【FIA WTCR ポルトガル / ヴィラ・レアル】
FIA WTCR Portugal
開催日 | 2019年7月5日-7日 |
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開催場所 | ヴィラ・レアル (ポルトガル) |
天候 | レース1) 晴れ レース2) 晴れ レース3) 晴れ |
路面 | レース1) ドライ レース2) ドライ レース3) ドライ |
決勝周回数 | Race 1 : 11周 Race 2 : 11周 Race 3 : 14周 (1周=4,790m) |
参加台数 | 26台 |
カレンダーも折り返して後半戦に突入した、2019年のFIA WTCR(ワールド・ツーリングカー・カップ)。その皮切りとなる第6戦はポルトガルのヴィラ・レアルが舞台、4月に行われた開幕戦のモロッコ以来となる今シーズン2回目のストリートバトルで競われる。
2015年に前身のFIA WTCC(世界ツーリングカー選手権)が初めて開催され、以降はWTCRとなっても毎年カレンダーに組み込まれてきたヴィラ・レアル。当地でのストリートレースは歴史も古く1931年から様々なレースが開催されてきており、今回のWTCRで50回目を数えることとなった。
ニュルブルクリンクで開催された前戦のドイツラウンドは24時間レースとの併催により変則的なスケジュールとなったFIA WTCRだが、ポルトガルからは本来のフォーマットに戻される。7月5日(金)の夕方に行われる45分のフリープラクティス1から走行をスタート、6日(土)にはフリープラクティス2と公式予選を行った後にレース1を開催。そして7日(日)には公式予選のQ1~Q3を行い、その結果に対してトップ10をリバースグリッド配置するレース2、そしてQ3までの走行結果をそのままグリッドに反映するレース3が行われるというスケジュールでレースウィークが進んでいく。
今回のポルトガル戦には、ふたつの注目すべき話題がある。ひとつは最終コーナーにジョーカーラップが設定されることで、これは2017年のFIA WTCCで世界選手権として初めて用意されてレースを大いに盛り上げた。今回も最終コーナーに設定され、全てのドライバーは各レースで3周目以降に必ず1回は通過することが義務づけられる。このジョーカーラップは若干の遠回りとなるので、パッシングの機会が少ないストリートレースにおいては戦略的に重要な要素となる。
もうひとつの話題は、ポルトガル出身のティアゴ・モンテイロ選手が参戦すること。2017年秋、テスト中のアクシデントで負傷したモンテイロ選手は、昨年のポルトガル戦には出場が叶わなかった。その後、日本ラウンドで復帰したモンテイロ選手が地元のファンに元気な姿を見せてくれるわけだが、今シーズンはここまで表彰台に届いていないだけに地元での巻き返しが期待される。
フリープラクティスは1回目がネストール・ジロラミ選手(ホンダ)、2回目はヨハン・クリストファーソン選手(フォルクスワーゲン)が、それぞれトップタイムをマーク。そしてレース1のグリッドを決する公式予選では、2回目のフリープラクティスで2番手につけたノルベルト・ミケリス選手がトップタイム、これに0.299秒差の2番手でアウグスト・ファルファス選手が続いてヒュンダイ勢がレース1のフロントローを独占した。
青空が広がる下で迎えたレース1のスタートは、気温27℃/路面温度48℃というコンディション。注目のスタートは大きな混乱も無く、まずは上位陣がポジションをキープしてオープニングラップが進んでいく。3番手のヤン・エアラッシ選手(Lynk & Co)、4番手のロブ・ハフ選手は、2番手のファルファス選手に抑えられて前に出る機会が見つからない。一方でチームメイトのファルファス選手からサポートを受けるようなかたちになったミケリス選手は独走態勢を構築していく。
3周目、規定によりこの周からジョーカーラップの通過が認められる。そして、トップを快走するミケリス選手は早々にジョーカーラップへマシンを進めると、ファルファス選手とハフ選手もこれに続いた。一方でエアラッシ選手は通常のコースで先行を狙うも、ここまでに構築したマージンが功を奏してミケリス選手がトップを譲ることなくレースは4周目に突入。
