2015 WTCC Round 3&4 Report

【FIA世界ツーリングカー選手権 第3戦&第4戦/ムーレイ・エル・ハッサン (モロッコ)】

接触多発のチャレンジングなストリートバトル、
2レースともにシトロエン勢が表彰台を独占!!

WTCC Round 3&4

開催日 2015年4月17日-19日
開催場所 ムーレイ・エル・ハッサン
(モロッコ)
天候 第1レース:晴れ
第2レース:晴れ
路面 第1レース:ドライ
第2レース:ドライ
決勝周回数 第1レース:14周
第2レース:14周
(1周=4,545m)
2015 WTCC 第3&4戦

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3月の第1週に南米・アルゼンチンで開幕した、2015年のWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)。ヨコハマタイヤがワンメイクコントロールタイヤを供給して10年目という節目のシーズンは、舞台をアフリカ大陸のモロッコへと移して4月19日に第3&4戦の決勝レースが行われた。

今年で6回目のWTCC開催となるモロッコは、お馴染みのマラケシュ・市街地コースが戦いの場として用意される。全長4,545mのコースはシケインが設けられた2本のストレートを、タイトコーナーでつなぐレイアウト。当然、ランオフエリアはほぼ皆無で、パッシングの難しさから予選で如何に上位グリッドを獲得出来るかも勝敗を分ける重要なポイントとなる。

そんなモロッコでレースウィーク早々から速さを見せたのは、第1戦のウィナーであるシトロエンのホセ・マリア・ロペス選手。金曜日のテスティング、そして土曜日に2回行われたフリープラクティスともにトップタイムをマークして貫祿を見せつける。その速さは予選に入っても不変で、Q1こそチームメイトのマー・チンホワ選手とイヴァン・ミューラー選手に続く3番手に留まったが、Q2、Q3では堂々のトップタイムで第1レース(第3戦)のポールポジションを獲得。そして2番手につけたのはSebastien Loeb Racingからシトロエンで参戦するメルディ・ベナニ選手、地元モロッコのヒーローが期待に応える走りを見せた。また、3番手グリッドはFIA世界選手権を中国人として初めて勝利する金字塔を打ち立てているチンホワ選手が獲得して、日曜の第3戦スタートを迎える運びとなった。

注目の第3戦スタート。ロケットスタートを決めたのは8番手スタートのガブリエレ・タルクィーニ選手(ホンダ)で、イン側から一気に加速するとターン1までで5番手にポジションアップ。また、チンホワ選手もベナニ選手をかわして2番手で1コーナーをクリアしていく。

この2台にセバスチャン・ローブ選手を加えた3台のマニュファクチャラー登録されたシトロエン・C-エリーゼがレースの主導権を早々に握り、1-2-3フォーメーションを形成してレースをリード。その後方では激しい鍔迫り合いが演じられるも、タイトなストリートコースゆえになかなか大きな順位変動には至らず。トム・コロネル選手は同じシボレーRMLを駆るトム・チルトン選手に接触されて右前の足回りにダメージを受け、戦線離脱を余技なくされた。チルトン選手はその後もラーダ勢と激しく争い、じわじわとポジションをアップ。しかし最終的にはコロネル選手との接触に対して、ペナルティが科せられることとなってしまった。

ロペス選手、チンホワ選手、ローブ選手、そしてベナニ選手の4台がやや先行する一方で、6番手のミューラー選手はティアゴ・モンテイロ選手(ホンダ)行く手を抑えられるかたちでなかなかトップグループに近づけない。3周目の終盤ころからモンテイロ選手の真後ろにピタリとつけて隙を伺うも、モンテイロ選手をかわしたのは9周目になってからのこと。一方でトップを走るロペス選手は中盤から徐々にチンホワ選手との差を拡げ、今シーズン2回目となるウィニングチェッカーを受けることに成功した。

2位はチンホワ選手、3位はローブ選手でシトロエンが表彰台を独占。地元のヒーロー、ベナニ選手はローブ選手と激しいポジション争いを10周目に演じて一時は3番手を奪うも、再びローブ選手の先行を許して4位でフィニッシュ。YOKOHAMAインディペンデントトロフィーの覇者として、母国での表彰台を飾った。

