2018 JRC Round 10 Report

【全日本ラリー選手権 第10戦/愛知県新城市】

前戦で王座を確定させた新井選手組が最終戦も制して有終の美、
JN5とJN1もヨコハマタイヤ勢が優勝を飾った!!

JRC Round 10

開催日 2018年11月2日-11月4日
開催場所 愛知県新城市 近郊
天候 Leg1) 晴れ
Leg2) 曇り
路面 Leg1) ドライ
Leg2) ウェット~ドライ
ターマック(舗装路面)
総走行距離 385.75km
SS合計距離 109.21km (15SS)
得点係数 1.2 (舗装路100km~150km未満)
参加台数 76台 (オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 30台)
2018 全日本ラリー選手権 第10戦

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2018年の全日本ラリー選手権は、最終戦となる「新城ラリー 2018」が愛知県新城市で開催された。2007年から全日本選手権に加わったこのラリーも、いまではシリーズを代表するビッグイベントへと成長。多彩なイベントや出店もあることから、メイン会場の新城総合公園とサテライト会場の鬼久保ふれあい広場はあわせて土曜日が27,500人、日曜日は26,500人の入場者数を記録し、今年も大勢の市民で賑わいを見せた。

競技は今年、初めてSS(スペシャルステージ)の合計距離が100kmを超える設定に。雁峰と愛郷、お馴染みの林道を使ったテクニカルなステージと本宮山スカイラインのハイスピードなパワーステージ、賑わいを見せる新城総合公園のショートステージに加え、新たに「くらがり渓谷」にも林道ステージが設けられた。

11月2日(金)は早朝からレッキを行い、各選手は特にこの「くらがり渓谷」を念入りにチェック。雁峰などと同様にテクニカルな要素が強く、さらに勾配もついていることから攻略が難しいという印象を持った選手も多いようだった。そしてこの日は、夕方から新城文化会館でセレモニアルスタート。リバースグリッドで1台ずつが紹介されながらスタート、ゼッケン1をつけチャンピオンを確定している新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)がスタートするころにはすっかり日も沈んでいたが、大勢の市民がADVANフラッグを振るなどして声援を送ってくれた。

3日(土)、いよいよ一年間を締めくくる戦いが幕を開けた。オープニングは愛郷林道の「ほうらいせん一念不動1 (7.46km)」、新井選手組は前戦から投入された「ADVAN A08B」の245/40R18を武器に2番手を6.5秒、1kmあたりおよそ0.9秒引き離してステージベストを刻み、幸先よいスタートを飾った。

続くSS2は注目の新ステージ「くらがり渓谷 1 (12.54km)」、ここでも新井選手組が連続ステージベストを刻むと、2.8秒差のセカンドベストで奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)が続いて、奴田原選手組が2番手に浮上したことでヨコハマタイヤ勢がワン・ツー・フォーメーションを構築した。

両者はSS3「鬼久保 1 (6.56km)」でも不変、ここではパワーステージを得意とするランサーの奴田原選手組がステージベスト、新井選手組がセカンドベストを奪取。そして大勢の市民が見守るSS4「新城総合公園リバース 1」は0.55kmのショートステージだが、HYOMA選手/萌抜浩史選手組(ランサー)が強豪をおさえてステージベスト、2番手が奴田原選手組、3番手に新井選手組という結果で、オープニングから4連続でヨコハマタイヤ勢がステージベストを独占した。

午後のセクションに入り、オープニングステージのリピートとなるSS5も新井選手組が制した。一方で奴田原選手組はサードベスト、そしてSS6でライバルがベストを刻んだことから奴田原選手組はポジションを3番手にドロップした。しかし、1本目でベストを奪っている「鬼久保」の2回目も奴田原選手組が制してポジションを回復、両者の2位争いを尻目に新井選手組はトップの座をしっかりキープしてLEG1を16.4秒差の1位で終了。2位に奴田原選手組が続くという結果になった。

LEG1を終えてサービスパークに戻った選手たち、その多くがこの先の天候について思いを巡らせていた。気象情報会社により微妙に予報は異なるが、夜半に雨が降りそうな気配が濃厚。果たしてその雨はLEG2のステージが始まる頃にも路面に残っているのか、それとも早い段階で止んで路面は乾くのか。心の中で“てるてる坊主”を思い描く、もしくは逆に“雨乞い”をしながら眠りにつく、そんな夜が更けて行った。

一夜明けた日曜日のLEG2、残るSS距離は54.99kmでLEG1とほぼ同じ。この日は「雁峰北 (11.10km)」と「長篠設楽原 (12.56km)」と、大会名物の雁峰林道が主戦場となる。一方、LEG1も走った「鬼久保」は3.56kmのショートとなり、これらを2回ずつ走行。これに新城総合公園のショートステージを1本加えた7本のSSで勝負を決する。