ミケリス選手はそのままチェッカーまで快走、前戦・ドイツに続いてレース1を制して今シーズン2勝目を飾った。そして2位はエアラッシ選手、3位はファルファス選手という表彰台の顔ぶれとなった。一方、シリーズランキングでトップに立っているエスティバン・グエリエリ選手(ホンダ)は予選から決勝を通じてマシンのマイナートラブルに苦しめられる展開に。レース1は24位と下位に沈み、一気にミケリス選手がシリーズポイント差を詰める結果となった。
7日に行われたノックダウン方式の公式予選、ここでトップを奪ったのはアッティラ・タッシ選手。そして2番手につけたのはモンテイロ選手、ホンダ・シビックを駆るKCMG勢がフロントローを独占した。そしてトップ10をリバースで配するレース2のスタートは、ポールポジションにマー・チンホワ選手(アルファロメオ)、そしてセカンドグリッドにはグエリエリ選手が陣取った。
気温26℃/路面温度47℃で青空が広がるという、レース1とほぼ同じコンディションで迎えたレース2の決勝。まずはマー選手がスタートをしっかり決めてトップのままターン1を通過、このレースもアクシデントが発生することなくオープニングラップを消化した。2周を終えてトップのマー選手は、2番手のグエリエリ選手に1.273秒、3番手のミケル・アスコナ選手(クプラ)には1.552秒の差をつけた。そして3周目、グエリエリ選手がジョーカーラップへ進み、4番手へとドロップ。
勝負はジョーカーラップに入るタイミングが大きな鍵を握る展開となっていくが、先に動いたのはアスコナ選手で4周目にジョーカーラップへ。ギリギリで2番手のまま復帰、先行するマー選手との差を詰めていく。そして6周目にマー選手がジョーカーラップへ入り、ここでアスコナ選手がトップを奪うことに成功。ジョーカーラップを巧みに使ったアスコナ選手、そしてクプラ・TCRが今シーズン初優勝を飾ることに成功した。
レース2のフィニッシュからおよそ1時間をはさんでスタートを迎えるレース3、このレースは他の2レースよりも2周多い13周で競われる。気温25℃、路面温度は46℃で、ポルトガルの3レースはともに安定したコンディションで競われる結果となった。ホンダ勢がフロントローに、そして3番手と4番手にはLynk&Co勢が居並び、いよいよレースはスタートする。
他大会でも傾向としてレースウィークの締めくくりとなるレース3は接触を厭わないバトルが展開されてきたが、やはりポルトガルのストリートバトルでもレース3はオープニングから随所で激しいポジション争いが演じられた。そんな中、オープニングラップで3番手にポジションを上げたのはイヴァン・ミューラー選手(Lynk&Co)、もっともこちらはパスした相手がチームメイトで甥のヤン・エアラッシ選手ということで接触することなくクリーンなパッシングであった。一方、グエリエリ選手ら数台が絡む接触があり、オープニングラップからセーフティカーが導入される展開に。
セーフティカー解除後、3周目にタッシ選手のペースが鈍りラップの終盤でモンテイロ選手が先行。さらにミューラー選手も2番手にポジションを上げ、ここからはモンテイロ選手をミューラー選手が激しく追い上げていく。ほぼ一騎討ちとなる中、4周目にミューラー選手がジョーカーラップへ。その翌周にモンテイロ選手がジョーカーラップへ進んだが、僅かにミューラー選手より早く復帰してトップの座を堅守。このままミューラー選手のプッシュをかわしてモンテイロ選手がウィニングチェッカーまでマシンを運び、地元ファンから祝福の大歓声を受けた。
【今回の成績 : Race1 23位、Race2 10位、Race3 優勝】
とても緊張して、興奮して、大変なレースでした。チームメイトのタッシ選手がリタイアしたのは残念でしたが、自分も2年前のアクシデントから今日のこの日を夢見て努力を続けてきました。そして現実になりましたが、信じられない気持ちです。終盤の2周は、走りに集中するのが大変でした。自分のこれまでのレースの中でも、最もハードな一戦でしたね。