2018 SUPER GT Round 4 Report

【SUPER GT 第4戦/チャーン】

WedsSport ADVAN LC500が3位フィニッシュで久々の表彰台獲得、
GT300でも SYNTIUM LMcorsa RC F GT3が初表彰台を手中におさめた!!

SUPER GT Round 4

開催日 2018年6月30日-7月1日
開催場所 チャーン・インターナショナル・サーキット
(タイ・ブリーラム県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 66周
(1周=4,554m)
参加台数 38台
(ヨコハマタイヤ装着車 18台)
SUPER GT 第3戦

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年に一度、海を渡ってレースが開催されるSUPER GT。今年で4回目となるタイのチャーン・インターナショナルサーキットが、その舞台となる。これまではシリーズ第7戦として終盤戦に行われていたが、今年はシリーズ第4戦として中盤戦に移されている。このサーキットの特徴は、前半に3本のストレートを備えることで、富士スピードウェイにも準ずるほどの高速レイアウトだということ。また、グランドスタンドから、コース全景がほぼ一望できることから明らかなように、極めてフラットなコースでもある。そのため、ストレートパフォーマンスに優れる車両に、抜きやすさという点でも有利とされている

この時期のタイは、ちょうど雨季の始まりにあたり、例年以上に降水確率は高いと見込まれていた。もっとも公式練習が終わった頃には、そんな雰囲気は微塵にも感じさせないほど、強い日差しがサーキットに注がれていたのだが、予選が近づくにつれて上空に黒い雲が浮かぶように。しばらくするとスコールが雷も伴って降り出し、コースを瞬く間に水浸しにしてしまう。

スコールであるから止むのは早かったものの、コースにはあまりにも多くの水が溜まっていたこともあり、大事をとって予選開始は15分遅らされた。それでもGT300のQ1はドライタイヤで走れる状況ではなかったが、GT500のQ1後半には何とかドライタイヤが機能するまでに状況は回復。Q2は両クラスともドライタイヤでの走行となった。

GT300は「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤寛規選手が5番手につけたのを筆頭に、ヨコハマタイヤユーザーは7台がQ1突破に成功。しかし、気まぐれな天候に翻弄されて、「HOPPY 86 MC」の坪井選手、そしてランキング3位につける「UPGARAGE 86 MC」の中山友貴選手もQ2進出を果たせず、86MC勢はいきなり苦境に立たされてしまう。

そして続くQ2では、何とも残念な結果に……。トップタイムを記した、さらに3番手につけたヨコハマタイヤユーザーが揃って再車検で失格になり、最後尾に沈んでしまったのだ。いずれもケアレスミスが原因のようだが、致し方ない。これにより、片岡龍也選手からバトンを託された、谷口信輝選手がドライブする「グッドスマイル初音ミクAMG」が7番手で、ヨコハマタイヤユーザーの最上位に。

GT500ではヨコハマタイヤユーザー3チームは、すべてQ1を突破。「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は高星選手が2番手、「MOTUL MUGEN NSX-GT」は中嶋選手が5番手、そして「WedsSport ADVAN LC500」は山下選手が6番手につける。続くQ2は一部のコーナーを除きライン上はドライコンディションとなり、セッション開始時からドライタイヤを装着してコースインしていく。ここで抜群の速さを見せたのが「MOTUL MUGEN NSX-GT」をドライブする武藤選手だった。

残り1分のところで新たなレコードタイムをマークしてトップに浮上、そのままセッションは終了し、ホンダNSX-GTとヨコハマタイヤのパッケージで初のポールポジションを獲得。武藤選手にとっては2006年の最終戦以来となるポールとなった。「今回はヨコハマタイヤさんが、すごくグリップの高いタイヤを用意してくれたので、なんの問題もなく全開で走ることができて、ポールが獲れました。すごく嬉しいです」と武藤選手。また、Q1を担当した中嶋選手も「チームもヨコハマタイヤさんも去年から苦戦してきて、厳しいレースが多かったですけど、まずはポールポジションを取れるところまで力を持ってくることができたので嬉しいです」と、喜びの表情を見せていた。

