2015 J-F3 Round 12&13 Report

【全日本F3選手権 第12戦&第13戦/富士】

ニック・キャシディ選手が3点差で再びランキングトップに浮上、
F3-Nクラスは小河諒選手が連勝で早々に王座を獲得!!

Japanese F3 Round 12&13

開催日 2015年7月18日-19日
開催場所 富士スピードウェイ (静岡県)
天候 第12戦:雨
第13戦:曇り
路面 第12戦:ウェット
第13戦:ドライ
決勝周回数 第12戦:15周
第13戦:21周
(1周=4,563m)
参加台数 17台
2015 全日本F3選手権 第12&13戦

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

全日本F3選手権の第6大会、シリーズ第12戦と第13戦が、富士スピードウェイで7月18〜19日に開催された。このレースウィークで何より懸念されたのは天候だ。台風接近の影響で、大荒れになるとの予報もあったからである。

実際、金曜日午前の専有走行は大雨のため、スタートが30分遅らされたほど。この時のトップはルーキーの福住仁嶺選手。しかし、午後の専有走行までに雨はやんで、ほぼドライコンディションとなった。この時は山下健太選手がトップタイムをマークした。

雨はその後、再び降り始め、土曜日の早朝まで降り続くことに。予選が始まる頃にはすっかりやんでいたが、路面はセミウエットと言うべき状態に。第12戦の予選でウェットタイヤを三浦愛選手を始めとするF3-Nクラスの3人が選ぶも、路面の乾きは早く、1周目に記したタイムをその後更新できず。

ドライタイヤを選んだ他のドライバーたちは、コンディションの向上とともにタイムを伸ばし、ポールポジションは1分35秒848を記したニック・キャシディ選手がポールポジションを獲得。これに高星明誠選手、スポット参戦の千代勝正選手、ストゥルアン・ムーア選手が続き、ランキングトップの山下選手は5番手に留まっていた。

第13戦の予選ではキャシディ選手の連続ポールはならず、35秒208をマークした高星選手が最後に逆転。キャシディ選手に続く3番手は山下選手が獲得し、ムーア選手が2戦連続で4番手につけることとなった。

F3-Nクラスでは小河諒選手が2戦ともトップを奪い、これで2ポイントを加算。いよいよタイトル獲得が現実のものとなってきた。第12戦の2番手はDRAGON選手で、これに三浦勝選手が続き、三浦愛選手は5番手に。第13戦では全員がドライタイヤを装着し、三浦愛選手は2番手に浮上し、3番手をDRAGON選手が獲得している。

土曜日のうちに行われた第12戦決勝レースは、あいにくの雨模様となってしまい、全車がウェットタイヤを装着しての戦いとなった。好スタートを切って1コーナーにトップで飛び込んでいったのは高星選手だったが、キャシディ選手も遅れず続き、100Rで早くも再逆転に成功。そのままキャシディ選手が逃げていったのとは対照的に、激しく続くこととなったのは高星選手と、好スタートを切って6番手から3ポジションアップしていた、福住選手による2番手争いだった。

このバトルに決着がついたのは、8周目の1コーナー。順位を上げた福住選手も単独走行に持ち込み、自己最上位となる2位を得ることとなった。そして、3位の高星選手に続く4位は高橋翼選手が獲得、13周目の1コーナーでブレーキをミスした山下選手の脇を、難なくすり抜けていた。

F3-Nクラスでは、しっかりスタートを決めた小河選手がライバルを一切寄せつけず圧勝。これで続く第13戦で表彰台に上がれば、チャンピオンが決まることとなった。2位はDRAGON選手……、ではなく三浦愛選手が獲得した。7周目までは2番手を走行していたDRAGON選手ながら、激しく追い上げてきた三浦愛選手に対し、プレッシャーを感じたわけではなかろうが、1コーナーでコースアウトしてしまったためだ。

第13戦決勝レースが行われる日曜日は、富士スピードウェイ上空に雲こそ浮かんでいたものの、完全にドライコンディションが保たれることとなった。高星選手が今度はポールポジションからそつのないスタートを決めたが、それ以上に鋭いダッシュでキャシディ選手が1コーナーで前に出ることに成功。とはいえ、高星選手も遅れることなく続き、逆転のチャンスをうかがっていた。そして、12周目のコカ・コーラコーナーで高星選手はトップに躍り出るも、その後に2台は接触。姿勢を乱した高星選手がコースアウトし、ピットには戻ったものの、無念のリタイアを喫することとなる。

キャシディ選手は何とかコースに踏み留まったものの、13周目の1コーナーで山下選手にトップを奪われてしまう。スタートでひとつ順位を落としていた山下選手ながら、5周目に福住選手を抜いて3番手に返り咲いていたことで、まさに漁父の利を得た格好となった。一方、福住選手も2戦連続2位を目指し、必死にキャシディ選手を攻め立てたものの、固いガードに阻まれてしまう。それでも初めて表彰台に上がることに成功する。4位は千代選手が獲得。

