2019 FIA WTCR Malaysia Report

【FIA WTCR マレーシア / セパン】

タフなコンディションで競われた最終戦・マレーシアラウンド、
注目のタイトル争いはミケリス選手が悲願のチャンピオンに輝いた!!

FIA WTCR Malaysia

開催日 2019年12月13日-15日
開催場所 セパン・サーキット
(マレーシア)
天候 レース1) 雨
レース2) 雨
レース3) 雨
路面 レース1) ウェット
レース2) ウェット
レース3) ウェット
決勝周回数 Race 1 : 10周
Race 2 : 11周
Race 3 : 14周
(1周=5,543m)
参加台数 30台
2019 FIA WTCR Malaysia

4月のモロッコを皮切りに世界各地を転戦してきた2019年のFIA WTCR(ワールド・ツーリングカーカップ)も、いよいよシーズン最終戦を迎えた。その舞台はマレーシアのセパン・サーキット、日本のモータースポーツファンにとっては過去にSUPER GTも開催されたことから親しみのあるサーキットと言えるだろう。

しかしFIA WTCRにとっては、前身のFIA WTCC(世界ツーリングカー選手権)時代も含めて今回が初めての開催となる。さらにレースフォーマットも独特のものが採用され、3つの決勝レースを全て日曜日に集約したタイムテーブルが用意された。さらに詳しく見ると、レース1はスタート予定が15時15分と一般的な時間帯だが、レース2は18時15分からで夕暮れの決勝、そしてレース3は20時10分スタートとナイトレースで競われる。

この最終戦にシリーズチャンピオンの権利を有して臨むのは4選手、その筆頭はノルベルト・ミケリス選手(ヒュンダイ)だ。これを9点差で追うのはエスティバン・グエリエリ選手(ホンダ)、さらに2点の僅差でイヴァン・ミューラー選手(Lynk&Co)が続き、テッド・ビョーク選手(Lynk&Co)はミューラー選手と17点差でやや厳しい立場となっている。

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12月13日(金)は、2回のフリープラクティスと公式予選が行われる。なお、ワイルドカード枠で出場する選手は9日(月)と10日(火)にテスト走行が行われたが、その中にはかつでヨコハマタイヤでSUPER GT 500クラスを戦ったJ-P・デ・オリベイラ選手(ホンダ)の姿も。その走りには注目が集まるが、金曜日のフリープラクティス1では6番手のタイムをマークして存在感を見せた。

チャンピオン争いの最終決戦ということで、予選ポイントの獲得もいつも以上に重要視される最終戦。レース1のグリッドを決する予選では、ミケリス選手がただ一人2分13秒台にたたき込んでのトップタイムでポールポジションを獲得。一方でグエリエリ選手は10番手、ミューラー選手は16番手、ビョーク選手は28番手と伸び悩む結果に。

さらにレース2と3のグリッドを決するノックダウン方式の公式予選でも、速さを見せたのはミケリス選手だった。Q1こそ0.024秒という僅差でニッキー・キャツバーグ選手(ホンダ)にトップを譲る2番手だったが、Q2ではキャッツバーグ選手、Q3ではグエリエリ選手とホンダ勢をおさえてトップタイムをマークしてレース3のポールポジションを獲得した。

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土曜日は走行が無く、各選手は翌日のレースに向けて英気を養った。そしていよいよ迎えた15日(日)、しかし天候は不安定でレース1のスターティンググリッドに並んだマシンの多くはフロントにスリックタイヤを装着しつつ、リアは溝のついたレインタイヤを選択。およそ30分と見込まれる決勝レース中に、コンディションが大きく変化する可能性も考えられた。

スタートはセーフティカー先導となり、フォーメーションラップに続いて1周の隊列走行から戦いは幕開けとなる。このため決勝周回数は10周へ増やされたが、ローリング形式となったスタートでミケリス選手はトップの座をガッチリとキープ。先頭ということで先行車のウォータースプラッシュに視界を遮られることも無く、ポールポジションのメリットを最大限に活かして主導権を握った。

そのまま後続を寄せつけることなく、ミケリス選手は磐石のレース運びでウィニングチェッカー。対するグエリエリ選手はペナルティを受けた選手が生じたことから9番手グリッドでスタートを迎え、逆転チャンピオンに向けた猛追撃を披露。難しいコンディションを巧みなドライビングで攻略し、4位にまでポジションをアップしてのフィニッシュ。これでミケリス選手とグエリエリ選手の得点差は開く結果となったが、グエリエリ選手は力走でその差を27に留めた。また、グエリエリ選手に続く5位でオリベイラ選手がフィニッシュ。タフなコンディションの中で全輪にスリックタイヤを装着して戦い、速さを見せた。