リバースグリッドとなる第2レース(第4戦)、そのポールポジションに陣取ったのはミューラー選手。2番グリッドはコロネル選手、3番グリッドはローブ選手というオーダーでスタートを迎えた。スタートではまたもホンダが鋭いダッシュを見せた。今度は4番手スタートのモンテイロ選手が好スタートを決め、イン側から一気にコロネル選手をかわして3番手にポジションをアップ。しかしターン1でコロネル選手をノルベルト・ミケリス選手(ホンダ)がプッシング、コロネル選手ばかりかモンテイロ選手も巻き添えを喰ってコースオフからバリアに衝突して、レースを終える結果に。

オープニングから荒れ模様となったが、セーフティカーは導入されることなくレースは続行。ミューラー選手とローブ選手が1-2フォーメーションを維持する一方、10番手スタートのロペス選手は5番手にまでオープニングラップのうちに浮上し、チルトン選手とヒューゴ・ヴァレンテ選手、2台のシボレーRMLにプレッシャーをかけていく。その後方では先頭が2周目に入った直後の最終コーナーでクラッシュが発生。ターン1に加えてこちらもイエローフラッグが振られるが、やはりセーフティカーは導入されず。

アクシデントが続出した序盤戦であったが、ミューラー選手は隙を伺ってくるローブ選手をしっかり抑えてトップを譲ることなく周回を重ねていく。一方でロペス選手は第1レースのミューラー選手と立場を入れ替えたようにシボレー勢をパスするのに苦労し、5周目にヴァレンテ選手をかわし、6周目のストレートからターン1でチルトン選手の前に出て後半勝負へと持ち込んだ。

5周を終えた時点で、ロペス選手とローブ選手の差は約6秒。しかしハイスピードはトップ争いを演じるミューラー選手とローブ選手に詰め寄るには至らず。シトロエン同士のトップ争いはミューラー選手がローブ選手に付け入る隙を与えることなくフィニッシュへとマシンを運び、昨年の第13戦・スパ-フランコルシャン以来となる勝利を飾り、WTCC通算41勝目を記録した。

2位はローブ選手、3位はロペス選手で、第3戦に続いてシトロエン勢が表彰台を独占。YOKOHAMAインディペンデントトロフィーはチルトン選手が制する結果となった。

DRIVER VOICE

ホセ・マリア・ロペス 選手 [Citroen Total WTCC]

【今回の成績 : 第3戦 優勝 / 第4戦 3位】
まず初めに、素晴らしい車を造り上げるために、舞台裏で素晴らしい仕事をしてくれているチームスタッフにお礼を言いたいですね。第1レースはスタートがとても重要でした。チンホワ選手は良いドライビングをしましたから、私は彼にポジションを奪われないように注力する必要がありました。そう、彼からは大きなプレッシャーがあり、私はしっかり守り抜く必要があったのです。彼らは私を捕らえていましたが、私もプッシュして良いペースを守りギャップを拡大するようにしました。それは、私にとってとても良いレースになりました。

イヴァン・ミューラー 選手 [Citroen Total WTCC]

【今回の成績 : 第3戦 5位 / 第4戦 優勝】
ローブ選手との激しいテール・トゥ・ノーズは、とても素晴らしいバトルでした。私も彼も、終始プッシュしての走行に徹していました。モロッコはハードブレーキングを多用する、とても難しいレースです。そこには、ミスを誘発する箇所も多く待ち受けています。私も序盤でひとつミスをしてしまいましたが、これ以上のミスはローブ選手に利用されることになるので許されません。言うのは簡単ですが、特に全力でドライビングしている中で実行するのは簡単ではありません。しかし最後には勝利を得ることが出来ました。

TECHNICAL INFORMATION

第2レースでは多くのクラッシュも発生したが、例年とは違ってセーフティカーが導入されることは無かった今年のモロッコ戦。ミューラー選手のコメントにもあるようにハードブレーキングを多用するうえ、シケインでは縁石をまたいでジャンプするのが常というレースになるため、タイヤが受ける負担は小さくない一戦だ。そんな中でセーフティカーが導入されなかったということは、タイヤにとっても高まった温度が維持されたまま周回していくことになるため、過酷なシチュエーションであると言える。

もちろん、そんなレースにおいてもタイヤのトラブルは皆無で、見応えのある世界最高峰のツーリングカーによるストリートバトルを、ヨコハマタイヤがしっかり支えたことも印象的な一戦であった。