F3-Nクラスではクラスの異なる車両に小河選手が行く手を阻まれる間に、三浦愛選手がオープニングラップの最終コーナーで前に出るが、立ち上がりの加速が鈍って、すぐに再逆転を許す。いつものレースなら、その後は逃げ続けていく小河選手だったが、今回はオーバーステアに苦しみ、大量のリードを築いていくことができない。終盤には三浦愛選手のペースが上回った周もあったが、何とか逃げ切って10勝目をマーク。その結果、残る2大会を待たずして、チャンピオンを獲得することとなった。3位はリアホイールからの振動に悩まされ、絶えず三浦勝選手を背後に置く状態だったものの、またもDRAGON選手が獲得した。

DRIVER VOICE

ニック・キャシディ 選手 [PETRONAS TOM’S F314]

【今回の成績 : 第12戦 優勝 / 第13戦 2位】
第12戦では久々に勝てて良かったです。危うく勝つという感覚を忘れるところでしたから。今週は2戦とも勝つつもりでいたので、僕としてはドライでもウェットでも良かったのに、第13戦でまさかあんなことになるとは……。クルマのバランスは決して良くなかったのですが、スタートが決まっただけに逃げ切りたかったんですけどね。それでも今週でまたランキングのトップに立てたし、残りのレースもベストを尽くしていこうと思っています。

山下健太 選手 [PETRONAS TOM’S F312]

【今回の成績 : 第12戦 5位 / 第13戦 優勝】
第12戦が残念な結果に終わったので、第13戦で勝ちたいと思っていましたし、実際に勝てて本当に良かったと思います。ただ、ドライコンディションでのペースが思っていた以上に悪く、ついていくのがやっとだったのですが、高星選手とニックが接触してチャンスが生まれたので、正直言って何もせずに勝ったという感じもしますが……。それでもこれからのレースは1ポイントが重要になってくると思うので、大事に戦っていきたいと思います。

小河 諒 選手 [KeePer TOM’S F306]

【今回の成績 : 第12戦 11位(F3-Nクラス 優勝) / 第13戦 10位(F3-Nクラス 優勝)】
第12戦はスタートで少しミスして、DRAGON選手に並ばれかけましたが、何とかトップをキープできて、そこから先は毎周できるかぎりのプッシュをしました。第13戦も同じような展開にしようと思ったのですが、走り始めからクルマのバランスが思っていたのと異なり、最後まで苦戦をしましたけれど、こういう状態になったら、どう対処すればいいかエンジニアと事前に話もしていたので、何とか焦らずに走って勝てたので良かったです。

FEATURED DRIVER

■小河 諒 選手

F3-Nクラスのチャンピオンを早々に、そして10勝目を挙げて獲得した小河諒選手。王座に就いたのは、これが初めてではなく、昨年まで2連覇を遂げたポルシェカレラカップジャパン以来となる。特に昨年は、カレラカップだけでなく、スーパー耐久や86/BRZレースにも出場し、すべてのカテゴリーで優勝を遂げていたように、一時はツーリングカーレースでレーシングドライバーの道を歩んで行こうとしていた。

[Photo]

それが再びフォーミュラカーに乗ることになったのは、TOM’Sの関谷正徳監督からの強い勧めによる。そのため、今年はスーパー耐久に2戦スポット参戦する以外は、このF3-Nクラスに専念もしていた。言い訳無用の体制も与えられ、「開幕前から勝って当たり前、チャンピオンを獲って当たり前と言われていました」と小河選手。オフシーズンのテストでは好タイムを連発、しかも同じクラスのドライバーを秒単位で引き離し、全勝も夢ではないと思われていたのだが、実際のところは……。

「レースは事前の準備がすごく大事で、常にチームにはたくさんの準備をしてもらいました。それなのに僕のミスで、その頑張りを帳消しにしてしまうレースが何度もありました」と小河選手。とはいえ、それもチャンピオンが決まった今は小河選手を、より大きく成長させるための試練だったのかもしれない。王手をかけた重要なレースでマシンのバランスが合わなかったものの、しっかりと走りをアジャスト。並みのドライバーならば、コースに留まることも許されないような状況で完走したばかりか、しっかり逃げ切っているのだから。

そして小河選手は、こうも語った。「自分としては認めたくはないのですが、やっぱり大きなプレッシャーがかかっていたと思うんです、今までは。でも、それから解き放たれたからには、残りのレースはより総合で上位につけられるようなペースで走りたいと思います」と。7月の王座決定とあって、「先のことはまだ何も……」と言うが、何らかの形でステップアップを遂げるのは間違いない。今年の苦労と快進撃で、どれだけ成長を果たしたのか、新たなステージで確かめたいところだ。