2019 JRC Round 3 Report

【全日本ラリー選手権 第3戦/佐賀県唐津市】

奴田原文雄選手組がLEG1の全SSでベストを奪う快走で2年連続優勝、
新井敏弘選手組が準優勝で続いてワン・ツー・フィニッシュを飾った!!

JRC Round 3

開催日 2019年4月12日-14日
開催場所 佐賀県唐津市 近郊
天候 Leg1) 晴れ
Leg2) 曇り のち 雨
路面 Leg1) ドライ
Leg2) ドライ~ウェット
ターマック(舗装路面)
総走行距離 335.82km
SS合計距離 74.91km (14SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km)
参加台数 43台(オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 15台)
2019 全日本ラリー選手権 第3戦

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全日本ラリー選手権は関門海峡を渡って九州に上陸、今年も佐賀県唐津市を舞台に「ツール・ド・九州 2019 in 唐津」が第3戦として開催された。既に沿道の桜はほとんどが散っているものの、今年も“春の風物詩”として全国から43台が参加して覇を競い合う。

この唐津はライバルが12年連続優勝という牙城を築いていたが、昨年の大会では奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)が優勝して連覇にストップをかけた。さらに新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)が準優勝、柳澤宏至選手/加勢直毅選手組(WRX STI)が3位で続いて、ヨコハマタイヤ勢が表彰台を独占している。

今年は昨年秋に投入されたADVAN A08B(パターンナンバーA08B2)を武器にヨコハマタイヤ勢のさらなる活躍が期待される中で、大会は13日(土)に恒例となっている唐津神社での安全祈願、そしてセレモニアルスタートで幕を開けた。

自然災害の影響でお馴染みの林道ステージが一部使えなくなり、替わって新しい林道2ヶ所が戦いの舞台として用意された唐津。サービスパークは唐津競艇場の一角に設けられ、隣接するショートステージは日曜日に多くのギャラリーが見守る中での開催。地元テレビでも大会の模様は伝えられ、大いに盛り上がる中でヨコハマタイヤ勢が期待に応える活躍を見せてくれた。

その主役は、昨年の覇者である奴田原選手組。オープニングのSS1「SANPOU 1 (9.83km)」で幸先よくステージベストを奪うと、新井敏弘選手組がセカンドベストでこれに続いてワン・ツー体制を構築する。これを皮切りに奴田原選手組はADVAN A08Bの高いポテンシャルを活かし、怒濤の連続ステージベストを刻み続けていく。初日のLEG1は、「SANPOU」と「SIRAKIKOBA (2.12km)」を3回、「UCHIURA (4.27km)」を2回走行するアイテナリー、新設の「UCHIIRA」はこれまでの唐津とはキャクラクターの異なる道となりギャラリーも見守る注目のステージだったが、奴田原選手組の韋駄天ぶりが多くのギャラリーの目に焼き付けられた。

終日ドライコンディションとなったLEG1、唐津市は最低気温が9.1℃、最高気温は暖かな日射しに恵まれて18℃にまで上昇した。こうした気温の変化、そして異なる道の特性を選ぶことなく奴田原選手組は快走、終わってみれば8本のSS(スペシャルステージ)、合計距離44.39kmで全てのステージベストを独占する圧勝ぶり。2位のライバルに23.2秒の大差をつけて、初日は完全勝利という結果になった。

LEG2が行われた14日(日)は、空模様がやや不安定。雨の降る可能性が報じられていたが、果たして実際に降るのか否か、降るとしたらどのタイミングになるのか、選手たちは気を揉みながらのスタートとなった。

本大会では規則により、使用できるタイヤは最大8本と定められている。8本のSSが設定されたLEG1ではライバル勢も含めて5本のステージを終えての中間サービスで前後ローテーションを行い、残る3本を走りきった。そしてLEG2はスタートで新品4本を装着、前日同様に3本のステージを終えての中間サービスでローテーションするという戦略になる。

