2019 FIA WTCR Germany Report

【FIA WTCR ドイツ / ニュルブルクリンク】

シリーズでは異色の超ロングコースが舞台のドイツラウンド、
Race2と3は地元で強さを見せたフォルクスワーゲン勢が勝利!!

FIA WTCR Germany

開催日 2019年6月20日-22日
開催場所 ニュルブルクリンク・北コース
(ドイツ)
天候 レース1) 晴れ
レース2) 晴れ
レース3) 晴れ
路面 レース1) ドライ
レース2) ドライ
レース3) ドライ
決勝周回数 Race 1 : 3周
Race 2 : 3周
Race 3 : 3周
(1周=25,378m)
参加台数 27台
2019 FIA WTCR Germany

全10戦のカレンダーが組まれている2019年のFIA WTCR(ワールド・ツーリングカー・カップ)は、前半戦の締めくくりとなる第5大会がドイツで開催された。ニュルブルクリンク24時間レースとの併催になる本大会は、シリーズの中では異色と言える25.378kmのニュルブルクリンク・北コースが舞台。周回数は僅かに3周ながら、変化に富んだコースが選手たちを待ち受ける。

タイムスケジュールは変則的なものとなり、6月20日(木)に40分間のフリープラクティスを2回行う。その後、Race1のスターティンググリッドを決する予選1回目、そしてRace2と3のグリッドを決する予選2回目という流れに。予選2回目は40分間の設定で、この間のタイムでベスト順にRace3、トップ10をリバースとしたものがRace2のグリッドとなる。

参加台数は年間エントリーの13チーム/26台に加え、ワイルドカード枠としてAS Motorsportからアンティ・ブリ選手がアウディを駆って出場。今シーズンからヨコハマタイヤのワンメイクとなったTCR Germanyで、ここまで3大会/6レースで3勝を挙げてランキングトップに立つブリ選手、ワイルドカード出場ということで20kgのハンデウェイトを搭載するものの、その走りには注目が集まった。

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まずはフリープラクティス1回目、灰色の雲がニュルブルクリンクの上空を覆うも路面はドライコンディション。コースオープンとともにエスティバン・グエリエリ選手(ホンダ)を先頭に各車がアイフェルの森へとエギゾーストノートを響かせていく。このセッションでトップに立ったのはロブ・ハフ選手(フォルクスワーゲン)、グエリエリ選手が2番手で続き、3番手はヨハン・クリストファーソン選手(フォルクスワーゲン)が続いた。1回目終了から20分というタイトなインターバルでコースオープンしたフリープラクティスの2回目、このセッションではクリストファーソン選手がトップを奪い、ハフ選手が2番手。3番手にはニールス・ランゲヴェルト選手(アウディ)というオーダーで、地元ドイツ生まれのマシンが速さを見せた。

15時30分からの予選1回目は、ウェットコンディションとなってしまった。各車はワイパーを作動させ、水しぶきをあげながらのアタックとなる。足をすくわれてしまう選手も散見されたが、まずトップに立ったのはグエリエリ選手でタイムは10分30秒955。これがターゲットタイムとなったが、コンディションは時間とともに厳しくなりこのタイムに届くライバルは現れず。グエリエリ選手がRace1のポールポジションを獲得、2番手はノルベルト・ミケリス選手(ヒュンダイ)で10分36秒987、3番手はネストール・ジロラミ選手(ホンダ)で10分37秒143という結果になった。

1回目が終了して3時間20分後にコースオープンした予選2回目、既に時刻は19時30分となっているがまだ十分な明るさの中で各車のアタックが始まる。コンディションが1回目よりは回復したため、各車のタイムもアップする展開に。トップタイムはベンジャミン・ルークター選手(フォルクスワーゲン)で9分51秒327、2番手はハフ選手が1.482秒遅れで続きフォルクスワーゲン勢がワン・ツーでRace3のフロントローを独占。リバースグリッドとなるRace2は、10番手タイムのクリストファーソン選手がポールポジションを獲得した。

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21日(金)、24時間レースのトップ30予選を前にした17時30分にRace1がスタート。天候は回復し、雲が多いものの青空も見えて路面はドライコンディション。各車がグリッドオン、後方で安全が確認されたことを伝えるグリーンフラッグが振られると、間もなくして4つのレッドシグナルが点灯。数秒でブラックアウトすると、注目のターン1へと各車が一斉に飛び込んでいく。

最前列左側のポールポジションに陣取っていたグエリエリ選手は、緩い右コーナーのターン1に向けてマシンを右へ振る。しかし好スタートを決めた2番手グリッドからスタートのミケリス選手がマシン鼻先を先行させており、グエリエリ選手は主導権を手渡すかたちに。

