2017 JRC Round 9 Report

【全日本ラリー選手権 第9戦/愛知県新城市】

ヨコハマタイヤ勢が3つのクラスで優勝を飾った最終戦、
JN2クラスは猪股寿洋選手が悲願のチャンピオンを獲得した!!

JRC Round 9

開催日 2017年11月3日-11月5日
開催場所 愛知県新城市 近郊
天候Day1) 晴れ
Day2) 晴れ
路面 Day1)ドライ
Day2) ドライ
ターマック(舗装路)
総走行距離 355.907km
SS総距離 87.400km (14SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km)
参加台数 69台 (オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 24台)
全日本ラリー選手権 第9戦

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2月に開幕した2017年の全日本ラリー選手権も、いよいよ最終戦を迎えた。シーズンを締めくくるのは愛知県を舞台とする「新城ラリー2017」、横浜ゴムが工場を構える新城市がホストタウンをつとめる一戦である。

2007年に初めて全日本戦として開催された新城も11年目、この間に主会場は桜淵公園から新城総合公園へと移り、開催を重ねる毎にイベントはボリュームをアップ。自動車メーカーや関連企業の出展ブースが並び、競技のSS(スペシャルステージ)観戦はもちろん、各社の出展、多彩なデモ走行やイベントを丸一日楽しめる環境が整えられている。

また、ホストタウンの新城市も開催をバックアップ。サブステージでは横浜ゴムもタイアップしてグッズ販売などの出展に加え、ミニライブや豪華な賞品があたるビンゴゲーム大会などを実施、週末は大勢の市民やラリーファンで盛り上がりを見せた。

競技は新城総合公園を拠点に、名物とも言える雁峰線や愛郷線といったタイトでテクニカルな林道ステージと、本宮山スカイラインを使うハイスピードステージが今年も設けられた。これに公園内のショートステージを含めた14本のSS、合計距離87.400kmで競われる。

金曜日の夕方には新城文化会館でセレモニアルスタートが催され、多くの市民が声援を送った。注目は最終戦に持ち越されたチャンピオン争い、JN6クラスは新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)の逆転に期待が高まる中、土曜日のDay1は快晴に恵まれた中でオープニングステージを迎える。

SS1「ほうらいせん一念不動 1 (7.305km)」、このステージを制したのは新井選手組でチャンピオンを争うライバルを5.1秒リードして幸先の良いスタートを切った。続くSS2はライバルにベストを譲るも、大勢のギャラリーが見守るSS3「県営新城公園リバース 1 (0.760km)」は奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)がベスト、新井選手組はセカンドベストで続きヨコハマタイヤ勢がファンの期待に応える速さを見せる。

さらにSS4「鬼久保 1 (6.59km)」も奴田原選手組がベスト、新井選手組がセカンドベストのワン・ツーでハイスピードステージも制し、セクション1を終えて新井選手組がライバルを1.2秒リードするトップで1回目のサービスイン。各ステージをリピートするセクション2に向けてメンテナンスを行い、再び林道ステージへと向かっていく。

1回目で新井選手組がベストを奪った「ほうらいせん一念不動」のリピートとなるSS5、ここはライバルがベストを奪い新井選手組は順位を2番手にドロップ。しかしその差は僅か1.6秒、激しいデッドヒートがますます熱くなる中で迎えたSS6は「雁峰北 2 (11.12km)」、1回目をセカンドベストとしている新井選手組はベスト奪取に向けてプッシュしていく。

しかし、ステージの折り返しを迎えようというスタートから約5kmの地点で、タイトコーナーのクリッピングに大きな木の枝が落ちていた。瞬時の判断でこれを避けた新井選手組だったが、逆側の路面にあった石を踏んだことでタイヤにダメージを受けてしまう。残りの距離も長いことからタイヤ交換を余儀なくされ、大きくタイムロスを喫して無念のポジションダウンとなってしまった。

その後もプッシュを続けた新井選手組はステージベストを奪う力走を見せたが、トップ奪還には至らず4番手でフィニッシュ。年間最多タイとなる3勝を挙げた2017年は、シリーズランキング2番手という結果になった。一方、奴田原選手組は5本のSSでステージベストを奪い、準優勝でセレモニアルフィニッシュを飾った。

JN2クラスも最終戦にチャンピオン争いは持ち越されており、シリーズトップの猪股寿洋選手と2番手の明治慎太郎選手という、ともにヨコハマタイヤを装着するトヨタ・86を駆る二人の一騎討ちとなる。順位的な条件としては追う立場の明治選手は優勝が必須条件、しかし猪股選手は2位でフィニッシュすれば王座確定ということで、猪股選手が有利な立場となっていた。

