【全日本ラリー選手権 第8戦/北海道帯広市】
JRC Round 8
開催日 | 2018年9月14日-9月16日 |
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開催場所 | 北海道帯広市 近郊 |
天候 | Leg1) 晴れ Leg2) 晴れ |
路面 | Leg1) ドライ Leg2) ドライ グラベル(非舗装路面) |
総走行距離 | 749.08km |
SS合計距離 | 178.87km (15SS) |
得点係数 | 2.0 (非舗装路150km以上) |
参加台数 | 45台 (オープンクラス含) (ヨコハマタイヤ装着車 13台) |
全10戦で競われている2018年の全日本ラリー選手権は、第4戦からの“グラベル(非舗装路)5連戦”を締めくくる第8戦「RALLY HOKKAIDO」が開催された。北海道帯広市をホストタウンに、FIA APRC(アジア-パシフィック・ラリー選手権)を併催するシリーズ屈指のビッグイベントも今年で17回目を数え、十勝地方に定着している。
今回は開催前週に北海道胆振東部地震が発生、一時は開催を危ぶむ声も聞かれた。しかし十勝地方は震源から距離が離れているために直接的な被害はほとんど無く、地元の開催を支持・歓迎する声にも後押しされて例年通りに催された。結果としてはこのビッグイベントが、観光資源としても地域への経済効果が大きいことがあらためて認識されることとなった。
今年の全日本選手権は15本のSS(スペシャルステージ)、合計距離178.87kmを設定。金曜日の夕方に帯広市郊外の北愛国交流広場に設けられたメイン会場で華々しくセレモニアルスタートを催し、その後に隣接するショートステージ「SATSUNAI (1.47km)」で競技がスタートするのも例年通り。
本格的な戦いは土曜日からとなり、この日は陸別町に3本のSSを設定。多くの人出で賑わう「RIKUBETSU LONG (4.63km)を3回走行、大会最長の28.75kmの「KUNNEYWA (クンネイワ)」と、4年ぶりに復活した23.49kmの「YAM WAKKA (ヤムワッカ)」を各2回ずつ、そして「SATSUNAI」を最後に1回走行する。
日曜日は「OTOFUKE Reverse (6.12km)」を2回、「NEW HONBETSU (13.79km)」と「ADHORO LONG (19.66km)」を各1回ずつ走り、最後にサービスパーク隣接の「SATSUNAI」で締めくくるという流れになる。
近年は雨が勝負の分かれ目となることも多かった「RALLY HOKKAIDO」だが、今年の競技はドライコンディションでの戦いとなった。金曜日と土曜日は帯広市の最高気温が25℃を超える夏日となり、まぶしい太陽が照りつける中で「思っていたよりも暑い」という会話がサービスパークでは交わされていた。日曜日もやや雲は多めだったが雨が降ることはなく、雄大な北海道らしいハイスピードグラベルの接戦が展開された。
JN6クラスでチャンピオン奪還を賭けて臨んだのが、新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)。第4戦からグラベルで負け無しの4連勝、「RALLY HOKKAIDO」は昨年まで2年連続優勝を飾っているだけに、大いに期待と注目を集める存在となった。
新井選手組はその期待にも応えて、金曜日のSS1「SATSUNAI 1」でステージベストをマーク。無風状態で先行車の巻き上げた土埃が滞留するなか、視界がクリアな先頭ゼッケンの優位性も活かして、2位に1.9秒差をつける上々の出だしとなる。
この勢いは土曜日も変わらず、SS3「YAM WAKKA 1」ではタイトルを争う勝田範彦選手組を10.2秒上回る速さで、マージンを13.9秒に拡大。SS4は鎌田卓麻選手組にベストを僅か0.5秒差で譲ったものの、勝田選手組に対しては更に差を拡大してトップのポジションを着実に固めていった。
一方、大勢のギャラリーが見守る「RIKUBETSU」で圧倒的な速さを見せたのは奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)。自らが主宰するラリースクールのホームコースが陸別ということもあって、3回のステージ全てでベストタイムをマーク。2回目では2番手に2.8秒、1kmあたり0.5秒差をつける韋駄天ぶりでファンの声援に応えた。
SS7を終えて新井選手組は21.6秒差のトップ、このポジションで大会最長ステージのリピートとなる「KUNNEYWA 2」へと臨んだ。しかし、ここでまさかのスローパンクチャーに見舞われてしまう。残り距離からそのまま走りきることを決断した新井選手組だったが、惜しくも“貯金”を全て吐き出し16.0秒を追う立場になってしまう。
