2019 SUPER GT Sprint Cup Report

【SUPER GT Sprint Cup / 富士】

久々開催のスプリントカップで、レース1を植毛GO&FUN GT-R、
そしてレース2をBH AUCTION CORVETTE GT3が一時トップを快走した!!

SUPER GT Sprint Cup

開催日 2019年11月23日-24日
開催場所 富士スピードウェイ
(静岡県)
天候 Race 1 : 雨
Race 2 : 曇り
路面 Race 1 : ウェット
Race 2 : ウェット&ドライ
決勝周回数 Race 1 : 28周
Race 2 : 30周
(1周=4,563m)
参加台数 12台
(ヨコハマタイヤ装着車 9台)
SUPER GT Sprint Cup

富士スピードウェイで初めて開催された、SUPER GTとDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)の特別交流戦のサポートレースとして、GT300車両によるスプリントカップが4年ぶりに復活することとなった。シーズン途中の開催決定であったことから、諸事情によりエントリーは極めて少なかったものの、レギュラーチームだけでなく、スーパー耐久や鈴鹿10時間に出場していたチームのエントリーが認められたため、少ないながらもバラエティに富むラインアップとなっていた。

なお、以前のスプリントカップとは異なり、50分間で争われてドライバー交代を伴うピットストップが義務づけられ、スタートから20~30分間のうちにピットに入らなくてはならず。ピットロードの入口から出口までの通過時間は70秒以上とされ、ジャッキアップ時には100秒以上と、つまりタイヤを交換すれば30秒余分にピットに留まっていなければならない。さらにスターティンググリッドは、レース1はAドライバーとBドライバーの予選タイムの合算で決められる。

セミウェットの中で行われたAドライバー予選は「HOPPY 86 MC」の松井孝允選手がトップタイムを記すも、Bドライバー予選で佐藤公哉選手が2番手に甘んじたこともあり、合算タイムでは2番手に。すでに発表されているとおり、「HOPPY 86 MC」はこのレースがラストランとなるため、フロントローからのスタートとなれば、有終の美を飾ることも決して不可能ではない。4番手は飯田太陽選手と田中勝輝選手の「植毛GO&FUN GT-R」が獲得した。

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

霧雨が舞う、セミウェット路面での争いとなったレース1において、ただ1台ドライタイヤを装着していたのが「植毛GO&FUN GT-R」。田中選手はオープニングの1周で9番手まで順位を落とすも、路面が次第に乾いていき、なおかつタイヤに熱の加わった4周目にはトップグループと遜色のないタイムで走行できるようになり、それ以降は秒単位で上回るように。

6周目には5番手に浮上した「植毛GO&FUN GT-R」は、9周目にはトップにさえ躍り出る。ピットロードオープンとなる20分経過から間もなくライバルがピットに滑り込み、ドライタイヤへの交換を行う中、田中選手はギリギリまでピットに入らず、15周目にようやく飯田選手と交代。コースに送り出された時には、リードは30秒以上となっていた。

しかし、50分間をフルに走り続けたタイヤと、そのほぼ半分を走ったタイヤとでは明らかに後者に分があったよう。最終ラップまでトップを守り続けた飯田選手ではあったが、1台の逆転を許して「植毛GO&FUN GT-R」は2位でのゴールとなった。

表彰台まであと一歩の4位を、永井宏明選手と織戸学選手の「TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」が獲得。最終ラップに逆転を許したものの、後半スティントを担当した織戸選手が繰り広げた激しいバトルには、多くの声援が贈られた。一方、「HOPPY 86 MC」は車重の軽さゆえ、交換したタイヤのウォームアップに苦しんだことから、7位に甘んじることに。

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

開けて日曜日に行われたレース2のグリッドは、レース1の結果に基づくトップ6のリバースグリッドに。幸運なポールポジションを獲得したのは、武井真司選手と笹原右京選手のドライブする「BH AUCTION CORVETTE GT3」。オープン参加で「鈴鹿10時間」以来のレースとなる車両だ。2番手もオープン参加の、河野駿佑選手と菅波冬悟選手がドライブする「LMcorsa Ferrari 488 GT3」で、3番手は「TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」と、ヨコハマタイヤユーザーが上位を独占。また、路面はわずかに濡れていたが、ここでは全車がドライタイヤを装着していた。

