2018 SUPER GT Round 2 Report

【SUPER GT 第2戦/富士】

グッドスマイル初音ミクAMGが終始右側タイヤ無交換で4位入賞、
GT500は厳しい戦いを強いられるも、3台揃って完走を果たした!!

SUPER GT Round 2

開催日 2018年5月3日-4日
開催場所 富士スピードウェイ
(静岡県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 110周
(1周=4,563m)
参加台数 44台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
SUPER GT 第2戦

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

SUPER GTの第2戦は、ゴールデンウィーク真っ最中の富士スピードウェイが舞台。例年どおり決勝レースは好天に恵まれたこともあって、多くの観客を集めることとなった。予選までは悪天候に見舞われていたため、連日見続けていた方には、ストレス発散の展開になったのではないだろうか。普段より200km長い500kmで争われるのは例年どおり。コースの随所でスペクタルなシーンの連続となった。

岡山国際サーキットで行われた開幕戦では、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手と高星明誠選手のドライブする「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」が6位、国本雄資選手と山下健太選手のドライブする「WedsSport ADVAN LC500」が9位、そして武藤英紀選手と中嶋大祐選手のドライブする「MOTUL MUGEN NSX-GT」が10位と、GT500のヨコハマタイヤユーザーが揃って入賞を果たしていた。しかし、これに満足することなく、さらなる高みを目指して欲しいところ。

一方、GT300ではヨコハマタイヤユーザーで表彰台が独占された。嬉しい初優勝を飾ったのは、中山友貴選手と小林崇志選手がドライブする「UPGARAGE 86 MC」で、2位は藤井誠暢選手とスヴェン・ミューラー選手のドライブする「D’station Porsche」。そして松井孝允選手と坪井翔選手のドライブする「Hoppy 86 MC」が3位だった。ウェイトハンデを背負っていること、またFIA-GT3に有利な高速コースが舞台とあって、2台の86マザーシャーシ勢には手堅いレース運びが望まれる一方で、FIA-GT3の中でもポルシェは富士との相性抜群。引き続きの入賞が期待された。

予選の行われた3日は、まさに天候に翻弄されることになった。早朝まで吹き荒れた雷雨はすでにやんでいたものの、濃い霧がコースをすっぽりと覆ってしまったのである。そのため、スケジュールは大幅に変更されて公式練習は時間を変更して、30分間に短縮。そして予選もノックアウト方式ではなく、20分間の一発勝負に改められた。なお、いずれのセッションもひとりだけ挑んでもいいし、複数のドライバーが挑んでもいいとされ、また予選では2セットのタイヤが使用可能とされていた。

GT300の公式練習で記録された1分37秒の壁を、予選で真っ先に破ってきたのは「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤寛規選手だったが、残り5分で「グッドスマイル初音ミクAMG」の片岡選手が上回ってトップに浮上する。しかし、片岡選手、加藤選手ともにそれ以上の更新が果たせなかったのに対し、残り3分で大幅な短縮を果たすライバルが続出。そのため、「グッドスマイル初音ミクAMG」が4番手、「シンティアム・アップル・ロータス」が5番手に。また、SUPER GT2戦目にして、早くもアタックの大任を託された、宮田莉朋選手のドライブする「SYNTIUM LMcorsa RC F GT3」が6番手につけることとなった。

GT500のヨコハマタイヤユーザーで速さを見せたのは「MOTUL MUGEN NSX-GT」だった。中嶋選手がタイムアタックを担当し、セッション終盤にホンダ陣営としても最高位となる6番グリッドを手にした。

中嶋選手は「公式練習では路面コンディションとタイヤが合っていないところがありましたが、それが予選になってコンディションが良くなったタイミングでうまくマッチしてくれました。昨年はタイヤのことも分からず、(コンディションが良くなるまで)我慢したり、待つ余裕がありませんでしたが、1年間経験してきたことで、そのへんもうまくできました」と、ここまでの努力が変則的な予選の中で成果として現れたことに安堵の表情を見せていた。

「WedsSport ADVAN LC500」は国本選手がアタックを担当して8番手。「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」はオリベイラ選手がアタックを担当したが、ミスがあったため15番手で予選を終えた。

決勝日は、前回に続いて前日の悪天候が嘘のような好天に恵まれた。「WedsSport ADVAN LC500」は国本選手がスタートを担当。第1スティントはスタート直後から接近戦のバトルを繰り広げ、14周目には7番手に浮上するが、18周目に左リアタイヤにトラブルが発生し緊急ピットイン。タイヤ交換と給油を行ってコースに復帰する。

