2017 SUPER GT Round 8 Report

【SUPER GT 第8戦/もてぎ】

GT300でヨコハマタイヤユーザーが2連覇を達成、
3度目の栄冠を谷口信輝選手/片岡龍也選手組が獲得!!

SUPER GT Round 8

開催日 2017年11月11日-12日
開催場所 ツインリンクもてぎ
(栃木県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 53周
(1周=4,801m)
参加台数 45台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
SUPER GT 第8戦

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ここまで7戦、熱い戦いを繰り広げて来たSUPER GTシリーズが、今年も最終戦をツインリンクもてぎで迎えることとなった。優勝争いもさることながら、GT500、GT300ともにチャンピオンは未決定とあって、栄冠の行方にも注目が集まることとなる。

だが、残念ながらGT500のヨコハマタイヤユーザーに、その権利は喪失してしまっているものの、だからこそ今年最後の戦いで一矢報いて、気持ちよくシーズンを終えたいところ。このレースの特徴として、まず挙げられるのは全車ノーハンデということだが、さらにもうひとつ、通常のレースより50km短い250kmで争われることもある。となれば、あの作戦も……。佐々木大樹選手とジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手の駆る「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」、関口雄飛選手と国本雄資選手の駆る「WedsSport ADVAN LC500」、そして武藤英紀選手と中嶋大佑選手の駆る「MOTUL MUGEN NSX-GT」に、それによって勝機が生まれることが大いに期待された。

一方、GT300ではヨコハマタイヤユーザーであり、「グッドスマイル初音ミクAMG」をドライブする谷口信輝選手と片岡龍也選手が、ポイントリーダーとしてこの最終戦に臨むこととなった。ランキング2位との差は9ポイントとあって、優勝か2位で逃げ切ることができ、またポールポジションを獲得すると表彰台に上がればチャンピオン確定とあって非常に有利な立場にある。さらにGOODSMILE RACING & Team UKYOのみならず、谷口選手、片岡選手ともに過去2回のタイトル獲得経験があるだけに、どう戦えば良いのかを熟知しているはず。それぞれ3回目の栄冠獲得に、大きな期待が込められた。

当初の天気予報では、予選の行われる土曜日に高い降水確率が出ていたものの、実際には公式練習の直前にポツリと降っただけ。予選は完全なドライコンディションで行われた。GT300のQ1は日差しこそ強くても、温度はこの時期らしく低かったことから、ヨコハマタイヤユーザーは、ウォームアップを入念に行なっていた。そんな中、トップタイムを記したのは、「グッドスマイル初音ミクAMG」の谷口選手だった。2番手につけた「マネパ ランボルギーニGT3」の平峰一貴選手にコンマ5秒の差をつけ、チェッカーを待たず早々に、谷口選手はピットに戻ってくる。なお、Q1突破は9台のヨコハマタイヤユーザーが果たしている。

続くQ2でも「グッドスマイル初音ミクAMG」は絶好調。谷口選手の記したタイムすらコンマ7秒も短縮し、片岡選手はレコードタイムを更新してポールポジションを獲得する。その結果、貴重な1ポイントをさらに加えて、ランキング2位のライバルにすら10ポイントの差をつけることとなった。意外にも、片岡選手のSUPER GTでのポールは初めてなのだとか。4番手は山下健太選手から、「VivaC 86 MC」のステアリングを託された松井孝允選手が獲得し、そして6番手は「D’station Porsche」のスヴェン・ミューラー選手が獲得。藤井誠暢選手とともに前回のタイ大会に続く、表彰台獲得が期待された。

GT500では、「MOTUL MUGEN NSX-GT」は武藤選手がQ1を担当するも13番手。WedsSport ADVAN LC500は関口選手がQ1をドライブするが、15番手に終わりQ1敗退となってしまう。だが、昨年ここツインリンクもてぎで行われた第3戦で優勝を飾っている「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」は佐々木選手が6番手でQ1を突破。続くQ2ではジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手が渾身のアタックを見せ、5番グリッドを獲得した。

日曜日のツインリンクもてぎも好天に恵まれ、スタンドは超満員! 実に3万6千人もの観客がクライマックスを楽しもうと大挙して訪れていた。今回はフォーメイションラップの前に行われるパレードランは、栃木県警察の白バイやパトカーだけでなく、今回デモランを行なったDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)マシン3台も走る豪華版だった。

表彰台も狙える位置からスタートした「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」はデ・オリベイラ選手がスタートドライバーを務めたが、決勝レース前に行われたウォームアップ走行中の赤旗提示時に、他車を追い越してしまい、序盤からドライブスルーペナルティを受けてしまう。さらに6周目の5コーナーでポジション争いをしていたマシンと接触。相手をスピンさせてしまったため、ここでもドライブスルーペナルティを受け、大きく後退を余儀なくされた。

