2015 WTCC Round 1&2 Report

【FIA世界ツーリングカー選手権 第1戦&第2戦/テルマス・デ・リオ・オンド (アルゼンチン)】

2015年のWTCCは南米・アルゼンチンで開幕、
シトロエン勢が2レースを共に制する!!

WTCC Round 1&2

開催日 2015年3月6日-8日
開催場所 テルマス・デ・リオ・オンド
(アルゼンチン)
天候 第1レース:曇り
第2レース:曇り
路面 第1レース:ドライ
第2レース:ドライ
決勝周回数 第1レース:13周
第2レース:15周
(1周=4,806m)
2015 WTCC 第1&2戦

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2015年のWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)は、南米アルゼンチンのテルマス・デ・リオ・オンドが開幕戦の舞台。2013年から3年連続の開催となるアルゼンチンだが、これまでとはカレンダーが変更されて、南半球は夏の雨季という時期になる。ゆえに決勝日は気温が35度、路面温度は55度にまで上昇。予選日には路面温度が57度に達し、ヨコハマタイヤにとってWTCCにおける史上最高の路面温度を記録した。

ヨコハマタイヤは2006年からWTCCのワンメイクサプライヤーをつとめるが、今シーズンは供給10周年にあたる節目。昨年から導入されたTC1車両規定、今年は旧規定車両が姿を消して全車が18インチタイヤを装着するTC1となる。その中で世界選手権争いに加え、YOKOHAMAインディペンデントトロフィーも設定され、12大会/24レースで覇を競い合う。

注目の開幕戦にエントリーしたのは18台。YOKOHAMAトロフィー登録はその半分の9台だ。そして、やはり速さを見せたのはシトロエン勢。金曜日のテストセッションはセバスチャン・ローブ選手、土曜日のフリープラクティスは2回ともにホセ・マリア・ロペス選手がトップタイムをマークした。

しかし、土曜日の公式予選1回目では注目のニューフェイスがリザルト(結果表)の最上段に名を連ねた。その選手こそロブ・ハフ選手、駆るマシンはロシアのラーダが新たにWTCCマシンへと仕立てたヴェスタである。ハフ選手はチームメイトのジェームス・トンプソン選手とともにQ2(予選2回目)へと進出を果たして、ニューマシンが上々な仕上がりであることをアピールした。もっとも、Q2ではシトロエン勢が本領を発揮、Q3へと進出する5台のうち4台を占める結果となる。それでもトンプソン選手はQ2で10番手に食い込み、第2レースでのポールポジションを獲得した。

そしてQ3(予選3回目)では、地元のヒーローであり昨年のチャンピオンに輝いているロペス選手が圧倒的な速さを見せ、1分45秒461と唯一の45秒台をマークして第1レースのポールポジションを獲得。1.240秒差の2位がイヴァン・ミューラー選手、3位はローブ選手、4番手にマー・チンホワ選手となり、シトロエンがトップ4を独占。5番手は孤軍奮闘となったホンダのティアゴ・モンテイロ選手というオーダーになった。

決勝第1レース(第1戦)、スタートで2番手のミューラー選手が絶妙なダッシュを披露。右コーナーのターン1に対してイン側となる2番グリッドからロケットダッシュ、牽制するロペス選手と軽い接触を伴いつつも先行し、ターン1にトップで飛び込んでいく。しかしロペス選手も巧みなライン取りからターン出口で逆転し、再びトップに立つ。その後方ではモンテイロ選手と7番手スタートのガブリエレ・タルクィーニ選手、2台のホンダがポジションをアップしてシトロエンの3台を追走する体制に。

オープニングラップではトンプソン選手がジョン・フィリッピ選手と接触、リア右の足回りにダメージを受けて戦線を離脱してしまった。一方で同じラーダではハフ選手が先行するメルディ・ベナニ選手を激しくプッシュ。今季はシトロエンを駆るベナニ選手は、背後のハフ選手を牽制しつつ前にいるシボレーRMLのトム・チルトン選手を追走し、三つ巴の6番手争いを展開する。この勝負は3周目、チルトン選手に迫ろうとしたベナニ選手はコーナーリングで姿勢を一寸乱し、その隙にハフ選手が先行してポジションを入れ替えた。ところが4周目、ターン7で両者は接触しハフ選手のマシンは右リアの足回りを破損し、トンプソン選手同様に戦線を離脱。この接触に対してベナニ選手にはドライブスルーペナルティが科された。

こうした後続のバトルを尻目に、シトロエンの3台は磐石のフォーメーションでラップを重ねる。周回毎にロペス選手はミューラー選手を引き離し、最後は3.170秒のリードを築き上げてウィニングチェッカー。一昨年の第2レース、そして昨年の第1/第2レースに続き、地元ファンの大歓声を背にアルゼンチン戦での4勝目を飾った。2位はミューラー選手、3位はローブ選手で、開幕戦の表彰台はシトロエンが独占。YOKOHAMAトロフィーはホンダ・シビックを駆るノルベルト・ミケリス選手が制した。

