【全日本ラリー選手権 第7戦/北海道帯広市】
JRC Round 7
開催日 | 2016年9月23日-9月25日 |
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開催場所 | 北海道帯広市 近郊 |
天候/路面 | LEG1-A) 小雨/ウェット LEG1-B) 曇り/ハーフウェット~ドライ LEG2) 曇り 時々晴れ/ドライ |
総走行距離 | 751.46km |
SS総距離 | 157.70km (16SS) |
得点係数 | 2.0 (非舗装路150km~) |
参加台数 | 全日本選手権 37台 (オープンクラス含) (ヨコハマタイヤ装着車 14台) APRC 21台 (ヨコハマタイヤ装着車5台) |
全9戦のカレンダーとなっている2016年の全日本ラリー選手権は、いよいよ終盤戦に突入。第7戦は北海道帯広市がホストタウンとなる「RALLY HOKKAIDO」、フィールドの広さと走行距離の長さで群を抜くグラベル(非舗装路)ラリーはポイント係数も2.0と大きく、まさにシリーズの天王山とも言える一戦だ。
立て続けに北海道を襲った台風の爪痕が残る十勝地方だが、一部のSS(スペシャルステージ)に影響はあったものの、地元の自治体や主催者の尽力によりほとんどのステージは例年通りの良好なコンディションで選手たちを迎えてくれた。圧倒的にスピードレンジが高いグラベルラリー、ゆえにタフでサバイバルな一戦であるがヨコハマタイヤ勢は奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)が2年連続で優勝しており、今年も好走が期待された。
23日(金)、生憎の雨模様の中で行われたセレモニアルスタートで幕を開けた「RALLY HOKKAIDO」。スタート後に行われるSS1「SATSUNAI 1 (1.47km)」は雨の影響でマッディな箇所もあるため、奴田原選手組と新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)はともに軟質路面用のADVAN A031を選択。優れたグリップを活かして奴田原選手組がステージベスト、新井選手組が0.5秒差のセカンドベストをマークし、まずはヨコハマタイヤ勢のワン・ツーで競技がスタートした。
一夜明けた24日(木)、戦いが主な舞台を林道ステージへと移す。その皮切りはSS2「IKEDA 1 (12.37km)」、ここは大会で唯一の全線がターマック(舗装路)となるステージ。道は泥や落ち葉に覆われている箇所も多く、前日のレッキを終えた多くの選手が「IKEDAは滑りやすくて注意が必要」と語っていた。そんなステージをADVAN A053を装着するセカンドゼッケンの奴田原選手組が攻略していくと、後半でコースオフしている先頭ゼッケンをつけるライバルの姿が。シリーズを争うライバルは早々に戦列から姿を消した一方、奴田原選手組は連続ベストをマークして明暗がわかれる結果となった。
SS3「RIKUBETSU LONG 1 (4.63km)」は新井選手組が待望の本大会初ベストを奪い、続く距離の長い林道ステージであるSS4「KUNNEYWA 1 (20.42km)」も連続ベスト、セカンドベストが奴田原選手組となる。SS4を終えてトップは奴田原選手組、2番手が6.7秒差で新井選手組というヨコハマタイヤ勢のワン・ツー・フォーメーションが競技の主役となっていく。
そしてSS5からは奴田原選手組が3連続ベストで新井選手組との差を10.7秒に拡大すると、SS9からは新井選手組が3連続ベストで反撃して6.2秒まで差を縮めて、世界のラリーを戦ってきた名実共に日本を代表する両選手がしのぎを削り合う展開でLEG1を終了した。
LEG2が行われる25日(日)、前日にトラクションのかかりに不足が見られたマシンを最終サービスでアジャストした新井選手組の猛チャージが展開された。LEG2オープニングステージからベストを連発する新井選手組、SS13「NEW HONBETSU 1 (11.77km)」を終えて奴田原選手組との差を1.9秒まで詰めると、続く大会最長ステージとなるSS14「NEW ASHORO LONG 1 (29.11km)」で逆転、そのままトップでフィニッシュまで運んで全日本選手権部門エントリーでは初めて「RALLY HOKKAIDO」での優勝、今シーズン3勝目を飾った。一方の奴田原選手組は2位でフィニッシュ、こちらはライバルを逆転してシリーズランキングのトップに躍進した。
JN5クラスでは、柳澤宏至選手/中原祥雅選手組(208 R2)が快走。金曜日のオープニングステージこそライバルにトップを譲ったものの、土曜日のSS2から4連続ステージベストで後続との差を広げていく。終わってみれば16本のSS中、実に12本でステージベストをマーク。河川敷のSS1、林道からダートトライアルコースをつないだSS6と7、ターマックのSS10はセカンドベスト、これ以外の距離が長くハイスピードな林道グラベルステージは完全制覇で強さを見せ、次戦にはチャンピオンを賭けて臨むこととなった。