それでもチームは諦めずに走行を続け、32周を終えたところで佐々木選手に交代。最終的に「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は、トップから1周遅れの12位でフィニッシュした。

「WedsSport ADVAN LC500」は関口選手が第1スティントを担当。ライバルが早々にピットインする中、24周目まで引っ張りピットインして国本選手に交代する。後半も少しでも順位を上げるべく前のマシンを追いかけていったが、39周目の2コーナーを立ち上がったところで、GT300との混走の影響もあってポジション争いをしているライバルと接触。フロント部分を痛めてしまい、なんとかピットまでたどり着くも、そこでレースを終えることになった。ただし、規定周回を満たしていたこともあり、15位での完走扱いとはなっていた。

そして、「MOTUL MUGEN NSX-GT」は武藤選手がスタートドライバーを務め、19周目で中嶋選手に交代。なかなか上位に食い込めない苦しいレース展開となってしまったが、最後まで粘り強く周回を重ね、11位でフィニッシュした

GT300ではポールポジションからスタートした、「グッドスマイル初音ミクAMG」の片岡選手のリードからバトルが開始される。また、「VivaC 86 MC」の山下選手もひとつポジションアップに成功、連覇の夢は前回で絶たれてしまったものの、最後に一矢報いようという姿勢が明らかに見て取れた。間にBMW M6を挟んで、3台で激しいバトルを繰り広げたのは、ほんの束の間で、徐々に片岡選手が逃げていくこととなった。だが、11周目に6秒2にまで達したのをピークに、その後は次第に差が詰まっていく。そこで「グッドスマイル初音ミクAMG」が採ったのは、早めのドライバー交代。谷口選手に16周目に代わり、同時にタイヤを4本とも交換する。

次の周には「VivaC 86 MC」もピットに戻って松井選手に交代するも、タイヤ無交換ではなく左側のタイヤを2本交換する。それでもロスを最小限にしたことで、事実上のトップに躍り出ることとなる。しかし、それ以上のギャンブルに討って出たのが、序盤に2番手を走行していたBMW M6。なんとタイヤ無交換で「VivaC 86 MC」の前に出る。その松井選手のペースも今ひとつ上がらず、32周目にはメルセデスAMGの先行を許すことに。そして全車がドライバー交代を済ませると、「グッドスマイル初音ミクAMG」の谷口選手は、松井選手に続く4番手に。

そのポジションが保たれても、「グッドスマイル初音ミクAMG」の王座獲得が達成されるも、それで満足のいく谷口選手であろうはずがなかった。39周目には「VivaC 86 MC」をかわして3番手に浮上する。そのままポジションをキープした結果、2014年以来となる王座返り咲きに、谷口選手と片岡選手は成功する。

一方、「VivaC 86 MC」は、ジョノ・レスター選手の「GULF NAC PORSCHE 911」にも抜かれて5番手に後退。「GULF NAC PORSCHE 911」は決勝前のウォームアップで、峰尾恭輔選手が前を行くスピンした車両とあわや大クラッシュのシーンもあったが、ダメージはほとんどなかったのが不幸中の幸い。予選9番手からの激しい追い上げを実らせ、4位入賞を果たした。

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DRIVER VOICE

武藤英紀 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 11位】
非常に厳しかったですね。前回までのレースを踏まえて新しい試みはしてきたんですが、それも良い結果ではなかったです。それが分かったのもひとつの前進でしたが、結果からすると辛いものでした。今回はあまりいいところがない週末でした。

ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 12位】
予選は僕たちが予想していたよりも上手くいったし、良いペースで走れていたから決勝も楽しみだったけど、難しいレースになってしまった。まずはウォームアップで赤旗が出た時に、GT300車両がラインを大きく外して止まりそうな勢いでスローダウンしていたから抜いていった。だけど、結果的にペナルティになってしまった。序盤からいいバトルができていて、4コーナーを勢い良く立ち上がっていけたのだけど、5コーナーでのブレーキングのスペースを探していたら、そこが塞がれてしまい接触してしまった。避けることができなったよ。今シーズンはチームを移籍して臨んだけど、正直悔しいものになった。ランキングも下位だしね。速さを見せられたレースもあったけど、アクシデントや不運もあって、それを結果につなげることができなかった。SUPER GTで勝つには、わずかなチャンスを掴む必要があるけど、今年は総じてそこに到達できるだけの速さも引き出せなかったね。

