2019 FIA WTCR Macau Report

【FIA WTCR マカオ / ギア】

Lynk&Co勢が3レースを全て制覇して強さを見せたマカオ、
最終戦には4選手がチャンピオンの権利を有して臨む展開に!!

FIA WTCR Macau

開催日 2019年11月14日-17日
開催場所 ギア・サーキット
(マカオ)
天候 レース1) 曇り
レース2) 晴れ
レース3) 晴れ
路面 レース1) ドライ
レース2) ドライ
レース3) ドライ
決勝周回数 Race 1 : 8周
Race 2 : 8周
Race 3 : 11周
(1周=6,120m)
参加台数 26台
2019 FIA WTCR Macau

鈴鹿サーキット・東コースでの日本ラウンドを終えた2019年のFIA WTCR(ワールド・ツーリングカー・カップ)は、シリーズでもっともエキサイティングなマカオへと戦いの舞台を移した。1954年に産声をあげ今年で66回目を数える伝統の一戦、全長6,120mの公道を封鎖して造られるギア・サーキットが強者たちを待ち受けている。

前身のFIA WTCC(世界ツーリングカー選手権)時代から最終戦として開催されることの多かったマカオだが、今年は12月に入ってからのマレーシア・ラウンドが最終戦というカレンダーのため、そのひとつ前の大会となる。そのためマカオでチャンピオンが確定することは無いものの、ワンミスがリタイアに直結するストリートバトルだけにランキング上位陣は絶対に落とせない一戦となる。

エントリーは、ワイルドカード枠の6台を加えた32台。しかしワイルドカード出場の地元勢は、5台が予選不通過となり、決勝には27台が駒を進める結果となった。

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11月14日(木)には、2回のフリープラクティスが行われた。1回目は45分間、2回目は30分間の各セッションでトップタイムをマークしたのは、1回目がノルベルト・ミケリス選手(ヒュンダイ)、2回目はロブ・ハフ選手(フォルクスワーゲン)という結果に。前戦の日本ラウンドを終えてミケリス選手はランキング2番手、僅か6点差でトップのエスティバン・グエリエリ選手(ホンダ)を追うだけに、逆転に向けて好調な滑り出しを見せた。そしてハフ選手は昨年のマカオで2つのレースを表彰台でフィニッシュ、FIA WTCC時代からマカオを得意としているだけに注目の存在だ。

15日(金)は、8時50分からレース1に向けた公式予選がコースオープン。ここでトップタイムをマークしたのはイヴァン・ミューラー選手(Lynk&Co)で、僅か0.068秒差の2番手がミケリス選手、その0.077秒後ろの3番手がアンディ・プリオール選手(Lynk&Co)という結果になり、FIA WTCC時代からの強者がトップ3に名を連ねた。

そして13時35分からのノックダウン予選では、ハフ選手が遺憾なくその速さを見せつける結果に。Q1で2番手を0.144秒引き離してトップ通過すると、Q2では唯一の2分27秒台にたたき込んでこれまたトップでQ3へ進出を果たす。1台ずつアタックするQ3でもプリオール選手のタイムを上回り2分28秒538のトップタイムで堂々のポールポジションを獲得。2番手はプリオール選手、3番手がジャン-カール・ベルネ選手(アウディ)というオーダーになった。

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16日(土)の14時30分にスタートのレース1、グエリエリ選手は予選で13番手だったがエンジン交換を行ったために最後尾グリッドからスタートを迎える。注目のスタートはミューラー選手がスムーズに決めてトップでターン1を通過、ミケリス選手、プリオール選手と予選結果通りのオーダーに。そして5番手スタートのヤン・エアラッシ選手(Lynk&Co)がリスボアコーナーでケビン・チェッコン選手(アルファロメオ)をかわして4番手に浮上した。

2周目、リスボアコーナーでガブリエレ・タルクィーニ選手(ヒュンダイ)がフレデリック・バービッシュ選手(アウディ)をインからかわして前に出た一方、ベルネ選手がオーバーシュート。さらに2台が絡むアジシデントにより黄旗が提示されたものの、ここは各車が自走で復帰して事なきを得た。