今シーズン初めてグラベル戦で成立したJN2クラスは、孤軍奮闘となった明治慎太郎選手/谷内壽隆選手組(86)がサバイバルな展開となる中で、しっかりマシンをフィニッシュまで運んでウィナーに。これによりシリーズランキングでトップに立ち、次戦はトップの明治選手組とランキング2番手となった小濱勇希選手組というヨコハマタイヤ勢同士の対決がさらに注目を集める展開となった。
そして、JN1クラスはヨコハマタイヤ勢が表彰台を独占する強さを見せた。LEG1をトップで折り返し、そのまま逃げきったのは高篠孝介選手/廣嶋真選手組(スイフト)。地元北海道の大舞台で、高篠選手は嬉しい全日本初優勝を獲得することに成功した。2位は坂昭彦選手/中谷篤選手組(スイフト)、大ベテランの坂選手はLEG2で高篠選手を上回る速さで追撃したが惜しくも一歩及ばなかったものの、実に25年ぶりとなる全日本戦の表彰台を獲得した。3位は番場彬選手/加勢直毅選手(アルト)で、こちらは開幕から投入した話題のスズキ・アルトワークスがシリーズで最も過酷な一戦で初の表彰台獲得をなし遂げた。
【今回の成績 : JN6クラス 優勝】
LEG1-Bはマシン側の問題でトラクションがしっかりかかっていなかったので、夜のサービスで修正しました。LEG2では車の動き方も全然変わり、6.2秒差を逆転出来ました。土曜日はタイムが伸び悩み、自分の運転が悪いのか車が悪いのかもハッキリしなくて、自分自身の機嫌も悪くなって(笑)。それがLEG2はオープニングステージを走り始めて全然良くなっていたので、そこからはいつもの勢いに戻ってプッシュしていきました。自分の前ゼッケンを走る奴田原選手組が通ったラインを見て「奴田原選手組もかなり攻めているな」とわかったので、こちらも攻めていきました。残り2戦に逆転チャンピオンの可能性を残せたので、全開で戦っていきます!!
【今回の成績 :JN6クラス 2位】
新井選手組とのバトルは、P-WRC(FIAプロダクションカー世界ラリー選手権)」を戦っていたころを思い出しました。157.70kmを走って秒差の戦い、2位というのは悔しかったですがLEG2は新井選手組の方が少し速かったということなんですね。3年連続優勝はなりませんでしたが、ポイントを積み重ねたことでシリーズチャンピオン争いも面白くなってきました。残り2戦はターマックラリーですが、チャンピオンを奪還出来るようにしっかり戦っていきますので、応援してください。
【今回の成績 :JN5クラス 優勝】
無事にフィニッシュ出来てホッとしました(笑)。実は大会中、2回セルモーターがまわらなくなってヒヤヒヤしたんです。フルポイントを獲得できたので、これで有利な立場でチャンピオン争いを残り2戦で展開していける結果になりました。今回はファイナルを少し変えてきました。モントレーで最高速がいま一つ足りなかったので、ハイスピードな「RALLY HOKKAIDO」に合わせてきたのですが、それも結果としては正解だったと思います。208 R2は基本設計がしっかりしていることもあり、リザルトを見てもR車両としての高いポテンシャルを出せていると思います。残り2戦、もちろん本音は次の第8戦でビシッとチャンピオンを決めたいですね!!
【今回の成績 :JN2クラス 優勝】
早々に孤軍奮闘となった一戦でしたが、マシンをフィニッシュに運ばなければ行けないというプレッシャーとの戦いでもあった「RALLY HOKKAIDO」でした。何といってもタフなラリーなので、ライバルがどうのこうのではなく、自分がしっかりフィニッシュすることも大変な一戦ですからね。この車ではグラベルラリーが初めてなので、色々と試行錯誤もしていました。車も段々と走りやすくなって、熟成も進められたと思います。今回の戦いは“路面が敵”と言える内容でしたが、フィニッシュしてランキングでもトップに立てて良かったです。
【今回の成績 :JN1クラス 優勝】
LEG1をトップで折り返して、ドキドキはしましたが「これがトップの心境なのか」と変に意識しすぎることもなく臨んだLEG2でした。平常心を保ちつつ走ったつもりでしたが、コ・ドライバーからは「慎重に走りすぎている」という指摘ももらい、気を引き締めなおしました。SS13ではちょっとコースから外れたりもしてしまったのですが、自分が野球のイチロー選手になったつもりで“一打席ずつ集中する”ではないですが、コーナーひとつずつを集中して走りました(笑)。「RALLY HOKKAIDO」で全日本初優勝、本当に感慨深いものがあります。今回得られたものも多いので、これを足掛かりにステップアップして行きたいと思います。
序盤から主力選手の多くも戦列から姿を消し、今年も過酷な一戦となった「RALLY HOKKAIDO」。昨年、一昨年は雨が勝敗を分ける要素のひとつにもなったが、今年は大半のステージがドライコンディションとなりADVAN A053がヨコハマタイヤ勢の走りを支える展開となった。
最高峰のJN6クラスでの3年連続優勝や、コンパクトカーが競い合うJN1クラスでの表彰台独占など、6クラス中4つを制したヨコハマタイヤ勢。全日本選手権部門には37台がエントリー、完走はそのうち19台だったが11台のヨコハマタイヤ装着車が完走を果たして、タフでサバイバルな一戦を通じて優れたポテンシャルと耐久性を改めて実証する結果となった。