国本雄資 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 15位】
朝のフリー走行を終えてから、予選向きに少しマシンバランスを調整したのですが、それがうまくまとまらなかったです。決勝レースもタイヤの消耗が大きくて、中盤ぐらいに入ってリヤタイヤ2本のみを交換しましたが、それでも思った以上にペースが上げられず苦しかったです。最後はポジションを争っている相手とGT300のマシンの間を通ろうとしたら、スペースがなくなって接触してしまいました。今シーズンはところどころで速かったですが、運がなかったところもあったし、安定した速さを1年間みせることができなかったです。そこは課題ですし、シーズンオフは頑張って来年はどんなコンディションでも速く走れるように頑張ります。

谷口信輝 選手 [グッドスマイル初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 3位 (シリーズチャンピオン確定)】
決勝は僕ら3位まで落ちましたけど、もともと優勝とかは厳しい、って話していたんですよ。昨日の走り初めから。片岡が最初、元気良かったんだけど、保たないから早めに入ってきて、ハードを履いて僕が残り全部行くと。正直、厳しいねっていうのが見えていたんですけど、なんとかチャンピオンを獲ろうということで、それにヨコハマさんが100周年ということで、花を添えるために、この絶好のチャンスにひっくり返されるわけにはいかなかったんです。本当に今はチャンピオンが獲れて、ホッとしています。嬉しいというより肩の荷が下りたというか、満足感でいっぱいです。

片岡龍也選手 [グッドスマイル初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 3位 (シリーズチャンピオン確定)】
今シーズンこうやって終わってみて、まずチャンピオンが獲れて本当に良かったな、と思うのと、開幕戦から優勝して、今シーズンは非常にスピードのあるシーズンになったなと。そのスピードをちゃんとチャンピオンという結果につなげられて嬉しいですし、やはりそのスピードを支えてくれたのが、ここ数年苦労して開発を進めてきたヨコハマさんとの関係があって、本当にいいタイヤを作ってもらえて。僕らにできる恩返しは結果しかないので、それをチャンピオンという結果で返せて非常に満足しています。

峰尾恭輔 選手 [PACIFIC NAC PORSCHE 911]

【今回の成績 : GT300クラス 4位】
スタート前のウォームアップでドッキリすることがあって、あれは巻き込まれてしまったんです。ダメージがなかったのが不幸中の幸いで、当たった場所が数センチ違っていたら、足回りが逝っちゃうような事故だったと思うので、走れて良かったです。ちょっと予選は柔らかいタイヤを選んでいたので、ミニマム保てばいいと思っていたんですが、そんなにラップダウンしない感じで、ヨコハマタイヤが作ってくれたタイヤがなんとか保ってくれました。そこで保たせながら抜いていって、レースが作れてジョノに渡せたので、良かったな、と思います。

松井孝允 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
結局、無交換はできなくて左側の2本を交換して行きました。前には出たんですが、単純にペースが悪かったというのがあって。そのへんは今年戦ってみて、まだまだだな、っていうのがあるので、もちろん僕のミスもあるんですが、まだまだ足りないなぁっていうのが、勝つには。そういう感じです。今回からすごくクルマを変えてもらって、それがいい方向に、元に戻ったという感じだったので、そのへんは来年に向けて、すごくいい材料だったと思っています。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム株式会社 MST開発部 SUPER GT開発統括]

GT300は「グッドスマイル初音ミクAMG」がチャンピオンを獲ってくれて良かったです。予選も頑張っていましたし、レース全体を考えた時に、そんな簡単にはいかないという事は、公式練習から分かっていたのですが、持ち駒の中でチームが最大限のパフォーマンスを発揮してくれたと思います。「勝って終わる」は理想ですが、今回のレースを考えれば3位はベストリザルトでした。繰り返しになりますが、今回のレースも含め、課題がいくつもある中、シリーズを通してチャンピオンが獲れたのは、非常に良かったと思います。

GT500に関しては、残念ですね。正直、今年に関していうと25%ダウンフォースレスになって、新しいレギュレーションの中でシーズン前のテストで、レギュレーション変更による影響を過小に評価しすぎちゃったことが、最後まで響いてしまったという感じです。すごく大きな反省で……。本当はもっと早くそれに気づいて、適正な効果を見極めたタイヤを開発しなければいけなかったのに、ユーザーさんに対して申し訳なく思っています。

ただ、どこがいけないかは分かっているので、12月、2月のセパンのテスト、開幕までのテストできちんと対応して、来年はしっかり戦えるようにしていきたいと思っています。GT300は連覇を目指して、GT500は表彰台にも立てなかったので、複数の表彰台を狙うため、気持ちを入れ替えて臨みたいと思っています。