スタートの瞬間がレースを決する流れとなり、トップを奪ったミケリス選手がそのまま快走を見せて待望の今シーズン初優勝を獲得。ヒュンダイにとっても、第2大会・ハンガリーのRace3以来となる久しぶりの勝利となった。その後方ではグエリエリ選手とハフ選手が、激しい2位争いを展開。時に軽い接触を伴いながら、ファイナルラップでは長い距離をサイド・バイ・サイドで駆け抜けた。一時はハフ選手が前に出かけたが、最後はグエリエリ選手がポジションを守り抜いてランキングリーダーの意地を見せた。

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Race1から一夜明けた22日(土)、まずは11時ちょうどからRace2が競われた。ポールポジションはクリストファーソン選手、そしてセカンドグリッドには注目のブリ選手がつけている。気温16℃、路面温度は35℃というドライコンディションで迎えた決勝、まずはRace1同様にスタートからのターン1に向かうブレーキング争いが見どころだ。クリストファーソン選手はマシンを右に振り、ブリ選手を牽制しながらターン1へ。一方のブリ選手も応戦、鮮やかな黄色のアウディがフォルクスワーゲンに食らいついていく。

ターン3~5にかけては、サイド・バイ・サイド状態で、鍔迫り合いを見せた両者。しかしクリストファーソン選手が先行すると、これにピタリと続いて4番手スタートのフレデリック・バービッシュ選手(アウディ)がブリ選手の前に出ることに成功。一方のブリ選手は20kgのウェイトも効いているのかペースが上がらず、3番手を走るもその直後にはガブリエレ・タルクィーニ選手(ヒュンダイ)やハフ選手がピタリとつける。なかなかブリ選手の前に出られない4番手以降を尻目に、トップ2は快走。

1周目の中盤でようやくブリ選手をかわしたタルクィーニ選手とハフ選手だったが、3周目にまさかの展開が。カルーセルの進入でタルクィーニ選手のインをさしたハフ選手、フロントドアの部分まで前に出たところでタルクィーニ選手が接触。ハフ選手はスピンを喫してクラッシュ、リタイアを喫してしまった。一方でクリストファーソン選手はトップを守りきって、嬉しいWTCRで初めてのウィニングチェッカー。バービッシュ選手が準優勝、そして3位にはアウグスト・ファルファス選手(ヒュンダイ)が入った。ファルファス選手は前身のFIA WTCC(世界ツーリングカー選手権)で2010年のドイツ戦・第16戦以来となる、ツーリングカー・スプリントレースの世界選手権表彰台を獲得した。

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Race2が終了して、リペアタイムをはさみ12時20分にスタートしたRace3。残念ながらRace2でクラッシュを喫したハフ選手はグリッドにつくことが叶わず、セカンドグリッドは空席のままにスタートの時を迎えた。ポールポジションに陣取るのはルークター選手、ランキングリーダーである3番手グリッドのグエリエリ選手がどのように攻めていくかに注目が集まる。

気温18℃、路面温度は44℃に上昇した中で迎えたスタート。グエリエリ選手は果敢にインを奪って先行しかけるも、若干オーバーラン気味になる痛恨のミス。ルークター選手は適切なラインでコーナーを駆け抜け、しっかりトップの座を守ることに成功した。しかしグエリエリ選手はアグレッシブな走りを続け、長いストレートでルークター選手のスリップストリームも使ってトップを奪いにかかる。サイド・バイ・サイドに持ち込みあと一歩というところまで迫ったが、ルークター選手が再びトップを堅守。

一方で軽い接触を伴ったこともあって挙動を乱したグエリエリ選手に対して、一気に詰め寄ったバービッシュ選手がストレートで2番手にポジションアップ。レースはこのままフィニッシュまで進み、ルークター選手が嬉しいWTCR初優勝を獲得。フォルクスワーゲン・ゴルフGTIのTCR車両開発にも尽力してきたルークター選手の勝利で、地元ドイツでフォルクスワーゲン勢は2レースの優勝を飾ることに成功した。

DRIVER VOICE

ベンジャミン・ルークター 選手 [Sebastien Loeb Racing Volkswagen]

【今回の成績 : Race1 7位、Race2 5位、Race3 優勝】
今はただ、めちゃくちゃに嬉しいです。世界トップレベルのツーリングカーの使い手たちを相手に、自分が勝てたのですから!! 私の人生は全てここ、ニュルブルクリンクのコースへと繋がっています。このコースで育ち、2008年にはレースでの初優勝もニュルブルクリンクで獲得しました。1周目ではグエリエリ選手に抜かれそうになる場面もありましたが、接触はしたもののポジションを守りきることが出来ました。たぶん、神様が私のことを助けてくださったのだと思います。