【FIA世界ツーリングカー選手権 第1&2戦/テルマス・デ・リオ・オンド (アルゼンチン)】
WTCC Argentina
(Autódromo Termas de Río Hondo)
開催日 | 2015年3月6日-8日 |
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開催場所 | テルマス・デ・リオ・オンド (アルゼンチン) |
コース距離 | 4,805m | 決勝予定周回数 | 13周×2レース |
WTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)の2015年シーズンは、昨年より丸一カ月早いこの週末に開幕戦を迎える。ヨコハマタイヤにとってはワンメイクタイヤ供給10周年となる今シーズン、その幕開けはアルゼンチンのテルマス・デ・リオ・オンドが舞台となる。
昨年、新たにTC1車両規定が導入されたWTCCだが、今シーズンから旧規定車両との混走は無くなり、全車がTC1となる。先に発表された年間エントリーには20人のドライバーが名を連ねているが、マシンで見るとセアトは残念ながTC1車両を開発していないので姿を消したが、昨年の王者であるシトロエンを筆頭に、ホンダ、シボレーRML、ラーダの4銘柄が今年も覇を競い合うこととなる。
ドライバーのラインナップを見ると、シトロエン勢は昨年のレギュラー陣は変わらず。ディフェンディングチャンピオンのホセ・マリア・ロペス選手はゼッケンを昨年と同じ37としたため、今年は1が空き番号となる。また、イヴァン・ミューラー選手は新たに68をつけて戦う。このほかセバスチャン・ローブ選手とマー・チンホワ選手も継続参戦する。また、新たにSebastien Loeb Racingが参戦、こちらはYOKOHAMAトロフィー登録で昨年までホンダ・シビックを駆っていたメルディ・ベナニ選手が登録された。
ホンダ陣営も大ベテランのガブリエレ・タルクィーニ選手と、ティアゴ・モンテイロ選手というツードライバー体制をHonda Racing Team JASが継続。さらに今年はNika Internationalが2年ぶりにWTCCへのレギュラー参戦を復活、マシンはシビックを使いドライバーにはリカルド・リデル選手を起用した。往年のセアト黄金期を支えた選手の一人で、WTCC通算5勝を飾っているベテランである。
シボレーRML勢は5台、その全てがYOKOHAMAトロフィー登録での参戦となる。ROAL Motorsportのトム・コロネル選手とトム・チルトン選手、Campos Racingのヒューゴ・ヴァレンテ選手は昨年からの継続参戦。そしてWTCC復帰組としてリデル選手と並んで注目なのが、ALL-INKL.COM Munnich Motorsportのステファノ・ディアステ選手、陽気なイタリアンはYOKOHAMAトロフィーのタイトルを獲得した経歴も持つ実力派の一人だ。また、Campos Racingのジョン・フィリッピ選手はTC1へのステップアップを果たし、さらにニューフェイスとしてCraft BambooからはFIA-GT1などのキャリアを有する23歳のグレゴアール・ドゥムースティエ選手が登録された。
最後に、昨年チーム初優勝を飾って勢いに乗るラーダ勢。ドライバーは昨年もラーダを駆ったロブ・ハフ選手、ジェームス・トンプソン選手の二人を登録したが、今年はマシンをグランタからヴェスタへとスイッチする。メーカーであるアフトバス社はルノー・日産アライアンスの傘下にあるが、昨年夏のモスクワモータショーでコンセプトモデルが公開された新型車であるヴェスタは、2015年秋に市販開始予定のニューモデル。過去にWTCC参戦もしていたプリオラの後継モデルで、WTCCはそのプロモーションにも大いに活用されることとなる。
開幕戦が行われるアルゼンチンのテルマス・デ・リオ・オンド。このコースでWTCCが開催されるのは2013年から3年連続となるので、日本のWTCCファンにとってもお馴染みのサーキットとなりつつあるだろう。ロケーションとしては日本から見て地球の反対側、そこまで移動するには航空機の乗り継ぎ待ちを含めると48時間近くを要するため、日本から向かうヨコハマタイヤのスタッフはまさに“世界を股に掛けた”大移動となる。
さて、3回目となるアルゼンチンでのWTCCだが、今年はひとつ大きな変化がある。それは初めて開幕戦としてカレンダーに組み込まれたこと。これにより過去2回の8月開催に対して、3月上旬の開催となったのだ。そして、アルゼンチンは南半球であることを忘れてはいけない。つまり、季節で言えば冬から夏の開催へと変化したことになる。気象データを見ても、8月のアルゼンチン(ブエノスアイレス)は月間平均最高気温が17.3度。これに対して3月は26.4度となり、単純に10度弱も最高気温は高くなるのである。
気温の上昇は、少なからずマシンに影響を与える。TC1車両はターボエンジンを搭載しているので、セッティングは昨年と異なるものが要求されるだろう。しかし、前述のように夏のアルゼンチンはWTCCにとって初めての経験ゆえ、どのチームもデータを持っていない。つまり現地に入ってからの“現場合わせ”が必要となるわけで、チームの総合力が試されることにもなる。ドライバーにとっても、例えばタイヤマネージメントなど、暑さの中でのレースならではのポイントが生じてくることになるだろう。
