2017 JRC Round 8 Report

【全日本ラリー選手権 第8戦/岐阜県高山市】

目まぐるしく路面状況が変わるサバイバルラリーとなった伝統の一戦、
終盤の大逆転劇でヨコハマタイヤ勢がJN6を1-2フィニッシュ!!

JRC Round 8

開催日 2017年10月13日-10月15日
開催場所 岐阜県高山市 近郊
天候Day1) 曇り
Day2) 雨
路面 Day1) ウェット~ドライ
Day2) ウェット
ターマック(舗装路)
総走行距離 372.13km
SS総距離 82.45km (11SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km)
参加台数 42台 (オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 14台)
全日本ラリー選手権 第8戦

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2017年の全日本ラリー選手権は、北海道でのグラベル(非舗装路)2連戦を終えて戦いの舞台を再び本州に移した。第8戦は「第45回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ」、岐阜県高山市をホストタウンとして、45回目の開催を数える伝統ある一戦だ。

その昔はグラベルステージで幾多の名勝負が繰り広げられたハイランドマスターズも、2008年からはターマック(舗装路)ラリーとして開催されている。今回は土曜日のDay1で大会最長ステージとなる「あたがす (9.70km)」とギャラリーが見守る「アルコピア-無数河 (6.18km)」を各2回走行するのに加え、新規のステージとして県道435号・御岳山朝日線を使う「御嶽 (9.43km)」を1回走行する。

日曜日のDay2はお馴染みの「駄吉 (5.61km)」を今年は上り方向で、また「青屋 (8.87km)」を下り方向で走行。さらに前日のリバースとなる「無数河-アルコピア (6.15km)」を加え、それぞれ各2回ずつ走行。SS(スペシャルステージ)は全11本、合計距離82.45kmで競われる。

週末の高山は天候が不安定で、レッキが行われた金曜日は午前中が雨模様。林道ステージには落ち葉や泥が出ている箇所も多く、特に「御嶽」は大半が道幅の狭い荒れた舗装路面ながら比較的ハイスピードなコーナーも多いという難しいステージであるというのが多くの選手に共通する感想として聞かれた。

土曜日は雨こそあがったものの、前夜までの降水により路面はウェット~ハーフウェットというコンディションでスタート。オープニングは「あたがす 1」、ここで逆転チャンピオンを狙う新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)は石をひっかけてタイヤに傷をつけてしまいスローパンクチャーに見舞われてしまう。この影響でポジションは総合23番手、トップのライバルに対して44.3秒という大量のビハインドを背負ってしまった。

その後「アルコピア-無数河」で2回ともにステージベストを刻むなどしたが、初日を終えてクラス5番手、トップとの差は48.7秒という厳しいポジションでDay1を終了した。一方、奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)は惜しくもステージベストを奪うには至らなかったものの、堅実な走りで22.7秒差の3番手と表彰台圏内でラリーを折り返した。

日曜日のDay2は、朝から雨が降り始めた高山地方。新井選手組はオープニングからプッシュを重ね、ファーストループを3連続ステージベストであがってサービスイン。ポジションをひとつあげて4番手、トップとの差は39.9秒とまだ小さくないものの、着実にその存在感をライバルに意識させていた。

セカンドループでは路面の雨量も増してよりタフなコンディションとなり、その皮切りとなるSS9「駄吉 上り 2」でラリーが大きく動いた。雨、濡れ落ち葉、泥といった要素により、路面のμが目まぐるしく変化する林道ステージでヨコハマタイヤのウェットグリップ性能が大きな威力を発揮した。

スタートしておよそ4km地点、ここで前を行くライバルの2台が揃ってコースオフしてマシンにダメージを受け大きく後退。このステージには極端にμが低くなったコーナーがいくつかあり、新井選手組と奴田原選手組ともに危うくコースオフしそうになるような場面もあったが、両者は卓越したドライビングテクニックとそれを支えるヨコハマタイヤのウェットグリップ性能を活かして挙動を立て直して事なきを得る。そしてSS9はステージベストを新井選手組、セカンドベストを奴田原選手組が奪った。

続くSS10「青屋 下り 2」も新井選手組が5連続ステージベスト、奴田原選手組がセカンドベストで続いた。マシンのダメージによりライバルは大きく後退し、最終ステージを前にして奴田原選手組がトップで4.7秒差の2番手に新井選手組という、ヨコハマタイヤ勢のワン・ツー・フォーメーションとなった。

注目の最終ステージSS11「無数河-アルコピア 2」は、世界の舞台を戦ってきたヨコハマタイヤ勢の一騎討ち。フルプッシュの応酬は新井選手組に軍配があがり、4.7秒差を逆転する6連続ステージベストでRALLY HOKKAIDOに続く2連勝、今シーズン3勝目を飾ることに成功。シリーズチャンピオン争いを最終戦に持ち越した。

JN5クラスもSS1でタイヤを壊し、交換作業によって大きく出遅れた川名賢選手/保井隆宏選手組(DS3 R3)がSS2から猛追撃を披露。こちらもコースオフなどを喫することなく着実にタイム差を詰めていき、最終ステージの逆転でウィナーとなり第6戦・洞爺以来となる今シーズン2勝目を飾った。

