2018 SUPER FORMULA Round 3 Report

【SUPER FORMULA 第3戦/SUGO】

セーフティカーが勝敗のカギを握ったSUGOラウンド、
山本尚貴選手が今季2勝目でタイトル争いをリード!!

SUPER FORMULA Round 3

開催日 2018年5月25日-27日
開催場所 スポーツランドSUGO
(宮城県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 68周
(1周=3,704m)
参加台数 19台
SUPER FORMULA 第3戦

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「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」の第3戦が宮城県のスポーツランドSUGOで開催。コンパクトでスリリングなSUGOらしく、決勝レースではセーフティカーの導入が勝敗を分けるファクターのひとつとなり、山本尚貴選手(TEAM MUGEN)が開幕戦鈴鹿大会に続きシーズン2勝目を挙げた。

悪天候により決勝レースが中止となった第2戦オートポリス大会からわずか2週間。今度は日本列島を大きく北上し、東北随一のサーキット、スポーツランドSUGOで第3戦を迎えることとなった。金曜日には30℃を超える気温を記録。路面温度も50℃を示すほどの暑さになったことから、専有走行では期待されたようなタイムは記録されなかった。

そんな中でトップタイムをマークしたのは石浦宏明選手(JMS P.MU/CERUMO・INGING)。3年連続タイトルを獲得しているチームながら、このSUGOではこれまで目立った速さを見せていなかったが、今年は出だしで好調な様子を見せていた。

土曜日の公式予選でも、チームメイトの国本雄資選手と揃ってQ3まで進出したが、ポールポジション争いのQ3では、残念ながらアタック中にスピンを喫し戦線離脱。このセッションで速さを見せたのは野尻智紀選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だった。Q2ではトップタイムをチームメイトの松下信治選手に譲ったものの、Q3では自己ベストタイムをただ一人0.2秒更新。従来のコースレコードタイムを塗り替えてポールポジション獲得を果たした。

なお、予選日のフリー走行中、TCS NAKAJIMA RACINGの2台がそれぞれ大きなクラッシュを喫した。伊沢拓也選手はモノコック交換を余儀なくされるほどの状態で、公式予選も断念したが、チームは一晩かけてマシンを修復。決勝日の午前中に行われるフリー走行には無事に出走し、嘆願書により決勝レースへの出走が認められ、19台全車がスターティンググリッドにつけることになった。

決勝日も晴れたが、雲の量は比較的多く、レースがスタートするころには日差しもいくらか遮られるように。気温24℃、路面温度41℃と、金曜日に比べればいくらか穏やかなコンディションで決勝レースがスタート。

ポールシッターの野尻選手以下、小林可夢偉選手(carrozzeria Team KCMG)、平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、国本選手はソフトタイヤを装着し、そのけり出しの良さを活かして4台はポジションをキープしたままオープニングラップを終える。その後ろは、スタートで出遅れてしまった松下選手をかわして山本選手が5番手に浮上。今大会と次戦富士大会にスポット参戦するダニエル・ティクトゥム選手(TEAM MUGEN)が予選9番手から3ポジションアップし6番手につけてレースの序盤が進んでいった。

ソフトタイヤを装着している上位4台はほとんど集団状態で山本選手以下を引き離していったが、その中でも特にペースの良い小林選手が、14周目の1コーナーでアウト側から野尻選手を豪快にオーバーテイク。翌周には後続に1秒以上の差をつけ単独首位に躍り出た。

このまま小林選手の独走状態になるかと思われたが、16周目の馬の背コーナーで千代勝正選手(B-Max Racing team)とジェームス・ロシター選手(VANTELIN TEAM TOM’S)が激しいバトルの末接触しコースアウト。17周目にセーフティカーが導入されることになった。

このタイミングでピットインを選択したのが、5番手走行中の山本選手、ソフトタイヤで6番手まで追い上げてきていた塚越広大選手(REAL RACING)、7番手の中嶋一貴選手(VANTELIN TEAM TOM’S)の3台。揃ってスムーズなピット作業を終えると、暫定的に後方の順位でコースへと復帰した。

