2017 SUPER GT Round 5 Report

【SUPER GT 第5戦/富士】

グッドスマイル初音ミクAMGが準優勝でシリーズトップに躍進、
WedsSport ADVAN LC500は予選14番手から7位にジャンプアップ!!

SUPER GT Round 5

開催日 2017年8月5日-6日
開催場所 富士スピードウェイ
(静岡県)
天候 曇り
路面 ドライ
決勝周回数 66周
(1周=4,563m)
参加台数 45台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
SUPER GT 第5戦

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全8戦で争われる2017年のSUPER GTシリーズは、ここから後半戦に突入する。第5戦の舞台となるのは、今季2度目の開催となる富士スピードウェイ。天候に翻弄され、劇的な展開となった前回のSUGOから、わずか2週間でのレースとなる。

前回のレースでは、GT500のヨコハマタイヤユーザーは3台揃ってQ2進出を果たし、予選でハイパフォーマンスを示していた。さらに決勝レースでは武藤英紀選手と中嶋大佑選手がドライブする「MOTUL MUGEN NSX-GT」が、一時2番手を走行し、今季最上位となる6位でゴール。その一方で、スタート時の天候急変に対するタイヤ選択が裏目に出てしまった、関口雄飛選手と国本雄資選手のドライブする「WedsSport ADVAN LC500」、佐々木大樹選手とジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手のドライブする「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は、ともに予定外のタイヤ交換を強いられて大苦戦。片や12位に留まって21戦に渡った連続入賞がストップ、片やクラッシュによって無念のリタイアを喫していた。

ただし、ヨコハマタイヤユーザーの3台は、いずれもまだウエイトハンデに苦しんでいないこともあり、逆襲を図るに今回は絶好の機会でもある。 一方、GT300では松井孝允選手と山下健太選手のドライブする「VivaC 86 MC」が2戦連続でポールポジションを獲得し、決勝レースでも3位を獲得して、ランキングのトップを死守。また、都筑晶裕選手と新田守男選手のドライブする「Ferrari 488 GT3」が2位でゴールし、久々の表彰台を獲得していた。

土曜日の富士スピードウェイは、早朝こそ富士山がくっきりと見え、青空が広がっていたものの、やがて灰色の雲が広がるようになり、いつ雨が降り出してもおかしくないような状況となっていた。それでも幸いにしてドライコンディションは終始保たれたが、予想よりは低めの温度の下で予選が行われた。

GT300のQ1は「Studie BMW M6」のヨルグ・ミューラー選手を筆頭に、ヨコハマタイヤユーザーが10台Q2進出に成功。ミューラー選手のパートナー、荒聖治選手はさらにタイムを縮めてきたものの、1台だけがそのタイムを上回り、2番手に。それでもフロントローから決勝に挑むこととなった。3番手は片岡龍也選手からステアリングを託された、「グッドスマイル初音ミクAMG」の谷口信輝選手が獲得した。一方、ランキングトップの「VivaC 86 MC」は山下健太選手が13番手でQ1を突破し、松井孝允選手がひとつポジションを上げて12番手に。FIA-GT3に比べ、ストレートパフォーマンスの違いで苦戦は致し方ないJAF-GTながら、まさに意地を見せることとなった。

GT500は「WedsSport ADVAN LC500」が今季絶好調のレクサス勢の中で最もウエイトハンデが少なく、公式練習から速さを見せた。最後のGT500単独のセッションでは関口選手がミディアムタイヤを履いてトップタイムをマークし、予選でもポールポジション獲得は確実だと思われた。しかし、Q1は国本選手が担当するもハードタイヤを選択していたこともあって、思うようにタイムが伸びず14番手。Q2進出を果たすことができなかった。「MOTUL MUGEN NSX-GT」も武藤選手がQ1に出走し、3戦連続でのQ2進出を目指したものの、12番手でノックアウトとなってしまう。

一方、前回のレースから新エンジンを積んでいる「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は、今回がSUPER GT参戦100戦目となったオリベイラ選手が4番手に。前回に続いてQ2進出を果たすと、佐々木選手が渾身のアタックを披露し、5番手グリッドを獲得。今季初表彰台に向け、好位置につけた。

決勝当日は引き続き上空に雲を浮かべてはいたものの、雲の切れ間からは強い日差しが注がれるようになる。それでも、決勝レースのスタートが近づくにつれて、爽やかな風が吹いたり、雲が太陽を遮るようになったりして、穏やかなコンディションへと改まっていった。話は前後してしまうが、スタート時の気温は29度、路面温度は36度だったが、周回が進むにつれ、いずれも下がっていって27度、32度にまでなっていた。