そして「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は、オリベイラ選手がトップにも肉薄するタイムを記録して4番手を獲得。「WedsSport ADVAN LC500」も国本選手が6番手につけた。

予選から一転、晴天となった日曜日の決勝レース。ポールポジションからスタートを切った「MOTUL MUGEN NSX-GT」の武藤選手は、序盤からライバルが迫ってくるレース展開となっていた。それでもミスのない走りでトップをキープしていたものの、激しいチャージにあって19周目のターン4で1台に抜かれて2番手に下がると、27周目には3番手に後退。その翌周に中嶋選手と交代するが、ドアが閉まらないアクシデントに見舞われてタイムロス、これで表彰台争いから脱落してしまう。

その後も中嶋選手が必死に追い上げるも、ライバルに一歩及ばず5位でフィニッシュ。チームとしては今季最上位で終えることができたが、予選のポジションを考えると悔しい結果になってしまった。

4番手スタートの「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」もオリベイラ選手が、序盤から積極的な仕掛けを見せ、サイド・バイ・サイドの白熱した展開とするが、接近戦の中で逆に隙を突かれて順位を落としてしまってからは、徐々に流れが悪い方向に進んでしまう。23周目に入ったところライバルの1台と並んだ時に接触があり、オリベイラ選手はバランスを崩してコースアウトし、ガードレールにヒット。そこからレース復帰はかなわず、無念のリタイアを喫していた。

逆に予選よりもポジションを上げてきたのが、「WedsSport ADVAN LC500」だった。スタート担当の山下選手は早い段階から攻めの走りを見せて、一時は3番手に浮上。だが、21周目には後方から追い上げてきたマシンの先行を許し、4番手にポジションを落としはしたものの、ペースが鈍ることはなかったこともあり、そのまま上位陣に食らいついていく。

そして31周目にピットインし、国本選手と交代。3番手のポジションを取り戻し、表彰台獲得の可能性も高まってきていたが、49周目に同じレクサス勢の1台に抜かれて4番手に。国本選手は諦めずプッシュし続けたが、なかなか追いつくことが許されずにいた。これまでかと思われた最終ラップに、その抜いていった車両がトラブルでストップしているではないか! これにより、チームとしては2016年の最終戦以来となる表彰台を獲得。そして今季からGT500フル参戦となった山下選手も、新境地で初めて表彰台に立つこととなった。

GT300では、フォーメーションラップで、いきなりアクシデントが発生した。それもヨコハマタイヤユーザーの最上位だった「グッドスマイル初音ミクAMG」に。エンジンが止まってしまうも、これをスタート担当の片岡龍也選手の機転で電源を落とし、リセットするとエンジンは再び息を吹き返す。しかし、規定でピットに戻ることが義務づけられているため、やむなくピットスルーの状態からレース開始。最後尾からの追い上げになったものの、谷口信輝選手に代わってなおペースは落ちなかったこともあり、最終的には7位でのゴールを果たすこととなった。

今回のレースはまた、ヨコハマタイヤユーザーによる激しい追い上げが目立ってもいた。3位でゴールしたのは予選16番手だった、吉本大樹選手と宮田莉朋選手のドライブする「SYNTIUM LMcorsa RC F GT3」。予選直前の雨に翻弄されて、吉本選手がQ1を突破できなかったため。しかし、公式練習でドライコンディションでの速さは確認されていただけに、決勝では12周目に4番手まで浮上し、その後トップの脱落もあって、22周目に3番手で宮田選手にバトンを託すことに成功。左側2本のタイヤ交換でロスを最小限としたことも功を奏し、宮田選手はそのままの順位でゴール。ルーキーの宮田選手にとっても初めての表彰台ながら、吉本選手も長らく苦労を重ねてきたRC F GT3では、初めての表彰台に立つこととなった。

5位は佐藤公哉選手と元嶋佑弥選手のドライブする「リーガルフロンティアランボルギーニGT3」が予選9番手から、そして平峰一貴選手と、今回はアンドレア・カルダレッリ選手がマルコ・マペッリ選手の代役を務めた「マネパランボルギーニGT3」が最後列から6位とJLOC勢はW入賞を果たすこととなった。ともにタイヤ無交換も追撃の決め手となっていた。

