2019 JRC Round 4 Report

【全日本ラリー選手権 第4戦 / 愛媛県久万高原町】

久々の全日本参戦となった新井大輝選手組が序盤から速さを披露、
期待に応える走りで“平成生まれコンビ”が優勝を飾った!!

JRC Round 4

開催日 2019年5月3日-5日
開催場所 愛媛県久万高原町 近郊
天候 Leg1) 晴れ
Leg2) 晴れ
路面 Leg1) ドライ
Leg2) ドライ
ターマック(舗装路面)
総走行距離 269.71km
SS合計距離 109.96km (8SS)
得点係数 1.2 (舗装路100km以上)
参加台数 44台(オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 14台)
2019 全日本ラリー選手権 第4戦

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昨年は5月中旬の開催だった「久万高原ラリー」が、今年は大型連休中にカレンダーを戻してシリーズ第4戦として開催。愛媛県久万高原町のハイランドパークみかわを拠点に、全国からオープンクラスを含めて44台が参戦して覇を競い合った。

10連休も後半に入り、元号が令和と改められて最初の全日本ラリー選手権。記念すべき一戦で注目を集めたのは2016年の最終戦以来となる参戦を果たす新井大輝選手、海外での経験を活かしてどんな走りを日本のステージで見せてくれるのか期待の存在となった。そして、平成5年生まれの新井(大)選手が組むコ・ドライバーは同じく平成は元年生まれの小坂典嵩選手、この“平成生まれコンビ”が期待に応える活躍を見せてくれた。

久万高原ラリーはグラベル(非舗装路)とターマック(舗装路)のそれぞれでラリーを組み立てられる恵まれた立地条件にあるが、今年はターマックで競われる。標高1,000mのハイランドパークみかわを拠点に、「西谷」と「大川嶺」という2本のステージを土曜日のLEG1と日曜日のLEG2に2回ずつ走行。両日で走行方向は逆になるものの、SS(スペシャルステージ)の本数は合計で8本というシンプルなアイテナリーだ。

ただし、すべてのステージが10kmを超えるロングの設定、全SSの合計距離は109.96kmとなりポイント係数は1.2と大きい。また、同じステージでも走行する向きによってキャラクターが変化し、金曜日のレッキを終えた選手からは「ステージの攻略が難しい」という声も多く聞かれた。

4日(土)の8時から久万高原町役場前でセレモニアルスタート、今年も地元の子供たちによる「久万山五神太鼓」の勇壮な音色が選手たちを歓迎した。そして河野忠康町長の振るフラッグを合図にゼッケン1をつける新井敏弘選手/田中直哉選手(WRX STI)からスタート、“天空決戦”の幕が華々しく開けた。

好天に恵まれた久万高原、SS1「西谷 1 (13.57km)」でステージベストを刻んで速さを見せたのは新井(大)選手組。GRB型のスバル・WRX STIを駆り10分34秒1でフィニッシュ、2番手のライバルに5.2秒、3番手の父・新井(敏)選手組には5.9秒の差をつけてオープニングからラリーリーダーの座を手中におさめた。

この若手コンビの活躍をベテラン勢が黙って見ている筈も無く、続くSS2「大川嶺 1 (13.88km)」では前戦・唐津のウィナーである奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)がベスト、新井(敏)選手組がセカンドベストで続く。新井(大)選手組はミッションオイルが漏れるトラブルに見舞われるも、最小限のタイムロスに留めてフィニッシュ。これで奴田原選手組が逆転してトップを奪い、各車は30分間のサービスへと入った。

午後のセクション、SS1のリピートとなるSS3「西谷 2」は再び新井(大)選手は速さを見せて1走目のタイムを12秒縮める10分22秒0でフィニッシュ。セカンドベストの奴田原選手組も1走目の自己タイムを大幅に更新するも、新井(大)選手が7.1秒上回る結果となって再びトップに返り咲いた。一方、新井(敏)選手組はこのSS3で猛チャージ、スプリットタイムでは新井(大)選手に迫る速さを見せていたが路面のウネリで挙動が乱れてコースオフ、まさかのリタイアとなってしまった。

迎えたLEG1最終ステージのSS4「大川嶺 2」は、再び奴田原選手組がベストを刻む。しかし5.2秒差のセカンドベストで続いた新井(大)選手が、LEG1のトータルでは1.2秒の僅差で逃げきりに成功して初日をトップで終えた。

一夜明けた5日(日)、一時は夜中の降雨も心配されたが結果的に路面コンディションはオールドライ。青空が広がる爽やかな陽気の下、前日とは逆方向に走る大川嶺のステージで韋駄天ぶりを見せたのは新井(大)選手だった。LEG1を終えてトップの新井(大)選手組と2位の奴田原選手組の差は1.2秒と僅差、奴田原選手組と3位のライバルは25.3秒と大きく差が開いており、事実上トップ争いはヨコハマタイヤで戦う両選手組の一騎討ちという状況だ。

LEG2オープニングのSS5「大川嶺リバース 1 (14.03km)」、新井(大)選手のタイムは11分20秒8。対する奴田原選手組は11分30秒4で、その差は9.6秒。一気に奴田原選手組との差を拡げた新井(大)選手は、続くSS6、そしてSS7と3連続ステージベストで勝負に終止符を打った。

