2019 SUPER FORMULA Round 4 Report

【SUPER FORMULA 第4戦/富士】

ウェットコンディションで速さを見せたルーキードライバー、
アレックス・パロウ選手がポール・トゥ・ウィン!!

SUPER FORMULA Round 4

開催日 2019年7月12日-14日
開催場所 富士スピードウェイ
(静岡県)
天候 雨 時々 曇り
路面 ウェット
決勝周回数 55周
(1周=4,563m)
参加台数 20台
SUPER FORMULA 第4戦

「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」の2019年第4戦が富士スピードウェイで開催され、今季デビューイヤーのアレックス・パロウ選手(TCS NAKAJIMA RACING)が、スタートから一度もトップを譲ることなくポールトゥウィン。参戦4戦目にして初優勝を飾った。

国内随一のホームストレートを持つ富士スピードウェイでは、今シーズン開幕前に公式合同テストが行われている。3月という、マシンのトータルパッケージで言えば好タイムが出やすい時期なこともあって、非公式ながら1分21秒742とコースレコードを上回るタイムが記録されており、今大会でのコースレコード更新も期待された。

実際、ドライコンディションで行われたフリー走行ではニック・キャシディ選手(VANTELIN TEAM TOM’S)が非公式ながらわずかにコースレコードを破って見せたものの、本当の争いとなる公式予選はウェットコンディションとなってしまい、コースレコード更新はかなわなかった。

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その公式予選は、雨足が強まったり弱まったりで定まらず、コースコンディションも常に変化する、非常に難しいセッションとなった。20分間で争われるQ1は、今季初のフル参戦となる福住仁嶺選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がトップタイムで通過。他3名のルーキードライバーに、キャシディ選手や関口雄飛選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)といった実力者、計12名がQ2へと駒を進める。

Q2では関口選手がトップタイム。パロウ選手らルーキー3名が好タイムでQ3進出を決める一方、山本尚貴選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)や中嶋一貴選手(VANTELN TEAM TOM’S)といったチャンピオン経験者がノックアウトされていった。

予選セッションの中で一番雨足の強まったQ3で最速タイムをたたき出し、ポールポジションを奪ったのはパロウ選手。チームメイトの牧野任祐選手(TCS NAKAJIMA RACING)が開幕戦でポールポジションを獲得しており、パロウ選手にとっては待望のトップグリッド獲得となった。また、予選2位に入ったのは坪井翔選手(JMS P.MU/cerumo・INGING)で、ルーキー2人が最前列を占める形に。3番手には関口選手がつけた。

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一夜明けた決勝日も空模様は変わることなく、どんよりとした雲が立ち込めていた。雨足はそれほど強くないものの、コンディションは悪化。全車がウェットタイヤを装着して、55周の決勝レースがスタートした。なお、ウェットタイヤを装着した場合はレース中のタイヤ交換義務はなく、今回のレースでもほとんどのマシンがスタート時のウェットタイヤでレースを走り切っている。

注目のスタートは、セーフティカー先導のもとで行われ、実質的なレーススタートは4周目から。ポールシッターのパロウ選手はスタートダッシュに成功。坪井選手はパロウ選手の巻き上げた水煙に視界を遮られながらも、離されることなく2番手をキープし、関口選手がそれに続いた。その後方では4番手スタートの野尻智紀選手に(TEAM MUGEN)5番手スタートのキャシディ選手が迫り、セクター3に入るまでのバトルでキャシディ選手がポジションアップした。

レース序盤から随所で接近戦が展開され、中でも小林可夢偉選手(carrozzeria Team KCMG)のオーバーテイクショーは観客を大いに沸かせた。予選で速さが出せず、19位スタートとなった小林選手は攻めのセッティングで決勝レースに挑んでいたが、それが奏功し、11周目には12位までポジションアップに成功。17周目には11位、22周目には10位とポイント獲得圏内までじりじりと迫っていった。

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レース中盤からは福住選手との争いが白熱。34周目に福住選手がコースオフしてしまった隙を見逃さず、ようやく逆転して8位に上がった。ほぼ最後尾スタートからポイント獲得圏内までの大幅ポジションアップは、このレースの大きなハイライトとなった。