これでトップから1周遅れとはなるが、諦めずに周回を重ね、49周目にピットイン。山下健太選手にバトンタッチする。中盤スティントも順調なペースで走行していたが、85周目に再びタイヤトラブルが発生。そのままピットに入り、国本選手に交代。ただ、想定外のピットストップがあったこともあり、トップから2周遅れの12位でレースを終えた。

オリベイラ選手がスタートを担当した「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」は、前半なかなかペースを上げることができず15番手を走行。それでも38周目まで引っ張る作戦を採って、高星明誠選手にチェンジする。なかなかポイント圏内が見えないレース展開となったが、粘り強く走行した高星選手。しかし、タイヤに異変を感じて65周目にピットイン。これでポイント獲得が遠ざかってしまった。最終的に「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」は13位でフィニッシュ。週末全体を通して歯車が嚙み合わないレースとなってしまった。

そして、「MOTUL MUGEN NSX-GT」は、武藤英紀選手がスタートを担当。ペースも非常に良くグリッドポジションの6番手をキープし、33周を終えたところでピットイン。中嶋選手がマシンに乗り込む。中盤スティントでは10番手にポジションを落としてしまうが、安定したペースで周回を重ね、67周目にはライバルを1台抜いて9番手に浮上した。しかし、その直後に左リアタイヤのトラブルに見舞われ、69周目に緊急ピットイン。11番手に後退してしまう。その後、85周を終えたところで2回目のドライバー交代を行い、武藤選手が最終スティントを担当するが、98周目にデブリ(コース上に落ちていた異物)付着によるコースオフを喫し、車両確認の為ピットイン。それでもチェッカーまで諦めずに走行し、14位完走を果たした。

GT300では「グッドスマイル初音ミクAMG」の片岡選手が、オープニングラップのうちにひとつ順位を上げて3番手からレースを開始。これに「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤選手が続いたのに対し、「SYNTIUM LMcorsa RC F GT3」の宮田選手は8番手に後退。さらに宮田選手は2周目に「D’station Porsche」の藤井誠暢選手の先行も許していた。藤井選手と宮田選手は、その後「Modulo KENWOOD NSX GT3」の大津弘樹選手も加えて、激しく7番手を争うように。5周目には大津選手が、その先頭に立つこととなった。

しばらく3番手をキープし続けていた片岡選手だったが、17周目にはひとつ順位を落としてしまうも、先行するライバル車両が早めの交代を強いられる中、40周目まで谷口選手への交代を伸ばした結果、38周目から2周に渡ってトップを走行。その後の4周は、加藤選手がトップを走ることとなった。特に「グッドスマイル初音ミクAMG」は左側のタイヤ2本の交換で、ロスを最小限としたことで、全車最初のピットを終えた時点でも引き続き4番手を走行することとなった。

谷口選手も他を圧するロングスティントで73周目から、またもトップを片岡選手に代わる83周目まで走行。驚くべきは、タイヤ交換も引き続き左側2本に留めたことだ! これにより、ひとつ順位を上げるかと思われたものの、すでに交代を済ませていた車両に100Rでかわされ、4番手に順位を戻すことに。そのまま順位を維持することが期待されたものの、ラスト3周で後続車両の逆転を許し、「グッドスマイル初音ミクAMG」は5位でフィニッシュ。これがヨコハマタイヤユーザーの最上位となった。

6位は藤井選手とスヴェン・ミューラー選手のドライブする「D’station Porsche」が獲得し、予選から3ポジションアップに成功。7位は宮田選手と吉本大樹選手のドライブする「SYNTIUM LMcorsa RC F GT3」が獲得、宮田選手は2戦目にして初入賞を果たす。そして道上龍選手と大津選手のドライブする「Modulo KENWOOD NSX GT3」も8位に入って、デビュー2戦目のマシンと大津選手にとっては初入賞に。一方、一時トップを走った「シンティアム・アップル・ロータス」はマシントラブルに見舞われ、ピットロードでストップ。完走扱いにはなったものの、チェッカーを受けることはできなかった。

DRIVER VOICE

国本雄資 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 12位】
タイヤのウォームアップは良かったんですけれど、最初に16号車とバトルをしていた時に64号車に抜かれてしまって、彼らもペースが速かったので抜き返すのに時間がかかってしまいました。追い抜いた後は自分のペースで走れるかなと思って、ちょっとずつプッシュしていたところでタイヤにトラブルが出て、そこでレースがほとんど終わってしまいました。

