2018 JRC Round 6 Report

【全日本ラリー選手権 第6戦/北海道ニセコ町】

北海道蘭越町に設定されたタフでチャレンジングな舞台での一戦、
雨のLEG2で強さを見せた新井敏弘選手組が三連勝を飾った!!

JRC Round 6

開催日 2018年6月29日-7月1日
開催場所 北海道ニセコ町 近郊
天候 Leg1) 曇り 時々 晴れ
Leg2) 雨
路面 Leg1) ドライ
Leg2) ウェット
グラベル(非舗装路面)
総走行距離 425.13km
SS合計距離 111.59km (11SS)
得点係数 1.5 (非舗装路100km~150km未満)
参加台数 56台
(ヨコハマタイヤ装着車 18台)
2018 全日本ラリー選手権 第6戦

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全10戦で競われている2018年の全日本ラリー選手権は、カレンダーも後半戦に突入。その皮切りとなる第6戦「2018 ARKラリー・カムイ」が世界的なリゾート地として海外からの観光客からも人気の高い北海道のニセコ地域を舞台に開催された。

昨年までの洞爺湖からホストタウンをニセコに移し、大会名称もアイヌ語で神を意味する「カムイ」と新たにされた。また、この大会名称にちなんで人気の漫画アニメーションとタイアップ、ポスターなどには主役のキャラクターが大きくあしらわれて注目を集めた。

競技の拠点となる大会本部やサービスパークはニセコ町のニセコモイワスキー場に設けられ、お隣の蘭越町に11本のSS(スペシャルステージ)が設定された本大会。第4戦から5大会連続となるグラベル(非舗装路)ラリー、その折り返しとなるが、SS合計距離は111.59kmと100kmを超えるため、与えられるシリーズポイントには係数1.5が掛けられタイトル争いにとって重要な一戦と位置づけられる。

戦いの舞台となるSSは、昨年までの大会でも使われたものと全く新しいものが混在する。「MAGNOLIA Reverse (5.49km)」は昨年も使った道を逆方向にLEG1で3回走行、「STREAM (11.24km)」はLEG1、「KNOLL (7.84km)」はLEG2でともに昨年と同方向で2回ずつ走行する。そして新規のSSは「SALMON (5.57km)」と「ORCHID (22.91km)」のふたつで、前者はLEG1、後者はLEG2でそれぞれ2回ずつ走行する。

このうち注目は「ORCHID」で、その距離は北海道らしく20kmを超えるビッグスケールなもの。SS合計距離はLEG1が50.09kmなのに対して、LEG2はさらに長い61.50km。そのうち2回走る「ORCHID」が45.82kmを占めることになり、勝負どころと見越して各選手は特に念入りにレッキを行っていた。

6月30日(土)、午前9時ちょうどにシリーズランキングリーダーの証となるゼッケン1をつけた新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRC STI)がニセコモイワスキー場をスタート。グラベルラリーのトップゼッケンということで、いわゆる“砂利かき役”となる不利な面もあるものの、オープニングのSS1「MAGNOLIA Reverse 1」は鎌田卓麻選手組(WRX STI)と僅か0.3秒差でセカンドベスト、好調な滑り出しを見せた。

続くSS2「STREAM 1」は、新井選手にとって苦い思い出のあるステージ。昨年の大会、このステージでスタート直後にまさかのコースオフからリタイアを喫してしまったからだ。今年はその場所にギャラリーの観戦ポイントも設けられ、多くのファンが注目する中で新井選手組がスタート。もちろん今年はファンの期待にも応えて眼前を通過、昨年の借りを返すステージベストを叩き出してライバルを逆転、SS2を終えて1.5秒差をつけてトップに躍り出る。

しかし鎌田選手組も引き下がることなくSS3「SALMON 1」で2.1秒差のベスト、セカンドベストであがった新井選手組を0.6秒逆転するシーソーゲームを展開。SS4「MAGNOLIA Reverse 2」で更に2.3秒鎌田選手組が先行、セクション1を終えて新井選手組は2.9秒差の2番手で、3番手の勝田範彦選手組(WRX STI)とは10.5秒差というオーダーになる。

天気予報では雨も心配されていた土曜日のLEG1だが、蓋を開けてみれば青空も時折広がり最高気温も25℃近くまで上昇。蒸し暑い中で戦いはセクション2へと進み、新井選手組と鎌田選手組の一騎討ちの様相が色濃くなってきた。しかし、ここで両者に「待った」をかけたのは柳澤宏至選手/加勢直毅選手組(WRX STI)、SS5「STREAM 2」でステージベストを刻んでトップ争いの一角を占める。一方の新井選手組はSS5で鎌田選手組との差を0.3秒詰めたが、SS6とSS7は鎌田選手組が僅かに先行、初日を終えて5.1秒差の2番手というポジションに。

柳澤選手組はSS6を終えて4番手につけていたが、LEG1最終のSS7「MAGNOLIA Reverse 3」で痛恨のアクシデント。3回目のリピートとなったSS7の路面は非常にタフなものとなっており、深く掘れた轍に大きな石が顔を出していたり、グレーチングの箇所が掘れて大きな段差になるなどしていた。そんな状況の中で柳澤選手組はタイヤにダメージを受けてしまいタイムロス、5番手へとポジションを下げてしまった。また、VAB型WRX STIが上位を占める中、ランサーで戦う奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組はタイムが伸び悩み、初日を終えてトップから29.3秒遅れの4番手となった。

一夜明けた7月1日(日)、ニセコ地方は夜明け前から雨が降ってステージの路面はウェットコンディションに転じた。6時30分にLEG2スタートリストに従って順次各車がパルクフェルメアウト、2番手出走となった新井選手組も逆転を期してSSへと向かっていく。

