2018 SUPER GT Round 6 Report

【SUPER GT 第6戦/SUGO】

MOTUL MUGEN NSX-GTが表彰台にあと一歩と迫る4位を獲得、
GT300でも多くのヨコハマタイヤ勢が上位入賞!!

SUPER GT Round 6

開催日 2018年9月15日-16日
開催場所 スポーツランドSUGO
(宮城県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 81周
(1周=3,704m)
参加台数 43台
(ヨコハマタイヤ装着車 24台)
SUPER GT 第6戦

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ここ数年、ほとんどのレースがシリーズ第4戦として初夏に開催されてきた、スポーツランドSUGOのSUPER GTだが、今年はシリーズ第6戦として開催される。そのことが意味するのは、もちろん気象コンディションの違いだが、それ以上に影響を及ぼしそうなのが、ウエイトハンデの多少である。シーズン半ばとあれば、ポイントリーダーとてたかだか知れているのに、GT300ではもう上限を超え、GT500もあと一歩に迫っている。

幸か不幸か、GT500のヨコハマタイヤユーザーはウエイトハンデに苦しんでいない。国本雄資選手と山下健太選手の「WedsSport ADVAN LC500」が30kg、J.P.デ・オリベイラ選手と高星明誠選手の「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は26kgで、このあたりはSUGOで勝てる許容の範囲。さらに武藤英紀選手と中嶋大祐選手の「MOTUL MUGEN NSX-GT」にいたっては16kgに過ぎず、しかも8月上旬に行われたタイヤメーカーテストにおいてトップタイムをマークしている。

GT300では本来、SUGOはJAF-GT、特にマザーシャシー(MC)に相性抜群のコースとされてきた。しかし、松井孝允選手と坪井翔選手の「HOPPY 86 MC」は70kg、中山友貴選手と小林崇志選手の「UPGARAGE 86 MC」も52kg積んでいることから、今回は1ポイントでも多く稼ごうという戦いは承知の上のはず。

一方、FIA-GT3の中でも旋回性能に優れるのが、メルセデス-ベンツAMG GT3。谷口信輝選手と片岡龍也選手の「グッドスマイル初音ミクAMG」も68kgとあって、状況としてはそう変わらないのでは……と思われたものの、タイヤメーカーテストにおいては3番手。ウエイト感度も低い車両とあって、表彰台狙いのレースになりそうだ。さらに、これを上回る2番手は星野一樹選手と吉田広樹選手の「GAINER TANAX triple a GT-R」で、今回積むのはわずか10kg。間違いなく今回は勝ちに来る。何はともあれGT300には、今までのSUGOに見慣れぬ光景が広がるのではないだろうか。

さて、今回のGT300予選Q1は初の試みとして、2組に分けて行われた。Q2進出を許されるのは、各組の上位7位。計測時間は普段の15分間から10分間に短縮されたものの、結論から先に言うと、トラフィックが回避できたとドライバーからは好評だった。そのQ1はすでに雨はやんでいたが、セミウェット状態からのスタート。コンディションはQ2で完全なドライへと変化。「HOPPY 86 MC」がウエイトハンデをものともせずに2番手を獲得したのを筆頭に、多くのヨコハマタイヤ勢が上位を獲得した。

そしてGT500では3台のヨコハマタイヤユーザーが、得意とするコースで予選から速さを発揮した。特に予選Q1では途中にクラッシュ車両が発生して赤旗中断。3台ともタイムアタックを行なっている最中だったが、残り2分45秒で再開されると一発勝負のタイムアタックを見事に決め、全車Q2進出を果たした。その中でも速さを見せたのが「MOTUL MUGEN NSX-GT」だった。中嶋選手がQ1を担当し、トップから0.453秒差の6番手で通過を決めると、Q2では武藤選手がさらにタイムを更新して、5番手につけた。

日曜日になって決勝のスタートを間近に控えると、気温は26度、路面温度は37度にまで上がっていた。大観衆の見守る中での戦いになり、まず順位を上げたのは「MOTUL MUGEN NSX-GT」の武藤選手。5周目に前を走る1台がコースオフし、4番手にポジションアップすると、そのまま安定したペースで前のマシンを追いかける。それでもスティントの後半に差し掛かるとペースがやや伸び悩み、後続に迫られる場面もあったが、しっかりとポジションを守りきり、31周を終えたところでピットイン。中嶋選手にバトンをつなぐ。