6年前、2013年の5月4日から5日に行われた久万高原ラリー、そのオープンクラスで全日本初参戦を果たした新井(大)選手は、同じ久万高原ラリーで全日本ラリー選手権の最高峰クラス初優勝を飾ることに成功。奴田原選手組が2位で続き、前戦の唐津に続いてターマックラリーでヨコハマタイヤ勢がワン・ツー・フィニッシュを飾り、ADVAN A08Bの優れたポテンシャルがあらためて実証される結果となった。

ヨコハマタイヤ勢のトヨタ・86同士が、激しいトップ争いを続けているJN-3クラス。第2戦、第3戦を制した山本悠太選手/山本磨美選手組は今回、LEG1でマシンの挙動を乱して橋の欄干にヒットさせてしまった。ボディに大きなダメージを受けなかったのは不幸中の幸いだったが、ホイールを壊してタイヤ交換を強いられたことから優勝戦線からは脱落してしまう。

一方、2戦続けて準優勝の山口清司選手は久しぶりに島津雅彦選手とコンビを組んでの参戦、こちらもLEG1ではセッティングに苦労してマシンをヒットさせる場面もあるというサバイバルな展開に。愛媛県出身の山口選手にとって勝利への思いも強い久万高原、その執念も実ってチーム一丸となってトラブルを克服し、2016年以来となる久万高原制覇で待望の今シーズン初優勝を手中におさめた。

このほか、JN-5クラスでは小川剛選手/藤田めぐみ選手組(フィット)が3位で前戦に続いて表彰台を獲得。中西昌人選手/福井林賢選手組は今シーズンからマツダ・RX-8のオートマチック車で新生JN-6クラスに移籍して参戦するが、3位フィニッシュで嬉しい表彰台獲得となった。

DRIVER VOICE

新井大輝 選手 [ADVAN KYB AMS WRX]

【今回の成績 : JN-1クラス 優勝】
LEG1を終えて奴田原選手組との一騎討ちになりましたが、正直に言うととても楽しんで走っていました。あの張りつめた感覚は、本当に楽しかったですね。下りのブラインドコーナーで先が見えないような場所、そこはタイヤのグリップも信頼して攻めていきました。そうして差を拡げていったという戦い方で、勝利を掴むことが出来ましたね。2つの道ではトリッキーな「西谷」のほうが得意なので、ここで稼ぐという組み立てでしたね。今回は勝てましたが、SS2のトラブルでリタイアしていた可能性もあります。誰が勝ってもおかしくない状況の中、常に表彰台を獲得出来る位置で戦っていくことが今後の自分にとって大切なのだろうと思っています。

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN-1クラス 2位】
新井(大)選手は速いだろうと思っていましたが、ここまで離されるとは思っていませんでした(苦笑)。マシンのフィーリングは悪くないのですが、ちょっとLEG2の前半では失敗した部分もあって逆転には至らなかったですね。第2戦からターマックを戦ってきて1勝と2回の準優勝、流れとしては悪くないと思っています。「ターマックがまだ続いていもいいな」という気持ちもありますが(笑)、次からのグラベルもしっかり戦ってポイントをしっかり積み重ねてシリーズチャンピオン奪還を目指していきます!!

山口清司選手 [jms エナペタル ADVAN 久與 86]

【今回の成績 : JN-3クラス 優勝】
故郷での優勝、いいですね!!(笑) 周りが崩れたこともありますが、トータルで見たときにペースが安定していたこと、これが勝因ではないかと思っています。セッティングで苦労した部分もあったのですが、随時アジャストしながら粘り強く走って優勝につなげることが出来ました。準優勝が続いていましたが、“シルバー・コレクター”から脱却できて、係数も大きい一戦を制したことは大きいですね。次からのグラベルに向けて、まずはマシンを修復するとことから始めていきます。

小川 剛 選手 [itzz ADVAN AN フィット]

【今回の成績 : JN-5クラス 3位】
クロスミッションがまだ入っていないので、大川嶺のステージはとても苦労する展開でした。自分としては雨が降ってほしいところだったのですが、気持ちよく晴れましたしね(苦笑)。ちょっとストレスが溜まる展開でしたが、リタイアするようなこともなく表彰台に立てたことは良かったです。自分たちなりの課題をクリア出来たので、収穫もある一戦でした。次からのグラベルも頑張って、ドキドキするような競争をしていきたいですね。

中西昌人 選手 [YH・WM・KYB・SPM・くまモン・8]

【今回の成績 : JN-6クラス 3位】
昨年のグラベルからターマックに変わった久万高原ですが、ターマックには全日本選手権の二輪駆動部門時代から参戦しています。苔の多い道で苦戦することが多く、なかなか上位に食い込めない状態で走っていました。今回は気持ちよく走って表彰台に立つことが出来て、とても嬉しく思っています。

TECHNICAL INFORMATION

攻略の難しいロングステージで構成された久万高原ラリーだが、終わってみれば新井大輝選手組が5本、奴田原文雄選手組が3本のステージベストを奪い、ヨコハマタイヤ勢がJN-1クラスのベストタイムを独占する結果となった。トップの新井(大)選手組と3位のライバルは48.8秒の大差となったことからも、ADVAN A08Bの強さが実証されたと言えるだろう。

また、今回は奴田原選手組のランサーに新しいアルミホイールが投入された。昨年7月に発売された「ADVAN Racing RZ-F2」は、ADVAN Racing鍛造ホイールでは初となるフルフェイスデザインの設計。鍛造製法の強度的な優位性、そしてインナーリム部分の強度が出るリバースリム・プロファイルによる軽量性を武器に、トップラリーストの走りをしっかり支えた。