2018 SUPER GT Round 7 Report

【SUPER GT 第7戦/オートポリス】

WedsSport ADVAN LC500が今シーズン2度目の表彰台を獲得、
GT300ではランボルギーニとNSXが表彰台を飾った!!

SUPER GT Round 7

開催日 2018年10月20日-21日
開催場所 オートポリス
(大分県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 65周
(1周=4,674m)
参加台数 44台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
SUPER GT 第7戦

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全8戦で争われるSUPER GTもいよいよ残すところあと2戦、九州のオートポリスでシリーズ第7戦を迎えることとなった。ここまでのレースは、獲得したポイントの2倍のウエイトハンデが課せられてきたが、このレースでは1倍となる。実質、半減というわけだ。

オートポリスの特徴は、アップダウンに富むテクニカルコースで、そのことは前回のスポーツランドSUGOにほぼ共通する。ランキングトップに返り咲いたNSX-GTこそ、例外的に重さを苦にしなかったが、タイトルを争い合うライバルは揃って下位に沈んだことからも、こういったレイアウトでは軽さが絶対的な武器になる。特にセクター3と呼ばれる最終区間は、左右にハンドルを切り返し続ける登りの峠道のようで、タイヤへのシビアリティが高いことからなおさらだ。

ウエイトハンデは、国本雄資選手と山下健太選手の「WedsSport ADVAN LC500」が15kg、武藤英紀選手と中嶋大祐選手の「MOTUL MUGEN NSX-GT」が16kg、そしてJ.P.デ・オリベイラ選手と高星明誠選手の「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」が18kg。条件は整っていた。

土曜日午前に行われた予選は雲に覆われ、気温は11度、路面温度も15度と低かったものの、午後になると青空が広がるようになり、気温は15度とわずかに上がっただけだったものの、路面温度は一気に34度まで上がっていた。この違いに対するアジャストもさることながら、ことGT300のQ1に関してはアタックのタイミングも明暗を分ける要素となった。というのも、残り5分間で赤旗が出てしまったからだ。それまでにアタックを終えていたチームはとにかく、コンディションの向上を待っていたチームにとっては大きな痛手に。

そんな展開の中、GT300では「HOPPY 86 MC」の坪井選手が大発奮。それまでのレコードタイムをコンマ5秒以上短縮して、第5戦の富士以来となる今季2回目のポールポジションを獲得した。2番手も星野一樹選手からステアリングを託された、「GAINER TANAX triple a GT-R」の吉田広樹選手が獲得し、3番手に地元ファンの期待に応えて「マッハ車検MC86 Y’s distraction」がつけることになった。

GT500では予想以上に低くなった気温と路面温度に、各車とも苦戦を強いられた予選日朝の公式練習の流れが、Q1でも出る形となった。「WedsSport ADVAN LC500」は山下選手がアタックを担当するも、10番手に終わりQ2進出ならず。「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」は高星選手がQ1に出走するが、13番手に終わった。その一方で、オートポリスと相性が良い「MOTUL MUGEN NSX-GT」は武藤選手がQ1を担当。8番手でQ2進出を果たすと、続くQ2で中嶋選手がタイムを更新して6番手につけた。今週末もNSX-GT勢は相変わらず好調で、陣営では5台すべてQ2へ進み、トップ3を独占した。

決勝当日は好天に恵まれ、絶好のレース日和。前売券だけでなく、当日券も多く売れたというのはグランドスタンドが超満員だったことからも明らかだ。スタートを控えた時点での気温は17度とまずまずながら、路面温度が36度にまで達していたのは、やや気になるところではあったが……。その頃、「WedsSport ADVAN LC500」はある決断を下していた。予選までの状況を踏まえ、2ストップ作戦を採ることとして、併せてスタート時の燃料も軽めにしていたのだ。

前半スティントは山下選手が担当。燃料が軽いことと、決勝のコンディションに合っていた部分もあり、次々と前のマシンをオーバーテイク。10周目には7番手に浮上する。15周を終えたところで予定どおり1回目のピットストップを行い、ここではタイヤ4本交換のみ行い、山下選手のままで再びコースに復帰した。

一方、6番手スタートの「MOTUL MUGEN NSX-GT」は武藤選手がスタートドライバーを務めるが、思うようにペースが上がらず苦戦。8周目にポジションをひとつ下げると、後続の集団に追いつかれ、防戦一方の展開となった。なんとかポジションを死守しようとした武藤選手だったが、17周目にコースオフを喫し、12番手まで後退してしまう。また「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」は、オリベイラ選手がスタートを担当。1周目に最後尾に下がってしまい、後方から追い上げていかなければいけないレース展開となったが、着実に対応。18周目に10番手に上がりポイント圏内へ進出した。