野尻選手、平川選手はこの翌周にピットインしたが、山本選手や中嶋選手の後方でコース復帰。見た目上の順位ではタイヤ交換を済ませていない6台が上位を占め、タイヤ交換を済ませた中では山本選手がトップに立った。2番手につけたのは、レース5周目と早々にピット作業を済ませていたニック・キャシディ選手(KONDO RACING)。その後ろに塚越選手、中嶋選手と続いていた。

レースは24周目にリ・スタート。見かけ上は小林選手がトップを守っていたが、この後で必ず行わなければいけないタイヤ交換の作業時間を考えると、山本選手との間に30秒以上のマージンを築かなければならなかった。すでに20周以上走行したソフトタイヤで、小林選手はなんとかプッシュ。44周目にピット作業に戻ったが、ピット作業に時間がかかり万事休す。山本選手よりも6つも後方でコース復帰となった。

小林選手に代わってトップに立った国本選手も、マシントラブルにより戦線離脱。すべてのマシンがピット作業を済ませた62周目には、山本選手が堂々首位に返り咲き、そのままトップチェッカーを受けた。今シーズン2勝目となった山本選手は、これがSUGOでの初優勝。2位には早々のピット戦略でなんと60周以上もソフトタイヤで走行したキャシディ選手が今シーズン初表彰台を獲得。3位には中嶋選手が入った。

DRIVER VOICE

山本尚貴 選手 [TEAM MUGEN]

【今回の成績 : 優勝】
今回のレースはなんといっても戦略がすべてでした。とてもいいタイミングでチームがピットに呼んでくれたと思っています。去年は一生懸命がんばってはいたものの、何をやってもうまく行かず、フラストレーションもたまって苦しいシーズンだったのですが、今日のような、いろんなことがうまく行くレースもあるのだと思うと、レースの奥の深さを改めて感じました。これまで鈴鹿では何度か優勝していますが、クルマ的にもコースとの相性が良かったし、僕自身も鈴鹿が好きなことも鈴鹿の優勝につながっていたと思います。ただ、他のサーキットで勝てていないことはプレッシャーでもあったので、レース展開に恵まれた部分もあっての結果ではありますが、勝てるときに勝てて少し肩の荷が下りました

ENGINEER VOICE

高口紀貴 [横浜ゴム MST開発部 技術開発2グループ]

金曜日の専有走行の時点では、路面温度も非常に上がっていたのでコースレコードの更新は難しいかと思っていたのですが、土曜、日曜と徐々に路面温度が下がっていったので、コースレコードを切るくらいのタイムは出るのではないかという望みを持っていました。実際、予選のQ3のタイムは、従来のレコードタイムを0.2秒ほど削ったものになりました。

今シーズン、課題として「Q2からQ3にかけてのタイム更新がない」ということがありましたが、今回は野尻選手がQ3で全体の最速タイムを記録してくれました。また、予選アタックの際にウォームアップラップに充てる周回数の違いや、コースインのタイミングをずらしてゆっくりとタイヤへの熱入れを行うマシンなど、予選セッションの使い方がドライバーによっていろいろと異なりましたが、これについても我々としては課題の一つと考えています。

本来ゴムというものは性質的に熱しにくく冷めにくいものなのですが、使われている量によってその性質が変わり、ソフトタイヤはミディアムタイヤに比べて熱しやすく冷めやすいタイヤになっているのです。本来のゴムの性質であれば蓄熱していてそれほど温度を下げることなく走れるところでも、今のソフトタイヤでは冷めてしまう。まだドライバーの皆さんが「ソフトタイヤを一番最適に使う方法」を模索している途中だとも言えますが、タイヤを供給する側の我々としては、改善しなければならない点ともとらえています。

次戦の富士は、まだ我々がコースレコード更新を果たしていないサーキットのひとつになります。季節的な問題やタイヤの使い方などで、なかなか厳しい目標かと思いますが、なんとかクリアしたいと思っています。