この中でひときわ速さを見せたのが、「BH AUCTION CORVETTE GT3」の笹原選手だった。この週末、初めてドライブしたにも関わらず、雨に見舞われた金曜日の専有走行ではトップタイムをマーク。ポルシェカレラカップジャパンやアジアF3でチャンピオンを獲得した実力派が、いきなりヨコハマタイヤのポテンシャルを引き出し、スタートを担当したレース2ではオープニングの1周だけで、後続の激しいバトルを尻目に7秒ものリードを奪い取る。そのリードが13秒ほどとなると、ペースをコントロールする余裕さえ笹原選手は見せていた。

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

一方、その後方では4番手を走行していた「LMcorsa Ferrari 488 GT3」の菅波選手が、5周目のヘアピンで激しい攻防の末、スピンを喫して9番手に後退。そして、ピットロードオープンになると、全車タイヤ無交換でドライバー交代を行い、もちろん「BH AUCTION CORVETTE GT3」はギリギリまで遅らせることに。トップで武井選手はコースに戻されたものの、ジェントルマンドライバーがヨコハマのドライタイヤを履くのは、まさにこのタイミングが初めて。レギュラードライバーとは圧倒的な理解度の差があるため、わずか1周でトップを明け渡してしまう。その後、もう1台にかわされてしまうも、もしドライコンディションでの練習が可能であったなら、また違った結果になっていたに違いない。

その「BH AUCTION CORVETTE GT3」に続く4位を獲得したのは、激しい挽回を果たしていた「LMcorsa Ferrari 488 GT3」だった。河野選手が「TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」の織戸選手と激しいバトルを繰り広げ、最終ラップの1コーナーでようやく逆転。その一方で、序盤に4番手を走行していた「HOPPY 86 MC」は、ドライバー交代時の停止時間が1秒足りず、ペナルティを受けたことから8位でのゴールとなった。

DRIVER VOICE

田中勝輝 選手 [植毛GO&FUN GT-R]

【Race1の成績 : 2位】
判断は僕がしました。ピットを出る時からドライタイヤを履いて行って、『これは温まりそうだな』と思ったので、そのままドライタイヤで。最初だけ苦しかったんですが、最後の方はタイヤがすごくグリップしてくれました。僕自身はいいパフォーマンスを見せられたことに、非常に満足しています

織戸 学 選手 [TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT]

【Race1の成績 : 4位】
正直(ドライタイヤで)行けるとは思っていなくて。でも、今年はことごとく、そういうのが裏目に出ていたから、僕がスタートを担当していたとしても選ばなかったと思う。今年は辛いレースが続いていたけれど、直前に岡山でテストして、クルマのバランスがすごく良くなっている。明日のレース2が楽しみ。

笹原右京 選手 [BH AUCTION CORVETTE GT3]

【Race2の成績 : 3位】
武井選手は今日、この今が初めてのドライだったので、すごいです。ラップごとにどんどん速くなっていて、セクタータイムでは上位とほとんど変わらないタイムで走っていました。武井選手のおかげで望外の結果を得られて、非常に感謝しています。僕は高いパフォーマンスを、皆さんに見せることができましたので、非常に良かったです。

河野駿佑 選手 [LMcorsa Ferrari 488 GT3]

【Race2の成績 : 4位】
スタートで菅波選手に行ってもらいましたが、488で富士を、しかもドライで走るのは初めてという、本当に申し訳ない状態にしてしまいました。僕は少しでもリカバリーできるよう、頑張って走って。そのうち、無線で「表彰台まで行けそうだ」と入ってきたんですが、織戸選手の巧みなブロックに(苦笑)、だいぶ苦戦して最後の最後に1コーナーで抜くしかなくて。タイヤ自体は最後まで極端に落ちることなく、それは菅波選手が前半に守ってくれたおかげです。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー]

レース1は、植毛GO&FUN GT-Rがドライスタートという気合を入れた作戦で、かなりレースを盛り上げてくれました。あそこでドライタイヤを選ぶのは普通だったら難しかったのですが、チームの思い入れを感じましたね。最後に残念ながら抜かれてしまいましたが、見ているお客さんは楽しんでいただけたのではないかと思います。

レース2はリバースグリッドとなったことで、BH AUCTION CORVETTE GT3がうまく利用して作戦を立てていましたね。こちらも残念ながらトップのまま帰ってくることはできなかったですが、やはりお客さんには楽しんでいただけたと思います。残念だったのはHOPPY 86 MCとLMcorsa Ferrari 488 GT3で、ペナルティやスピンがなく、無難にレースできていれば、また違った結果になったのではないでしょうか。

今回は使えるドライタイヤが5セットまでということで、季節的に持ち込みのタイヤが難しかった上にレース2は20度を超えて、路面温度も26度と想定外でありましたが、そんな中でも大きなデグラレーションがなかったのは良かったと思います。