2019 SUPER FORMULA Round 6 Report

【SUPER FORMULA 第6戦 / 岡山国際】

山下健太選手がSUPER FORMULA初優勝、
5人がチャンピオンの権利を持って最終戦へ臨む展開となった!!

SUPER FORMULA Round 6

開催日 2019年9月28-29日
開催場所 岡山国際サーキット
(岡山県)
天候 曇り
路面 ドライ
決勝周回数 68周
(1周=3,703m)
参加台数 20台
SUPER FORMULA 第6戦

「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」の2019年第6戦が岡山国際サーキットで開催。速さと戦略、そして運を味方につけて、山下健太選手(KONDO RACING)が予選2位から逆転優勝を飾り、今シーズン6人目のウィナーとなった。

岡山国際サーキットでのSUPER FORMULAのレースは、昨年雨の中で繰り広げられた関口雄飛選手と小林可夢偉選手の一騎打ちが強く記憶に残る。今シーズンも、レースウィークに入る前の天気予報では雨マークが並んでおり、2年連続でウェットコンディションのレースになると予想されていた。

実際には予報は外れ、夏に戻ったかのような日差しが降り注ぐ時間帯も。ドライコンディションの中、SF19のスピードを堪能できる1戦となった。

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なお、岡山国際サーキットはスポーツランドSUGOと並んでコース距離が非常に短いサーキット。コース上での混雑を避けるため、予選のQ1を2組に分けて実施することになった。

予選A組にはニック・キャシディ選手(VANTELIN TEAM TOM’S)、山本尚貴選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)らランキング上位陣が集中。10名中4名はノックアウトされるという厳しい条件で、なんと山本選手がその4名の中に入ってしまい、最終的には総合16番手とポイント獲得も難しい位置からのスタートとなってしまう。

キャシディ選手もQ2で他のマシンに引っかかってしまいタイムが出せずにQ3に進出ならずと、いくつかの波乱がある中で、見事にポールポジションを獲得したのが前戦ウィナーの平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。昨年のオートポリス大会に続き予選最速タイムを記録して見せた。2番手に山下選手、3番手には国本雄資選手(KONDO RACING)とトヨタエンジンユーザーが上位を占める結果に。ホンダエンジンユーザー最上位は福住仁嶺選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)の5番手となった。

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一夜明けた決勝日は、予報が一転し朝から強い日差しがサーキットに降り注いだ。午前中のフリー走行では、予選順位が10位に沈んでしまったキャシディ選手がトップタイム。平川選手や山下選手といったグリッド上位陣はリザルトの中盤にとどまっていたが、それぞれが決勝に向けたメニューを着々とこなしていた様子であった。

今大会では、決勝レース中のタイヤ交換義務について、「先頭車両が10周回目第1セーフティカーラインを交差した時点から、先頭車両が最終周回に入るまでに完了しなければならない」という特別規則が設けられた。これにより、スタートタイヤのチョイスにも各チーム、ドライバーの思惑で大きく分かれることに。スタートタイヤは序盤の奪取に有効なソフトタイヤを選択するというのが、グリッド上位陣の王道ともいえる戦略だが、山下選手はミディアムタイヤを選択。

「ポールポジションの平川選手と同じタイヤでスタートしても、前に出られる可能性は少ないので、違った戦略を採りました」と後に記者会見で振り返っているが、まさに今回はこのタイヤ選択が大きく勝敗を分けることになった。

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スタートダッシュではやはりソフトタイヤが有利で、平川選手は先頭をキープ。山下選手は後続のソフトタイヤ勢に先行され、6番手まで後退する。しかし、8周目に福住選手がアトウッドカーブでコースアウト。オープニングラップの混乱の中で他車と接触し、タイヤホイールのリムが破損していたことが原因で、悔しいリタイアとなってしまったが、福住選手の車両回収のために導入されたセーフティカー(SC)が、レースの流れを一気に変えることになった。