短いインターバルをはさんでスタートを迎えた第2レース(第2戦)。ポールポジションはラーダのトンプソン選手、2番手グリッドにはYOKOHAMAホイールを装着するシボレーRMLを駆るトム・コロネル選手が陣取る。レッドシグナルが消灯して一斉にスタート、しかしトンプソン選手はアクシデントの影響かペースが鈍く、1コーナーまでで大きく順位を下げる。

ターン1をトップでクリアしたのはコロネル選手、その後ろから4番手スタートのタルクィーニ選手がアグレッシブな走りで2番手につけ、モンテイロ選手はチンホワ選手と激しく競り合いながら3番手を獲得。しかしターン4からのストレートで加速に勝るシトロエンが強さを見せ、チンホワ選手がモンテイロ選手をかわしたのみならず、その後ろからローブ選手が迫りターン5の立ち上がりでモンテイロ選手をかわずことに成功。

さらに圧巻なのはこの後で、チンホワ選手とローブ選手が立て続けにタルクィーニ選手をパスすると、両者はサイド・バイ・サイドの状態になりつつもそのまま一気にコロネル選手をもかわす。これぞWTCCと言えるコース幅をいっぱいに使ったツーワイド、スリーワイドのバトル、2周目に入ると早々にローブ選手がトップを奪いWRCチャンピオンの貫祿を見せた。

ローブがトップを奪ってまもなく、コースオフ車両回収のためにセーフティカーが導入される。この間にチンホワ選手はピットインしてマシンチェックを行ったためにポジションを下げた。そして7周目からレース再開、ローブ選手は危なげない走りでトップをキープ。その後ろではロペス選手がタルクィーニ選手に迫り、ターン4を抜けたストレートで一気に捉えると2番手にポジションをあげることに成功する。

レース後半、後方ではベナニ選手のインをさしに行ったミューラー選手が追突してペナルティが科されることとなったり、モンテイロ選手がタルクィーニ選手をかわして3番手に立つなどの動きはあったが、ローブ選手は安定したラップを刻み続けてチェッカー。昨年のスロバキア戦以来となる、WTCCでの3勝目を飾った。

2位は第1レースを制しているロペス選手。そして3位にはモンテイロ選手が食い込んで、2レース続けてのシトロエン勢による表彰台独占を阻止した。YOKOHAMAトロフィーはSebastien Loeb Racingから参戦するベナニ選手が制した。

DRIVER VOICE

ホセ・マリア・ロペス 選手 [Citroen Total WTCC]

【今回の成績 : 第1戦 優勝 / 第2戦 2位】
開幕戦で優勝を飾ることが出来て、とても嬉しいです。この週末は、多くのポイントを得られ、多くの人々に勝利を与えることが出来て満足ですし、選手権争いにとってもとても良い展開となりました。テルマス・デ・リオ・オンドではこれでWTCCを6戦開催されましたが、私が4勝を挙げているというのも素晴らしいことだと思います。第2レースは巧くスタートしてターン1でミューラー選手をパスできました。しかしローブ選手は私より良いペースを保っていて、迫ろうと試みたのですが捉えることが出来ませんでした。チームとして2レースを制することが出来て、ローブ選手を祝福したいですね。

セバスチャン・ローブ 選手 [Citroen Total WTCC]

【今回の成績 : 第1戦 3位 / 第2戦 優勝】
第2レースでロペス選手が3番手にいるのを確認していました。しかしセーフティカーが解除されて最初のコーナーで、彼は私の後ろ(2番手)にいました。後ろにロペス選手がいるということは、彼は本当に速さのある選手なので決して気を抜くことは出来ません。間隔が詰まるとスリップストリームを使われてしまう可能性が高いので、私はそうならない間隔を保つために最大限プッシュしていかなければなりませんでした。そして、そうすることが出来たので、私にとっては完璧なレースとなりました。

TECHNICAL INFORMATION

3年目となるテルマス・デ・リオ・オンドは、開催初年度は路面改修直後だったが、時間を経てやや粗さが目立つようになってきた。それでも路面としてはWTCC開催コースの中では独特な感じで、各チームはグリップを出すためのセットアップに苦労していたようだ。開催時期が夏の雨季に変わり、路面温度はヨコハマタイヤがワンメイク供給するようになってからのWTCCで最高となる数値をマーク。この暑さと湿度がターボエンジンに影響を与えたこともあるのか、予選/決勝ともにラップタイムは全体として昨年比の2秒ダウン程度に留まった。
走行セッションは全てドライとなったが、夜間に降った雨が砂をコースに運んだという背景もあるようで、決勝でもややテールスライド気味のマシンをコントロールする選手の姿が多く見られた。