二日目のオープニングは、注目のロングステージSS8「ORCHID 1」。22.91kmの中にはハイスピードとテクニカル両方の要素が含まれる上、ジャンクション部分や一部の路面が舗装となっており、メリハリのあるドライビングが求められる。さらに雨が降ったことで路面は滑りやすく、特に舗装区間には競技車が引きずってきた泥が多く乗ることから、攻めどころと抑えるところの判断が難しいステージとなった。

ここで新井選手組はスタートから猛プッシュ、中間地点で4秒ほど鎌田選手組に先行し最終的に5.8秒上回るタイムを刻んで逆転に成功。0.7秒差のトップに立つと、続くSS9「KNOLL 1」でベストを刻んだのに対して、鎌田選手組はパンクを喫して大きく後退。代わって2番手となった勝田選手組とは10.5秒差、リピートとなるSS10「ORCHID 2」で勝田選手組が詰め寄ってきたものの、最終ステージの「KNOLL 2」でも新井選手組がベストを刻んでフィニッシュまで運び、第4戦からの三連勝を飾ることに成功。新井選手組はLEG2のポイントも満点を獲得し、シリーズ争いにおいて大きな一勝を獲得した。

JN4クラスはタフな路面で前輪駆動車勢が上位に立つ中、山口清司選手/山本磨美選手組(86)が初日を3番手であがって後輪駆動車勢のトップに立った。LEG2は雨ということで前輪駆動勢にさらに有利な状況となる中、力走を重ねた山口選手組だったが最終ステージで駆動系トラブルに襲われてしまい無念のリタイア。初日を2.1秒差の4番手で終えていた山本悠太選手/北川紗衣選手組(86)はLEG2オープニングのSS8で山口選手組をかわして3番手に浮上していたが、こちらはフィニッシュまで運ぶことに成功して3位表彰台を獲得した。

JN1クラスでは前戦のモントレーを圧勝した須藤浩志選手/新井正和選手組(スイフト)が、今回も優勝争いを繰り広げた。LEG1を終えてチームメイトであるライバルの古川寛選手組(スイフト)とは3.5秒差、しかしLEG2に入ってロングステージで須藤選手組を大きく古川選手組がリードするという展開に。

須藤選手組はポジションキープを基本とした戦略を採り、以降のステージをセカンドベストで手堅くまとめてフィニッシュ、準優勝で表彰台を獲得。また、3位には小川剛選手/藤田めぐみ選手組(フィット)が入り、表彰台をヨコハマタイヤユーザーの2組が飾る結果となった。

DRIVER VOICE

新井敏弘 選手 [富士スバル AMS WRX STI]

【今回の成績 : JN6クラス 優勝】
LEG1は思ったように行かず、決して自分としては遅れている感じの走りをしているつもりは無かったのに鎌田選手に少し届かず歯がゆかったですね。LEG2はウェットになって欲しいと思っていましたが、普段の行いが良いから雨になってくれました(笑)。ただ、コ・ドライバーの田中選手とも話したのですが、同じようなレベルで同じような走り方をしているのに、路面によってタイム差が大きいのはなぜなのか分析が必要です。その差がウェットでは顕著に出ないので、雨に助けられた部分も正直あったかもしれません。結果としては三連勝で良かったですが、次の福島までのインターバルで今回の内容をしっかり検証して、車のセットアップなども煮詰めてさらに連勝出来るように全力を尽くします。

山本悠太 選手 [Sammy☆K-one☆ルブロス YH 86]

【今回の成績 : JN4クラス 3位】
3位という結果ですが、自分としては納得出来る内容ではありませんでした。今回のような道は練習する機会も無いので、本番でコーナー毎に「どうやったら安全に、速く走れるんだろう」と試しながらのラリーでした。SS毎に1kmあたり2秒とか離されてしまうと、ちょっときつくて全く手足を出せない感じでした。自分の中では、これ以上攻めると道から落ちてしまう、というところまで頑張っていたのですが、これ以上どうやればタイムを削ることが出来るのかを見つけられずに終わってしまいました。車載映像なども見直して、次に向けて自分の“引き出し”を増やしていきたいと思います。

須藤浩志 選手 [スマッシュ BRIG コマツ YH スイフト]

【今回の成績 : JN1クラス 優勝】
LEG2で接戦になれば新品タイヤを投入して攻めていこうと思っていましたが、1ループ目で大きな差をつけられてしまったので新品は次回に温存することにしてしっかりポジションキープしていく作戦に変更しました。20km超えのロングステージも難しかったですが、自分としてはむしろ「KNOLL」が肝になりました。荒れた道でしたが走り方を間違えてしまって、1回目からヌルヌルで轍も深く、その轍の中で車が暴れてしまったんです。リアが落ちつかず、特に左コーナーで右側の動きが良くなかったですね。うちのクルマもちょっとくたびれているので、次までのインターバルでリフレッシュしなければなりませんね。

TECHNICAL INFORMATION

大会のポスターやプログラムの表紙に「グラベル争奪サバイバル」というキャッチコピーが踊った本大会、結果としては両日でコンディションが大きく変化したこともあって、その通りサバイバルなラリーとなった。JN5やJN2ではドライのLEG1を上位で終えた選手が、ウェットのLEG2で戦列から消えてしまうという過酷な一面も見せたラリー・カムイ。

そんな中でJN6は新井選手組が逆転で三連勝を飾ったが、特にLEG2のウェット路面におけるヨコハマタイヤの安定したパフォーマンスが、連勝を足元でしっかり支える結果となった。