2018 SUPER GT Round 3 Report

【SUPER GT 第3戦/鈴鹿】

タイヤ無交換作戦を完璧に決めてHOPPY 86 MCが2位でフィニッシュ、
フォーラムエンジニアリングADVAN GT-Rが粘りの走りで入賞を果たす!!

SUPER GT Round 3

開催日 2018年5月19日-20日
開催場所 鈴鹿サーキット
(三重県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 52周
(1周=5,807m)
参加台数 44台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
SUPER GT 第3戦

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昨年まで夏休みの終わりに、1000kmレースとして行われていた鈴鹿サーキットのSUPER GTは、今年から5月に移されてシリーズ第3戦として開催され、またレース距離も300kmに改められた。このことが意味するのは、今までのデータが通用しなくなるということ。レース距離が違えば戦術にも変化が必要で、時期が違えばコンディションも大幅に異なってくるからだ。

ところで、前回の第3戦(富士)であるが、ヨコハマタイヤユーザーは揃って苦戦を強いられていた。国本雄資選手と山下健太選手のドライブする「WedsSport ADVAN LC500」が12位、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手と高星明誠選手がドライブする「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」が13位、そして武藤英紀選手と中嶋大祐選手のドライブする「MOTUL MUGEN NSX-GT」が14位と、いずれも入賞を果たせなかったからだ。GT300においても、谷口信輝選手と片岡龍也選手のドライブする「グッドスマイル初音ミクAMG」の4位が最上位と、ヨコハマタイヤユーザーは表彰台に上がることは許されなかった。

しかしながら、短いインターバルではあったものの、必ずや対策は講じられているはずだし、4月に鈴鹿サーキットで行われた公式テストでは、「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」が総合3番手につけ、GT300においては高橋一穂選手と加藤寛規選手がドライブする「シンティアム・アップル・ロータス」がトップタイムをマークするなど好感触を得られていた。きっと巻き返しを図ってくれるはずだ。

土曜日の鈴鹿サーキットは、上空に青空が広がっていたものの、強風に見舞われることに。ホームストレートにかけてフォローとなった風は、ストレートスピードを高めたばかりか、特にS字コーナーでは逆に向かい風となってより強いダウンフォースを発生させることとなり、昨年のレースとの時期的なコンディションの違いとも相まって、予選では好タイムが続出。極めてエキサイティングなセッションとなっていた。

GT300では「HOPPY 86 MC」の坪井翔選手が1分56秒159をマークして、早くもレコードタイムを更新してトップに立ち、3番手には「D’station Porsche」の藤井誠暢選手、4番手には「GAINER TANAX triple a GT-R」の吉田広樹選手がつけるなどしてヨコハマタイヤユーザーが10台もQ1を突破。続くQ2ではポールポジションこそ逸したものの、「HOPPY 86 MC」の松井孝允選手が、チームメイト坪井選手のタイムをさらに詰める1分56秒140をマークして2番手に。そして3番手には「グッドスマイル初音ミクAMG」の片岡龍也選手がつけ、5番手には「SYNTIUM LMcorsa RC F GT3」のルーキー、宮田莉朋選手がつけて、それぞれ表彰台を射程圏内とした。

GT500では、テストから好調な走りを見せていたホンダ勢がライバルと比べても速さを見せており、「MOTUL MUGEN NSX-GT」も武藤選手がQ1で1分45秒572をマークする。4番手タイムでQ1突破を果たす。続くQ2は中嶋選手が担当し、ポールポジションを狙い果敢にアタックをするが、デグナーカーブのひとつ目でバランスを崩してしまいタイムロス。仕切り直して次のラップでタイムアタックを試みるが、思うようにタイムを伸ばせず、1分46秒405で7番手に終わった。

そして「WedsSport ADVAN LC500」は山下選手がQ1を担当。従来のコースレコードを上回ってみせたが、終了間際にわずか0.085秒差でライバルの逆転を許し、9番手でノックアウトとなってしまった。

昨年、この鈴鹿ラウンドでポールポジションを獲得している「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」は午前中の公式練習で2番手タイムをマーク。公式予選でも上位進出が期待された。Q1ではオリベイラ選手がアタックを担当し、こちらも従来のコースレコードを上回るが、ライバルのタイムには及ばず、11番手でQ1敗退を余儀なくされた。

決勝レースが行われる日曜日には、思いがけぬ事態が発生していた。サポートレースやセレモニーなどはオンタイムで進行していたのだが、スタート進行を間近に控え、システムの不具合によってスケジュールに遅れが出ることとなったのだ。当初の予定より40分間遅れで、ようやくウォームアップ走行を実施。ちなみに、ここで2番手につけたのは「MOTUL MUGEN NSX-GT」で、予選からの好調ぶりを維持していただけに、決勝レースにもより期待が注がれた。

「MOTUL MUGEN NSX-GT」は武藤選手が第1スティントを担当。スタート直後に6番手に浮上し、順調にレースを進めていく。14周目に、GT500車両の1台がコースオフしたこともあり、セーフティカーが導入される。レース再開直後の19周目には前を走る2台がピットインし、4番手に浮上する。このまま上位を目指していきたいところだったが、24周目のデグナーでコースオフ。ピットで待つ中嶋選手につなげることができず、無念のリタイアとなってしまった。

