2017 SUPER GT Round 7 Report

【SUPER GT 第7戦/チャーン(タイ)】

GT300でD’station Porscheが好戦略を実らせて13台抜きの3位入賞、
グッドスマイル初音ミクAMGは2位でゴールしてランキングトップに浮上!!

SUPER GT Round 7

開催日 2017年10月7日-8日
開催場所 チャーン・インターナショナルサーキット
(タイ)
天候 雨 のち 晴れ
路面 ウェット~ドライ
決勝周回数 66周
(1周=4,554m)
参加台数 39台
(ヨコハマタイヤ装着車 19台)
SUPER GT 第7戦

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年に一度、海を越えてレースが行われるSUPER GT。今年も海外ラウンドはタイ、ブリーラム県のチャーン・インターナショナルサーキットで、シリーズ第7戦が開催された。このサーキットでのレースも今年で4回目。今ではデータも蓄積され、またドライバーもそう違和感を覚えず走れるようになっている。また、ヨコハマタイヤとは非常に相性のいいサーキットでもあり、昨年はGT500で関口雄飛選手と国本雄資選手がドライブする「WedsSport ADVAN RC F」によって、GT300で土屋武士選手と松井孝允選手がドライブする「VivaC 86 MC」によって、両クラス制覇が成し遂げられている。

過去3年間、一度もセッション中に雨に見舞われることがなかったが、今年は土曜日の早朝に一度、さらに公式予選の直前にもスコールに見舞われ、走り始めはウェットコンディションになってしまう。それでもタイの強い日差しは瞬く間に路面を乾かし、公式練習ではウェット、ドライの両コンディションでの走行が可能になった。しかし、公式予選までのインターバルに三度スコールが、それも嵐のような勢いで降って、せっかく乾いた路面はまたびしょ濡れになってしまった。

GT300のQ1は全車がウェットタイヤを履いての走行開始となり、すでに雨はやんでいたこともあって、周回を重ねるごとタイムがそれぞれ縮まっていく。ヨコハマタイヤユーザーのトップは、「マネパ ランボルギーニGT3」をドライブする平峰一貴選手で4番手に。これにヨルグ・ミューラー選手の「Studie BMW M6」が5番手で続き、6台がQ2進出を果たすこととなった。

その直後にまた雨が降り始めるも、それほど強くなかったこともあり、「Studie BMW M6」をドライブする荒聖治選手や「グッドスマイル初音ミクAMG」をドライブする谷口信輝選手は、果敢にもドライタイヤでコースインするが、即座に対応できないと判断してピットに戻ってくる。Q2でも後半勝負となって、ウェットタイヤに交換した谷口選手が最後の最後にタイムアップに成功、「グッドスマイル初音ミクAMG」がヨコハマタイヤユーザーのトップとなる、4番手につけることとなった。「直接のライバルであるLEON AMGの前にいられて良かった。今回はそれとVivaCの前でゴールするのが、最大の課題なので」と、谷口選手も一安心の様子。6番手には最後までドライタイヤで走り続けた、星野一樹選手の「B-MAX NDDP GT-R」が6番手で、織戸学選手の「マネパ ランボルギーニGT3」が7番手に。荒選手の「Studie BMW M6」は無念の11番手に甘んじた。

しかし、それより無念の思いでいたのが「VivaC 86 MC」をドライブする、松井孝允選手と山下健太選手であったはず。山下選手がQ1に挑むも19番手に沈んでいたからだ。「雨に翻弄されてしまいましたが、ドライになれば大丈夫です!」と、山下選手は力強く巻き返しを宣言してくれた。

GT500は通常ならワンアタックのチャンスを見極めるべく、しばらくピットで待機しているマシンが多いのだが、今回の怪しい空模様に対応して、セッション開始と同時に各車が揃ってコースイン。積極的にタイムを出しに行った。