さて、アルゼンチンと言えばディフェンディングチャンピオンであるホセ・マリア・ロペス選手の故郷であり、地元のヒーローにおくられる声援は日本で想像する以上の熱いものがある。その期待に応えてロペス選手、昨年は1大会2レースを連勝するという偉業もなし遂げた。1大会2連勝を記録したのは、WTCC史上5人目の快挙である。
やはりアルゼンチン戦での優勝候補、その筆頭はホセ・マリア・ロペス選手ということで間違いないだろう。しかし、前述のように開催時期の変更もあるが、開幕戦ということでマシンの完成度などには蓋を開けてみなければ分からない部分も多い。ある意味ではイコールコンディションな開幕戦、その中でロペス選手だけが持つ“地元の利”は確かにあるだろうが、誰が勝ってもおかしくないドラマがそこに待っているのではないかと思われるところだ。
【2015年 シリーズエントリーリスト】
No. | クラス | ドライバー | 車両 | チーム |
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2 | ガブリエレ・タルクィーニ | ホンダ・シビック WTCC | Honda Racing Team JAS | |
3 | Y | トム・チルトン | シボレーRML・クルーズ TC1 | ROAL Motorsport |
4 | Y | トム・コロネル | シボレーRML・クルーズ TC1 | ROAL Motorsport |
5 | Y | ノルベルト・ミケリス | ホンダ・シビック WTCC | Zengo Motorsport |
7 | Y | ヒューゴ・ヴァレンテ | シボレーRML・クルーズ TC1 | Campos Racing |
9 | セバスチャン・ローブ | シトロエン・C-エリーゼ WTCC | Citroen Total WTCC | |
11 | Y | グレゴアール・ドゥムースティエ | シボレーRML・クルーズ TC1 | Craft Bamboo |
12 | ロブ・ハフ | ラーダ・ヴェスタ | LADA Sport Rosneft | |
15 | ジェームス・トンプソン | ラーダ・ヴェスタ | LADA Sport Rosneft | |
18 | ティアゴ・モンテイロ | ホンダ・シビック WTCC | Honda Racing Team JAS | |
19 | リカルド・リデル | ホンダ・シビック WTCC | Nika International | |
25 | Y | メルディ・ベナニ | シトロエン・C-エリーゼ WTCC | Sebastien Loeb Racing |
26 | Y | ステファノ・ディアステ | シボレーRML・クルーズ TC1 | ALL-INKL.COM Munnich Motorsport |
27 | Y | ジョン・フィリッピ | シボレーRML・クルーズ TC1 | Campos Racing |
33 | マー・チンホワ | シトロエン・C-エリーゼ WTCC | Citroen Total WTCC | |
37 | ホセ・マリア・ロペス | シトロエン・C-エリーゼ WTCC | Citroen Total WTCC | |
68 | イヴァン・ミューラー | シトロエン・C-エリーゼ WTCC | Citroen Total WTCC | |
98 | ドゥサン・ボルコビッチ | ホンダ・シビック WTCC | Proteam Racing |
※「Y」はYOKOHAMAトロフィー対象選手。
アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスから、国内線のフライトでおよそ1時間45分。同国北部のサンティアゴ・デル・エステロ州にある自治体のひとつがテルマス・デ・リオ・オンドだ。ここはアルゼンチンでも人気のスパリゾートとして知られており、テルマスとはスペイン語で温泉を意味する。
この地に常設サーキット「アウトドモーロ・テルマス・デ・リオ・オンド」が完成したのは2008年のこと。2012年には大規模な改装が施され、2014年は2輪の世界選手権であるMotoGPが開催された。2輪に先駆けて2013年から開催されているのが、4輪の世界選手権であるWTCC。コースは全体的に起伏が少ないが、周囲が砂漠なので細かい砂が風に乗って運ばれ、コースをダスティにすることも多い。また、路面の舗装は2012年の改修で新しくされているが、やや風化の進行が早いようだ。もっとも、それでも他のサーキットよりはタイヤへの攻撃性は低めである。
これまでのテルマス・デ・リオ・オンドでのWTCCコースレコードは、2014年の予選でホセ・マリア・ロペス選手(シトロエン)がマークした1分43秒766。決勝ファステストラップも、同年ロペス選手がマークした1分45秒926となっている。