後半スティントでは、直前に行われたオートポリスでのタイヤテストで良い感触があったタイヤを選択。それが功を奏し、一時は「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」の高星選手に迫られる場面もあったが、なんとか5番手を死守した。さらにレース終盤、クラッシュ車両を回収するためにセーフティカーが導入されたことから、前方との間隔が縮まると、残り6周でのレース再開で中嶋選手は猛アタックを開始。

4番手を走る車両を、残り3周の1コーナーでオーバーテイク。そのまま3番手の車両にも迫ったが、惜しくもコンマ3秒届かず4位でチェッカーを受けた。あと一歩で表彰台に上がれた可能性があっただけに、レース後の中嶋選手は悔しそうな表情を見せていた。

8番手からスタートを切った「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」のオリベイラ選手は6番手にまで浮上して着実に順位を上げる走りを見せた。これを受け継いだ高星選手も力走でポジションを守り抜いてチェッカーを受け、今季3回目の入賞となった。

「WedsSport ADVAN LC500」は、59周目のレインボーコーナーで接触されてコースオフを喫してしまう。国本選手はすぐに立て直してコースに復帰したが、接触の影響でマシンがダメージを受けており、白煙を上げながらピットイン。そのままリタイアとなった。

GT300では予想外に高くなっていた温度が気になる材料ではあったが、「温度的には、まったく問題なし」と語っていたのが「HOPPY 86 MC」の土屋武士監督だ。しかし、「HOPPY 86 MC」の坪井選手はウエイトハンデが響き、スタートと同時にエンジンパフォーマンスに優れるFIA-GT3勢に相次いで抜かれてしまう。その中でも際立つ速さを見せていたのが、「GAINER TANAX triple a GT-R」の吉田選手だった。

5番手からわずか3周で2番手に浮上し、そのまま後続を引き離していく。タイヤもロングスティントをこなせたことから、31周目から星野選手に交代する36周目までトップも走行。残念ながら、そのままトップで戻ることはできなかったものの、全車がドライバー交代を終えると、再び2番手につけていた。

一方、3番手で続いていたのは「グッドスマイル初音ミクAMG」の谷口選手。序盤のうちに片岡選手がふたつポジションを上げて6番手を走行し、ミニマムの23周目にドライバー交代を行い、左側2本の交換に留めたことが功を奏した格好だ。そして、苦しいながらも6番手につけてポイント獲得を目指していた「HOPPY 86 MC」は、松井選手が走行中の55周目にサスペンショントラブルが発生。ピットでの長い修復を余儀なくされていた。

トップ2台が単独走行で、谷口選手の背後に「マネパ ランボルギーニGT3」のマルコ・マペッリ選手がつけていたぐらいで、GT500の激戦ぶりとは対照的に、終盤のGT300は比較的無風状態だったが、これが一気に動くきっかけとなったのが、64周目からのSCランだ。65周後には解除になるも、その段階で10番手につけていた「Modulo KENWOOD NSX GT3」の大津弘樹選手が見せ場を作った。エンジンパフォーマンスに優れることを活かし、ストレートで相次いで前を行く車両を抜いていき、最終ラップには5番手に浮上。驚くべくは、最後のストレートで谷口選手とマペッリ選手にも追いついたこと。

大津選手はマペッリ選手を抜いて、谷口選手をも抜いたかと思われたものの、あと0.05秒だけ及ばず。しかし、道上龍選手とともに駆る「Modulo KENWOOD NSX GT3」にとって最上位となる4位を獲得した。2位に入った「GAINER TANAX triple a GT-R」の星野選手と吉田選手も今季初の表彰台獲得で、6位の「GULF NAC PORSCHE 911」の久保凛太郎選手と石川京侍選手、7位の「埼玉トヨペットGreen BraveマークX MC」の番場琢選手と脇阪薫一選手は、ともに初入賞。

今回はヨコハマタイヤユーザーにとって、何かと初づくしだった一方で、絶対の安定感を見せたのが3位の「グッドスマイル初音ミクAMG」の谷口選手と片岡選手、そして5位の「マネパ ランボルギーニGT3」の平峰一貴選手。それぞれ開幕以来の入賞を、またしても重ねることに成功した。