ヨコハマタイヤユーザーの3チームもQ2進出を目指してアタックを開始するも、思うようにタイムが伸びず、「フォーラムエンジニアリングGT-R」はオリベイラ選手がアタックを担当するが、10番手。「MOTUL MUGEN NSX-GT」は中嶋選手がアタックして12番手に。さらに「WedsSport ADVAN LC500」は国本選手がQ1を担当して15番手と、3台ともQ2進出を果たすことはできなかった。

決勝レースが行われる日曜日は、ウォームアップまで晴天に恵まれていたものの、全車がグリッドに着いた直後に雨に見舞われ、またしてもウェットコンディションとなってしまう。それでも、スタート前には雨が止んでいたから、タイヤ選択には各チームとも頭を悩ませた。「MOTUL MUGEN NSX-GT」と「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」はウェットタイヤを選択するが、「WedsSport ADVAN LC500」は直前にドライタイヤに交換し、スタートに備えていた。

セーフティカースタートでのレース開始となるが、「フォーラムエンジニアリングGT-R」はプロペラシャフトが壊れてしまいグリッドから動けず、そのままピットガレージにマシンが戻されてしまった。それでもマシンを修復し、30周を過ぎたところでコースイン。今後につなげるべく佐々木選手、オリベイラ選手ともに17周を走行。合計で34周を走破するが、規定周回に満たず完走扱いとはならなかった。

「WedsSport ADVAN LC500」は国本選手がスタートドライバーを務め、ドライタイヤでスタートするも、思った以上に路面が乾くのに時間がかかり、大きくタイムロス。27周を終えたところで関口雄飛選手にバトンタッチするが、ポイント圏内には届かず12位でフィニッシュした。

そして「MOTUL MUGEN NSX-GT」は武藤選手がスタートを担当。こちらはウェットタイヤで26周目まで引っ張りピットイン。中嶋選手に交代し、追い上げを図るが、結局13位でフィニッシュ。ポイントを獲得できず、悔しい結果となった。

GT300でもタイヤ選択が勝敗のカギを左右するかと思われたが、結局はウェットタイヤの選択が正解だったようだ。ドライタイヤを選んだチームの大半が10周を超えたあたりで周回遅れとなり、挽回不可能な差をつけられてしまう中、唯一ギャンブルを成功させたのが「D’staiton Porsche」だった。

元メジャーリーガーでもある佐々木主浩総監督の『絶対にスリック、そんな匂いがする』との一声でドライタイヤを選び、スタートを務めたスヴェン・ミューラー選手だけが、ウェットタイヤを装着した車両と遜色のないタイムで周回を重ねていく。そして、タイヤの違いによるペースが逆転するようになると、秒単位の速さで前を行く車両を次々と追い抜き続け、ウェットタイヤ装着組がミニマムの周回数でピットに入ったこともあり、予選15番手から22周目にはトップに浮上。そのまま周回を重ね続けて、40周目にようやく藤井誠暢選手にバトンタッチ。

ただ藤井選手にとって不運だったのは、ミューラー選手と同じタイヤがユーズドしか残っておらず、ピットストップの間に3番手へ落ちていたばかりか、アンダーステアに苦しめられていたことだ。背後からは続々とライバルが迫ってくるが、最も勢いのあった「BMW M6」をフェイントブレーキでコースアウトへと導くと、その間に気づいたギャップでなんとか逃げ切り成功。「D’station Porsche」は見事3位入賞を果たすことになった。

それよりひとつ前の2位でフィニッシュした、「グッドスマイル初音ミクAMG」はウェットタイヤをチョイス。片岡選手が早い段階でひとつ順位を上げ、10周目にはもう1台を抜いて2番手に浮上する。そして、20周目にはピットイン、谷口選手への交代と併せてドライタイヤに交換する。燃費の違いか、その間に最終的にウィナーとなった「レクサスRC F」の先行を許し、谷口選手は必死に追いかけたものの、バックマーカーとの遭遇にことごとく失敗し、最後までプレッシャーを与えることは許されなかった。しかし、この2位という結果を得たことにより、ランキングのトップに躍り出ることとなり、しかも2位とのマージンは9ポイントに。久々の王座獲得も決して夢ではなくなってきた。

