2021 All Japan Dirt-Trial Championship Overview

全日本ダートトライアル選手権とは

舗装されていないダート路面の専用コースを舞台に、1台ずつ2回のタイムアタックを行って速さを競い合うのがダートトライアル。JAF(日本自動車連盟)が発給するBライセンスを取得すれば出場できることから「Bライ競技」とも呼ばれるカテゴリーのひとつで、その頂点に位置するのが全日本ダートトライアル選手権だ。

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北海道から九州までを転戦するシリーズは、多彩な車種を駆るトップドライバーの競演が観る者を魅了する。コースの多くを見渡せる環境のコースが多く、屋外での観戦に備えて土埃対策や折り畳み椅子などを持参することで、豪快かつ繊細な走りの応酬を間近に楽しめるのが全日本ダートトライアル選手権の魅力である。

2021年は北海道から九州までの各地を転戦し、全10戦のカレンダーで競われる。競技は午前と午後に1回ずつ、一日で計2回のタイムアタックを行う。コースは基本的に当日の朝に発表され、2回の走行前に設けられる時間帯で各選手は実際のコースを徒歩で確認する「慣熟歩行」を行い、コースレイアウトや路面の状態を確認する。

慣熟歩行を終えると走行となるが、各車が走行することで路面状態は徐々に変化していく。路面の砂利が掃けていきグリップが向上するため、第2ヒートでタイムアップするケースも多い。また、土埃対策として散水が行われることも多く、路面が自分の出走時にどのくらい乾き、砂利が掃けるのかを見定めることも選手には求められる。

2021年はクラス再編が行われ、改造範囲を定めた車両部門をクラス表記としていた昨年までとは異なり、「JD」という二文字に数字を付したクラス区分が採用された。また、規則的には従来の2回の走行における早い方のタイムで順位を決するベストタイム方式に加え、2回の走行タイムを合計したタイムで順位を決する合算タイム方式も認められるようになった。いずれの方式を採用するかは各大会の主催者に委ねられており、特別規則書によって定められることとなる。

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CLASSIFICATION =クラス区分=

■全日本ダートトライアル選手権のクラス区分

2021年は規則改訂により、クラス表記が一新された。「JD」の二文字に数字を付記した表記となり、11クラスで競われることとなった。改造範囲が事実上無制限となるD部門車両が最高峰のJD1クラス、以下2ペダルでオートマチック免許で運転出来る車両を対象としたJD10/11クラスまでの設定となる。

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車両は部門によって改造範囲が異なり、PN車両が最も厳しく改造範囲を制限している。DとSC車両部門、クラスとしてはJD1~3はナンバープレートの無い競技専用車両であり、JD4~11クラスはナンバープレートがついた車両となる。

各参加選手にはゼッケンが割り振られ、1台を2人の選手でシェアするダブルエントリーの場合は2人分のゼッケンを車体に表示する。ゼッケンはJD11クラスから順につけられるが、各クラスの前年シリーズ上位6人はシードドライバーとなり、0で始まるゼッケンが与えられる。なお、SC1クラスは2020年のシリーズ不成立となったため、2021年のJD3クラスにシードドライバーは存在しない。2021年から新設となるJN10/11クラスについても、シードドライバーがいないシーズンとなる。


クラス 車両部門 排気量 駆動方式等 主な車種
JD1 D スバル・BRZ、フォード・フィエスタ、三菱・ランサー、三菱・ミラージュ
JD2 SC 4輪駆動 三菱・ランサー、スバル・インプレッサ
JD3 2輪駆動 トヨタ・セリカ、三菱・ミラージュ、三菱・FTO
JD4 SA・SAX 4輪駆動 三菱・ランサー、スバル・インプレッサ
JD5 2輪駆動 トヨタ・MR2、ホンダ・シビック、スズキ・スイフト、アバルト・500
JD6 N トヨタ・GRヤリス、三菱・ランサー
JD7 PN 1600cc超 後輪駆動 トヨタ・86、スバル・BRZ
JD8 1600cc超 前輪駆動 スズキ・スイフト、トヨタ・ヴィッツ
JD9 1600cc以下 2輪駆動 ホンダ・フィット、スズキ・スイフト
JD10 P、PN、AE 4輪駆動
AT限定免許で運転出来る車両
(2021年より新設)
JD11 2輪駆動
AT限定免許で運転出来る車両
(2021年より新設)


全日本ダートトライアル選手権とヨコハマタイヤ

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ヨコハマタイヤ勢は2020年のシリーズで、4つのクラスでチャンピオンを獲得して強さを見せた。その走りを支えるのは、ラリーでも使われているグラベルタイヤだ。

ラインアップの中心的な存在が「ADVAN A053」、変化が大きいグラベル路面に対して対応路面領域幅の広さが特徴だ。散水で濡れた路面が徐々に乾いていくようなシチュエーション、砂利の掃けた箇所と轍が掘れた場所の混在するような状況も珍しくないダートトライアルで、ユーザーの走りを支えている。

砂利が掃けた路面で強さを見せるのが、超硬質路面用の「ADVAN A036」。一方でウェットコンディションでは、軟質路面用の「ADVAN A031」が高いパフォーマンスを発揮する。

砂利が掃けた路面で強さを見せるのが、超硬質路面用の「ADVAN A036」。一方でウェットコンディションでは、軟質路面用の「ADVAN A031」が高いパフォーマンスを発揮する。

全日本ダートトライアル選手権では第1ヒートと第2ヒートで異なる銘柄のタイヤを使うケースも多い。例えば第1ヒートを「ADVAN A053」で走行した後、砂利が掃けたコンディションを慣熟歩行で確認したうえで、第2ヒートは「ADVAN A036」を装着してタイムアップを目指す、といったパターンが一般的だ。