「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」はオリベイラ選手がスタートを担当、序盤から接近戦のバトルを繰り広げた。その最中に、1台のマシンに後方から接触されてしまうシーンもあったが、大きなダメージには至らず、23周目にピットイン。高星明誠選手に交代する。ピットアウト時点では12番手だったが、安定した走りで徐々に順位を上げ、残り10周のところで9番手に浮上。そのままチェッカーを受け、今季2度目の入賞を果たした。

そして「WedsSport ADVAN LC500」は山下選手がスタートを担当するが、序盤からペースが上がらず苦戦を強いられることに。12周目にはポジションを3つ落としてしまい、12番手まで後退する。直後にセーフティカーが導入されたことで上位とのギャップを縮めるが、ちょうどレース全体の3分の1を迎えたということもあり、セーフティカーが解除される18周終わりにピットイン。国本雄資選手がマシンに乗り込んだ。

前半とは異なるタイヤを装着し追い上げを狙ったが、ここでもペースを思うように上げられず苦しいレース展開に。最終的にトップから1分32秒遅れの13位に終わった。

GT300では、2番手スタートだった松井選手の「HOPPY 86 MC」があらかじめタイヤ無交換を決めていたためウォームアップに苦しんだばかりか、ストレートスピードに勝るFIA-GT3に抜かれ続け、オープニングの1周だけで6番手に退き、2周目にはもう1台の先行を許すも、タイヤに熱が加わってからは、しっかりポジションをキープ。代わって2番手には片岡龍也選手の「グッドスマイル初音ミクAMG」が浮上し、また4番手で「SYNTIUM LMcorsa RC F GT3」の吉本大樹選手が周回を重ねていた。

しばらくは淡々とレースが展開していたが、13周目からSCが入り、レース再開直後の17周目には早々とピットに戻ってくる車両も現れた。「HOPPY 86 MC」はもちろんのこと、それまで9番手を走っていた「UPGARAGE 86 MC」も。「HOPPY 86 MC」は坪井選手への交代の際、ロスがあったこともあり、中山友貴選手から小林崇志選手に代わった「UPGARAGE 86 MC」の先行も許してしまう。しかし、早々と交代を済ませた車両の中では、この2台が先頭を争う格好ともなっていた。

逆にギリギリまでドライバー交代を遅らせ、25周目からトップに立った「グッドスマイル初音ミクAMG」は、32周目にようやく谷口選手にバトンタッチ。しかもタイヤ無交換で、引き続きトップを走行することとなった。だが、背後には「UPGARAGE 86 MC」を始めとするライバル車両が次々と迫ってくるようになり、それはまるで『谷口レーシングスクール』の様相を呈することに。必死にガードを固め続けた谷口選手だったが、堪えきれずにトップを37周目に明け渡したばかりか、43周目に3番手に落ちてからは次第に順位を落としてしまうことになる。

「グッドスマイル初音ミクAMG」に代わって2番手争いの主役となったのが、やはりというべきか「HOPPY 86 MC」だった。開幕戦ではタイヤマネージメントの失敗で、3位になりながらも涙を流した坪井選手だったが、今回のそれはまさに完璧。45周目のS字で前に出てからは、後続を引き離しもしてみせた。

そして、47周目には、「マネパランボルギーニGT3」のマルコ・マペッリ選手も4番手に浮上。こちらはタイヤをフロント2本交換としたが、序盤は平峰一貴選手が10番手を走行、ただ、それはピットでのロスを最小限とするため、燃費走行に徹していたためだ。平峰選手の我慢は、マペッリ選手の激しい追い上げで報いられたことになる。そして5位でゴールしたのは「SYNTIUM LMcorsa RC F GT3」で、こちらは4本交換。対して無交換だった「UPGARAGE 86 MC」は6位で、「グッドスマイル初音ミクAMG」は8位でのゴールに甘んじた。

DRIVER VOICE

ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 9位】
今回ヨコハマタイヤのキャラクターとして、走り始めなどのグリーントラック(路面コンディションが比較的悪い時)の状態の方がバランスは良い傾向があった。だから、路面コンディションが良くなった予選では、練習走行ほどのパフォーマンスを出せなかった部分はあったね。全体的に決して悪くはなかったけど、僕のスティントでは接触もあったし、何より今回はホンダ勢が速過ぎた。次のタイは、間違いなく今までとは異なるコンディションになる。実際にはどうなるかわからないけど、たぶんタイではより良いチャンスがあるのではかと思っている。現状では、僕たちはマシンに関してもタイヤに関しても出来る限りの努力をしている。今回もいろいろあったにせよ100%のパフォーマンスを出し切ったけど、2ポイントしか獲得できなかった。とにかく諦めずに頑張っていくしかない。