その後は6周目に2台の停車車輌が生じたものの、セーフティカーの導入には至らずレースは続行。その後はあと2レースを残していることもあってかアグレッシブなポジション争いが展開されることはなく、上位陣は予選順位のままでフィニッシュ。ミューラー選手が今シーズン3勝目を飾り、2位でチェッカーを受けたミケリス選手はノーポイントに終わったグエリエリ選手を逆転して18点差をつけてランキングリーダーに躍り出た。

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レース2は17日(日)の8時20分から、レース1と同じく8周で競われる。ポールポジションにはQ2での接触行為で3グリッド降格となったグエリエリ選手に代わってヤン・エアラッシ選手が陣取り、2番手のテッド・ビョーク選手とともにLynk&Co勢がフロントローを独占した。そしかしスタートで圧倒的な存在感を見せたのは、同じLynk&Coでもレース1を制しているミューラー選手。5番手からロケットスタートを披露、ターン1で2台をかわして3番手にポジションをアップした。

マカオのコースは道幅の広い海側と狭くカーブが続く山側に分かれるが、オープニングの山側区間にある下りの短い直線でビョーク選手がエアラッシ選手をかわしてトップを奪う。さらにミューラー選手も先行、その後にビョーク選手が2番手に下がってチャンピオンの可能性を持つミューラー選手をトップに押し上げる戦略を実践した。

レースが折り返した4周目を終えてミケリス選手は11番手、グエリエリ選手は4番手、エアラッシ選手はポジションを下げて7番手を走行。グエリエリ選手はひとつでもポジションを上げてミケリス選手とのポイント差を詰めたいところだったが、前にはビョーク選手と自らをパスしたチェッコン選手が立ちはだかっている。後半もトップ2は後続に脅かされることなくチェッカーまで運び、ミューラー選手が二連勝を飾ることに成功した。

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これまでの2レースよりも多い11周で競われるレース3は、ポールポジションのハフ選手をスタートでかわしたプリオール選手がトップでターン1を制した。しかし、FIA WTCC時代に9回のマカオ優勝を飾っているハフ選手がおとなしく引き離される筈が無く、常にプリオール選手の背後からプレッシャーを与えながらラップを重ねていく。

徐々に3番手のベルネ選手と4番手のヨハン・クリストファーソン選手(フォルクスワーゲン)を加えた4台が後続を引き離してトップグループを形成。4台が数珠つなぎになっての攻防戦となっていったが、プリオール選手は後続に隙を見せることなくトップを堅守。かつてFIA WTCCをBMWで戦い、2005年から2010年にかけてシボレーのハフとは何度も好勝負を繰り広げてきたプリオール選手。当時を彷彿とさせるテール・トゥ・ノーズは、ファイナルラップまで続く展開となった。

カンペンセイトウェイトがLynk&Coはフォルクスワーゲンに対して20kg重い設定で迎えたマカオだが、そのハンデをはね除けるように海側のストレートで速さを見せた。これが大きな差となってプリオール選手はトップを譲ることなくウィニングチェッカーを受け、待望のFIA WTCR初優勝を獲得。この日に16歳の誕生日を迎えた娘さんにも、最高のプレゼントを贈るかたちとのあった。

マカオの3レースは、全てをLynk&Co勢が勝利した。そしてドライバーズタイトル争いはミケリス選手がトップで最終戦のマレーシアに臨む展開に。2番手は9点差のグエリエリ選手、3番手のミューラー選手、4番手のビョーク選手までがチャンピオンの権利を有する。そしてマレーシアは最大で85点を獲得出来るため、この4人の誰が栄冠を手中におさめるのかを予想するのは難しいと言えるだろう。

DRIVER VOICE

イヴァン・ミューラー 選手 [Cyan Racing Lynk & Co]

【今回の成績 : Race1 優勝、Race2 優勝、Race3 6位】
何が起こるか分からないマカオですから、好スタートを決めてオープニングラップでしっかり差をつけることが求められます。レース1ではミケリス選手が常に後ろからプッシュしてきましたが、私は前を走っているので大きなリスクを冒すこと無くマージンを守りきることに専念しました。レース2は勝つためにスタートでひとつでも前のポジションを奪う必要がありましたが、上手く決めることが出来ました。その後はチームの戦略もあり、私はビョーク選手とエアラッシ選手に感謝しています。