しかし、唐津の道はタイヤへのシビアリティが高く、グリップ性能のみならず摩耗性能についても試される。そんな中で奴田原選手組はLEG1で構築したマージンを背景に完全に主導権を握った“横綱相撲”を展開。新設されたステージとしてこちらも注目のSS10「HAKOBA 1 (5.00km)」、そして前日とは逆方向に走るロングの最終ステージSS14「SANPOU REVERSE 2 (9.86km)」でステージベストを刻み、トップを一度も譲ることなくフィニッシュまで運んで2年連続優勝を飾った。

これに続いたのが、新井敏弘選手組。マシンのフィーリングにやや難があったが、そこは卓越したドライビングテクニックでカバーして上位争いを展開。LEG1を2位のライバルと6.9秒差の3番手で終え、逆転を期してLEG2はオープニングから激しく追走していく。

そのLEG2、最終ひとつ前のSS13「HAKOBA 2」がスタートする頃からポツポツと雨が落ち始めた。雨足は強まり、最終ステージは完全なウェットコンディションへと変化。ここで新井選手組は2位のライバルを15.8秒上回るセカンドベスト、一気に差をひっくり返して2位にポジションをアップして奴田原選手組とのワン・ツー・フィニッシュとなった。また、この最終ステージでは柳澤宏至選手/保井隆宏選手組がサードベストでヨコハマタイヤ勢が圧勝、ADVAN A08Bが摩耗性能とウェット性能の高さを実証する結果となった。

JN-3クラスは前戦に続いて、ヨコハマタイヤを装着するトヨタ・86が激しいトップ争いを展開。デッドヒートを繰り広げた結果、山本悠太選手/山本磨美選手組が新城に続いての連勝、山口清司選手/竹原静香選手組は惜しくも逆転を喫したものの準優勝でフィニッシュして、こちらもヨコハマタイヤ勢がワン・ツー・フィニッシュを飾った。

地元・九州のヨコハマタイヤ勢が活躍したのは、JN-4クラスとJN-5クラス。JN-4では九州選手権チャンピオンの黒原康仁選手は美野友紀選手とのコンビで現行型のスズキ・スイフトで参戦、ラリーウィークに仕上がったという“出来立てほやほや”のマシンで準優勝を獲得。一方のJN-5でも小川剛選手/藤田めぐみ選手組(フィット)が準優勝、こちらはトラブルに泣いた前戦・新城の借りをしっかりと返してくれた。

また、JN-6クラスでは今シーズン初参戦となる伊藤隆晃選手/大高徹也選手組が、昨年までと同じ日産・ノートを駆るも今年はマシンをe-POWERにスイッチ。3位フィニッシュで、これから更なる速さの磨きがかけられていくことに期待させる結果を残してくれた。

DRIVER VOICE

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN-1クラス 優勝】
ADVAN A08Bの優れたポテンシャルに支えられ、それを引き出すランサーの最適なセットアップが2年連続優勝の理由だと思います。サスペンションなどをオフシーズン中に見直したりした結果、タイヤを巧く使えることにつながっています。グリップはもちろん、摩耗の面でもとても良いフィーリングですね。昨年に続いて唐津を制して、2年連続優勝を出来ました。勝田範彦選手が唐津では一昨年まで12年連続優勝していますが、その記録を更新して13年連続優勝出来るように頑張ります(笑)。

新井敏弘 選手 [富士スバル AMS WRX STI]

【今回の成績 : JN-1クラス 2位】
今回は、奴田原選手に歯が立ちませんでした。車の状態がちょっと良くなくて、そこを騙しながら走りましたが、最後の雨を味方につけて2位にポジションを上げられてホッとしています。でも、デフロスター(フロントウィンドゥの曇り止め)の調子が悪くて、視界がきかない場面もあって大変だったんですけれどね(苦笑)。次の久万高原には息子(新井大輝選手)も同じJN-1に参戦しますが、アイツはライバルにはならないかな(笑)。次は、しっかり勝たなければいけませんね!!

