2019 SUPER FORMULA Round 7 Report

【SUPER FORMULA 第7戦 / 鈴鹿】

ニック・キャシディ選手が悲願のタイトル獲得、
最終戦の勝者は野尻智紀選手が5年ぶり2勝目を飾った!!

SUPER FORMULA Round 7

開催日 2019年10月25-27日
開催場所 鈴鹿サーキット
(三重県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 43周
(1周=5,807m)
参加台数 20台
SUPER FORMULA 第7戦

「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」の2019年最終戦となる第7戦が鈴鹿サーキットで開催された。シリーズチャンピオンが決定する重要な1戦を制したのは、野尻智紀選手(TEAM MUGEN)。タイトル争いはニック・キャシディ選手(VANTELIN TEAM TOM’S)が2位表彰台を獲得し、チャンピオン候補のなかで最上位フィニッシュ。悲願のタイトルを獲得した。

ここまで6戦を終了し、6人の勝者を生み出している今シーズンのSUPER FORMULA。最終戦の舞台となる鈴鹿サーキットは、開幕戦も行われた場所。当時はSF19のデビューレースで、各チームともマシンの特性に対して手探りの状態だったが、そこから経験を重ね、パフォーマンスも引き出されてきている。タイトル争いは当然のこと、7人目のウィナーが誕生するのか、それとも今季2勝目を飾るドライバーが出るのか、最終戦自体の勝負の行方にも注目が集まった。

金曜日までは天候に恵まれなかったが、予選日は穏やかな秋晴れに。公式予選を前に、午前中のフリー走行ではポイントリーダーの山本尚貴選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がトップタイムをマークする。ランキング2位のキャシディ選手は7番手、3位のアレックス・パロウ選手(TCS NAKAJIMA RACING)は4番手に着け、まずは山本選手が上々の滑り出しを見せたかに思えた。

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今大会も予選のQ1は2組に分けて実施。組み分けは第6戦終了時点のランキングをもとに行われ、Aグループには山本選手、パロウ選手、小林可夢偉選手(carrozzeria Team KCMG)、野尻選手らが入った。B組はキャシディ選手や福住仁嶺選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、山下健太選手(KONDO RACING)らが並んだ。

先に行われたAグループのセッションは、パロウ選手がトップタイム、山本選手が2番手タイムでQ2進出を決定。野尻選手は5番手タイムでギリギリQ1突破を決めた。その一方で、これまでSUPER FORMULAのタイトルを2度も獲得している実力者の石浦宏明選手(JMS P.MU/CERUMO・INGING)がアタック中にコースオフを喫し最下位となってしまう波乱もあった。続くBグループのセッションは、福住選手がトップタイム。牧野任祐選手(TCS NAKAJIMA RACING)が2番手と、チャンピオン候補のチームメイト同士が好タイムを記録した。

それぞれのグループの上位6台、計12台が出走したQ2では、福住選手が2番手に0.26秒差をつけてトップタイムをマーク。山本選手は3番手、パロウ選手は5番手、そしてキャシディ選手は8番手とギリギリながら、3人が揃ってQ3へ駒を進めた。ソフトタイヤを使用するこのQ2では、TCS NAKAJIMA RACINGの2台がタイヤのウォームアップに2周を充てていたが、Q3ではライバルたちと同様に1周のウォームアップでアタックへと作戦を変更する。これが大きなタイム更新につながり、パロウ選手は1分35秒972をマーク。Q2のアタックタイムと比べ0.6秒もタイムを縮め、今季3度目のポールポジションを獲得した。2位は野尻選手。3位にはルーカス・アウアー選手(B-Max Racing with motopark)が入り、山本選手とキャシディ選手は5、6番手に並ぶこととなった。

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決勝日の鈴鹿サーキットはやや雲が多いものの、風も強くなく穏やかな天気。午前8時10分から30分間で行われたフリー走行後、長いインターバルを挟んで午後1時15分からスタート進行が始まった。グリッドに20台のマシンが揃うと、注目されたのはスタート時のタイヤ選択。パロウ選手はミディアムタイヤを選び、フロントローの野尻選手はソフトタイヤ。山本選手はミディアム、キャシディ選手はソフトと選択が分かれた。

なお、今大会では「決勝レース中に先頭車両が7周回目を完了した時点から最終周回に入るまでに異なる種別のドライタイヤを使用しなければならない」という特別規則が設けられていたが、ウェットタイヤを使用した場合には、このタイヤ交換義務は適用されないという規則も別に設定されており、予選16位の小林選手はウェットタイヤでのスタートを選択。1周目を終えるところでピットへ向かいソフトタイヤに履き替えるという異例の作戦を展開した。