土曜日最終のステージは「SATSUNAI」、ここで一気に5.7秒差という驚異的な速さのステージベストを奪い、10.3秒差の2番手でLEG1を終えた。
日曜日のLEGは57.56km、逆転に向けてオープニングのSS10「OTOFUKE Reserse 1」から全開で攻めていく新井選手組、2.7秒差のベストで差を詰める。続くSS11「NEW HONBETSU 1」も前半の舗装区間はライバルとほぼ同秒の速さだったが、後半の舗装区間でタイムが伸び悩んだ結果、12.5秒へと差が開いてしまった。さらにプッシュを続ける新井選手組は、SS12と13を連続ベスト、SS14はセカンドベストで4.5秒差の2番手で最終ステージを迎えた。
締めくくりとなるSS15は「SATSUNAI 3」だが、SS14を終えて北愛国サービスパークに戻ってから、サービスとリグループの時間をはさんでのスタートとなる。この間は2時間近くあり、上空の雲行きなども勘案した結果、雨が降る可能性にも賭けて新井選手組は軟質路面用のADVAN A031を装着。しかし、雨は降ることなくコンディションはドライで迎えたスタート。軟質路面用タイヤであったがフルアタックを見せた新井選手組は、勝田選手組を1.1秒上回るステージベストで締めくくったが、惜しくもあと3.4秒届かず2位でフィニッシュ。タイトル争いは次戦へと持ち越される結果となった。
このほかのクラスでは、JN5の川名賢選手がフランス人女性コ・ドライバーのキャシー・デュロッソウ選手と参戦。タフな展開となりライバルもリタイアして行くなかで、マシンのマイナートラブルも乗り越えてフィニッシュまで運び、今シーズン2勝目を飾ることに成功した。
またJN4クラスでは、トヨタ・86の石田雅之選手/遠山裕美子選手組が快走。今年も前輪駆動勢をおさえて、5本のステージベストをマーク。マシンもノートラブルの安定した戦いぶりのままフィニッシュ。昨年はJN2で優勝を飾った「RALLY HOKKAIDO」、今年は同じ86だがJN4クラスを制して強さを見せた。
【今回の成績 : JN6クラス 2位】
大きな地震のあった翌週ということで、オフィシャルにも被災された方がいらっしゃったかと思うのですが、こんな素晴らしいラリーを開催していただいてありがとうございました。土曜日にスローパンクでそれまでの“貯金”を吐き出して“借金”まで抱えてしまったので、日曜日は朝から全開で行きました。結果的には一歩届きませんでしたが、日曜日の走りでは今までに無い発見もありました。「こんなスピードでも、こうすれば曲がれるんだ」、と。高速コーナーでのテクニックなので日本のラリーではあまり使えないかもしれませんが、自分もまだまだ進化しているので、次で今回の借りを返しますよ(笑)。
【今回の成績 : JN5クラス 優勝】
北海道の道は車にすごく厳しくて、危ない場面も何度かありました。タフな戦いでしたが、メカニックがマシンを完璧に仕上げてくれたお蔭で、最後まで安心して走りきることが出来ました。唐津以来となる今シーズン2回目の優勝ですが、今年ここまではなかなか調子が上がらなくて、キツいシーズンになっていました。だからこそ「RALLY HOKKAIDO」で勝てたことが、本当に嬉しいですね。
【今回の成績 : JN4クラス 優勝】
十勝のステージは大好きで、これまでの成績も比較的良かったという印象です。昨年もJN2クラスで優勝して、今年はJN4での参戦となりましたが、車体とサスペンションが大きく違っています。特に昨日のハイスピードでラフなステージで、足回りが凄く良くてマージンを稼ぐことが出来たことも、大きな勝因だと思います。
【今回の成績 : JN1クラス 2位】
3番手で日曜日のLEG2をスタートしましたが、SS13のステージベストでポジションを上げて準優勝でフィニッシュ出来ました。ミッションの不調はあったのですが、高速コーナーの多いステージには自信を持って臨んでいました。シリーズ争いもチャンスを残すことが出来ましたし、舗装のほうが勝ち目はあると思っています。車をしっかりメンテナンスして、次のハイランドに臨んでいきます。
ドライコンディションが続いた今年の「RALLY HOKKAIDO」だったが、ハイスピードゆえのアクシデントやトラブルも多く見られ、サバイバルな展開となった。そんな中でJN5とJN4では、チームの高い総合力も武器にして、ヨコハマタイヤ勢が優勝を飾りポディウムで笑顔を見せてくれた。
JN6クラスは惜しくも新井選手組が僅差の2位となったが、ポジションを2位に下げてからの猛追撃は観客を大いに沸かせる走りだった。新井選手組と奴田原選手組はLEG1を205サイズ、LEG2は215サイズのADVAN A053で走り、新井選手組は最終ステージで雨の可能性に賭けてADVAN A031を装着。残念ながら雨は無かったが、それでもステージベストを刻んで戦いを締めくくった。