選手権争いを大きくリード、
ルーキーのジュリアーノ・アレジ選手も迫力のバトルを展開!!

SUPER FORMULA Round 2

開催日 2021年4月24日~25日
開催場所 鈴鹿サーキット
(三重県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 30周
(1周=5,807m)
参加台数 19台
SUPER FORMULA 第2戦

2021年の「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」第2戦が、伝統の鈴鹿2&4レースとして開催。決勝序盤は予選トップの福住仁嶺選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がレースメイクをしていたものの、タイヤ故障により戦線離脱。トップチェッカーを受けたのは野尻智紀選手で、開幕戦に続き2連勝を飾ることとなった。

今大会、世界耐久選手権(WEC)に出場する中嶋一貴選手の代役として、ジュリアーノ・アレジ選手(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が大抜擢を受けた。アレジ選手は併催される全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権とのダブルエントリーで、大忙しの週末となったが、体力面では全く問題ない様子を見せ、レースでも手に汗握るバトルを次々と展開しファンからの注目を集めた。

また、開幕戦を欠場したB-MAX RACINGが、松下信治選手を迎えて今回から登場。松下選手は2018年にSUPER FORMULAデビューを飾ると翌年にはFIA F2選手権へと羽ばたいていった。昨年はシーズン後半戦のスポット参戦で、最終戦で見事表彰台を獲得。今季の参戦に関しては大きな話題を集めており、第2戦でようやく走行する姿をファンの前で披露できることになった。

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

そんな数々のトピックスで注目された今大会となったが、土曜日の予選でポールポジションを獲得したのはフリー走行から好調だった福住選手。開幕戦優勝の野尻選手は手堅く2位をキープ、3位は大湯都史樹選手(TCS NAKAJIMA RACING)で、開幕戦決勝レースと同じ顔触れがトップ3に並び、以下、平川亮選手(carenex TEAM IMPUL)、笹原右京選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が続く。注目のアレジ選手はQ3まで進出し、予選8位。松下選手は12位だった。

一夜明けた決勝日。前日は薄曇りだった上空も爽やかな青空が広がり、気温23℃、路面温度33℃というコンディションで、14時30分に決勝レースのスタートが切られた。フォーメーションラップに向かうところで、15番グリッドの阪口晴南選手(P.MU/CERUMO・INGING)がエンジンストールで出遅れ、最後尾に下がってしまうというトラブルはあったものの、他のマシンは問題なくグリッドへと到着し、いよいよシグナルがブラックアウト。30周の決勝レースがスタートした。

最前列に構えた福住選手と野尻選手は好スタートを切る一方、大湯選手は動き出した直後にエンジンストール気味になってしまい失速。後続に飲み込まれ大きく順位を落とし、代わって3番手には平川選手、4番手に笹原選手が続く。また、アレジ選手も初めてとなるSUPER FORMULAのスタートで12番手に後退。

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

ホールショットを奪った福住選手は、オープニングラップから後続の追従を許さないハイペースで周回を重ねっていったが、9周目、スプーンカーブを抜けてバックストレートに入ったところで右リアタイヤが故障し、スローダウン。野尻選手、平川選手らにかわされていく中なんとかマシンをピットロードまで運ぶと、そのままガレージイン。サスペンションにもダメージを負っており、リタイアとなってしまう。

代わってトップに立った野尻選手は、すでに平川選手との差を2秒以上に広げており、順調に周回。14周を終えるところで義務付けされたタイヤ交換に向かう。これを見た平川選手はオーバーテイクシステム(OTS)を使いながら必死に差を詰めると翌周にピットイン。チームは素早い作業で平川選手をコースへ復帰させることに成功するものの、すでにアウトラップでタイヤの温まっている野尻選手がさらにOTSを使い、コースに復帰した直後の平川選手を抜き去り、トップのポジションをキープ。平川選手は再び野尻選手を追いかける展開となった。

その直後、130Rを抜けたところで国本雄資選手(KCMG)が右リアタイヤ故障によりスピン、そのままスポンジバリアにクラッシュしてしまう。車両回収のためレースはセーフティカー(SC)が導入されることになった。

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

この時点でほとんどのマシンが義務付けされたタイヤ交換を済ませており、残るはKuo VANTELIN TEAM TOM’Sの2台。チームはSCボードが提示された16周目が終わるところで2台を揃ってピットへと呼び込み、先に作業を済ませた宮田莉朋選手が6番手、続いてアレジ選手が11番手で隊列に戻ることに。チームの判断と素早い作業によって、わずかながらポジションアップに成功していた。

SCが隊列を離れてレースが再開したのは20周目。リスタートではOTSを使いあい、随所で接近戦が展開された。宮田選手と坪井翔選手(P.MU/CERUMO・INGING)の6番手争いもお互いにOTSを駆使して、2コーナーからS字コーナーにかけて激しい競り合いとなったが、この戦いを後ろから冷静に見極めていたのが山本選手。OTSはいったん使用すると100秒間は使えない仕組みになっているため、前の2台はこの翌周はOTSシステムを使えないことになる。このチャンスを利用した山本選手は、20周目の終盤で坪井選手をかわし7番手に浮上。翌周には同じ作戦で坪井選手にやり返される形となり再び順位は戻ってしまったが、サイドバイサイドの激しい鍔迫り合いは観客を大いに湧かせた。

また、11番手から入賞圏内を目指すアレジ選手も、山下選手との1コーナーからS字まで続くホイール・トゥ・ホイールの戦いを制してポジションアップ。さらに、すでにOTSを使い果たしてしまった大湯選手をかわして9番手まで浮上した。

このように後方では激しいポジション争いが展開されていたが、上位陣に大きな変動はなく、トップ3大は単独走行の状態でファイナルラップへ。平川選手は残りわずかとなったOTSを使って最後まで追いすがるが、野尻選手には届かず。開幕戦から2戦連続で野尻選手がトップチェッカーを受け優勝を飾った。平川選手は惜しくも優勝には届かなかったが、今季初表彰台を獲得。3位の笹原選手は、SUPER FORMULAで初めての表彰台となった。

DRIVER VOICE

野尻智紀 選手 [TEAM MUGEN]

【今回の成績 : 優勝】
今日のレースは福住選手のものじゃないのかなという思いもあって、素直に喜べないところも少しありますが、本気でタイトルを獲りに行くならここはプッシュし続けないといけないと気持ちを切り替えました。今週は走りはじめの調子があまり良くなく、そのことでチームの皆さんにハードワークを強いてしまったと思っています。それでも皆さんが完ぺきに仕事をこなしてくれて、この優勝につなげることができました。たくさんの方々に応援していただき、支えてもらって今週末の優勝があるかなと思っています。

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

決勝では、2台の車両が似たような場所で右リアタイヤに故障が発生しました。それぞれに起きた現象が異なっていることを確認していますが、さらに詳細な調査とデータ分析を行い、原因究明を進めていきます。

2シーズンを経て、車両/タイヤへのエントラントの理解が進み、SF19は年々速くなっています。鈴鹿サーキットはコースレイアウト上、タイヤへの負荷が高いコースなのですが、速度アップによる負荷とコース内での負荷の分布の変化がタイヤに厳しい状況を作り出してるのかもしれません。この先、オートポリスやスポーツランドSUGOといったサーキットもタイヤへの負荷は決して小さくないので、今回の事象をしっかり分析し、対応していく所存です。また、タイヤ構造への負荷を減らすために、指定最低タイヤ空気圧についても再検討を考えています。