スタートからトップを維持するパロウ選手は、先頭走行で視界が比較的良好なことも手伝い、2番手以降に比べて1秒近く速いラップタイムを連発。坪井選手との差を毎周のように広げていった。13周目にはいち早く1分42秒台に入り、15周目には坪井選手との差は10秒以上に広がっていた。プッシュを続ける中でオーバーランしてしまう姿も何度か見せたが、それでも勢いは止まらない。周回遅れの車両をかわす際には一時ペースが落ちるものの、レース中盤までは独走劇が続いた。

ただし、レース中のタイヤ交換義務がなくなったことで各車が直面したのが燃費問題。セーフティカースタートとウェットコンディションでラップタイムがそれほど速くないことから、ほとんどのマシンが無給油作戦を選択しており、燃費を考えた戦い方もしなければならなかった。スタート時から燃費に注意しながら安定したペースで走行していた坪井選手は、レース中盤にパロウ選手に少しずつ接近。最大で13秒あった差が、7.6秒まで削られていく。

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しかしそれ以上にペース配分に気を配り、一気に前との差を詰めてきたのがキャシディ選手だった。坪井選手を追いかけていた関口選手がスプラッシュ&ゴーのためにピットへ向かい、代わって3番手に上がったキャシディ選手は、レース終盤に坪井選手に大接近。44周目の時点で4.6秒あった両者の差は、50周目には0.4秒に。レース終盤に訪れたテールトゥノーズの戦いに注目が集まった。

最終コーナーでキャシディ選手が坪井選手に並びかけ、続く1コーナーではお互いにオーバーテイクシステムを使ったバトルが繰り広げられる。開幕戦を制した実力者の追い上げを、坪井選手は何とかかわし2番手を死守していた。

この戦いのおかげで楽になったパロウ選手は、再び燃費に気を配りながらペースをコントロール。51周を完了した時点で最大レース時間が迫り、当初の予定よりも距離としては短いタイミングでチェッカーが振られることになる。53周を完了したところでチェッカーフラッグが用意され、再び坪井選手との差を13秒ほどに広げたパロウ選手がトップチェッカーフラッグを受けて、SUPER FORMULA初勝利。TCS NAKAJIMA RACINGにとっては実に9年ぶりの国内トップフォーミュラでの勝利となった。

DRIVER VOICE

アレックス・パロウ 選手 [TCS NAKAJIMA RACING]

【今回の成績 : 優勝】
参戦4戦目での初優勝です。チームのみんなが本当に頑張ってくれて、この場に立つことができました。クルマの調子は開幕戦から良かったのですが、トラブルやミステイクなどでチャンスを逃してしまい、やっと今回すべてが揃って勝利することができました。何度も燃費をセーブするように言われ、コースコンディションも悪く、本当にタフなレースでしたが、優勝できてうれしいです。この勢いを続けていきたいですね。

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

7月にしては思っていたよりも涼しくなり、練習走行でロングランチェックをし、摩耗状態から算出してソフトタイヤで走り切れるだろうと予測したチームもあったのではと思いますが、想定ほどではないものの気温も上がっていたので、ミディアムタイヤとソフトタイヤのピークタイム差はかなり縮まっていました。レース距離になってくると、ミディアムタイヤの優位性も出てくるのではと思ったので、実際にスリックタイヤの出番がなかったのは残念でしたね。

ウェットタイヤに関しては、いったん温まると一番いい状態にとどめられず、おいしいところを引き出すのが難しいタイヤになっており、各チームやドライバーには苦しい状況にさせてしまいました。決勝に関しては、安定してパフォーマンスを出せる状況ではあったと思いますが、ピークパフォーマンスが十分ではなかったと皆さん感じているのではと思っています。今回はレースウィークを通して、ウェットタイヤに必要なものを見せつけられ、この先どのように開発していこうという目標もはっきりしてきました。

次戦のもてぎは、さらに暑くなると予想されます。決勝レースでソフトタイヤとミディアムタイヤのパフォーマンスが上手くクロスするポイントが出て、レース展開がより面白くなることを期待しています。