GT500のヨコハマタイヤユーザーで、最も積極的なレースを見せていたのは「WedsSport ADVAN LC500」だった。スタートを担当した関口選手が序盤から前のクルマに迫って行く走りを披露、11周目には9番手に浮上。その後もニッサン勢の背後につけて接近戦を展開。他車のピットストップもあり、一時は3番手にまでポジションを上げていた。32周目にピットインし、国本選手に交代。ピット作業に若干時間がかかってしまったため、序盤に追い抜いていた車両に先行され、10番手に下がってしまうが、国本選手もまたアグレッシブな走りを披露し続け、最終的に7位でのフィニッシュを果たすこととなった。

「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」はオリベイラ選手がスタートを担当し、すぐに4番手に浮上すると、序盤から激しいバトルを繰り広げる。ライバルに一歩も引かず、ポジションをキープし続けていたが、スティントの後半になるとペースが伸び悩むように。23周目には5番手に後退するも、それでも先行車両に食らいついて離れず。31周目に佐々木選手と交代し、追い上げを狙った最中に接触があり、その影響でステアリング周りにトラブルが発生。ペースを落としながらも周回していたものの、症状はひどくなり、52周目のピットでレース続行を断念、規定周回を満たしていたことから13位完走扱いとなった。

「MOTUL MUGEN NSX-GT」は、決勝前のウォームアップ走行でトップタイムをマーク。ペースもよく、手応えを感じた中で武藤選手がスタートを切るも、2周目にひとつポジションを落とし13番手に。ウォームアップ時より路面温度が低くなって、好ペースを維持することができなくなっていたのだ。32周目に中嶋選手と交代、ピットアウト直後は2台をパスして、ポイント圏内を目指したものの、GT300との接触により車体左側にダメージを負い、45周目にピットでリタイアとなった。

GT300では予選順位そのままに、まずは「Studie BMW M6」の荒選手が2番手、「グッドスマイル初音ミクAMG」の片岡選手が3番手からレースを開始する。トップは逃げていく一方だったが、背後に2台を連ねて4台で激しい2番手争いを繰り広げた。両者ともにミスのない走りで、後続に逆転を許さず。しかし、「Studie BMW M6」は23周目にミューラー選手に、「グッドスマイル初音ミクAMG」は27周目に谷口選手に代わるのと併せ、タイヤを4本交換したのに対し、背後を走っていたJAF-GT勢は無交換もしくはリアのみ2本だけ交換で、タイムロスを最小限に留めた。

そのため、「グッドスマイル初音ミクAMG」こそ3番手に踏み留まれたものの、「Studie BMW M6」は6番手に後退。そればかりか、序盤は6番手を走行していた「GULF NAC PORSCHE 911」の先行も許していた。それでも谷口選手は41周目に前を行く車両を抜いて、2番手に浮上。トップも一時は4秒差にまで迫っていたが、攻めたピット作業の影響か、ピットからはフューエルセーブの指示が……。そのため、終盤は抑えて走らざるを得ず、ポジションをキープするに留まった。

それでも2位を獲得したことで、谷口選手と片岡選手はランキングのトップに浮上。「VivaC 86 MC」が電気系トラブルによって完走こそ果たしたものの、入賞ならなかったことで、松井選手と山下選手は9ポイントの差をつけられてしまっていた。5位はジョノ・レスター選手と峰尾恭輔選手の駆る「GULF NAC PORSCHE 911」が、そして6位は「Studie BMW M6」が獲得した。

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DRIVER VOICE

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 7位】
公式練習では調子が良かったのですが、予選になって周りのタイムが上がっているのに自分たちが上がらず、不調に終わってしまいました。ただ、決勝で満タンにしたら、それなりにいい感じで走れて、ペースも良かったです。スティントの後半はペースが上がらなくなってしまいましたが、国本選手に交代してからはペースが良くて、何台か抜いてくれました。すごく勢いが良かったですし、前を走っているクルマも見えていたので、2位ぐらいまでいけるかと思いましたが、途中で少し勢いが止まってしまいましたね。次の鈴鹿も引き続き頑張ります。

ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 13位】
今回、僕が100戦目を迎えるなんて知らなかったから驚いたよ。でも、SUPER GTで100戦を達成している選手は、そう多くないから非常に光栄なことだね。レースは正直グリップレベルが低くて、それと戦いながらのレースだった。特にセクター3でのトラクションが得られなかったし、そのあたりではレクサス勢が速くて1台にパスされてしまった。でもトータルで僕のスティントはOKだったよ。佐々木選手のスティントで他車との接触があって、そこでステアリング周りが壊れてしまった。最初はそのまま走っていたけど症状が悪化して、ピットに戻らなくてはいけなくなってね。次の鈴鹿1000kmは僕らにとって最後のチャンスになる。ライバルが重いウエイトを積んで挑む最後のレースだからね。モチベーションを保って、全力を尽くすよ。