山本悠太 選手 [Sammy☆K-one☆ルブロス YH 86]

【今回の成績 : JN-3クラス 優勝】
新城に続いて接戦を制しましたが、今までの僕の競技人生で初めての2連勝なのです。ダートトライアル時代も含めて、勝った次の戦いはドライビングミスやマシントラブルで落としてきたので、実は今回も「いつもみたいになるんだろうな……」という思いがあったのです。ですが今回はトラブルも無く、自分の集中力も最後まで保てたので、とても嬉しいですね。コ・ドライバーとのコンビネーションもとても良いので、この勢いで3連勝を目指していきます!!

山口清司選手 [jms エナペタル ADVAN 久與 86]

【今回の成績 : JN-3クラス 2位】
頑張ったのですが、LEG1をトップで折り返したリードを守れませんでした。雨は想定外だったのですが、雨で山本選手組のペースが落ちるかと思ったら、向こうの方が速かったですね。2戦連続の2位で悔しいですが、新城の時よりは差が詰まっているので前向きな要素も見えてきています。もちろん次の久万高原でリベンジ、“三度目の正直”となるように頑張ります!!

黒原康仁 選手 [YH CUSCO リズミックス AN スイフト]

【今回の成績 : JN-4クラス 2位】
出来立てのマシン、足回りをつけたのはレッキ日でしたからね。SS1はテスト走行、SS2から頑張った唐津でした(笑)。みなさんよりひとつ遅れてのオープニングステージという感じだったのですが、フィーリングが良くて手応えを掴めました。ただ、あくまでも車としてはシェイクダウンなので、欲を出さずに淡々と道の上に残ることをテーマとしての戦いでした。ちょっと欲を出したら、“事件”が起こりそうになったりもしましたからね。最後の雨は怖かったですが、タイヤを信じて走って逆転に成功、楽しく良い結果で終えられました。

小川 剛 選手 [itzz ADVAN AN フィット]

【今回の成績 : JN-5クラス 2位】
まだマシンとしては成長過程にありますが、ボディが本当に素晴らしくて「BOAT RACE」のステージベストを独占できたのはボディのお蔭ですね。「SANPOU」はライバル勢に対してフィットはホイールベースが長いので、クネクネの連続は辛い部分もありました。そんな中で、LEG2ではLEG1と違うブレーキパッドを使いましたが、これも素晴らしくて制動距離を大きく縮められました。次の久万高原にはJN-4の黒原選手とともに今回と同じ体制で行きますので、次は揃ってもうひとつ上を獲りたいですね!!

伊藤隆晃 選手 [PD YH ノートe-POWER ニスモS]

【今回の成績 : JN-6クラス 3位】
e-POWERのデビュー戦となりましたが、去年までの純ガソリンエンジンのノートとは重さも違いますから、フィーリングの違いもあります。足のセッティングなどに詰めていく領域はまだまだありますから、その辺りを最適化すれば例えば下りなどの走りのリズムがもっと良くなると思います。LEG2は雨の影響で大変なこともありましたが、表彰台に立てて手応えを掴めました。久万高原は下りで如何にタイムを稼ぐかなど、戦略も考えて臨んでいきます。

TECHNICAL INFORMATION

昨年は季節外れの雪も降る中、ヨコハマタイヤ勢が最高峰クラスでトップ3を独占した唐津。今年は「ADVAN A08B(パターンナンバーA08B2)」にとって初の唐津となったが、終盤には雨も降りシビアリティの高い路面も相まってタイヤのポテンシャルが様々な角度から試されることとなった。

そんな中、ドライコンディションではLEG1の奴田原選手組による全ステージベスト奪取に象徴されるように、道の特性を選ばないADVAN A08Bの速さが実証された。また、摩耗の面から見ても、ローテーションを行った後の後半セクションで奴田原選手組と新井選手組が2回のワン・ツーを奪っていることから、そのポテンシャルは結果に現れた。

さらにLEG2終盤には雨が降りウェットコンディションへと変化したが、新井選手組がライバルを大きく引き離すタイムで逆転に成功、最終ステージはヨコハマタイヤ勢が3番手タイムまでを独占したことからも、コンディションを選ばずに優れたパフォーマンスを発揮することがあらためて実証された。