中嶋大祐 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 13位】
決勝は結果から言うとタイヤのトラブルが出てしまいました。ただ、良い部分……とは言えないですけど、まわりとは戦えるようなところではありました。昨年の5月の富士は、決勝はもっともっとつらかったので、この1年でチームとヨコハマタイヤさんと進歩できたなという実感はできました。そこは良かったです。

高星明誠 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 14位】
硬めのタイヤを選んでいたので、決勝に対しては良いイメージはあったんですけど、ただ第1スティントからペースはあまり良くなかったし、僕たちにもタイヤトラブルが出ていて、中盤の僕のスティントではスローパンクチャーの症状が出て、それでピットに入ってきました。決勝で使った全部のタイヤにトラブルらしきものが出ていたので、そこは次回の鈴鹿に向けては改善してもらいたいところですし、僕たちも足りていないところは改善して、鈴鹿では開幕戦の岡山みたいなペースを取り戻したいです。

片岡龍也 選手 [グッドスマイル初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
スピード的な勝負ができないので、常に右側無交換という作戦で行ったんですが、自分たちが尽くせるベストは尽くせたんじゃないかとは思います。ただ、ライバルに対して、ちょっと負けてたんじゃないかな、という部分はあるので、次は他をパフォーマンスアップするしかないのかなと。勝負が同じ土俵でできている感じはしないので。もう少し何とかしたいと思います。

藤井誠暢 選手 [D’station Porsche]

【今回の成績 : GT300クラス 6位】
テストとは路面温度もコンディションもすごく違っていて、最初のスティントで選んでいたタイヤは、ちょっと想定外に少しドロップが早かったので、序盤が苦しくて。次のスティントで違うタイヤを入れたら、そこからはペースも良くて、最後のスティントもそのタイヤで行ったんですけど……。ウエイト積んでいるのもあるんですが、ポルシェは18モデルになってダウンフォースが増えて、ストレートが遅くなってしまったのもあるんですが、思ったよりポルシェの利点が富士では出ない状態でした。そういう意味では順当な順位だったかもしれません。タイヤは2回とも4本交換でした。

吉本大樹 選手 [SYNTIUM LMcorsa RC F GT3]

【今回の成績 : GT300クラス 7位】
前回と比べて温度レンジ的にもタイヤが合ってくれたので、しっかり予選で機能してくれましたし、我々のクルマもセットアップの方向性が良かったです。莉朋も頑張ってくれました。決勝に関してはちょっと厳しいものがあって、リヤのグリップを維持することができず、終始しんどいレースではあったんですけど、持てるものはすべて出せました。これ以上に強くしていくためにもヨコハマタイヤさんとともに、打倒・他メーカーで、腰を据えていかなきゃと改めて思わされたレースでした。それでも、次につながるレースにはなりました。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー]

最悪のレースになってしまいました……。GT500に関しては、岡山に続いて新しい構造を投入して、今まで苦手としていた区間では、タイムも上がっていたので、そこそこ行けるかなと思っていたのですが、そこで少し結果を狙い過ぎて、低めギリギリの内圧を我々がリコメンドしてしまったのが失敗でした。フリープラクティスがキャンセルされ、事前の走行が少なく、内圧セットも難しくなった事を考慮すれば、もう少し安全サイドに振ったリコメンドをすべきでした。状況を的確に判断できず、こういう結果を導いてしまった事を、大いに反省しています。

GT300も最上位は0号車(グッドスマイル初音ミクAMG)で、タイヤパフォーマンスという部分では厳しいものがあったのですが、チームの戦略でこの結果を得たと言う事が現実であって、やはり今、GT300の競争が激しくなっている中で、他社の追い上げが厳しいという部分と、パフォーマンスに対して我々の伸び代が劣っているところはあると思います。これからテストが少なくなってしまうので難しくはあるのですが、可能な限りデータを解析して、巻き返しがはかれるように、これからのレースに臨んでいきたいと思います。

次の鈴鹿に向けてGT300に関して言えば、公式テストの結果から、今回みたいな厳しいレースにならないと考えています。しかし、GT500に関して言えば、今回の富士の結果から、鈴鹿までに何とかするのはちょっと難しいのですが、とにかく帰ってすぐデータをまとめて、少しでもいい結果を得られるようにしなければいけないと考えています。