ヨコハマタイヤ勢同士のチャンピオン争いとなっているJN2クラスは、追う立場の明治慎太郎選手/北田稔選手組(86)がオープニングから快走。しかし、条件的には有利な猪股寿洋選手/齊藤孝太選手組(86)もしっかり食らいついていき、リタイアを喫したライバルを尻目にDay1を明治選手組がトップ、猪股選手組が2番手であがった。

しかし、Day2に入って猪股選手組が痛恨のスピンを2回喫してポジションをドロップ。対する明治選手組は勢いを弱めることなくフィニッシュまでマシンを運び、終わってみれば11本中7本のSSでステージベストを叩き出して優勝。総合でも、4輪駆動勢に割って入る7位でのフィニッシュとなった。猪股選手組も挽回して3位表彰台を獲得、この結果によりJN2はナビゲーター(コ・ドライバー)部門のチャンピオンを北田選手が確定。ドライバー部門のチャンピオン争いは、最終戦に持ち越しとなった。

このほか、JN1クラスでは伊藤隆晃選手/大高徹也選手組(ノート)が嬉しい全日本初優勝。JN3クラスでは、日曜日に誕生日を迎えた内藤学武選手/小藤桂一選手組(デミオ)が3位表彰台を獲得し、サバイバルでタフな一戦でもヨコハマタイヤ勢は4つのクラスを制するなど活躍を見せた。

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DRIVER VOICE

新井敏弘 選手 [富士スバル アライモータースポーツ WRX]

【今回の成績 : JN6クラス 優勝】
ここまでの“借金”をいきなり背負って戦ったことは、WRC(FIA世界ラリー選手権)ではありましたが、全日本選手権では記憶にないですね。大きく遅れたオープニングステージでは心がバッキリと折れましたが(苦笑)、無理をしないまでもずっとプレッシャーをかけて行けば何とかなるかな、ということがあるのがラリーですからね。少しずつ負けていると、プレッシャーはじわじわとかかってくるものなんですよ。諦めなかったから、この結果に繋がったと思っています。最終ステージでは奴田原選手との戦いになりましたが、向こうも百戦錬磨ですからね。タイトル争いは最終戦に持ち越しましたので、頑張ります!!

川名 賢 選手 [CUSCO ADVAN DS3R3MAX]

【今回の成績 : JN5クラス 優勝】
オープニングステージで、スタートして1kmくらいでタイヤをパンクさせてしまいました。でも、落ち込むというよりは気持ちを切り替えてタイヤ交換をして、そこからは少しでも上の順位を取り返そうと走りました。天候も路面もいろいろでしたが、多彩なコンディションを経験できてとても実になりました。僅差の最終ステージというのもなかなか経験出来るものではないので、メンタリティの面でも鍛えられましたね。最初にタイヤをパンクさせたミスを除いては、とても“ラリーをしたな!!”という実感があって、得るものの多い一戦でした。

明治慎太郎 選手 [YH Gd 高崎くす子 86]

【今回の成績 :JN2クラス 優勝】
連覇に向けて、首の皮一枚つながりました(笑)。チャンピオンになるために、僕はハイランドも新城も勝つしかありません。今回、まず1ループ目は様子見というか、しっかり帰ってくることをテーマにして、2ループ目でプッシュしたという感じです。タイトルを争っている猪股選手のことは気にせず、僕は僕の仕事をしっかりすることが第一でしたね。僕がまずは結果を出して、その上で天命を待つというか。新城はハイランドよりも好きな道なので、しっかり結果を出して行きたいと思います。

伊藤隆晃 選手 [プレイドライブ YH ノートNISMO S]

【今回の成績 :JN1クラス 優勝】
Day1の御嶽でかなり遅かったので、Day2はかなりプッシュしなければならないな、という展開で2日目をスタートしました。ところがトップにいたライバルがリタイアしていたので、そこで集中力をちょっと落としそうになりました。中途半端に走っていると危険なコンディションが多かったので、気合いを入れなおして集中力を保ってフィニッシュまで運びました。全日本初優勝なのでフィニッシュしたときはホッとしましたが、こんなにラリーで緊張したことも無いですね(笑)。狭い道でもタイムを出せていたので、次の新城に向けても手応えと希望を掴んだ優勝でした。

TECHNICAL INFORMATION

本大会はタイヤの使用本数が最大8本という規則であったが、Day2は朝からの雨によりウェット宣言が出されて2本の追加使用が認められた。二日間を通じて気温/路面温度はともに低めで推移、さらに雨に加えて落ち葉や泥などが路面に乗っているという難しいコンディションでの一戦となった。

そんな路面に足をすくわれてリタイアやポジションダウンを喫したライバル勢も多かったが、ヨコハマタイヤは新井選手組や川名選手組の大逆転に象徴されるように、優れたパフォーマンスを発揮。Day2のウェット路面でフルプッシュを重ねた新井選手組の走り、世界を戦ってきたドライビングをフィニッシュまで足元で支えて逆転優勝を獲得した。