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14時に決勝レースはスタート。ソフトタイヤが有利と思われたスタートだが、パロウ選手が抜群のスタートダッシュを決めてトップを死守。同じく良い蹴り出しを見せた山本選手が野尻選手に続く3位に上がり、福住選手、キャシディ選手が4、5番手に。アウアー選手は痛恨のエンジンストールで17番手まで大きく後退してしまった。

逆転タイトルを目指すキャシディ選手は序盤からもうプッシュをかけ、2周目には福住選手をかわして4番手に、続く3周目には山本選手をかわして3番手に浮上する。優勝を飾ればルーキーイヤーでタイトルを獲得できるパロウ選手は7周目までレースをリードしてきたが、8周目の130Rで野尻選手に先行され、9周目に入るところでピットイン。ソフトタイヤに交換した。

タイヤ交換義務も果たし、再びトップを目指していたパロウ選手だったが、ここから大きくペースダウンしてしまう。順位をキープするどころか、次々に後続のオーバーテイクを許し、とうとう28周終了時に再びピットイン。もう一度ソフトタイヤに履き替えてレースに復帰したが、すでにポイント獲得圏内からも遠ざかり、ここでタイトル争いからは外れることとなった。

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パロウ選手の脱落で、レースの優勝争いは野尻選手が一気に優勢となった。福住選手や山本選手らが先にタイヤ交換に向かう中、野尻選手は33周終了時までピットインのタイミングを引っ張る作戦に。全車がタイヤ交換を終えた37周目に堂々のトップ返り咲きを果たすと、その後は2番手以降に脅かされることなくポジションを守り、トップチェッカー。2014年のデビューイヤーに初優勝を飾ってから、実に5年ぶりの勝利となった。

2位に入ったのはキャシディ選手。キャシディ選手もレースの終盤となる34周終了時のピットインを選択したが、先にピット作業を済ませた山本選手よりも前でコース復帰することに成功し、表彰台獲得と共に逆転でドライバーズチャンピオンに輝いた。3位に福住選手が入り、山本選手が5位入賞を果たしたことで、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGがチームタイトルを獲得した。

DRIVER VOICE

野尻智紀 選手 [TEAM MUGEN]

【今回の成績 : 優勝】
デビューイヤーで優勝できてから、長い間勝てずにいたのですが、チームの皆さん、応援して下さる皆さんにサポートしていただいて、ようやく2勝目を挙げることができました。今シーズンも上手く進まない状況が続いていたのですが、最終戦に、とてもいい形でチームの力をファンの皆さんの前で見せられて、非常に良かったです。優勝することがこんなに素晴らしいことなのだと実感しました。

ニック・キャシディ 選手 [VANTELIN TEAM TOM’S]

【今回の成績 : 2位(シリーズチャンピオン確定)】
言葉では言い表せない思いです。レース中は、なるべくタイトルのことは考えないように集中して走りましたが、チェッカー後、パルクフェルメまで戻ってくるラップの間はずっと泣いていました。SUPER FORMULAをトムスチームで戦うのは今年が初めてなのですが、エンジニアやチームが僕のことをとても信頼してくれて、次第に力を発揮できるようになり、こうしてタイトルを獲ることができました。本当に感謝しています。

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

例年と同じく鈴鹿で開幕し、鈴鹿でシーズンを終えるという1年でしたが、開幕戦はマシンもSF19に変わり、それに合わせてタイヤも昨年と変わったことで、どのチームもソフトタイヤに余裕を持たせたというか、タイヤを使い切ったという様子ではありませんでした。2戦目以降からは、皆さんが今年のタイヤに対する理解が進んできたことでタイヤを使い切ってレースを戦うようになってきて、今回も30数周というラップで全摩耗していました。

今シーズンはほとんどのレースでセーフティカーが出るという、あまり前例のないレースが多かったこともありますが、最後の最後までチャンピオン争いが接戦になる面白い戦いになったと思います。新しいタイヤも、その面白さに貢献できたのではと思っています。

今年は各チーム、『新しいマシンを知る1年』だったと思いますが、この経験値をもって来シーズンは開幕から戦うことになります。今年の開幕戦とは状況が全く違うので、コースレコードの更新にも期待をしたいですね。来シーズンも引き続き、トップドライバーたちの素晴らしい戦いをサポートしていきたいと思います。