オープニングから速さを見せたのは明治選手組、JN4やJN3クラスを上回るタイムを連発してリードを拡げていく。猪股選手組も食らいついていくがSS7「鬼久保 2」で痛恨のスピンを喫し、ポジションをドロップしてしまった。

Day2も快走を続ける明治選手、対する猪股選手は絶体絶命かと思われた。最終ステージを残して明治選手組がトップ、猪股選手組は3番手。そして迎えた最終ステージ、明治選手組は2番手との差も大きいことからペースをコントロールしてリスクを負うことなくフィニッシュ。しかし、この最終ステージの結果により明治選手組はDay2のデイポイントでトップではなく2番手となった。

これによりシリーズポイントは猪股選手と明治選手が同点となったが、他のカテゴリーでは同点の場合は年間勝利数で最終決定することの多いシリーズランキングだが、全日本ラリーの選手権規定では「同点の場合は上位得点の獲得回数が多い順に順位を決定する」とされている。このため、ポイント係数も大きいRALLY HOKKAIDOの準優勝で獲得したポイントが最後に効いて、猪股選手が嬉しい全日本チャンピオンの称号を得る結果となった。

このほか、JN4クラスでは山本悠太選手/藤田めぐみ選手組(86)、JN1クラスでも須藤浩志選手/新井正和選手(スイフト)が優勝を飾り、ヨコハマタイヤ勢は最終戦で3つのクラスを制した。

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DRIVER VOICE

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN6クラス 2位】
準優勝で締めくくった最終戦ですが、内容的にはまだまだ頑張らなければならない部分も多いと思っています。一年を振り返ると、北海道でのグラベル(非舗装路)ラリーを2戦ともに落としてしまったことが、大きくシリーズの戦いに響いてしまいましたね。

猪股寿洋 選手 [WAKOS☆PIAA☆BRIG☆YH 86]

【今回の成績 : JN2クラス 3位 (シリーズチャンピオン確定)】
Day1は自分自身が意識していた以上にプレッシャーを感じていたようで、それが走りにも出てしまっていました。これがDay2になるとどういう訳か、過度な緊張が無くなってスタート出来ました。そうしたら「長篠設楽原」のステージで良いタイムを出せて、良い流れを掴めました。チャンピオンの実感はまだあまり無いのですが、自分としては最後のつもりで臨んだシーズンだったので卒業式のような気分がありますね(笑)。

明治慎太郎 選手 [YH Gd 高崎くす子 86]

【今回の成績 : JN2クラス 優勝】
チャンピオン獲得の条件がフルポイントだと思わず、同点でも優勝回数の差で自分がチャンピオンだと勘違いしていました……。なので、最終ステージは無理せず走ってフィニッシュしたのですが、優勝はしたものの複雑な気持ちです。終わってみて思うのは、チャンピオンになりたいのならRALLY HOKKAIDOに出るのが必須ということでしょうか(苦笑)。今年は86での2年目で慣れてきたこともあり、走らせ方が分かってきたことが大きな収穫の一年になりました。

山本悠太 選手 [Sammy☆K-one☆ルブロス YH 86]

【今回の成績 :JN4クラス 優勝】
自分とチームにとって地元での一戦ということで、いつも以上の気持ちを持って臨んだ一戦でした。去年と比べてペースノートの作り方が進化していることもあり、悪くないペースでテクニカルな林道ステージを走ることが出来たと思います。初のフル参戦で3勝を飾ることが出来ましたが、悪いときは順位を大きく落としてしまったので、ラリーをシーズンで戦うことの難しさも痛感した一年でした。

須藤浩志 選手 [スマッシュ BRIG ダイニチ YH スイフト]

【今回の成績 :JN1クラス 優勝】
Day1では途中で先行車に追いついてしまったステージがありましたが、それでもベストタイムを獲ることが出来たりもしました(笑)。今回改めて思ったのは「ADVAN A052」の、コントロール性能の高さですね。幅広い路面コンディションに対応出来る上に、限界までのインフォメーションがわかりやすくてグリップ性能をフルに活用して走ることが出来ました。

TECHNICAL INFORMATION

JN6クラスのチャンピオン争いは新井選手組もオープニングステージから速さを見せて注目を集めたが、アンラッキーな結果に終わったことは残念だった。同じ箇所で他メーカーのタイヤを装着するライバルもタイヤにダメージを受けて交換を余儀なくされているので、障害物を避けた時の僅かな走行ラインの差が明暗を分けたと言えるだろう。

JN2クラスはヨコハマタイヤ勢同士のチャンピオン争いで盛り上がったが、全14本のSS中13本で猪股選手組と明治選手組がステージベストを獲得し、「ADVAN A052」がテクニカルな林道からハイスピードなステージまで幅広いシチュエーションで速さを見せる結果となった。