DRIVER VOICE

山下健太 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 3位】
今週は予選直前にスコールがあって、Q1は微妙なコンディションでしたけど、僕はドライタイヤでアタックすると決めていたことが、すごくうまくいきました。今日のレース展開に関しては、何度か抜かれてしまうシーンがあり、そこは自分の中でも反省点でした。でもチームの皆さんがピット作業をすごく頑張ってくれて、短時間で送り出してくれましたし、国本選手のペースもすごく良かったのに、上位のライバルにはかないませんでした。ただ、その中でもなんとか3位に入れたので、流れとしては良かったと思います。悔しい部分もありますが、今まで流れも良くなかったので、とりあえずこの結果を得られて良かったです。

武藤英紀 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 5位】
今日のところはライバルが一枚上手で、どうすることもできなかったです。途中ドアが閉まらないトラブルも出て、悔しい部分もあるし、イライラしちゃうこともありました。でも、確実に戦えるポテンシャルを身につけていると思うので、今日は5位でしたけど、これから自分たちでチャンスを見出していけそうな感じはしています。ここに来るまでテストも何回かやって前進はしているし、それがリザルトにも現れてきているので、今後も引き続き頑張っていきたいです。次回の富士に向けては、今回のことを整理して前向きに頑張っていきたいと思います。

宮田莉朋 選手 [SYNTIUM LMcorsa RC F GT3]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
タイヤ2本交換はSUPER GTはもちろん初めてですし、スーパー耐久でもやったことがなかったので、最初はどうなることかと思いましたが、うまく仕事がこなせたことで、僕自身も引き出しが増えたと思いますし、また一歩成長できたのではないでしょうか。前も後ろもいる状況の中でなんとか押さえて、この順位をキープすることができましたが、それ以上に吉本選手が僕に託すまで、しっかり順位を上げてきてくれたことが、今回の3位につながったと思います。ヨコハマ勢ではトップですし、本当に嬉しいです。今回は雨とか不運なこともありましたが、最後の最後に3位にもなれたので、今後のレースでも最後まで諦めずに戦いたいと思っています。

佐藤公哉 選手 [リーガルフロンティアランボルギーニGT3]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
今季初入賞ですし、シンプルに嬉しいです。元嶋選手がしっかりタイヤを残してくれたので、僕は特にタイヤのことは気にせず、むしろチームとは燃費の話をしながら。しっかりポジションを守り抜くことができました。今までなかなか噛み合わなかったので、本当に今まで我慢して頑張ってくれたチームに感謝しています。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー]

GT500は、前回の鈴鹿のレースの後、もてぎでテストをして好感触を得られたタイヤを空輸したので、それがうまく決まった感じでした。予選ではMOTUL MUGEN NSX-GTのポールをはじめとして3台ともQ2に進めて、結果的に決勝でも、WedsSport ADVAN LC500が表彰台にも立てたんですが、決勝にはフォーラムエンジニアリングADVAN GT-Rを含めて課題があって、その辺りに改良の余地が残されているとも思っています。

もともとタイはヨコハマに合っているコースで、5年も経つと路面状態も随分変わっているんですけど、コースの特性、レイアウトが合っているんです。例年それほど悪くない成績を残せるのですが、去年だけ鳴かず飛ばずだったのが、こうしてまた巻き返せたのは非常に良かったと思います。

GT300は予選前の雨のせいで、Q2に残るべきチームが残れなかったのが非常に残念でした。その中の一チームだったSYNTIUM LMcorsa RC F GT3が頑張ってくれて、3位になれたのはすごく良かったとは思います。ただ、全体として見ると、シーズンを見据えてここで他社の表彰台を阻止して、我々が大量にポイントを稼いでおきたかったのですが、それができなかったのは残念でした。

次の富士はテストができずに、そのまま臨むことになってしまいますが、それ以降のSUGO、オートポリス、もてぎはテストができるので、なんとか巻き返しをはかりたいと思っています。テストのできるコースに関しては、確実にステップアップしてポイントを押さえ、シリーズを獲りにいくという戦いをしたいと思っています。