山下健太 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 13位】
全体的に厳しかったです。特に僕の時は3周目くらいからキツくなり始めて、どんどん抜かれてしまいました。ちょうどSCが入って、解除になったタイミングでピットに入りました。そこで違う種類のタイヤに交換して国本選手に託しましたが、ペースは上がりませんでした。タイは、僕はまだGT500での経験はないですが、得意といえば得意ですし、チームも優勝経験があるコースです。現状を考えると厳しいですけども、とにかくやるしかないので、精いっぱい頑張ります。

中嶋大祐 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス リタイア】
予選では僕がQ2で失敗してしまいました。デグナーの1つ目で縁石に引っ掛けてしまい、少し外側にはみ出してしまって。0.5秒くらいロスしたので、その周はアタックをやめて次の周にトライしましたが、グリップのピークが過ぎていました。そこは自分としては反省点だったし、今日のレースで挽回したい思いがあったのですが、残念な結果になってしまいました。すべてがなかなか揃わないな、という週末でした。昨年よりは明らかにレベルアップできているので、チャンスになった時に優勝とか表彰台を狙える位置にいると思います。ただ、予選は良いのですが決勝になると、いろんなことが起きますし、条件も変わっていきます。その中での安定感では足りていない部分があるので、そこが次への課題ですね。

松井孝允 選手 [HOPPY 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
摩耗的にはまったく問題のないタイヤだったので、無交換はあらかじめ決めていましたが、心配だったのは無交換ということはウォームアップが厳しいということでもあったので、それだけが心配で。抜かれたのは事実なので、そこはしっかり受け止めて自分で改善しなくてはいけないところはありますね。それにピットでベルトが引っかかってしまいタイムロスもあったので、そのあたりも自分で改善します。次のタイでも無交換が絶対条件になると思うので、1秒でも早くドライバーチェンジできるように。そこさえ直せば、速さに関して坪井選手にまったく心配はなくて、今回のレースは坪井選手のおかげで2位になれたのもあるので、そういうあたりを含めてチームとして強くなっているのも感じました。

坪井 翔 選手 [HOPPY 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
第1戦はマザーシャシー、ヨコハマのタイヤという、僕にとって初めてのパッケージに対して、いろいろアジャストできていない部分がたくさんあったので、悔しさがすごく大きくて。どうやって解決するか(土屋)武士さんに相談するだけじゃなく、自分でもすごく考えて、前回の富士ではGT500だったので試すことはできなかったんですが、GT500でもやれることはあると思ったので、抜く側を経験して、なおかつタイヤの保たせ方をしっかり勉強して、積み重ねられた経験を今回発揮することができました。自分の中でも、すごい成長を感じられました。タイヤは減らし過ぎないようにしながらも、プッシュするところとしないところのメリハリをしっかりつけることができたので、タイヤも良かったですが、自分のコントロールも良かったと思っています。

平峰一貴 選手 [マネパランボルギーニGT3]

【今回の成績 : GT300クラス 4位】
昨日の予選でマルコ選手が10番手のタイムを出してくれたんですが、4輪脱輪で抹消されて順位が落ちていたので、僕のスティントではその順位に戻すことを心がけていたので、かなりペースを落として燃費やタイヤをセーブして走っていました。それでしっかりつなげることができたので、マルコ選手の素晴らしい追い上げもあって、いい成績を残してくれたので本当に良かったと思います。タイヤを4本とも換えたのが、結果的には良かったんでしょうね。これからも頑張ります。

宮田莉朋 選手 [SYNTIUM LMcorsa RC F GT3]

【今回の成績 : GT300クラス 6位】
2戦連続の入賞は良かったんですが、表彰台に上がれたレースだと思いますので、次のタイに向けて、これからいろいろ対策しなくてはいけないと思っています。タイヤは4本とも換えましたが、それほど良いタイヤで行ったわけではなかったので……。まぁ、しょうがないと思います。次のタイでは吉本選手やチームと力を合わせて、今度こそ表彰台に上がってみせます!

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー]

16号車(MOTUL MUGEN NSX-GT)のリタイアが残念でしたね。唯一、上位を狙える存在でしたから。前回のレースから、ほぼ2週間でいろいろ準備したのですが、やっぱり速さというのが不足しているな、というのを実感しました、もちろんGT300も同じなんですが……。その中で、24号車(フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R)がなんとか入賞してくれたので、それは良かったです。19号車(WedsSport ADVAN LC500)も頑張ってくれたのですが、最後にタイヤの性能低下が大きくて、ポジションキープできませんでした。残念です。

GT300は、いろんなチームがいろんな作戦を採って、バラエティ豊かな状況の中、見ている分には楽しいレースを演出できたかな、と思います。トップに関しては圧倒的で、目指すところはああいう展開で、いろんな作戦を採らなくても普通に勝てるというところを狙っていかなくてはならないと思います。でも、25号車(HOPPY 86 MC)は無交換で、88号車(マネパランボルギーニGT3)は4本交換で、うまく作戦を機能させてくれたのは感謝しています。

次のタイ、チャーンサーキットはもともと苦手ではないコースなので、確実に表彰台に上がれるように頑張っていきたいと思います。実際には直接タイ向けというわけではないのですが、タイヤメーカーテストを今月末にもてぎで実施します。そこで最終確認ができればいいな、と思っています。