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ウェットコンディションでスタートを迎えたレース2、トップでターン1に飛び込んだのは2番手スタートのネストール・ジロラミ選手(ホンダ)だった。スリッピーな路面とウォータースプラッシュで視界が遮られるタフなコンディションだが、後続の各車はフォーワイドや時にファイブワイドの激しいバトルを展開していく。

レース1を制したミケリス選手が中段グループに呑み込まれてコースオフを喫した一方、驚異的な追い上げを見せたのはグエリエリ選手。9番手スタートから猛追を見せて、オープニングラップのうちにトップを奪うことに成功した。しかしグエリエリ選手がトップに立ったのと時を同じくしてセーフティカーが導入され、さらにコース上では接触からニッキー・キャツバーグ選手(ヒュンダイ)のマシンから出火したためレースは赤旗が提示されて中断という展開に。

レースは1周目セクター2時点の順位でグリッドを配してリ・スタート、グエリエリ選手はジロラミ選手の前に出てそのままフィニッシュまでマシンを運びウィニングチェッカーを受けることに成功。ミケリス選手は10番手からスタートして8位でフィニッシュ、グエリエリ選手がポイント差を詰めてレース3での逆転チャンピオンを期することとなった。またミューラー選手は6位となり、この結果チャンピオン争いから脱落した。

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日が落ちて漆黒の闇にライトアップされたコースが浮かび上がる中、いよいよチャンピオン争いの最終決戦となるレース3が幕を開けた。ポールポジションに陣取るのはランキングリーダーのミケリス選手、そして2番手グリッドには逆転チャンピオンを目指すグエリエリ選手がつき、最終決戦の舞台が整えられた。

注目のスタートを巧みに決めたのはグエリエリ選手、ロケットスタートから一気にミケリス選手と並び、アウト側からターン1を制してトップを奪った。さらに3番手スタートのミケル・アスコナ選手(クプラ)モグエリエリ選手に続き2番手に浮上。さらに22番手という後方からヨハン・クリストファーソン選手(フォルクスワーゲン)が混乱をかわしてジャンプアップ、3番手を奪ったことでミケリス選手は4番手にまでドロップする。

2周目に入ってグエリエリ選手にアスコナ選手が仕掛け、両者はサイド・バイ・サイドを展開。しかし一方でアウフスト・ファルファス選手(ヒュンダイ)がコースオフしてマシンを停めていたことからセーフティカーが導入され、バトルは一旦リセットされることに。5周目にレースは再開、トップグループを形成する4台は時にポジションを入れ替えながら激しいバトルを繰り広げていく。

その中でグエリエリ選手はクリストファーソン選手と軽く接触、マシンはランオフエリアを走ってコースへ復帰した。しかしこのランオフ走行で草がラジエターを覆いパワーダウンを余儀なくされ、グエリエリ選手は無念の後退。この状況を鑑みてミケリス選手は無理せずチェッカーを受けることに専念、4位でフィニッシュして悲願のシリーズチャンピオンを手中におさめた。一方のグエリエリ選手は22位で無念のチェッカー、レース3はクリストファーソン選手が制して2019年のシーズンを締めくくった。

DRIVER VOICE

ノルベルト・ミケリス 選手 [BRC Hyundai N Squadra Corse]

【今回の成績 : Race1 優勝、Race2 8位、Race3 4位】
待望のチャンピオンを獲得できて、いまは安堵しています。土曜日の夜には、翌日に控えた3つのレースのことを考えると眠れませんでした。振り返ってみると、レース1はとても上手く運べて勝てたので最高の気分でした。しかしレース2は視界がとても悪く、他の車が右から左からとやって来て、ターン9ではブレーキングしたものの車が曲がらずにアンラッキーな面もありました。しかし、それでも8位までポジションを回復出来たことは、タイトル獲得においても重要な意味を持つ結果になりましたね。そしてレース3でチャンピオンを決めることが叶いましたが、私の家族、チーム、そして10年以上に渡って声援を送って支えてくれたハンガリーの全ての人々に感謝しています。