DRIVER VOICE

武藤英紀 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 4位】
結果は4位で、表彰台に届きませんでしたが、誰もミスがなかったし、自分たちが持っているパッケージの力は出し切れたと思います。今回、ヨコハマさんが新しく作ってきたタイヤを第2スティントで使ったら、すごく良さそうでした。そこの部分でも一歩前進できたかなと思います。僕のスティントではタイヤの磨耗の進行が早くて、あの周回(31周)が限界でした。特にスティントの途中からの(タイヤの)落ちが激しくて、踏ん張るしかない状況でした。でも、今回はひとつステップを踏めたのは確かなので、オートポリスでは、より高いレベルでレースができればなと思っています。

高星明誠 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 6位】
前半のJP選手がタイヤをもたせながら順位を上げてきてくれたのが、一番大きかったです。僕に交代した時に別の種類のタイヤに換えましたが、すごくフィーリングが良くてペースも上げられましたが、マシントラブルが出てしまって、16号車(MOTUL MUGEN NSX-GT)をパスできませんでした。もっと早く16号車の前に出られていれば、もっといいラップタイムを刻めたと思うので、ちょっと残念でした。僕たちは16号車とは違うタイヤを第2スティントで使いましたが、こっちの方が逆に磨耗が厳しくて、残り15周くらいで流れが逆転してしまいました。そこは次に向けての課題ですね。

星野一樹 選手 [GAINER TANAX triple a GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
長かったです、良かったです! 今シーズン、途中から速さを見せられるようになったけど、結果になかなかつなげられなかったので。今回は公式練習からこのまま決勝に行きたいって思ったぐらい、チームの持ってきたクルマが本当に素晴らしかった。それにヨコハマさんが用意してくれたタイヤも完璧で、予選は5番手だったけれど、決勝を力強く行けるタイヤだったので、本当に自信を持って挑みました。スタートスティントで吉田が本当にいい仕事をしてくれて、後ろとのギャップを広げてくれたし、僕も2位を守り抜くことができました。次のオートポリスはテストも調子良かったし、前にポールポジションを獲ったこともあるんで、すごく自信があります。優勝目指して頑張ります。

谷口信輝 選手 [グッドスマイル初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
34号車(Modulo KENWOOD NSX GT3)が来たの、全然気づいていなくて、最終ラップまで88号車(マネパ ランボルギーニGT3)しか見ていなかった。これは最後まで抑え切ろうと、なんとか凌ぎきったなと思ったら、黒いのがいきなり右からビュンと来て、すごい勢いでGT500みたいな勢いで抜いていった。嘘でしょうと思ったけど、僕の方が前だったような気がしたので、まぁ良かったですね。タイヤは左2本の交換だったけど、片岡の23周に対して、50周だったからしんどかった。まぁ、その点においては……ですけどね。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー]

まずGT500は、予選でQ1を3台揃って通過できたことが良かったことだと思います。レースでも本当は表彰台に行ければ良かったのですが、今回はGT500に関して、全車新しいタイヤを用意して、その中でも16(MOTUL MUGEN NSX-GT)、24(フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R)に関してはネガティブな要素もあったんですが、ポジティブな要素もかなりあり、技術開発という部分では、良かったと思います。タイヤメーカーテストからのいい流れは継続できているんじゃないでしょうか。だからこそ16が表彰台に上がれていれば、もっと良かったんですけどね。あと、19(WedsSport ADVAN LC500)のリタイアは、残念でした。

GT300については、10(GAINER TANAX triple a GT-R)の2位は手堅かったかなと思います。0(グッドスマイル初音ミクAMG)は、いつもの事ですが、チームの作戦とドライバーの技で3位まで上がってきました。本当に流石です。25(HOPPY 86 MC)は残念でしたが、25も含め、まだ権利を残しているユーザーが複数いますので、あと2戦、落とさないように、しっかり戦っていきたいと思っています。これらの車両以外も、なかなか結果が出ないで、ここまで来ちゃったんですが、地道な開発をしていて、今回から大きく変わったわけじゃないんですが、シーズンを通してステップアップできていると考えています。

オートポリスはタイヤに厳しいコースですが、ウエイト半分ということで、その中でもヨコハマタイヤユーザーは有利な方だと思っているので、GT500に関してはそのへんの優位性を活かして、表彰台を狙っていくと。GT300に関しては、とにかく落とさないということを、それぞれのクラスでタイヤの方からサポートしていきたいと思っています。