SCラン中にタイヤ交換義務の制限が解除となる10周目を迎えることが決定的になると、山下選手を先頭にミディアムタイヤスタートを選択したドライバーたちが一斉にピットになだれ込んでくる。ピットロード出口に一番近い場所にピットを構えていたKONDO RACINGは、素早い作業で山下選手を一番にコースへと送り出した。7台がステイアウトを選んだため、山下選手は見た目上は8位でリスタートを迎えるが、前の7台はこの後で必ずピット作業を行わなければならず、実質トップでレースの中盤に突入していった。

ここからは、前後とのギャップが縮まっている中で、順位を落とさずにトップのマシンとのギャップも大きく広げられないことが重要。さらに、50周以上の距離をソフトタイヤで走り切ることも要求されるが、山下選手は安定したラップタイムでタイヤをマネージメントしながら周回を重ねていった。

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レースの中盤から後半にかけては大きな順位変動もなく膠着状態が続いたが、その中で気迫こもるドライビングを見せていたのがキャシディ選手。ステイアウト組の中で2番手につけていたキャシディ選手は、ピット作業後もポイント獲得圏内に残るにはトップの平川選手を何とか攻略し、後続との差を広げなければならない。

レース終盤、両者の差は1秒を切ってテールトゥノーズの状態が続き、57周目のヘアピンコーナーでついに平川選手をとらえると、59周目にピットへ。作業を終えて、ポイント獲得圏内の6番手でコースへ復帰したが、なんと後ろから追い上げてきた小林可夢偉選手(carrozzeria Team KCMG)と接触しスピン。これでポイント獲得圏外へとポジションダウンすることになり、最終戦に向けての重要な1戦をノーポイントで終えることになってしまった。

ランキング上位陣の波乱をよそに、前方車両のピットインでポジションを回復していく山下選手。65周目に最後の車両がピットロードへとステアリングを切り、ついにトップに浮上。途中でSCが入ったことでレースは68周に到達する前に最大レース時間を迎え、66周目にチェッカーフラッグが振り降ろされる。トップチェッカーを受けた山下選手は、SUPER FORMULAデビューから3年目で初優勝を飾った。

2位には、山下選手と同様の作戦を採った中嶋一貴選手(VANTELIN TEAM TOM’S)が入り、今季初表彰台。3位にはハリソン・ニューウェイ選手(B-Max Racing with motopark)が、こちらも嬉しい自身初表彰台を手にした。シリーズランキングは、7位でチェッカーを受けた山本選手が2ポイントを追加して逆転ポイントリーダーに浮上。アレックス・パロウ選手(TCS NAKAJIMA RACING)は4位フィニッシュで3位をキープした。優勝でランキング4位まで浮上した山下選手と、5位の小林選手までがタイトル争いの権利を残し、最終戦に挑むこととなった。

DRIVER VOICE

山下健太 選手 [KONDO RACING]

【今回の成績 : 優勝】
ようやく優勝することができてほっとしています。SF19になって、Q1を通過するのにとても苦労していましたが、チームがいろいろと準備してくれて、上位争いができるクルマにしてくれました。逆転優勝を狙うためには、トップと違う戦略を採らないと、と考えていて、ミディアムタイヤでのスタートは早い時点で決めていましたが、今夏のレースではそれが正解でしたね。

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

オープニングラップで接触があったようで、ホイールの破損からコースアウトやリタイアするマシンが何台かあり、全車がきちんと走り切れなかったことは残念でした。予報から一転してドライコンディションでレースが行われ、気温も路面温度も上がりましたが、そうはいっても路面温度はスタート時点で37℃でしたから、温度域としては全く問題ありませんでしたね。

予選では、Q2で3台が、Q3では6台が1分12秒台にタイムを入れました。岡山は路面の特性か、我々としてはあまり得意としていないコースで、コースレコードを破れなかったのは残念ですが、そういう状況で上位陣が1分12秒台にタイムを入れてくれたのは、やはりSUPER FORMULAドライバーのレベルの高さを感じました。

いよいよ次戦が今シーズンの最終戦です。タイトル争いに残った5人はもちろんのこと、すべてのドライバーがいいバトルを展開してくれることを楽しみにしています。