5位は織戸選手と平峰選手のドライブする「マネパ ランボルギーニGT3」が獲得し、これで3戦連続の入賞に。一方、決勝での巻き返しに期待が込められていた「VivaC 86 MC」は最初からドライタイヤを選んで、しかも無交換作戦に打って出るも不発に終わり、15位という無念の結果に終わる。その結果、鈴鹿の前まではほぼ確実と言われていた連覇の可能性も喪失してしまった。「修復前のクルマがコツコツといろんなことを積み上げて来て、すごく高い完成度だったのに、修復後はそこまでのレベルに達していなかった。残念ですが仕方ない」と土屋監督は語っていた。

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DRIVER VOICE

国本雄資 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 12位】
早めに路面が乾くのではないかと予想していたのと、ウェットタイヤで乾いた路面でのパフォーマンスがあまり良くないというのが、昨日の予選で分かっていたので、ドライタイヤを選択しました。ただ、思った以上に乾かなくて、ドライになるまで9周ぐらいかかりましたし、すごく濡れている路面で、ライバルに大きく離されてしまったので、そこで勝負権を失ってしまいました。次のもてぎは最終戦なので、今年はまだ勝っていないので、何とか1勝はしたいですね。

武藤英紀 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 13位】
ウェットタイヤでスタートして、正直もっと早くタレるかなと思ったんですけど、思いのほか長く持ってくれて、序盤はペース上がらなかったですけど、スティントの後半はまわりよりもペースは維持できていたと思います。ピットインのタイミングが予定よりも1周後になってしまって、そこで順位を落としてしまったところもありました。全体的に振り返ると、それぞれが100%の仕事ができなかったのかなというふうに感じた週末でしたね。次のもてぎに向けてはクルマもタイヤも新しいチャレンジをするので、それに向けて自分も準備していきます。今年の集大成という感じではなく、来年に向けての1戦にしたいですね。

佐々木大樹 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス リタイア】
スタートで発進する時に、プロペラシャフトが壊れてしまいました。ただ、チームのみんながマシンを直してくれて、途中からコースインすることはでき、タイのコースもあまり走れていなかったので、最後はちゃんと走っておこうという流れでした。次回のもてぎは、レクサス勢が速いかなと正直思います。でもひとつ、いい点があるとすれば、昨年僕たちが勝っているということ。クルマとしては厳しい部分がありますが、作戦をうまく立てた上で、自分たちのできる限りのことをして、最善の結果を出したいですね。

谷口信輝 選手 [グッドスマイル初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
本当に片岡が前半いい仕事をしてくれて、いいポジションで帰ってきてくれました。僕が前を追いかけていきましたが、今回ヨコハマが用意してくれたタイヤが素晴らしくて、片岡はミニマムで入ってきたから、僕は長いマックス周回数だったけど、最後までずっとタレることなく、攻め続けられるタイヤだったんです。だから、前を走るRCもキャッチしたかったんですが、いかんせん燃費の差だと思うんですが、ピット入る前は俺らの後ろを走っていたクルマが、ピット終わったら10秒前にいて。捕まえられなかったのは残念ですが、2位になって15点というポイントが獲れて、もてぎに向けて貯金を持っていけるのは、すごくありがたいこと。もてぎで逆転するのはとても大変なんでね。今回、タイに来て良かった、最後まで頑張ります。

