2018 SUPER FORMULA Round 5 Report

【SUPER FORMULA 第5戦/もてぎ】

有言実行のディフェンディングチャンピオン、
石浦宏明選手がポール・トゥ・ウィンで今季初勝利!!

SUPER FORMULA Round 5

開催日 2018年8月18日-19日
開催場所 ツインリンクもてぎ
(栃木県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 52周
(1周=4,801m)
参加台数 19台
SUPER FORMULA 第5戦

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夏休み真っただ中のツインリンクもてぎは、Enjoy HONDAも同時開催されていたことから多くの家族連れでにぎわった。天気も、予選日は秋を感じさせるような気持ちのよい快晴で、結果的に上位5台がコースレコードを更新。決勝日はやや蒸し暑い曇天だったが、随所で手に汗握るバトルが勃発し、もてぎに集った2万人を超える観客は国内最高峰のスピードとその戦いに大いに盛り上がった。

昨年の王者である石浦宏明選手(JMS P.MU/CERUMO・INGING)はシーズン序盤が振るわずに、ランキングトップと9ポイントの差をつけられてもてぎラウンドに入っていた。タイトル連覇の可能性をつなげるためには、ここでのポールトゥウィンが必須。

そんな中で行われた予選日午前中のフリー走行では、セッション中盤に珍しくスピンを喫してコース上でストップしてしまう。幸いにコースウォールへの接触等はなく、ピットに戻りマシンチェックののちにすぐ走行を再開できたが、それまで使用していたミディアムタイヤにフラットスポットを作ってしまい、残りの時間は持ち越していたソフトタイヤで走ることを余儀なくされた。最終的に12番手タイムに留まり、一見不利な展開に見えたこのソフトタイヤでの走行だったが、ここで周りよりも多くソフトタイヤでのデータ収集を行えたことが、この後の予選、決勝に大きく影響することになった。

Q1を6番手で突破した石浦選手は、Q2で1分31秒747をマークし、去年までのコースレコードを破って2番手でQ3へ進出。同じくコースレコードを上回ったDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの野尻智紀選手、松下信治選手と3人で、激しいポールポジション争いを展開した。3人の中で初めにタイムアタックを行った松下選手が、まずは1分31秒761で暫定トップに立つと、続いてアタックに入っていた野尻選手が1分31秒642で逆転。そして最後にコントロールラインを通過した石浦選手が1分31秒591を叩き出し、新たなレコードホルダーになるとともに、堂々のポールポジション獲得となった。

一夜明けた決勝日は、予選日のさわやかな陽気と比べると曇天で蒸し暑い天気に。気温30℃、路面温度42℃と、タイヤのパフォーマンスが発揮されるには十分なコンディションで決勝レースがスタートした。

予選上位4台は、スタートでの蹴り出しを重視してソフトタイヤでのスタートを選択。予選5位のニック・キャシディ選手(KONDO RACING)と、同じく7位の山本尚貴選手(TEAM MUGEN)がミディアムタイヤを選んでいた。スタート直後の1コーナーを制したのは石浦選手だったが、オーバーテイクシステム(OTS)を巧みに使用した松下選手が5コーナーで石浦選手をかわしトップに浮上。

先行逃げ切りの作戦を考えていた石浦選手にとっては最初の誤算となったが、タイヤをいたわりながら松下選手の様子をうかがう作戦へとすぐさま切り替えると、1秒前後のギャップを保ったままで周回数を重ねていった。3番手には野尻選手がつけていたが、予選9位からソフトタイヤのアドバンテージを最大限に利用するため2ピット作戦を選んだ平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)がレース序盤で大きくジャンプアップ。4周目までに4番手まで上がると、8周目の1コーナーで野尻選手をかわし3番手へ。上位2台に一気に近づいたところで1度目のピット作業を行い、新品のソフトタイヤに交換して追い上げを開始すると、26周目には再び石浦選手の背後まで順位を取り戻していた。

3番手以降の目まぐるしい入れ替わりをよそに、松下選手と石浦選手のトップ争いは膠着状態が続いていた。先に動きを見せたのは松下選手で、レースも折り返し地点を過ぎた27周終了時点でピットイン。

前方がクリアになった石浦選手はここで一気にペースアップにかかる。それまで1分37秒台にとどまっていたラップタイムが、28周目には1分36秒、29周目には1分35秒8と、すでに半分以上のレース距離を走ったソフトタイヤで驚くべきタイムを連発しながら、ピット作業を済ませたマシンたちとの“見えない差”を築いていった。後続全てがピット作業を済ませたのを確認すると、40周終了時点でピットイン。チームも丁寧かつ迅速な作業で、石浦選手をトップのままでコースへと送り出した。

この時点で2位を走行する平川選手との差は6.2秒。最後はこのマージンを使いながらペースをコントロールしつつトップチェッカーを受けて、今季初優勝を飾った。ポールトゥウィンで、1大会に獲得できる最大ポイントを手に入れた石浦選手は、ポイントランキングは3位と変わらないものの、上位2名との差を大きく縮め、タイトル連覇の望みをつなげる結果となった。

2位でフィニッシュした平川選手は、今大会に出走した19台の中で最大ポジションアップを果たして大量ポイントを獲得。ランキング4位と急浮上を果たした。また表彰台の最後の1席にはキャシディ選手が入ることに。ミディアムタイヤでスタートした直後、山本選手の先行は許したものの、早めのピット戦略でソフトタイヤに履き替えると追い上げを開始。途中、ナレイン・カーティケヤン選手(TCS NAKAJIMA RACING)との激しいバトルも繰り広げながら、最終的には予選順位から2つポジションアップを果たし、山本選手をかわしてランキングリーダーに躍り出ることになった。

DRIVER VOICE

石浦宏明 選手 [JMS P.MU/CERUMO・INGING]

【今回の成績 : 優勝】
スタートして1周目に松下選手にかわされてしまったことと、実は序盤からマシンにトラブルの症状が出ていて、この2つの想定外の出来事にひやひやしながらも、チームのサポートで冷静に周りの状況を確認しながらレースを戦うことができました。連覇するためにはここでポール・トゥ・ウィンを達成することが最低限の仕事だったので、それがクリアできてホッとしています。

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

今回は真夏のレースにもかかわらず比較的気温が低く、一方で風がそれほど強くなかったこともあって路面温度は低くなかったので、これまでのレースであったような“ストレートでタイヤが冷やされてコーナリングの際に苦しくなる”というようなパターンではありませんでしたね。タイヤにとってはパフォーマンスを出しやすいコンディションがなっていたと思います。

ただ、ミディアムタイヤに関しては期待値に届いていない印象で、結果的にソフトタイヤの速さが際立つようになっていました。レースになるとコースにラバーがしっかりと乗るので、チームもソフトタイヤが意外にもつと感じたのではないでしょうか。マシンとドライバーの特性の組み合わせである程度の違いは出てくるでしょうが、私自身は、今回40周程度はソフトタイヤが持つと考えていました。

次戦・岡山大会では予選のQ3でオーバーテイクシステムが使用できるようになりました。現在のSUPER FORMULAのレコードタイムは1分12秒429。もちろん天気によるので断言はできませんが、コースレコードの更新は期待できると思っています。

レース展開に関して言うと、ここまでの戦いと比べるとソフトタイヤのメリットがどれだけあるのかが気になるところです。最近はミディアムタイヤをあまり使わない展開になってきていますが、むしろミディアムタイヤの使い方がカギを握るようなレースになる可能性もあるのではと考えています。