20周目にセクター3でGT300車両がコースアウトしたため、セーフティカーが導入されたことで、各車の差が一気に縮まったが、ここで大きなアドバンテージを得たのが「WedsSport ADVAN LC500」。ライバルより1回分多い、ピットでのタイムロスが取り戻すことに成功したのだ。

25周目にレースが再開すると、GT500クラスのピットストップを行うチームが増え、「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」は31周目にピットインし高星選手に交代。「MOTUL MUGEN NSX-GT」も32周目に入り、中嶋選手が後半スティントを担当。この他のライバルもピットストップを行い、前がクリアになったタイミングを狙って山下選手はプッシュを開始。33周目には暫定ではあるがトップに浮上した。その後も山下選手はプッシュを続け、ひとりのドライバーが走れる、上限ギリギリの41周目にピットインし国本選手に交代。ここまでのペースが良かったこともあり、3番手で復帰を果たした。

昨日の予選とは一転し、レクサスLC500陣営がトップ4を独占する展開となったレース後半。国本選手は最後まで力強いペースを維持し、表彰台圏内のポジションをキープ。第4戦タイ以来となる今季2度目の3位表彰台を獲得した。

「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」は40周をすぎて9番手を走行していたが、7番手争いの集団に追いつき、抜きつ抜かれつのバトルを展開した。その中でも集団でのバトルの隙をついてポジションを上げていき、49周目には7番手に浮上。そのままチェッカーを受け、今季4回目となる入賞を飾った。その一方で、「MOTUL MUGEN NSX-GT」は、後半スティントも我慢の展開を強いられ、最終的にトップから1周遅れの14位でフィニッシュ。悔しいレースとなった。

GT300では「HOPPY 86 MC」のスタートを担当した坪井選手が鋭いダッシュを決め、2番手の「GAINER TANAX triple a GT-R」の吉田選手を寄せつけず。そのまま坪井選手は逃げ続ける一方で、吉田選手には「マッハ車検MC86 Y’s distraction」の坂口選手が迫り、8周目には順位を入れ替える。坂口選手はその勢いを保ったまま坪井選手にも近づいていって、一時は5秒以上に及んだ差をみるみるうちに詰めて、やがてテール・トゥ・ノーズ状態にまで持ち込むこととなる。

そんな最中の18周目から22周目にかけて、セーフティカーランがあってリ・スタートも決めたことから、坪井選手は再び差を広げることになる。そして26周目に「HOPPY 86 MC」がピットイン。タイヤをフロントの2本だけ交換して、松井選手をコースに送り出す。ロスを最小限としたことで、やがてトップに立つことが予想された。しかし、タイヤのピックアップに苦しむようになった松井選手は、ペースが上げられなくなって、34周目に元嶋佑弥選手から佐藤公哉選手に代わったばかりの「リーガルフロンティアランボルギーニGT3」の先行を許したばかりか、40周目の追突で大きく順位を落としてしまう。

一方、全車がドライバー交代を済ませると「リーガルフロンティアランボルギーニGT3」の佐藤選手は2番手に浮上。そして、その時点で5番手を走行していた「Modulo KENWOOD NSX GT3」の大津弘樹選手が、レース終盤の見せ場を作った。49周目には4番手に、そして57周目には1コーナーで3番手に上がり、その際に軽い接触はあったものの、マシンにはダメージが一切及んでいなかったことから、後続を引き離すことにも成功する。ルーキーの大津選手は初の表彰台獲得となり、パートナーのベテラン道上龍選手も久々の表彰台へ。そして最後まで2位をキープし続けた「リーガルフロンティアランボルギーニGT3」の元嶋選手と佐藤選手にとっては、昨年の第6戦・鈴鹿以来の表彰台に立つことになった。

「グッドスマイル初音ミクAMG」はGT500の「WedsSport ADVAN LC500」同様、あらかじめ2ピット作戦を採っていたが、こちらは不発に終わって19位でポイント獲得ならず。だが、首の皮一枚ながら、連覇の可能性を残すこととなり、最終戦にすべてを賭けることとなった。これに対して、接触後にタイヤを4本交換した「HOPPY 86 MC」は24位に終わり、残念ながら王座返り咲きの希望は絶たれることとなった。