気になるコンディションは雨こそ止んでいたものの、雁峰北はウェット路面。長篠設楽原はほぼ乾いていたが、泥や土埃でスリッパリーな状況となっていた。そんな中でLEG2オープニングの「雁峰北 1」は、ライバルにベストを譲り新井選手組はセカンドベスト。差が詰まるかたちとなったが、続くSS10「長篠設楽原 1」で新井選手組がベストを奪い返して再びマージンを拡大した。

このマージンをしっかり最後まで守りきり、新井選手組がトップで「新城ラリー 2018」をフィニッシュ。新井選手組にとって新城ラリーでの初優勝となり、チャンピオンを獲得したシーズンを最良のかたちで締めくくった。また、奴田原選手組は3位で表彰台を獲得、「ADVAN A08B」が今回も好成績をおさめる結果となった。

このほか、JN5クラスでは川名賢選手/保井隆宏選手組(DS3)が優勝を飾り、RALLY HOKKAIDOから3連勝で強さを見せる結果に。JN1クラスでも伊藤隆晃選手/大高徹也選手組(ノート)が優勝、小川剛選手/佐々木裕一選手組(フィット)が準優勝で、前戦に続いてJN1クラスはヨコハマタイヤ勢のワン・ツ・フィニッシュとなった。

一方で最終戦にタイトル争いが持ち越しとなっていたクラスでは、ヨコハマタイヤ勢がともに涙を呑む結果に。

JN2クラスはLEG1をトップであがってチャンピオン獲得への望みをつないでいた明治慎太郎選手/北田稔選手組(86)が、LEG2序盤でマシントラブルからリタイアを喫した。

また、JN4クラスの山本悠太選手/小林剛選手組(86)もLEG1をトップであがり、LEG2に入ってもSS13を終えてトップをキープ、このままフィニッシュすればチャンピオン獲得というポジションにつけていた。しかし最終ひとつ前のSS14でタイムが伸び悩みポジションを2位に落とし、最終的にLEG2の順位が4位に留まったことからこの日のレグポイントを獲得することが叶わず。この結果、ライバルに僅か0.7点及ばずシリーズランキングは2位となった。

DRIVER VOICE

新井敏弘 選手 [富士スバル AMS WRX STI]

【今回の成績 : JN6クラス 優勝】
前戦で「ADVAN A08B」がデビューして、タイヤの優れたパフォーマンスが全てに良い結果を生んでいます。LEG1でしっかりマージンを稼ぐことが出来て、そのマージンを活かして逃げきるという青写真通りの展開になりました。LEG2ではオープニングステージがウェットで少々苦労した部分がありましたが、次で取り返せたので御の字ですね。今年はチャンピオンを奪還しましたが、終盤に「ADVAN A08B」がデビューしたことは大きかったですね。ターマック(舗装路)の戦闘力が大きく向上したことで、最後にターマックの連勝も出来て良かったです。

伊藤隆晃 選手 [プレイドライブ YH ノート NISMO S]

【今回の成績 : JN1クラス 優勝】
グラベルで思うような結果を出せていないので、終盤のターマック2戦へは強い思いを抱いて臨みました。しかし、前戦のハイランドが2位で終わってしまい……。新城はクルマもドライバーも得意ではないのですが、厳しいとは思いつつも鬼久保など勝てるステージをしっかり奪って戦っていこうという思いでした。そこで勝てたので、自分としてはライン取りなども考えて慎重に走りました。ハイランドを終えて車をアジャストしていただいて良くなったので、まだまだ伸びしろがあると思います。チームのみなさん、そして学生メカニックのみなさん、一年間ありがとうございました。

TECHNICAL INFORMATION

独特の個性的なステージで知られる新城ラリーだが、テクニカルな林道からハイスピードなステージまで、満遍なく「ADVAN A08B」を装着する新井敏弘選手組と奴田原文雄選手組がステージベストを奪って速さを見せる結果となった。以前に比べると路面グリップの向上している雁峰林道や愛郷林道だが、今回は夏の台風災害の影響もあり大会に向けては地元自治体による復旧作業も急ピッチで進められた。

前戦に続いて「ADVAN A08B」がJN6クラスで強さを見せる結果で、一年間の戦いを締めくくった全日本ラリー選手権。3年ぶりのチャンピオン奪還を確定している新井選手組が優勝を飾り、会場を訪れた多くの市民からセレモニアルフィニッシュで祝福を受けていた。