中嶋大佑 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス リタイア】
ウォームアップ走行ではすごくペースが良かったのですが、決勝になって路面温度が変わって、それだけが原因か分かりませんが、タイヤとの相性が少し悪くなかったかな、という感じでした。僕のスティントになって何台かパスすることはできましたが、ちょうど100RでGT300のマシンをインから抜こうとした時に、向こうが見えていなかったようで、イン側に来たところを避けたらダートに出てしまい、スピンしてしまいました。その後、フロントが曲がりづらくなっていましたが、だんだん悪化してチームからピットに戻るよう指示されました。ただ、タイヤへの理解はSUGOと富士でたくさん得られたことがあったので、そこはプラスだなと思います。あとは、それをどう良くしていくか難しいところですが、力を合わせて一所懸命頑張っていきます。

谷口信輝 選手 [グッドスマイル初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
給油で詰めたのか計算間違いだったのか分からないけれど、燃費が苦しいということで、途中からセーブしてくれという感じになって。相手の後ろに着けられれば、相手にもプレッシャーがかかって、何かが起こったかもしれないし……。ただ、決勝の前には2位なんて見えていなかったので、そういう意味では最高です。タイヤも全然問題なくて、40秒台後半から41秒台前半で走れましたから。しかも、これでランキングトップ! 9ポイント差はかなり大きいと思いますよ。

片岡龍也 選手 [グッドスマイル初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
正直もっと苦しい展開を予想していたので、レース始まった時、意外にこれ、悪くないなと。ただ、ピットが終わってみないと、どこがどんなピットストップ時間か分からないので、まず目の前にいたStudieが後ろに回ったのは分かったのですが、JAF勢が無交換で来たので、僕らのフレッシュタイヤとどれだけギャップがあるのかと。でも、思っていた以上にあったので、2位になれました。表彰台に乗れたらラッキーだと思っていたのに、優勝できるかもという淡い期待を抱いてしまったが故に、なんか2位で残念な感じに。非常にタイヤもクルマも調子が良くて良かったです。

峰尾恭輔 選手 [GULF NAC PORSCHE 911]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
前回の富士のレースでは内圧を攻められなかったのですが、今回からセッティングもガラッと変えて、レースを攻められるようにして戦えたので、レースのラップタイムも悪くなかったと思うし、僕らのポルシェが持っているポテンシャルを発揮して戦えたと思います。タイヤに関しても終始グリップしていたし、僕らは決勝で気温が下がることを想定してミディアムを選んだこともあって、予選も良かったし、決勝も安定していたので、良かったと思います。

荒 聖治 選手 [Studie BMW M6]

【今回の成績 : GT300クラス 6位】
JAF-GTのようにピットでタイヤを2本だけ換えることができず、4本換えた分だけ厳しいレースになってしまいました。ノーミスで行けましたが、結果6位は残念です。さらに前へ行くには何か考えないと。まだまだ課題は残してしまいました。予選では速さを見せられただけに、よけいに残念でなりません。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム株式会社 MST開発部 SUPER GT開発統括]

GT500に関して言えば、まず「WedsSport ADVAN LC500」は決勝レースを見据えて、ハードで予選に挑んでもらったのですが、それがマッチしませんでした。朝の公式練習ではトップだったので、Q1は楽に突破できると思っていただけに非常に残念でした。「MOTUL MUGEN NSX-GT」も出るタイミングが悪くて、自分たちのペースでアタックできなかったのが痛かったです。「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」に関しては5番手でしたが、もう少し上に行けたような感触はありました。

決勝では他社さんと同等のペースで走れたとは思うのですが、ハンデを考えると良しとは言い難く、全体的にもう少しパフォーマンスを上げて、有利に走ってもらえるように、続く鈴鹿やタイのレースに向けて出来る事は全て行ってレースに臨みたいと思います。

GT300では他社さんに上に行かれてしまう中、「グッドスマイル初音ミクAMG」はハンデが厳しいのに頑張ってくれました。重さを考えれば上出来ではないかと。「Studie BMW M6」にはもう少し上に行って欲しかったですが、SUGOから確実なステップアップの傾向が見られるので、後半さらに良い結果を出してくれると考えています。

次の鈴鹿はまた暑くなるはずなので、基本タイヤには厳しいレースになるでしょうが、ハンデの面ではまだ有利と言えるので、各チームが速さ、強さを見せてくれることを期待しますし、我々としても全力でバックアップしたいと思います。