片岡龍也選手 [グッドスマイル初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
正直、いろんな判断を迫られる中で、これといって絶対的なものはなかったんですが、結果としてまずウェットタイヤを選んだこと、そしてウェットのハードコンパウンド。このハードがこのレースウィーク使っていなかったんですが、普通にレーススタートしてみたら、ダンプ路面に対して非常にパフォーマンスは高かったので、これは勝負できるなと。そういう意味ではトップまで行けるのかな、と逆に期待するところはあったんですが、谷口さんのスティントでコース上がぐちゃぐちゃしていて。なかなかバックマーカーが譲ってくれなかったとか、そういう運もちょっとなかったかなと思ったんですが、それでも4番手からスタートして2位でゴール。チャンピオンシップでも2位に対して9ポイントものギャップが作れて、っていうのは数字とか計算だけでいうと非常にベストな結果だと思うし。僕らとしては何もミスなく、やるべきことをやった上での結果。まだまだ最後まで気は抜けませんが、自分たちとしてはタイまで来て、いいリザルトを残せたんで、良かったと思います。

藤井誠暢 選手 [D’station Porsche]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
スヴェンはレベルが違う。ポルシェの本物のワークスで、おじさん系じゃなくて、ピッチピチですからスゴイですよ。だって、スリックで表彰台行ったのは僕らだけで、他は最初から駄目でしたよね? 本当に恵みの雨になりました。ドライだったら、あの追い上げは無理だったと思います。あれだけの周回数、スピンもせずによく走ってくれました。ただ、僕のスティントは正直タイヤがきつかったです。ユーズドタイヤで走らざるを得ず、アンダーステア気味で無理だと思ったんです、最初は。でも、どこを抑えたらいいか分かったので、そこからは冷静でした。それと今回、ピット番号が22番で佐々木(主浩)総監督の背番号で、『今回、俺の背番号だからいいことあるぞ』って言っていたんです。レース前、あんな状況だったのでチーム的には『絶対、ウェットだよね』って。でも、総監督が『勝負するでしょ、これは。絶対スリックのような気がする、匂いがする』って。それでチーム全体が今日はスリックだって感じた。勝負の世界を勝ち抜いてきた人の直感。根拠、それ(笑)。

平峰一貴 選手 [マネパ ランボルギーニGT3]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
予想外の雨が降ってきて、織戸さんがウェットタイヤでスタートしてミニマムで入って、最後は僕で。僕のスティントはだいたい40周ぐらいですね。タイヤを保たせるために序盤は抑えていて、最後の方でプッシュしようと思っていたら、GAINERさんのベンツが後ろに来ていたんですけど、それはまぁ抑えられると思っていたし、あとはタイヤとも相談しながら、後ろとのマージンと前とのマージンを見ながら走ろうと思っていました。最後までタイヤも保ってくれたし、ヨコハマさんのいいタイヤを使わせてもらえて、本当に嬉しかったです。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム株式会社 MST開発部 SUPER GT開発統括]

GT500に関しては、ウェットタイヤのパフォーマンスが、もう少し細かく言うとダンプコンディションの、徐々に乾いていく状況でパフォーマンスを出せないのが、いちばん大きなポイントだと思います。ドライコンディションではレース中のパフォーマンスも悪くなかったのですが、3台揃って「レースの流れ」が悪い方、悪い方に行ってしまいまして……。本当にいろいろあって、全く歯車の噛み合わないレースになってしまいました。

本来であれば、通常テストなしに新しい構造の投入はしないのですが、今回は、結果を残す事を狙って、オフのセパンテストで評価して来年以降の投入を考えていた構造を、前倒しして一部使ったりもしたんですが、流れの悪さがあり、その良さをまったく生かせなかったのが非常に残念です。最終戦は表彰台目指して頑張ります。

GT300はずっとドライコンディションが保たれていたら、楽勝だったんじゃないかって言うほどのパフォーマンスは示せたのですが、ここもウェットでのパフォーマンスが。。。それでもドライバー、チームが頑張ってくれてランキングトップに返り咲いたということは、非常に良かったと思いますす。次のもてぎも相性は悪くないので行けると思っていますし、連覇を狙っていきたいと思います。