DRIVER VOICE

国本雄資 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 3位】
正直、表彰台まで行けると思っていなかったので、すごく嬉しいです。昨日からまわりも含めてタイヤが厳しいという状況だったので、最初から2ストップ作戦で燃料も少なくして勝負をかけるしかないなと思いました。でも、本当に運良くセーフティカーが入ったのが大きかったですが、それ以外にも山下選手やチームがいい仕事をしたので、この結果はみんなのおかげかなと思っています。後半はちょっとタイヤをセーブして、前の2台のペースが落ちてきたところでチャンスが出るかなと思いましたが、最後までタイヤはタレなかったですし、後ろからも追いつかれずに自分のペースを守れました。久しぶりにちゃんとしたレースができましたね!!

高星明誠 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 7位】
予選でバランスがすごく悪かったんですが、チームが頑張ってくれて改善してくれて、僕にとっては乗りやすいクルマになっていました。19号車みたいに2ピット作戦も考えていましたが、JP選手に状況を聞いて最終的に1ピットにしようということになりました。レース中のペースは非常に良かったと思います。最終戦のもてぎでは表彰台に乗りたいですね。実際にどうなるか分かりませんが、その気持ちを持って、みんなで力を合わせて頑張りたいです。

佐藤公哉 選手 [リーガルフロンティアランボルギーニGT3]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
去年の鈴鹿1000km以来の表彰台で、ただただチームに感謝しています。この週末、練習から調子が良くて、予選でいい位置につけられたし、元嶋選手がすごいハイペースで追い上げてくれたので、あとは僕がポジションキープで、タイヤをコントロールして。あと、アウトラップも頑張りました。タイヤは4輪交換で、ただ、途中で右フロントにピックアップをつけて、タイムが伸びなくなっちゃったんですが、それを含めてよくマネージメントできたと思います。

道上 龍 選手 [Modulo KENWOOD NSX GT3]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
うまくまとめられて大津選手にバトンタッチできて「大丈夫、このまま行けるから」って言って渡したんですが、若さあふれる走りで、どんどんオーバーテイクしてくれて、こういう結果になったのですが、それだけのパフォーマンスがクルマにはあったと思います。タイヤは気温が上がると厳しいかなと思っていたんです、ちょっと柔らかめのチョイスだったので。それが最後まで活かされて、最後まで保ちました。前回のSUGOから流れが良くなってきたので、最後のもてぎでは1位で行きたいです。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー]

「WedsSport ADVAN LC500」に関しては、最初から2ピットで行こうと。摩耗がどうなるか分からなかったのと、今回初めてレースに使うタイヤだったので、だったら2ピットで行こうとチームと話して。セーフティカーが入ったというラッキーはあったんですが、大きなタイムの落ちはなく、上位とほとんど変わらないタイムも出せて3位に入れたのは良かったと思っています。「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は7位で、こちらも新しいタイヤを投入したのですが、最後の方はトップと遜色のないタイムで走っていたので、悪くなかったかなという感じです。

ただ、「MOTUL MUGEN NSX-GT」に関しては、レース中に接触があってリムが割れちゃって、それで圏外に落ちたんです。第1スティントはタイム的にきつかったものの、第2スティントは想定していたタイムが出せていたので、残念な結果ではありますが、トータルで見れば十分ではないんですが、パフォーマンスは見せられたんじゃないかな、と思います。

GT300はユーザーの上位ランカーが、立て続けにいなくなってしまって……。予選で上位を独占できたのは良かったのですが、勝負をかけていたチームもあって、一発のパフォーマンスでは良かったし、アピールできたと思います。その一方で、勝負をかけた部分でレースでは、きつかった。

ただ、「リーガルフロンティアランボルギーニGT3」は無難に走っていたところはありましたが、ピットタイミングがドンピシャに合わせることができたようで、それが非常に功を奏して、いい結果を得ることができました。「Modulo KENWOOD NSX GT3」も終始アグレッシブに走っていた印象がありますね。シリーズ前半、思うように成績が出なかったり、富士での不運があったりした中、SUGO、オートポリスといいところに来ているので、次につながるレースだったと思います。とはいえ、全体的に見ると優勝した車両には大きく置いていかれたので、この辺りのパフォーマンスを我々も見せないと。たぶんシリーズも厳しくなってしまいました。次のもてぎだけじゃなく、来年に向けて課題として、開発のスピードアップをはかります。

最終戦、テストも悪くなかったので、意地を見せたいと思います。終わり良ければすべて良し、そうしたいです!!